生体の科学 71巻3号 (2020年6月)

特集 スポーツ科学—2020オリンピック・パラリンピックによせて

特集によせて 深代 千之
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 スポーツの競技レベルは,オリンピック・パラリンピックあるいは各種目の世界選手権ごとに飛躍的に向上してきている。これはイベントに向けた各競技の選手とコーチの努力・工夫によるところが大きいが,近年では,スポーツ科学のサポートが大きく貢献してきている。選手とコーチへの科学サポートは,戦術,体力,動作,心理,栄養,調整など多岐にわたるが,サポート拠点として,従前の各大学に加えて,国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)が設置されたことが大きい。2001年に開所されたJISSは,「スポーツ振興基本計画」の政策目標を達成するため,スポーツ競技団体・スポーツ研究機関などと連携して,研究の推進・トップレベルの競技者およびチームの国際競技力向上への支援を行う機関である。

 筆者自身,JISSの設立前に,スポーツ科学で選手とコーチをサポートする(財)スポーツ医・科学研究所に奉職して,JISSの原型(通称:スポーツ・ドック,1988〜)を創ったことがある。スポーツ・ドックは,各スポーツ種目に共通する体力と個別体力のスクリーニングテストを土台とし,動作解析を基にしたバイオメカニクスチェックや栄養アドバイスなどを加えた。診療所も併設していたため,スポーツ医学による障害予防や障害後のリハビリテーションも含んでいた。このスポーツ・ドックを運営するにあたり,出力データの詳細な説明と共に「どのような練習やトレーニングを行ったらよいか」という具体的なアドバイスが必要であった。スポーツ競技の向上は,データなどの形式知だけではなく技術習得時にみられる暗黙知のようなことも含まれるため,総合的なアドバイスが必要だったのである。

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 日本陸上競技連盟(陸連)では,1991年東京の世界陸上競技選手権大会以降,国内外で開催されてきた主要な国際大会や日本選手権,国体などでバイオメカニクスデータを収集し,報告している1)。これは,トップアスリートが競い合う大会でのデータは,競技力向上のための貴重な資料となるということで行われてきている2)。なかでも100mは10秒ほどのスピードを競う競技である。この短時間にどのようなことが起こっているのかを客観的に知ることは,技術の向上,トレーニングやレースの戦略構築のように競技力向上へ直接的に資するものだけではなく,観戦する場合にも興味深いものとなるであろう。また,100mの選手は4×100mリレーにも出場することが多いため,リレーについても同様のことがいえるであろう。そこで,本稿では,これまでの陸連科学委員会活動から,2020年東京五輪で躍進が期待されている男子100mレース分析と4×100mリレーチームへのサポート活動を幾つか紹介していくことにする。

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Ⅰ.高地トレーニングによる効果のメカニズム

 空気の薄い高所(低圧低酸素環境)でトレーニングをすると,大気中の酸素分圧が低くなり,体内の酸素の取り込みが減る。そのため,身体はそれに適応しようとエリスロポエチンという骨髄における赤血球生産を促進するホルモン増加によって,赤血球やヘモグロビン,血液量などを増やそうと代償的反応が生じ,ヘモグロビンやヘマトクリットを増加させる。その結果,主として血液学的メカニズムによって最大酸素摂取量やランニングパフォーマンスを改善させることが可能であると報告されている1)。また,ヘモグロビンと酸素の親和力を調整する赤血球2,3-DPGも増え,ヘモグロビンから筋組織などへ多くの酸素を供給することができるようになる。更に毛細血管の発達,ミオグロビン濃度の増加,ミトコンドリアにおける酸化系酵素活性の増加およびミトコンドリア量の増加がもたらされ,非血液学的メカニズムによって酸素利用効率が高まることもトレーニング効果として挙げられている1,2)。高い持久的競技者においてもhypoxia-inducible factor1αやGLUT-4などのmRNA濃度が増加することも筋生検の結果から報告されており3),末梢における機能改善の面からも有酸素パフォーマンスを向上させることが明らかとなっている。低酸素環境下で行う高強度間欠的トレーニングによって,筋細胞内から細胞外への乳酸輸送を担うモノカルボン酸輸送担体4(MCT4)が有意に増加したことから,解糖系によるエネルギー産生に関連する無酸素性能力や乳酸代謝能の改善に有効であることも報告されている4)。したがって,高地トレーニングは持久系の競技だけでなく,球技系や様々な競技で有効であるといえる。

