臨床眼科 73巻3号 (2019年3月)

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要約 目的:新しく開発された高い含水率の疎水性アクリル眼内レンズ(IOL)の術後長期の表面散乱を前向きに評価した。

対象と方法:対象は片眼に高含水率IOL(SY60WF,Alcon)を,僚眼には従来のSN60WF(Alcon)を挿入し,術後1〜5年の経過観察が可能であった11例であり,術時年齢は平均71.7歳(範囲66〜82歳)であった。術後1年,5年時に,散瞳後のScheimpflug像を撮影し,IOL前面の中心部3mm径の表面散乱をデンシトメトリ解析した。IOL間での差および,各IOLにおける経年変化を評価した。また,術後5年時の矯正視力と,明所と暗所のコントラスト感度についても群間比較した。

結果:両IOLの表面散乱は経年的に有意に増加したが,術後5年のSY60WFにおける表面散乱はSN60WFより有意に低かった(p<0.05,ウィルコクソンの符号付き順位検定)。術後5年時の矯正視力,明所および暗所でのコントラスト感度には,IOL間で有意な差はなかった(p>0.11)。

結論:含水率を高くした疎水性アクリルIOLでは,術後5年まで表面散乱の増加が抑制されていると考えられた。

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要約 目的:他の眼疾患治療中に,眼科で頭蓋内疾患を発見された2例を経験したので報告する。

症例:症例1は10歳,男児。3歳時より不同視弱視で通院中であり,眼鏡装用により両眼とも矯正視力(1.2)で推移していた。受診時に左視力(0.9)と低下しており,眼底検査を行ったところ,両眼うっ血乳頭を認めた。頭部画像検査で脳室拡大を認め,水頭症の診断となった。脳神経外科で内視鏡下第三脳室開窓術を行い,視力(1.5)まで回復した。症例2は44歳,男性。右網膜静脈分枝閉塞症で紹介され,初診時視力は右(0.3),左(1.2)であった。右眼黄斑浮腫に対し抗血管内皮増殖因子薬治療を開始し,数回の再発を繰り返しながら浮腫は改善したが,視力は右(0.05)と不良であった。視野検査を施行したところ,視野欠損を認め,頭部画像検査にて下垂体腫瘍を認めた。機能性腫瘍であり,内服治療で視力(1.2)まで回復した。

結論:眼科治療中に原疾患では説明できない視力低下をきたした場合には,頭蓋内疾患など他の原因検索を積極的に行う必要があると考えられた。

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要約 目的:RDH12遺伝子変異による網膜色素変性症の1例を経験したので報告する。

症例:43歳,女性。両親は近親婚ではない。自覚症状はなく,25歳時にコンタクトレンズの検診で眼底の異常を偶然指摘された。当院初診時の視力は右(1.2),左(1.0)で,両眼底に黄斑部の萎縮巣と周辺部網膜の色素沈着を認めた。視野検査では,黄斑を回避した中心暗点を認めた。網膜電図(ERG)は軽度な振幅低下を示すのみであったが,多局所ERGでは中心部の振幅が著明に低下していた。ターゲットシークエンス解析による遺伝子検査を施行し,RDH12遺伝子に複合ヘテロ接合性変異(c.52delG/c.59C>T)を検出した。43歳時の視力は右(0.1),左(0.7)へ低下し,中心暗点の拡大がみられ,ERGの振幅はさらに減弱した。

結論:RDH12遺伝子変異による網膜ジストロフィは比較的稀で,本邦における報告は少ない。本症例における眼底所見は,既報のRDH12遺伝子変異による網膜ジストロフィのものと類似していたが,視機能は比較的良好であった。

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要約 目的:成人眼科検診で実施した5項目の検査につき,それぞれで信頼度が高い結果が得られた頻度を報告する。

対象と方法:成人眼科検診をさど眼科で受けた173例346眼を対象とした。男性50例,女性123例で,年齢は40〜74歳,平均61歳であった。無散瞳倒像眼底検査,無散瞳眼底撮影,光干渉断層計(OCT)による網膜神経線維層(RNFL)の厚さの測定,OCTによる網膜神経節細胞群(GCC)の解析と黄斑断面の撮影,ハンフリーの装置(HFA)による視野解析の5項目の検査が各症例で行われた。倒像眼底検査と眼底写真の撮影は眼科医が行い,他の3項目は視能訓練士が行った。

