病院 73巻3号 (2014年3月)

特集 事務職員の人材開発・キャリアパス

巻頭言 伊関 友伸
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 以前,医療崩壊が社会問題になったとき,知り合いの医師と議論をしていて,医療崩壊の要因の一つに事務職員の能力不足があるという話になった.医師から「世の中には良い医師は数多くいて,頑張れば雇うことができるが,良い事務長・事務職員の数は少なく,雇用は難しい」という話を聞いてなるほどと思ったことがある.

 DPCによる包括評価や医療安全管理,突発的事象における事業継続(BCP)など,病院をめぐるマネジメントは時とともに高度化している.また,国の進める社会保障・税一体改革が目指す医療・介護機能の再編,病院の機能分化に対する対応も待ったなしの状況にある.自院が生き残っていくためには,病院マネジメント能力の向上,事務職員の人材開発を図ることが欠かせない時代となっている.

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 今なぜ事務職員の人材開発が問われるのであろうか.病院において事務職員は当初より存在し,国家資格等は有しないものの必須の機能を果たしてきた.また病院の運営上,名称はともかく一般的に事務長もそれなりのトップマネジメントの一員を構成してきた.当院(倉敷中央病院)は創立90周年になるが,事務長は過去の周年記念誌において,歴代理事長,院長とともに創設時より代表者の1人として記載されている.事務職能は必要ではあったが,過去,人材開発は重要視されず見過ごされてきたのであろうか.あるいは,時代が変わり必要能力が変化し,また,求められる水準が極めて高くなり,現有人材と大きなギャップが生じてきたのであろうか.

 厚生労働省医政局の委託事業「医療施設経営管理部門の人材開発のあり方等に関する調査研究」1)によれば,病院の現状について以下のように述べられている.

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■病院における事務職の重要性

 今,国民の皆さまがわれわれ医療人に求めていることが3つあると考える.1)安心・安全な医療,2)質の高い医療,3)わかりやすい医療,である.

 これを達成するためには,きちんとした運営管理が必要である.そのためには,1つには医療や介護の質を見える化し,それを評価すること.2つには患者満足度(PS),そして職員満足度(ES)を上げること.3つには人事・労務・財務経理そして医療制度を熟知すること,と考える.これらの仕組みを作り,医師や看護師を動かしながらバランスよく確立することは事務職の方たちの力なくして成し遂げることはできない.

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 みやぎ県南中核病院(以下,当院)は,宮城県の南部に位置し,角田市,柴田町,村田町,大河原町の1市3町で構成する組合立の病院として2002(平成14)年8月に開院した自治体病院である.2012(平成24)年度からは,公立病院改革プランにある経営形態の見直しのもと,公営企業法全部適用の企業団として新たなスタート切ることとなったが,自治体病院としてはまだまだ新しい病院といえる.

 宮城県の二次医療圏は仙台医療圏を中心に4つに分かれ,当院が位置する仙南医療圏(2市7町)の人口は約18万人,当院の構成市町の人口は約11万人で,県南地域のセンター病院としての役割を担っている.

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 病院事務職員の仕事には,いわゆる総務的な業務と医事関連業務とがある.前者には人事,企画,施設,経理などがあるが,他業種から異動してきても,仕事内容における専門性は比較的低いものと考える.一方,後者の医事関連業務においては,診療情報管理や診療報酬請求など専門的スキルを要する業務が多く,資格取得者の配置や外部業者への委託等が必要なことも多い.従って,医事関連業務に慣れるには一定期間の勤務経験が必要と考えるが,自治体病院を含む国公立系事務職員は比較的短期間に異動することが多く,当該部署におけるキャリアパスの確立は案外困難である.

 今回,静岡県西部地域を中心に開催されている病院事務職員向けの勉強会(通称「小林塾」)を紹介するとともに,病院事務職員,特に自治体病院職員のキャリア支援・人材開発について私見を述べる.

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 筆者は,1981年に現在の病院に作業療法士第1号として就職した.その頃作業療法開設の許認可を石川県で受けていたのは,金沢大学附属病院だけであり,当院は県内で2番目の認可施設となった.必然的に社会人1年目の筆者が作業療法室の管理者となった.作業療法を知らない職員の中で,作業療法を知らない医師に処方してもらい,作業療法を知らない患者の治療を開始した.

 それから30年,筆者は,これからの時代に重要な認知症,高次脳機能障害,がんのリハビリテーションについて取り組む石川県内で一番長く臨床を続けている認定作業療法士となり,石川県作業療法士会の会長となっていた.そんな中,突然,2010年10月1日,勤務する病院の作業療法課長から法人本部事務局長を拝命することになった.

 今回,何故筆者が事務系管理者となったのかを1事例として考える.