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 各国のアスリートが高所トレーニングに取り組み始めたのは,1回目の東京五輪が行われた1960年代前半のことである。当時の日本では,朝比奈(東邦大学)と猪飼(東京大学)がプロジェクトリーダーとなり,科学的なサポートが展開された。ちなみに日本のスポーツに科学が本格的に導入されたのも,これがきっかけであった。以来,高所トレーニングについて膨大な実践や研究が行われてきたが,海外の動向はWilber1),国内のそれは浅野と小林2)が編纂した成書で概観できる。

 低酸素環境下で行うトレーニングを総称して高所トレーニングと呼んでいるが,2種類の形態がある。自然の高地を利用する高地トレーニングと,低酸素室あるいは低酸素吸入器など人工的な手段を用いる低酸素トレーニングである。本稿では後者を中心に紹介する。なお筆者ら3-6)は20年間にわたり,アスリート向けの低酸素トレーニングについて実践と研究を行ってきたので,その知見についても紹介する。

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 競泳は,水泳のオリンピック競技(競泳,飛込,水球,アーティスティックスイミング,マラソンスイミング)の一つであり,一定の距離を定められた泳法で泳ぎ,そのタイムを競う競技である。競技会の種目としては,自由形,背泳ぎ,平泳ぎ,バタフライの4泳法と,この4泳法を順番に泳ぐ個人メドレーがある。また,最も短い50mから最も長い1,500mまでの複数の距離の種目がある。水泳は,パラリンピックの競技としても行われており,健常者のFINA(国際水泳連盟,Fédération Internationale de Natation)ルールに準拠したWPS(世界パラ水泳連盟,World Para Swimming)ルールが適用される。障がい者水泳では,多様な障がいがパフォーマンスに及ぼす影響を最小限にするため,障がいの種類(身体機能障がい,視覚障がい,知的障がい)とその程度によって決められる幾つかのクラスに分かれて競技が実施されている。

 競泳のパフォーマンスは,生理学的,バイオメカニクス的,心理学的な要因によって決定される。競技において成功するためには,トレーニングによってこれらを競技に最適な形に高めていかなければならない。これまで,競泳の各種パフォーマンスに関する研究は数多く行われている。更に,選手のパフォーマンス向上を目的とした競技現場におけるスポーツ科学的な支援が世界各国で行われている。日本でも,オリンピックやパラリンピックでの選手の活躍を後押しするべく,年間を通して競技現場でスポーツ科学的な支援を実施する体制がとられている。本稿では,競泳の競技現場で行われているパフォーマンス評価方法を紹介すると共に,競泳のパフォーマンスに関連するバイオメカニクス的研究の動向について概説する。

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 足部(foot)によってボール(ball)をゴールに蹴り込むことによって得点する競技を文字通り“football”と呼び,その仲間を“football code”と称する。この仲間は意外に多く,サッカー,ラグビーなどお馴染みの競技もあれば,スクラムのないラグビーであるラグビー・リーグ,オーストラリアではトップスポーツであるオーストラリアン・フットボール,アイルランドで主に行われているゲーリック・フットボールなど一部地域ではメジャーだが,世界的な知名度には“?”がつくものもある。ちなみに,キックによる得点が極めて限られているアメリカン・フットボールもこの仲間となっている。

 数あるfootball codeのなかでサッカーが最もメジャーな競技であることに異論はないだろう。とりわけサッカーでは,他のfootball codeでは許されている手の使用が(GK以外は)厳しく制限されているため,ゲーム中に生じるほとんどのアクションはキックを介したものとなる。つまり,サッカーはキックへの依存度が最大限に高められたfootball codeであるということができる。本稿ではサッカーキック動作にまつわる“神話”と“科学的事実”についてバイオメカニクス的な観点からその真偽について考えてみたい。