結果:検査結果の判定可能割合は,倒像眼底検査が最も高く,GCC,RNFL,眼底写真,HFAがこれに続いた。眼底撮影については,約11%で判定不能であった。

結論:これからの成人眼科検診では,検査の判定ができる頻度を考慮し,感度と特異度を確認したうえで検査項目を選ぶべきである。

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要約 目的:市販のカメラを利用して鼻内視鏡検査を行えるかを検討した。

対象と方法:鼻内視鏡からの出力部分に市販のカメラを使用して鼻内視鏡検査を行った。使用したカメラは,ビデオカメラ,Wi-Fi接続カメラ,ミラーレスカメラである。

結果:いずれのカメラも使用は可能であった。Wi-Fi接続カメラではモニターを動かすことができるので,観察できるところにモニターを置くことが可能であったが,画像表示までタイムラグが生じた。ミラーレスカメラは手元にモニターがあるので,観察と鼻内作業が可能であった。

結論:ミラーレスカメラは安価かつカメラモニターが手元にあり,従来の鼻内視鏡とほぼ変わりない操作が行えた。光源コード1本のみの接続なので取り扱いしやすかった。

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要約 目的:好酸球性多発性血管炎性肉芽腫症(EGPA)に大きな眼瞼結膜腫瘤を合併し,手術を施行した1例の報告。

症例:44歳,男性。他施設で40歳時にEGPAと診断され,ステロイド剤と免疫抑制薬の治療を継続中であった。喘息,血清好酸球増加,発熱,紫斑,鼻炎・中耳炎,心囊液,ステロイド性糖尿病の既往がある。他施設で両眼の眼瞼結膜乳頭増殖病変の切除術も受けていた。当院初診時,右上眼瞼瞼結膜に13mm×10mm×4mmの大きな結膜腫瘤を認めた。薬物治療では改善しないため,外科的治療を行った。病理組織診断で悪性の所見はなかった。手術後,13か月間再発していない。

結論:薬物療法では改善しないEGPAの眼瞼結膜腫瘤は,外科的治療が短期的に有効であった。EGPAは慢性の疾患であり,結膜病変の再発する可能性を念頭に置き,注意深い経過観察は必要であると考えた。

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要約 目的:松山赤十字病院眼科で摘出した外傷性眼窩内異物の報告。

対象と方法:対象は2018年10月までの178か月で松山赤十字病院眼科において眼窩内異物に対して摘出手術を行った7例である。受傷年齢,異物の種類,異物先端の到達部位,感染の有無および視力予後について検討した。

結果:年齢分布は3歳以下と58〜67歳の2相性を示した。異物の種類は金属2例,ガラス2例,木片3例であった。異物先端部の到達位置は外眼筋の筋腹が3例,眼窩先端部2例,副鼻腔2例であった。木片異物の3例とも病原性細菌が検出された。予後として硬膜外血腫を合併し,眼窩先端部に木片が刺入した1例は術後に脳ヘルニアのため死亡したが,その他の症例では異物摘出後に矯正視力の改善がみられた。

結論:木片異物では3例とも細菌感染を伴っており,植物性異物の症例では手術的な異物の摘出が必要と考える。

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要約 目的:過去5年間の和歌山県立医科大学附属病院眼科(当科)における小児視神経炎の臨床像,自己抗体陽性率,治療法,治療反応性,視力予後について検討すること。

対象と方法:2018年3月までの5年間に,当科で視神経炎と診断・治療した小児5例(男性2例,女性3例,平均年齢9±2.3歳)を対象とした。診断はInternational Pediatric MS Study Groupによる疾患定義に基づいて行った。

結果:臨床像は急性散在性脳脊髄炎に伴うものが2例,clinically isolated syndromeが1例,多発性硬化症(MS)が1例,特発性視神経炎が1例であった。抗MOG抗体陽性例は2例,抗AQP4抗体陽性例は0例であった。両眼発症は2例,再発は2例に認められた。全症例でステロイドパルス療法にて視力改善を認めた。抗MOG抗体陽性例2例に免疫グロブリン大量療法を併用し,そのうち1例で免疫吸着療法を併用した。平均logMAR矯正視力は初診時1.6±0.8,最終−0.06±0.2であった。

結論:小児視神経炎では治療によって最終的に視力は改善した。小児例では視神経だけでなく,頭蓋内病変や脊髄病変で再発をきたす例もあるので,小児科と連携して経過観察をしていく必要がある。

