Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.高地トレーニングによる効果のメカニズム
空気の薄い高所(低圧低酸素環境)でトレーニングをすると,大気中の酸素分圧が低くなり,体内の酸素の取り込みが減る。そのため,身体はそれに適応しようとエリスロポエチンという骨髄における赤血球生産を促進するホルモン増加によって,赤血球やヘモグロビン,血液量などを増やそうと代償的反応が生じ,ヘモグロビンやヘマトクリットを増加させる。その結果,主として血液学的メカニズムによって最大酸素摂取量やランニングパフォーマンスを改善させることが可能であると報告されている1)。また,ヘモグロビンと酸素の親和力を調整する赤血球2,3-DPGも増え,ヘモグロビンから筋組織などへ多くの酸素を供給することができるようになる。更に毛細血管の発達,ミオグロビン濃度の増加,ミトコンドリアにおける酸化系酵素活性の増加およびミトコンドリア量の増加がもたらされ,非血液学的メカニズムによって酸素利用効率が高まることもトレーニング効果として挙げられている1,2)。高い持久的競技者においてもhypoxia-inducible factor1αやGLUT-4などのmRNA濃度が増加することも筋生検の結果から報告されており3),末梢における機能改善の面からも有酸素パフォーマンスを向上させることが明らかとなっている。低酸素環境下で行う高強度間欠的トレーニングによって,筋細胞内から細胞外への乳酸輸送を担うモノカルボン酸輸送担体4(MCT4)が有意に増加したことから,解糖系によるエネルギー産生に関連する無酸素性能力や乳酸代謝能の改善に有効であることも報告されている4)。したがって,高地トレーニングは持久系の競技だけでなく,球技系や様々な競技で有効であるといえる。
Copyright © 2020, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.