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 元世界チャンピオンであり,国際卓球連盟会長も務めた“ピンポン外交”でも著名な荻村伊智朗氏は,卓球を「100mを走りながらチェスをするようなもの」と表現したとされる。実際に,トップ選手の練習や試合,研究データをみると,卓球選手が有している技術や体力,そしてプレーをしながら次の展開を予測し,戦略を練る能力には驚かされる。そのためわれわれ科学者が,目の前の,既に高いパフォーマンスを発揮しているトップ選手の課題を見つけ,解決のための取り組みを提案することは容易ではない。卓球だけでなく多くのスポーツにも当てはまるであろうが,パフォーマンスに影響する要因が多数存在するなかで,現状の課題を見つけ,その課題に対する適切な解決策を見いだしていかなければならないからである。ここでは,国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)が日本卓球協会のスタッフと協力しながら,競技現場のコーチやスタッフらと議論するなかで,パフォーマンス向上における課題の一つであると定義した内容に関して,研究や開発を行ってきた例を紹介していく。“Ⅰ.”ではトップ選手のボールの威力について検証した例を,“Ⅱ.”では威力のある打球を可能にするための体力や技術について,“Ⅲ.”では戦術を立てるうえで実施される試合分析を効率的に行うために実施した研究開発の例を紹介する。

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 昨今のバドミントン日本代表の活躍は目覚ましい。それもひとえに,選手,コーチ,スタッフの努力の賜物である。また,日本バドミントン協会は,国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)の科学的支援を効果的に利用できている競技団体の一つであり,そのような取り組みも好成績につながっているように感じる。JISSが提供するバドミントンへの科学的支援は,シニア世代のみならず,U-19やU-16などのジュニア世代まで展開されており,東京オリンピック以降を見据えた強化も始まっている。本稿では,東京オリンピックへ向けたシニア世代への科学的支援の実際とシニアとジュニアのデータの比較から見えた東京オリンピック以降の課題について概説する。

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 2020年東京オリンピックを間近に控え,競技スポーツへの関心が日に日に高まっている。日本はこれまで,特に柔道やレスリングなどの格闘技系種目が多数のメダルを獲得しており,2020年東京オリンピックでは更に多くのメダル獲得が期待されている。今回初めて採用される日本発祥の競技である空手も,複数メダルの獲得が期待されている。格闘技では多くの種目が体重階級制を採用しており,身体的特性が公平になるように配慮されているが,同一階級でも少しでも相手より優位に立とうと体脂肪量を極限まで減らして筋量を増やし,体力要素を充実させる。また,計量時間,試合時間に合わせて過酷な減量および計量後の増量を試みる者も多い。

 このように卓越性を追求し続けている世界においては,人間の可能性を少しでも広げるために医・科学的な情報を用いた分析が多くなされてきた。本稿では,第1回の1896年アテネオリンピックより採用されているレスリングと,第32回の2020年東京オリンピックより新たに採用される空手について,競技力向上に資する医・科学的知見を紹介する。

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 競技レベルの向上には,普段のトレーニングから評価することが必要である。本稿では,モーションセンサーと走行用義足の特性を利用して,走行パフォーマンスの向上に重要とされる床反力鉛直方向成分の推定法について提案したものである。本手法は,無拘束に全走行過程を対象に評価することが可能であり,走行フォームの評価や義足パーツの選定と設定,走者へのフィードバックの一指標となることが期待される。

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 日本では,1960年に鈴木慎次郎先生を中心に「スポーツ栄養に関する研究」のタイトルで国立栄養研究所研究報告がなされている。その後,約20年間は,“スポーツ栄養”が多く使われることはなく,1980年代に“スポーツ栄養”がタイトルに含まれる書籍が発刊されるようになった。このころから“スポーツ栄養”という言葉が一般的に使われるようになったと考える。