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要約 目的:眼内レンズ(IOL)度数計算式であるBarrett UniversalⅡ式(BUⅡ式)の術後屈折誤差精度について他計算式と比較した報告。

対象と方法:対象は過去3年間に白内障手術を施行した189例324眼。IOLはNS-60YG(SZ-1;NIDEK社),角膜曲率半径と前房深度はTMS-5(TOMEY社),眼軸長測定はOA-1000(TOMEY社)のContactモードで測定した。IOL定数は過去4年間に当診療所で施行した300眼よりパーソナルA定数を算出し,BUⅡ式(B群),SRK/T式(S群)に使用した。Haigis式はDr. Hillのウェブサイト(HH群),TOMEY(HT群)に依頼し算出したものを使用した。それらIOL定数を用い,同じIOL度数における予測屈折値を各式で算出した。術後1か月に他覚屈折値をもとに自覚屈折値を算出し,予測屈折値と比較した。

結果:術後1か月における屈折値誤差平均値(絶対値平均値)はB群0.01±0.42(0.32±0.26)D,S群0.05±0.43(0.34±0.26)D,HH群−0.09±0.44(0.34±0.29)D,HT群0.04±0.44(0.34±0.29)Dであった。各群間の有意差は平均値であったが,絶対値ではなかった(平均値p<0.01,ANOVA,絶対値平均値p=0.634,クラスカル・ウォリス検定)。眼軸長別誤差平均値(B群,S群,HH群,HT群)は22mm未満(0.14,0.12,−0.04,0.10)D,22〜24.5mm未満(0.01,0.06,−0.11,0.02)D,24.5mm以上(−0.10,−0.16,0.06,0.16)Dであった。また,±0.50(±1.00)D以内に入った割合はB群80.9(96.9)%,S群78.7(97.2)%,HH群76.2(96.6)%,HT群77.8(97.2)%であった。各群間で有意差はなかった(±0.50D以内p=0.858,±1.00D以内p=0.982,χ2検定)。

結論:BUⅡ式は,SRK/T式やHaigis式と同等もしくはそれ以上の予測精度を示した。

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要約 目的:眼科受診を契機に間質性腎炎・ぶどう膜炎(TINU)症候群と診断した1例の報告。

症例:14歳,女児。全身症状として体重減少,ふらつきが出現し近医を受診した。採血で軽度の貧血と腎機能低下を指摘された。経過観察を指示されたが,症状に改善はみられなかった。2か月後,両眼の霧視が出現したため,眼科を受診し両眼のぶどう膜炎の診断となった。

所見と経過:両眼に汎ぶどう膜炎がみられた。血液検査および尿中のβ2ミクログロブリンの上昇がみられたため,間質性腎炎の合併があると判断した。これらの所見と臨床症状を考慮して,TINU症候群と診断された。ぶどう膜炎は副腎皮質ステロイド点眼で改善し,経過観察で腎障害の改善がみられた。

結論:TINU症候群では腎機能障害があっても軽微なことが多く,小児の場合は腎生検が施行されない場合も多い。その場合は,問診と検査をしたうえで臨床的診断が重要となる。全身症状を伴う原因不明のぶどう膜炎患者にはTINU症候群を念頭に置くことが重要である。

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要約 目的:The 25-item National Eye Institute Visual Function Questionnaire(VFQ-25)で緑内障患者と網膜色素変性症(RP)患者の特徴と生活の質(QOL)を明らかにする。

対象と方法:ロービジョン外来を受診した緑内障患者107例(男性67例,女性40例)とRP患者83例(男性48例,女性35例)を対象とし,患者の特徴とVFQ-25(面接式)を用いてQOLを評価し,比較した。

結果:平均年齢は緑内障患者(67.6±14.2歳)がRP患者(56.1±16.6歳)より有意に高齢であった(p<0.0001)。60歳未満の就労者は緑内障患者(69.7%)とRP患者(70.6%)で同等であった。VFQ-25では総合スコアコンポ7は緑内障患者(36.3±14.4点)がRP患者(46.9±19.2点)より点数が有意に低かった(p=0.0001)。一般的見え方,目の痛み,近見視力による行動,遠見視力による行動,社会生活機能,心の健康,役割機能,自立,色覚の9つの尺度で緑内障患者がRP患者より点数が有意に低かった(p<0.05)。

