連載 ケースレポート
地域医療構想と病院・66
飯塚病院・頴田病院 病院総合医・家庭医の育成
松田 晋哉
1,2
1福岡国際医療福祉大学 看護学部
2福岡国際医療福祉大学 ヘルスサービスリサーチセンター
pp.640-645
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523770840080640
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■はじめに
社会の高齢化は医療介護の複合ニーズを持った高齢患者の増加を意味する.例えば,股関節骨折で入院した85歳の女性患者の場合,整形外科で股関節置換術を成功裏に行ったとしても,糖尿病や慢性心不全,高血圧,認知症などの併存症に加えて,続発症としての肺炎などへの対応が求められることが少なくない.これらの傷病に適切に対応しなければ,入院期間の延長やあるいは再入院のリスクが高くなる.しかし,この患者の持つ複数の傷病に対して,各科の専門医が入院中に対応することは実際的ではないだろう.総合的なニーズには総合的な対応力のある医療職がその診療に当たることが合理的である.その総合的な医療職の中心となるのが,総合診療医やそのような研修を受けた特定看護師である.すでに先進的な急性期病院では,病院総合医が上記のような複雑なニーズを持った高齢患者の診療に当たっており,大きな成果を上げている1).
総合医に対するニーズが高まっているにもかかわらず,大学病院において,その育成を積極的に行っているところは少ない.医育機関である大学医学部の医師育成の方針が,総体として地域医療のニーズに必ずしも合っていない現状を,大学関係者は認識する必要があると考える.この連載では,カナダ・ケベック州にあるMcGill大学における家庭医の養成課程についてすでに紹介した2).McGill大学では卒業生の40%が家庭医の養成課程に進み,プライマリ・ケアのみならず,急性期病院においても活躍していた.
本稿では,日本における総合診療医・家庭医の育成に関する先進的医療機関である飯塚病院3)と頴田病院4)の取り組みについて紹介する.

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.