 日本において競技力向上のためにスポーツ栄養学が活用され始めた時期は,1990年代からである。当初,スポーツ栄養の活用は,特定の栄養素を多く摂取することとして受け止められ,サプリメントの摂取を中心に導入された。スポーツ現場から食事を考えずにサプリメントの摂取だけで競技力向上につながるのかとの疑問の声が上がり,スポーツ栄養に興味を持つ管理栄養士が2004年に日本スポーツ栄養研究会(現 特定非営利活動法人日本スポーツ栄養学会)を立ち上げ,スポーツ栄養に関する情報を発信すると共に,全国的な研修会や会議を重ね,スポーツ栄養に特化した専門性の高い管理栄養士を養成するための公認スポーツ栄養士の認定制度の創設を行った。公認スポーツ栄養士の認定制度の確立が,スポーツ現場における栄養サポートの充実の始まりと考えることができる。

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 睡眠は,心身両面の休息・回復のほか,意欲,気分,集中力,判断力,記憶力など高次機能を保つために重要な役割をしているといわれる1)。アスリートにおいてもそれは同様であり,夜間睡眠の制限・断眠がスポーツパフォーマンスに悪影響2-5)を,夜間睡眠の延長が好影響6)を及ぼすこと,午後の仮眠が夕刻のパフォーマンスに好影響を及ぼすこと7-9)などが報告されている。また,ふだん8時間の夜間睡眠をとっている人が5時間睡眠を1週間続けたところ,成長ホルモンの分泌量(1日あたり)が減少したという報告10)もあり,レジスタンストレーニングの効果に影響を及ぼす可能性もある。

 近年,コンディショニングの一環として,睡眠に心を配るアスリートが増えつつある。睡眠は,質,時間,リズム(スケジュール)の点から評価されるが,忘れてはならないのは,「日中に眠気がなく,状態よく活動できるか」という視点である。そして睡眠の状態がよくないと評価された場合,睡眠障害のようにドクターに相談すべき状態と,睡眠衛生のように相談相手がかならずしもドクターでなくてもよい状態のどちらかを判断し,対処することとなる。

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 国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)は,“トップアスリートの国際競技力向上のための研究とサポートを行う機関”として,2001年10月に開所した。JISSは開所以来,冬季オリンピック5回(2002年ソルトレイクシティ,2006年トリノ,2010年バンクーバー,2014年ソチ,2018年平昌),夏季オリンピック4回(2004年アテネ,2008年北京,2012年ロンドン,2016年リオデジャネイロ)を迎え,現在は2020年東京大会に向かっている。JISSはこれまで,スポーツ医学・科学・情報の研究とサポートを行い,トップアスリートの国際競技力の向上に貢献している。筆者が所属するJISS・心理グループも,競技力向上のための研究とサポートを日々活発に行っている。本稿では,最初に“トップアスリートのこころ”について述べ,その後JISSの心理サポート,そして筆者らが行った2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けての研究,そしてその後の支援について述べる。

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 1990年代において女性アスリートの競技成績は大きく向上し,レースタイムを競う種目においていずれ女性が男性の記録を追い抜く可能性もあることが示唆されたが1),2000年代に入り,エリートアスリートにおける競技成績の男女差は8-12%で安定している2)。一方で,女性アスリートの競技参加は増加傾向にあり,夏季オリンピック参加率はリオデジャネイロ2016オリンピックにおいて過去最高の46%(図1)3),パラリンピックにおいても39%まで増加している。こうした女性の競技参加の増加に加え,トレーニングの高度化にも伴い女性アスリート固有の健康上の問題が発生している。先行研究をみても男性に比べ女性を対象とした研究は39%と少ない状況にあり4),運動トレーニングに対する生理学的応答など男性に比べて明らかになっていない部分も多いが,男性と女性のからだの機能の違いを考慮した女性アスリートのためのコンディショニングやサポートの必要性が高まっている。

 そこで本稿では,女性アスリートに多くみられる健康上の問題やその対策方法ならびにサポート体制の現状について概説する。

アンチ・ドーピング 渡部 厚一
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 2014年末に端を発するロシアの国家的ドーピングスキャンダルは,社会的問題として全世界で認知され,ドーピングはスポーツを知らない人にも知れ渡るようになった。本稿では,スポーツにおけるドーピングの現状と,これに向けたアンチ・ドーピングの取り組みについて歴史も振り返りながら紹介する。