結論:VFQ-25では一般的健康感,周辺視野,運転の3項目以外で緑内障患者がRP患者に比べ点数が低く,身体的,精神的,社会的なQOLが緑内障患者で低いことが示された。

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要約 目的:水晶体欠損を伴う白内障に対し,水晶体囊拡張リング(CTR)挿入を併用して,白内障手術を施行した2例の報告。

症例:症例1は60歳台の男性。近医にて右眼の水晶体偏位が強くなり,落下する可能性があることを指摘され,手術目的に受診した。右視力は(0.02)で,水晶体下方170°の欠損および同部位のチン小帯欠損と皮質白内障がみられた。既往歴に右眼の弱視があり,幼少期より視力は(0.1)程度であった。白内障手術を施行し,術後視力は(0.1)と改善した。症例2は50歳台の女性。近医にて右眼の白内障および浅前房を指摘され,手術目的に受診した。右視力は(0.4)で,水晶体鼻側150°の欠損および同部位のチン小帯欠損と皮質白内障がみられた。白内障手術を施行し,術後視力は(1.2)と改善した。両症例とも手術中,硝子体脱出やチン小帯断裂などの合併症は発生しなかった。眼内レンズ(IOL)の位置を瞳孔中央に修正するため,CTRを囊内に挿入して囊を拡張させてから,IOLを囊内に挿入した。IOL偏位は最終観察時(手術後2年以上)まで,手術翌日と変化はなかった。

結論:先天性水晶体欠損眼に対する白内障手術では,IOLの位置を瞳孔中央に修正するために,CTRの挿入が有用である。

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要約 目的:電動草刈り機による射創性脈絡網膜症と眼窩内金属異物の1例を報告する。

症例:80歳,女性。家族が電動草刈り機の作業中,右眼を受傷して受診した。初診時,右眼の視力は指数弁,眼圧は12mmHgで,右上眼瞼に刺入創がみられた。眼底検査では,右眼の硝子体出血,網膜前出血,網膜震盪症,網脈絡膜損傷を認めた。頭部CT検査にて右眼窩内に金属異物を認めた。受傷翌日に脳神経外科にて眼窩内異物摘出術を施行した。経過観察中に生じた右眼の網膜剝離に対し,白内障手術と硝子体手術を施行し,術中に網脈絡膜破裂と白色の結合組織増殖を認めた。増殖組織による右眼の網膜再剝離に対して硝子体手術を再施行した。最終受診時,右眼の視力は0.15で,網膜は復位していた。

結論:金属異物が上眼瞼を経由し,眼球を穿孔することなく,眼窩内に刺入して生じた射創性脈絡網膜症と考えられた。本症に続発する網膜剝離や増殖硝子体網膜症に注意が必要である。

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要約 目的:25年間以上にわたり眼瞼下垂と著明な外斜視を放置してきた眼筋型重症筋無力症(眼筋型MG)に対し,治療が著効した症例の報告。

症例:55歳,女性。30歳前より右眼瞼下垂をきたし,眼位は外斜視であった。両眼に眼球運動障害があり,眼瞼下垂は疲労現象を認めた。テンシロンテスト陽性,抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)価の上昇がみられ,反復刺激テストは陰性であり,徒手筋力検査正常,胸腺腫はなく,抗AChR抗体陽性眼筋型MGと診断した。プレドニゾロンおよびコリンエステラーゼ阻害薬で治療を開始した。眼瞼下垂,眼球運動障害は徐々に改善し,タクロリムスの追加により,プレドニゾロンの減量中止とコリンエステラーゼ阻害薬の中止が成功し,現在はタクロリムス単独でわずかに外斜位がみられるのみである。

結論:長期間無治療の眼筋型MGであっても,眼筋自体には強い筋萎縮などが生じなかったため治療が奏効したと推察された。

連載 今月の話題

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 2013年にCRISPR/Cas9システムのゲノム編集への応用が発表され,理論的にはゲノムの遺伝情報が自由に操作できるようなった。それ以降,その汎用性と社会応用への可能性から,同システムの開発研究が急速な広がりをみせている。本稿では,同システムの原理と,医療応用の例として,遺伝性網膜変性疾患に対するゲノム編集遺伝子治療について考察する。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術中編14

チン小帯脆弱症例 永原 幸
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Q 図1のような患者の白内障手術は,どのような対策が必要でしょうか?

