病院 73巻4号 (2014年4月)

特集 求められる看護補助者の役割

巻頭言 神野 正博
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 団塊の世代が後期高齢者に突入し,名実ともに超高齢化社会を迎える2025年を前に,国は病床機能の分化の勢いを増す.医療法の改正とともに,この4月からの平成26年度診療報酬改定においてもその流れが色濃く表れている.特に,看護配置で7対1入院基本料を算定している医療機関を「複雑な病態を持つ急性期の患者に対し,高度な医療を提供すべき」という考え方のもとで,特定除外制度の廃止,短期入院手術基本料の見直し,重症度,医療・看護必要度項目の見直し,自宅等退院患者割合の導入などによって,厳格化としようとしている.さらに,看護配置で13対1以上である地域包括ケア病棟は,急性期後の患者ばかりではなく,長期療養病院,介護保険施設や在宅からの(軽度)緊急患者の受け入れ先としての役割を目的に新設されることとなった.

 加えて,高齢化の進展は,少子化と相まって在宅介護力に乏しい独居老人を増加させ,認知症とその予備群といわれるMCI(軽度認知障害)患者等も増加させる.そして,救急や高度急性期医療の現場でも,これら高齢者への対応に多くの病院スタッフは忙殺されるのである.

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 近年,患者の高齢化や在院日数の短縮等によって,急性期病院での医療職の業務が増加し,看護業務および周辺業務も増加している.さらに,看護職にはより高い専門性および幅広い役割が求められるようになっている.そのため,看護職が専門性を要する業務に専念しながら,幅広い役割を担うことを目的に,看護補助者を活用した業務負担軽減と業務効率化が進められている.

 本稿では,看護職と看護補助者が効果的に協働するために必要な考え方や院内の体制整備について述べる.

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■医療の主体は医師からシステムへ

 過去30年に渡って急速に進行した医療技術の革新は医療・看護への期待を高めたが,同時に医療の主体は医師からシステムへと大きく変化した.医療の質においてはシステムとマネジメントの重要性が認識され,患者の視点と安全を保証する仕組みが求められている.これまでの医療の質に対する関心は「他の医師や病院よりも優れたことができること」「治らない病気を治すこと」にあったが,これからは「現在の医学と医療が提供できることを確実に提供すること」,すなわち「確実さという質」を傾注していく必要がある.

 本稿では,こうした「確実さという質」を提供するために,済生会熊本病院(以下,当院)の看護補助者の教育システムを紹介しつつ,看護師と看護補助者との役割分担の変遷を概観する.なお,看護補助者とは,介護福祉士,看護助手,看護クラークを含むが,本稿においては主に前者の2職種について紹介する.

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 診療報酬の看護基準(現在の入院基本料)が創設されて以来,慢性的な看護師不足が続き,厳しい状態が今もなお続いている.看護補助者については,この看護師不足を補う目的として,また,古くは家族や付き添い者による療養上の世話の廃止を目的として期待されるなど,診療報酬上の歴史は長い.

 従来からの診療報酬上の看護補助者の評価は,看護配置比率の比較的小さい入院基本料に限られ,看護師の少ない配置を埋め合わせる目的とも受け取れる診療報酬体系が長く続いていた.しかし,近年においては看護補助者の業務は看護配置比率の小さい病棟の業務だけにとどまらず,実態として急性期病院のような看護配置比率の大きな病棟などにおいて,医療機関全体の業務量が増大している現状を後追いするかのように看護補助者の配置が拡大された.

 本稿では診療報酬における看護補助者の配置や目的などの移り変わりを確認して,今後,診療報酬上で期待される看護補助者の業務内容や可能性を示したい.