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 TOKYO2020オリンピック・パラリンピック大会に向けて,スポーツ医学の重要性が注目されてきている。オリンピック・パラリンピック大会では,選手村内に総合診療所(ポリクリニック)が設置され,内科,整形外科,歯科,眼科,皮膚科,理学療法部門などの診療部科での医療サービスを準備することとなる。2012年のロンドン大会では,ポリクリニックを受診した選手やスタッフの約半数が整形外科関連の外傷や障害を理由としており,スポーツ整形外科については重要であることは論を俟たない。

 スポーツ整形外科の対象は,競技スポーツから健康スポーツまで幅広い。今回TOKYO2020オリンピック・パラリンピック大会によせて,特に競技スポーツにおけるスポーツ整形外科とその最近の動向について,本稿では幾つかのトピックスを紹介する。

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 2020東京オリンピック・パラリンピックが目前に迫ってきた。パラリンピックは8月25日から9月6日の日程で開催され,22競技が行われる。今大会は,史上最悪の暑熱環境になると予想されており,出場選手は暑熱対策に余念がない。和歌山県立医科大学げんき開発研究所のスタッフは,パラ陸上競技選手に対し,暑熱対策および映像や体力測定のサポートを行ってきた。本稿ではパラ陸上競技での取り組みについて紹介する。

(編集部註:新型コロナウイルスの影響により,2020東京オリンピック・パラリンピックは約1年間の延期が決定されました。)

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 1964年,東京で「世界スポーツ科学会議」が開催された。この会議は,最初期の国際規模での体育・スポーツ科学の学術会議であり,ドーピングに関する国際レベルの議論が行われたことでも知られている。開催の中心的役割を果たしたのは,日本体育学会と日本体力医学会であった。以来,4年に一度,夏季オリンピック開催国内で,体育・スポーツにかかわる科学者による大規模な対話の機会が設けられるようになった。

 2020東京大会開催にあわせ,この流れを汲む国際会議が半世紀ぶりに横浜で開催されることになった。国内では,1964年時の日本体育学会・日本体力医学会に加え,日本学術会議健康・生活科学委員会健康・スポーツ科学分科会および日本スポーツ体育健康科学学術連合の加盟学会など,実に40を超える体育・スポーツ関連学会が参画し,準備が進められている。体育・スポーツ科学の進展に伴い関連学会が細分化するなか,国内の学会が一体となって国際会議を開催するのは,初めての事例だと考えられる。

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目次

書評 濱岸 利夫

次号予告/財団だより

あとがき 松田 道行
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 「日本はフェアではない。」妙に記憶に残っている恩師の言葉です。長らくRockefeller大学の教授を務めた恩師が,研究費の配分か何かの折にこぼされた愚痴だったように記憶しています。当時,私は日本の不公正を恥じました。しかし,最近思うのは,この「フェア」という単語を「公正」と訳すのは間違いではないかということです。日本人の思う「公正」とは己の正義感に対して恥じることがないという感覚ですが,米国人の「フェア」はルールを順守するというニュアンスです。裏を返せば,ルール内であれば何でもあり,ルールが変わればフェアの中身も変わるということです。本特集で扱うトップアスリートが繰り広げるスポーツの世界はその最たるものでしょう。ルール内での最高のパフォーマンスを出すために最新の医学生理学の知見や先端工学技術を動員したぎりぎりの熾烈な競争が行われています。常人ではありえないパフォーマンスを出す状態は壊れる直前ともいえ,肉体のみならず栄養や心理面でのきめ細かいサポートも必要です。一方,ルールが守られているかの監視は,ルール自体の変更もあり,選手には相当の負担になっています。楽しく見ている一般人には想像もできない世界だと痛感しました。残念なことにオリンピックが延期になり,執筆者の皆様は予想していなかった様々な困難に立ち向かわなかればいけないと思いますが,ぜひ,気を取り直して頑張っていただきたいと応援する次第です。

 末筆になりましたが,ご多忙中のところを編集いただいた深代先生ならびにご寄稿いただいた諸先生方に改めてお礼申し上げます。

基本情報

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生体の科学
71巻3号 (2020年6月)
電子版ISSN:1883-5503 印刷版ISSN:0370-9531 金原一郎記念医学医療振興財団

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