連載 眼炎症外来の事件簿・Case7

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患者:15歳,女性

主訴:両眼の霧視

既往歴:特記事項なし

現病歴:2か月前に右眼の霧視を主訴に近医を受診した。両眼に前房内炎症細胞,角膜後面沈着物,前部硝子体細胞を認め,点眼加療を行い消炎が得られたが,1か月前より炎症が再燃し高度の虹彩後癒着を認めたために,両眼ともにステロイドと散瞳点眼薬の結膜下注射を施行した後に精査加療目的で当院眼炎症クリニックへ紹介され受診となった。

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緒言

 Malattia leventinese(ML)は遺伝子変異に基づく家族性ドルーゼンの1型である。今回筆者らは,スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral domain optical coherence tomography:SD-OCT)を用いてその眼底を長期的に追跡し,経時的な構造変化を捉えることができたので報告する。

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要約 目的:硝子体手術が有効であった色素プラークを伴った黄斑部毛細血管拡張症2型の1症例の報告。

症例と経過:58歳,女性。右眼の視力低下を主訴に受診。初診時の最高矯正視力は左右ともに1.0で,両眼の黄斑部に黒褐色の色素沈着を認めた。OCTで,右眼は中心窩網膜の菲薄化およびellipsoid zoneの消失を認め,左眼の黄斑部には囊胞様変化を認めた。黄斑部毛細血管拡張症2型の診断で経過観察していたが,左眼黄斑部の色素沈着が徐々に拡大し,黄斑前膜様の色素プラークに進展した。初診から7年後には左眼のBCVAが0.3まで低下したため,硝子体手術を施行した。術中に色素プラークと内境界膜剝離を行い,術後も網膜内に一部色素プラークは残存しているが,術後2年半が経過しても左眼のBCVAは1.0を維持している。

結論:黄斑前膜様の色素プラークを伴った黄斑部毛細血管拡張症2型症例に硝子体手術を施行し,内境界膜ごと色素プラークを除去することで,視力が改善した。

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要約 目的:近視進行抑制治療として注目される低濃度アトロピン点眼液が調節ラグ(調節精度)へ与える影響を他覚的に計測し,小児に対する予防治療薬としての安全性を検証すること。

対象と方法:対象は屈折異常以外に眼疾患のない18〜22歳の被検者9名。0.01%アトロピン点眼液(マイオピンTM)の点眼前,点眼1,6,24時間後に,眼前33cmまたは20cmに置いた調節視標を注視させ,両眼開放型赤外線レフラクトメーターで調節ラグを計測した。

結果:眼前33cmと20cmの視標に対する調節ラグはそれぞれ,平均(±標準誤差)0.68±0.10Dと1.03±0.18Dであり,経過観察中ほぼ一定値にとどまった。同時測定した調節力(調節近点)と瞳孔径には,既報で報告されたように,有意な変動がみられた。

結論:0.01%アトロピン点眼液は,視距離20cmより遠方では調節精度に影響しない。単焦点レンズ矯正により近業時の明視は可能であると思われる。

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 症例は8歳,女児。主訴は右視力低下で,初診時視力は0.2(矯正不能)であった。右黄斑部にやや暗赤色調の病変と網膜色素上皮の脱色素病変があり,フルオレセイン蛍光眼底造影では周辺網膜血管からの蛍光漏出を,インドシアニングリーン蛍光眼底造影では黄斑部低蛍光を認めた。近赤外光(IR)を用いた走査型レーザー検眼鏡では黄斑部は低輝度であり,光干渉断層計検査ではその低輝度病変に一致したellipsoid zone(EZ)の不整とinterdigitation zone(IZ)の欠損を認めた。しかし,内顆粒層にparacentaral acute middle maculopathyを示唆する高輝度病変はなかった。脈絡膜厚は400μmで,laser speckle flowgraphyのmean blur rate(MBR)は6.9であった。

 以上の所見から,acute macular neuroretinopathy(AMN)type 2と診断し,無治療で経過観察とした。初診6か月後には,視力は(1.5)に,EZとIZは連続性を回復した。また,視力回復とともに脈絡膜厚は334μmに減少,MBRは11.7に上昇し,IR画像の低輝度病変もほぼ消失した。