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 社会の成熟化と高齢化に伴う傷病構造の変化により医療・介護サービス提供体制のパラダイムシフトが進行している.猪飼1)は「病院の世紀」の終焉を示唆するものとして,治療医学に対する社会的期待の減退,QOL(Quality of Life;生活の質)概念の浸透を挙げている1,2).高齢社会を迎えるなかで,治療医学を主体とした医療供給システムがうまく機能しなくなりつつあり,これは多くの医療者にとっての実感であると思われる.すなわち,「治療医学的な観点からやるべきことは全てやったけど,本当に患者さんのためになったのだろうか」という倫理的葛藤である.こうした環境変化は「cureからcareへ」「治療から療養へ」と表現され,サービス提供体制そのものの構造変化を要求している.また,アメリカでは近年スローメディシンという概念として,パラダイム変換を求める声が大きくなっている3).しかしながら,医療現場は相変わらず「cure」を中心としたサービスの在り方に拘泥し,変化を拒んでいるように見える.

 高齢社会の進展に伴い「看護の時代が来る」と言われて久しい.しかしながら,病院を中心とした医療提供体制の中で,看護はその本来の役割を十分に発揮できていないのではないだろうか.本稿で説明するように高齢化の進行は地域そのものを「病棟化」するよう要求し,そしてそこで質の高い療養生活,具体的には看護診断・看護計画に基づくサービスを必要とする.それは予防的なものであり,看護・介護の総合的なサービス,すなわち看護師と看護補助者(介護職)の協働を要求する

 厚生労働省は地域包括ケアの実現を今後10年間のもっとも重要な政策課題として位置づけていると考えられる.その実現のためには医療ニーズ・介護ニーズの高い高齢者が,できうる限り在宅で生活することを支えるためのサービス提供体制の実現である.しかもそれはQOLが保障されたものでなければならない.中核となるのは看護師と介護士の協働による質の高い在宅サービスの実現である.とりわけ予防的な視点をもった看護管理が重要となる.本稿では筆者のこうした問題意識をもとに,先進的な小規模多機能居宅介護サービスを行っているびんご倶楽部高須(広島県尾道市)などを参照しながら記述してみたい.

看護補助者と職員満足 齋藤 哲哉
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 当院では「ケアアシスタント」と呼称している看護補助者を含めた職員への満足度調査を毎年実施している.看護補助者の満足度は調査結果から理解しているが,詳細に分析して考察したことはなかった.そこで当院の満足度調査を基に看護補助者の満足度を考察する.これまで,満足度調査で目が行きがちであったのは,医師と看護師であった.理由は,需要と供給の関係や,職員数の多さからで,組織に与える影響が大きいためである.しかし,看護補助者など,少数で構成されている職種の職員満足度が低い傾向にあることは調査結果から読み取ることができ,共通の課題があると考えていた.

 課題を探るうえで,人間の行動科学としてダグラス・マグレガー,マネジメントとしてピーター・ドラッカー,モチベーションとしてフレデリック・ハーズバーグ,人間の欲求としてアブラハム・マズローの理論を参考にして,当院のアンケート調査結果データを基に考察したい.

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 2008年度から日本・インドネシア経済連携協定(EPA)の枠組みで外国人看護師・介護福祉士候補生(以下,候補生)の来日が開始された.これまでに両国合わせて累計1,562人が入国しており,今後ベトナムからの候補生の受け入れに向けて,政府部内やベトナム側との間で調整が行われている.日本の人口構成の変化,人口の減少,少子高齢化,またチーム医療と業務分担の視点で看護補助業務,介護業務のニーズがますます高まることが予測される.今後の人材不足は深刻であり,質の高い人材の確保が急務である.永生病院では候補生の受け入れから6年が経過した.候補生受け入れを行っている看護管理者に行ったアンケートをもとに今後の外国人との協働や活用について考えてみたい.

看護補助者の労務管理 福島 通子
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 看護師が本来業務に専念できる環境を作るためには,補助的業務を行う看護補助者の登用が有効である.特に,日常生活に関わる業務(身体の清潔,排泄,食事,安全・安楽,運動・移動等に関する業務など)については看護補助者のニーズが拡大しており,チーム医療としての円滑で効率的な協働という点において,看護補助者は有用な役割を果たしつつある.診療報酬においても,医師や看護師が専門業務に専念できる環境を作るための看護補助者の配置を評価している.こうした中,各部門や職種の協力のもと看護補助者を適正配置し,継続的に研修等で育成していく必要があることを認識している医療機関は増えてきたが,有資格者と比較した場合のその立ち位置をみると,まだまだ労務管理上の課題があると思われる.本稿では,看護師の業務負担軽減のための看護補助者の獲得と育成に資する労務管理の在り方について考察するものとする.

