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スポーツの競技レベルは,オリンピック・パラリンピックあるいは各種目の世界選手権ごとに飛躍的に向上してきている。これはイベントに向けた各競技の選手とコーチの努力・工夫によるところが大きいが,近年では,スポーツ科学のサポートが大きく貢献してきている。選手とコーチへの科学サポートは,戦術,体力,動作,心理,栄養,調整など多岐にわたるが,サポート拠点として,従前の各大学に加えて,国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)が設置されたことが大きい。2001年に開所されたJISSは,「スポーツ振興基本計画」の政策目標を達成するため,スポーツ競技団体・スポーツ研究機関などと連携して,研究の推進・トップレベルの競技者およびチームの国際競技力向上への支援を行う機関である。
筆者自身,JISSの設立前に,スポーツ科学で選手とコーチをサポートする(財)スポーツ医・科学研究所に奉職して,JISSの原型(通称:スポーツ・ドック,1988〜)を創ったことがある。スポーツ・ドックは,各スポーツ種目に共通する体力と個別体力のスクリーニングテストを土台とし,動作解析を基にしたバイオメカニクスチェックや栄養アドバイスなどを加えた。診療所も併設していたため,スポーツ医学による障害予防や障害後のリハビリテーションも含んでいた。このスポーツ・ドックを運営するにあたり,出力データの詳細な説明と共に「どのような練習やトレーニングを行ったらよいか」という具体的なアドバイスが必要であった。スポーツ競技の向上は,データなどの形式知だけではなく技術習得時にみられる暗黙知のようなことも含まれるため,総合的なアドバイスが必要だったのである。
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