--------------------
あとがき
松田 道行
pp.278
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201173
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
「日本はフェアではない。」妙に記憶に残っている恩師の言葉です。長らくRockefeller大学の教授を務めた恩師が,研究費の配分か何かの折にこぼされた愚痴だったように記憶しています。当時,私は日本の不公正を恥じました。しかし,最近思うのは,この「フェア」という単語を「公正」と訳すのは間違いではないかということです。日本人の思う「公正」とは己の正義感に対して恥じることがないという感覚ですが,米国人の「フェア」はルールを順守するというニュアンスです。裏を返せば,ルール内であれば何でもあり,ルールが変わればフェアの中身も変わるということです。本特集で扱うトップアスリートが繰り広げるスポーツの世界はその最たるものでしょう。ルール内での最高のパフォーマンスを出すために最新の医学生理学の知見や先端工学技術を動員したぎりぎりの熾烈な競争が行われています。常人ではありえないパフォーマンスを出す状態は壊れる直前ともいえ,肉体のみならず栄養や心理面でのきめ細かいサポートも必要です。一方,ルールが守られているかの監視は,ルール自体の変更もあり,選手には相当の負担になっています。楽しく見ている一般人には想像もできない世界だと痛感しました。残念なことにオリンピックが延期になり,執筆者の皆様は予想していなかった様々な困難に立ち向かわなかればいけないと思いますが,ぜひ,気を取り直して頑張っていただきたいと応援する次第です。
末筆になりましたが,ご多忙中のところを編集いただいた深代先生ならびにご寄稿いただいた諸先生方に改めてお礼申し上げます。
Copyright © 2020, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.