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 偕行会グループは2014年2月で35年が経過し,36年目に突入した.創業者である川原弘久が1979年に名古屋市中川区にて開設した名古屋共立病院は当時20床からスタートした.創業当時は透析医療を中心とした非常に小さな病院であったが,今や8法人に病院数4,診療所数18,老人保健施設数2,グループホーム数1,介護付き有料老人ホーム数1,小規模多機能事業所数2,訪問看護ステーション数2,訪問介護ステーション数1,居宅介護支援事業所数4,デイサービスセンター数1を数える規模となった.加えて2014年2月にはインドネシアの首都ジャカルタに診療所を開設し,グループ初の海外進出を果たした.

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 IMSグループは関東,東北,北海道,ハワイに病院,老健施設等を持つ医療機関グループである(IMS:Itabashi Medical System,板橋中央総合病院ほか).現在職員数は約17,400人,病床数11,538床を有し,基本理念「愛し愛されるIMS」に基づき,地域の医療介護を担っている(表1).

 現在,人材を確保することも困難で厳しい経営が強いられている医療業界の状況において,優秀な人材をどれだけ育成できるかが今後生き残っていくための不可欠の要素である.当グループは1956年の開設当初より事務職が金庫番として病院経営管理を行ってきた.その事務職員が能力を高め,最大限のパフォーマンスを発揮するためには,事務職員への教育は組織にとって重要かつ不可欠な項目の一つとなる.グループ全職員17,400人のうち,約2,200人が事務職員であり,ゆえに以前より事務職教育に力を注いできた.ここでIMSグループの事務職教育プログラムの内容を紹介する.

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■生長会の概要:大阪南部の医療福祉複合体

 社会医療法人生長会は1955(昭和30)年に30床の府中病院を開設して以来,大阪南部の堺市・和泉市を中心として,急性期医療を中心に保健・医療・福祉を統合したトータルヘルスケアシステムを展開している.グループ法人である社会福祉法人悠人会と併せた全事業所数は40,職員数は延べ人数4,100人(2013年11月1日現在)である(図1).

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■法人の概要

 社会福祉法人恩賜財団済生会(以下,本会)は,明治天皇が「恵まれない人々のために施薬救療し,済生の道を弘めるように」との済生勅語と御下賜金を基に1911(明治44)年に設立された.戦後は1951(昭和26)年公的医療機関の指定,1952年社会福祉法人の認可を受け,以来今日まで102年間創立の精神を引き継いで保健・医療・福祉の充実・発展に必要な諸事業に取り組んできた.

 本会は,東京に本部事務局,全国40都道府県に支部を置き,その下に79病院をはじめ特別養護老人ホームや保育所等の福祉施設を含め370を超える施設・事業所を展開し,職員約54,000人が活動する日本最大の社会福祉法人である.

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小児在宅医療の拠点として

 あおぞら診療所墨田が2013年12月,浅草の吾妻橋から駒形橋近くに移転した.高度な医療ケアが必要な障害や疾患をもつ子どものための,在宅医療の拠点である.訪問診療・往診が活動の基本であり,診療所の建物はスタッフステーションとしての性格が強い.診察室は訪問開始前の相談外来などを,デイルームはレスパイトのための一時預かりを想定して計画された.

 医師・看護師・事務職らスタッフの机が並ぶ事務スペースは,壁にスクリーンをおろせば,そのままカンファレンスができるレイアウトである.スタッフが集まる朝にはここで,前夜の救急対応や具合の悪い患者の状態報告,当日の訪問予定などを確認,共有する.

連載 アーキテクチャー 第230回

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 青森市は青森県中央部に位置し,青森湾に臨む交通の要地として江戸初期に建設された港町に由来している.三内丸山遺跡や青森ねぶた祭が知られ,八甲田の山並みが調和した歴史と伝統のある街である.2010年に東北新幹線新青森-八戸間開業による全通に伴い,より周辺地域からのアクセスが容易となった.医療法人芙蓉会村上病院は開設より地域医療に貢献し,主として慢性期と維持期の患者さんの「善きかかりつけ医」となるべく,大きな役割を担ってきた.青柳地区の旧病院は建物の老朽化,狭隘化が進んでいた.このたび青森市内中心部から南側に位置し,高速道路インターに近接し,青森空港,新幹線新青森駅のアクセスに優れた浜田地区へ移転新築に至った.敷地は西側に広大な浜田中央公園が広がり,南東に八甲田山を望む雄大な自然環境を取り込むべく環境となっている.

 2008年より移転新築の基本計画に着手.当初より地域の患者の療養環境向上のため医療法人芙蓉会として全個室の病院を実現させることが村上理事長の強い志であり,このたび新村上病院として開院を迎えた.

連載 世界病院史探訪・12

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 バイエルン州フランケン地方の首都ニュールンベルク(Nurnberg)は,人口50万人の大都市である.重要な交易路の交差点に位置し,その繁栄は15,16世紀に頂点に達していた.ドナウ河支流のベグニッツ(Begnitz)川を中心に発達した街で,都心部にはベグニッツ川の中州をまたいで,巨大な聖霊シュピタール(Heilig-Geist-Spital)がある.