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 わが国が目指す医療・介護機能再編の将来像を示す2025年モデルが始動した気運を感じる.医療の高度化・複雑化などに伴う医療職の業務量の増大が伺える昨今の職場において,今般の改革は時代や国民のニーズに的確に対応するための,また専門職者がその専門性を十分に発揮できるための職場環境づくりに大きな期待がかかる.医療提供者の「チーム形成」による働き方が要であり,看護職にとっての一例が,2010(平成22)年度診療報酬改定において新設された「急性期看護補助体制加算」である.看護業務を補助する看護補助者を医療スタッフの一員とする考えのもとに,急性期医療における看護職と看護補助者が役割を分担し連携・協働することを評価するものであり,看護職の負担を軽減し,ひいては医師と看護職との役割分担の促進の効果や質の向上などが望まれる.

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 当院では,以前から看護助手と称して,看護補助者(以下,補助者)を雇用してきた.だが,それはあくまで看護師の不足を補うことを目的としたものであり,補助者業務の内容や基準などは明確化されていなかった.

 2010年に急性期看護補助体制加算が認められたことを受け,当院でも積極的な補助者の採用を進めた.現在,当院で勤務する補助者は常勤換算で65.5人である.量的にはかなり充足した.だが,良質なケアを提供するという観点から考えると,多数の補助者を雇用することで発生する課題もある.中でも補助者業務の特定や,安全な業務遂行のための教育は重要な課題であった.補助者の活用は,それぞれの医療機関の実情に適応することが前提であるが,1つの事例として,こうした補助者活用上の課題と対策に焦点を当てた,当院の取り組みについて紹介させていただきたい.

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例えば,認知症症状を持つがん患者の終末期を地域でどう支えるか?

高齢化が進むなか,これは日本社会が抱える重要な課題だ.その処方箋の1つが尾道市にあった.開業医の在宅チーム医療と連携した小規模多機能居宅介護施設「びんご倶楽部高須」の先駆的な取り組みを取材した.

連載 アーキテクチャー 第231回

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■精神科病院建築のあり方を探る

 長い間,精神科領域の施設設計に関わってきた.私がこの領域に関わり始めた頃,「精神(分裂)病」は完治しない病気という認識であり,その症状も身体疾病の場合と大きく異なるため,患者の立場に立ち,あるべき治療環境を考えることが難しかった.建築には様々な制約があり,この中で長期にわたって入院する患者の人権のために最低限の生活環境と病院職員の安全を確保することが求められた.しかし,対症療法としての薬物,対人療法が行われている中でも,「環境そのものが治療アイテム」となることは早くから認知されており,それは建築家が精神科病院という「建築」を設計するときの心の拠り所となっていた.多くの制約の中で,いかに豊かな環境の「病棟」を生み出していくかを課題として取り組んできた.

 この原則は今も変わらない.そして今日,抗精神薬の発達と様々な治療法の開発が「精神病」を治る病気に変化させ,他の疾病と同様に早期診断治療の重要性が認識されるようになった.同時に情報過多で複雑な少子高齢化社会が新たな精神疾患を顕在化させ,否応無く精神科は身近な診療科となった.このような背景の中で,精神科病院は地域の中で大切な役割を持つコミュニティへと変化し,「治療アイテム」としての機能を様々な視点から追及することが求められるようになった.それは,同時に人間と社会,そして空間(建築)の関係をあらためて追及することであると理解し,私たちは精神科病院建築のあり方に取り組んでいる.