海外留学 不安とFUN・第39回

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留学先での生活

 シリコンバレーは気候が大変良く,毎日ほとんど晴れ。研究がうまくいかなくても空が青いだけで癒され,「また明日も頑張ろう」という気になります。また,予想以上に治安と人々のマナーが良い場所で,皆とても親切です。気候と安全の面では本当にこの地域で良かったなと思っています。日系スーパーや日本食レストランも多数あり,食事の面では助かっております。一番人気があるのは日本のラーメンで,「旨いラーメン屋知っているか?」とラボメンバーによく聞かれます。

Book Review

京都ERポケットブック 舩越 拓
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 ERを受診する患者は多様である。また,同時に多くの患者を診療しなければならない。インターネット環境が整備された病院が珍しくない現在において,スマートフォンさえ持っていればある程度の調べ物もできる。そうした中で,わざわざポケットに忍ばせておく意味のある書籍とはどのようなものだろうか。

 一つは迅速性である。慌ただしいERにおいて落ち着いて調べ物をする時間は確保しにくい。インターネット上の情報は質が保証されず,必要な情報にアクセスしにくい。有名な二次資料のサイトも,どちらかというと治療に重きが置かれており,かつ患者到着までの5分で読むには過剰である。もう一つは網羅性である。特定の診療科に偏らない患者に対応するために広い分野をカバーしなければならない。内科のみ,外傷のみ,マイナーのみではERの患者をカバーするには足りないのである。

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目次

欧文目次

ことば・ことば・ことば 弱い
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 世の中に高齢者が増えたことと関係があるのでしょうが,新しい言葉がいろいろ出てきました。「ロコモ」もそれですが,もっと由緒正しい言葉として「フレイル」があります。

 英語のfrailは,「弱い」という意味ですが,似たような形容詞にはweakやfeebleがあります。また,frailはラテン語から来ていますが,fragileというのもあります。言語学では,これを二重語というのだそうです。

べらどんな アポトーシス
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 アポトーシスの概念が静かに流行している。「予定された細胞死(programmed cell death)」ともいうが,apoptosisそのもののカタカナが普通は使われている。

 オタマジャクシがその説明によく出てくる。オタマジャクシが蛙になるときには,まず尾がゆっくり吸収され,その代わりに手足が伸びて蛙になる。甲状腺ホルモンがこれに関係していて,チロキシンをオタマジャクシに投与すると,尾は吸収されない。

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次号予告

あとがき 中澤 満
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 臨床眼科3月号をお届けします。「今月の話題」では,東北大の西口康二先生による詳細なレビュー,「ゲノム編集遺伝子治療と眼疾患への応用」を取り上げました。CRISPR/Cas9という聞き慣れない用語が出てきますが,実はこれが現在の生物学,生化学,遺伝学,遺伝医学をはじめ農畜産学や軍事関連に至るまで生物に関連したあらゆる分野で大トピックとなっている物質(ツールとも言えます)です。もともとは細菌がバクテリオファージの感染に自ら対抗するために自然に編み出した一種の獲得免疫機構なのです。CRISPR/Casはかつて感染したファージDNAを認識していて,再感染があったときに発現してファージDNAを切断して不活性化するというシステムです。これを今では科学者がCRISPR/Cas9を用いて任意の動物(ヒトを含む)のゲノムDNAを切断して取り除き,それに代わる別の塩基配列を組み込むことができるようになったわけで,これをゲノム編集と呼び,理想的な遺伝子治療への可能性が開かれたことになります。しかし,倫理上の問題からヒトの生殖細胞でのゲノム編集は認められていません(お隣の某大国ではすでに行ったということですが)。バクテリオファージは地球上で最も個体数が多く,その数たるや実に1031個(日本語では1,000穣個)で,細菌の数よりも多いとのこと。さらに,地球上では毎秒1024回の感染が起こされており,海中だけでも毎日全細菌の40%がファージ感染によって死滅しているそうです。人類が発生する遥か以前の太古の昔から細菌とバクテリオファージとの熾烈な戦いは存在していたわけで,つい最近になってわれわれ人間はやっとそれに気づいて,さらにそれをさまざまにうまく利用しようとしているという状況なのです。眼科学でも現在は動物実験のレベルですが,数年すればCRISPR/Cas9を用いた遺伝性疾患の治療法が臨床応用されるであろうと思われます。そのときに備えて,私たちも一般的な教養としてゲノム編集やCRISPR/Cas9などの術語を身につけておきたいものです。

基本情報

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臨床眼科
73巻3号 (2019年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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