 ニュールンベルクでは,まずドイツ騎士団が1227年にエリザベス・シュピタールを建てた.1332年にロイポルト(Leupold)Ⅱ世司教とフォン・セント・セバルト(von St.Sebald)主任司祭により聖霊財団が設立され,1339年までに教会を中心とする現在の施設の中核部分が完成した.当時,エリザべス・シュピタールが旧シュピタール,聖霊シュピタールが新シュピタールと呼ばれた.

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長谷川 この雑誌では,7回にわたってこれまでの医療安全についての総括をし,新しい提案をしてきました.その締めくくりに,日本の医療安全をリードするお2人の先生にご参加いただいて展望を見出したいと思います.最初に,自己紹介を坂本先生からお願いします.

坂本 私は,1997年に関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)の看護部長に就任しました.医療安全に関してはその頃からいろいろな取り組みをしてきましたが,手応えは十分ではありませんでした.当時は看護部ばかりが一生懸命医療安全対策をやっている状況でした.

連載 病院勤務者のための論文作成入門・3

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 前回まででリサーチクエスチョンの設定,それに沿ったデータ分析と文献検索を行い,とりあえず論文を書くための材料はできました.いよいよ論文執筆です.最初の1行を何から書き始めるか,なかなか難しいですね.慣れてくれば頭の中で論文の構想を固めて,そらで書き始めることができるのかもしれませんが,初心者はまず論文の設計図(これをアウトラインと言います)を書くことから始めるほうが無難です(筆者は今でもそうしています).連載の3回目はこのアウトラインを書く作業について説明します.

連載 病院のお悩み相談室・3

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 第3回となる今回は,経営戦略・経営管理編ということで未収金と人材活用についての質問を取り上げます.多くの病院で経営者を苦しめる未収金問題への対応,そして診療報酬改定で見直された入院基本料の要件変更に伴い機能・基準変更を余儀なくされた医療機関の人材活用方法についてご紹介したいと思います.

 また,来る3月21日(金・祝)にMI BOARDはWEBの世界を飛び出し,「第2回全国病院事務長サミットin TOKYO」を開催します.今回のテーマは「平成26年診療報酬改定」.この局面において病院事務長に求められる判断と決断の拠り所を見極める学びの場,そして事務長同士の交流の場としてぜひご活用ください(本誌information欄〔244頁〕を参照).

連載 リレーエッセイ 医療の現場から

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 「人の行動を変えることはほとんど不可能」.

 ハーバード公衆衛生大学院の,ある授業における教授の第一声である.確かに「三つ子の魂,百までも」と言うように,いったん習慣化した行動を変えることは容易ではない.特にそれが食や運動という,ある種「本能」に根ざした行動ならなおさらである.しかも,私が対象としているメタボハイリスク者や糖尿病患者さんたちの食に対するこだわり(執着と言ったほうがよいかもしれない)は半端なものではない.

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 2011年3月11日に発生した東日本大震災は,岩手県でも大津波によって三陸沿岸の市町村に甚大な被害をもたらした.震災発生直後に,岩手県社会福祉協議会(以下,社協)および各市町村社協は,災害ボランティアセンターを設置し,全国からのボランティアの受け入れ対応のほかに,被災地域住民のニーズ調査,緊急小口資金の特例貸付業務を行うこととなった.しかし,津波で社協事務所を流失したほか,多くの職員が死亡または行方不明となり,人員不足は深刻な状況にあった.地域内の介護・福祉事業所の多くも活動停止の状況にあった.

 発災直後から全国のDMAT(災害派遣医療チーム)が来県し活動する中,福祉支援はないのかという声が上がった.

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 「看護のためのシミュレーション教育」は,琉球大の阿部幸恵教授の編集による,シミュレーション教育の解説書です.日本でも海外でも,医療関係職種の教育にシミュレーション教育が急速に普及してきている中,この領域について学ぶ指導者,教育関係者にお薦めの一冊です.

 本書の第一の特長は,収められている内容の幅広さです.医療においてシミュレーションが重要になっている背景はもとより,その教育を理解する際に踏まえておくべき教育や学習に関する理論の概要が,過不足なく紹介されています.また,看護教育だけでなく,医学教育や薬学教育におけるシミュレーション教育についても,それぞれの領域の分担執筆者による解説が載せられていて,領域横断的に俯瞰することが可能な構成になっています.さらには,シナリオを作成する手順や要点,それを用いて演習などを行う際に役立つ教育技法,そしてそのような教育を実現するための環境づくりまで,丁寧に述べられています.最終章には,看護教育で実際にそのまま使える多様なシナリオが8編,掲載されています.

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日本医療・病院管理学会

第323回例会

日時:3月7日(金)13:30~16:30

会場:横浜市技能文化会館 多目的ホール(横浜市中区)

投稿規定

次号予告

基本情報

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病院
73巻3号 (2014年3月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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