連載 世界病院史探訪・13

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 ミュンヘンの北100キロの位置にある古都,人口13万人のレーゲンスブルク(Regensburg)は,2006年に旧市街一帯が世界遺産に指定された.旧市街の北側にはドナウ川が流れ,1146年に完成し,1877年に現在の幅に拡張された石の橋(Steinerne Brucke)が架かる.石の橋の対岸にカタリネンシュピタール(Katharinenspital)があるが,この施設も世界遺産の一部である.

 このシュピタールは,レーゲンスブルクのブルガー・シュピタール(市民病院)として,コンラート(Konrad)Ⅳ世司教によって,1212年に創設された.100人の貧乏な病人を収容し,当時この地方最大のシュピタールであった.1430年に増築され,1809年に部分的に破壊された後に,復興された.なお1663年から1806年まで,神聖ローマ帝国の帝国議会はレーゲンスブルクに置かれていた.

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 前回は論文の設計図であるアウトラインを作成しました.今回からこのアウトラインに従って実際の論文を書いていきます.前半はイントロダクションに相当する「目的」,論文の方法論を説明する「データおよび分析方法」,そして「結果」です.福留さんの書いた論文を松田,藤野,久保が中心となって批判的に読み,そして訂正していく過程を読者の皆さんにも追体験していただきます.

連載 病院のお悩み相談室・4

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 第4回となる今回は,地域連携編ということで集患についての取り組み,紹介・逆紹介,救急搬送についての質問を取り上げます.病院機能,規模,地域など,それぞれの病院で求められる対応は様々ですが,集患に向けた機能別の連携のあり方や,救急患者の増加に向けた取り組みについて,ご紹介したいと思います.

連載 リレーエッセイ 医療の現場から

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 私は,病院付属の研究所の薬剤師研究員で,主に薬局における糖尿病療養支援について研究している.私の研究は,本誌読者にとっては,あまり関係がない分野だと思われるので,私のもう一つの活動である「スタッフのための糖尿病教室」について紹介する.

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 病院には,信頼できる医療情報の提供と機密保持という,情報を公開しながらも大切な情報はしっかり守る責任がある.信頼できる医療情報とは,虚偽のない診療情報や誇大表現のない病院紹介など,患者や国民に対して誠実でなければならない.また,医師をはじめ看護師,コメディカルなど国家資格のある職種ではそれぞれ法律に定められた守秘義務があり,その上で個人情報保護のルールがどこの医療機関にも存在することだろう.患者の個人情報を守ることは職業倫理的にも当たり前のことだが,例えばホームページに医師の顔写真を掲載するかしないかなど,職員の個人情報公開についても各病院で慎重になっている.情報の何を守り,何を出すのか,病院には「情報の取り扱い」に関して高い意識が求められている.

 本稿では,当院における広報機能の見直し,病院広報におけるソーシャルメディアポリシーと広報活動ガイドラインを策定した経緯およびその活動について紹介する.

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日本医療・病院管理学会

第324回 例会

日時:4月17日(木)16:00~18:00

会場:筑波大学附属病院けやき棟1階(茨城県つくば市)

著作財産権譲渡同意書

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 もともと経済学徒である著者は,経済学を学ぶ上での基本視座は理論,政策,歴史にあるという.この視点で「医療」を振り返るとき欠落していたのが病院の歴史だ.『日本病院史』は,このような著者の問題意識から執筆された.これまで断片的な知識として存在していた我が国の病院の歴史を,時間軸にそって整理して「通史」という体系にまとめた力作だ.本書を通読すると近代日本の病院の歴史の大きなうねりを体感することができる.

 さて我が国が近代システムとしての病院を導入したのは長崎の出島である.それ以来,現在に至るまで我が国の病院の歴史はたかだか150年である.パリのオテルデューが1350年以上の歴史を有するのに対して病院後発国,日本の病院の歴史はいかにも短い.しかしその150年は世界的に病院システムが最盛期を迎え,「病院の世紀」といわれた20世紀の真っただ中に位置している.

投稿規定

次号予告

基本情報

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病院
73巻4号 (2014年4月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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