Book Review
眼瞼・結膜腫瘍アトラス
坂本 泰二
1
1鹿大大学院・眼科学
pp.479
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410212647
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眼瞼や結膜の腫瘍は,眼科外来で頻繁に遭遇する疾患である。しかし,生検以外で確定診断することは難しく,臨床医を大いに悩ませるものではないだろうか。眼科病理学の日本の第一人者である後藤浩教授による本書は,この悩みを解決するための決定版になるものと言える。
本書の素晴らしい点は,各疾患を理解するために必要な情報が,第一線で働く臨床医に理解しやすいように書かれている点である。腫瘍性疾患の本態を理解するには,病理組織像を理解する必要があるが,一般臨床においてまず得られる情報は外眼部の所見である。そして,臨床医はそれだけの情報に基づいて,ある程度正確な診断を患者に提供する必要がある。そのため,本書では美しい外眼部写真が過不足なく提示されている。海外の成書では,数多くの写真が提示されているものもあるが,それらは研究のためには重要でも,目前の患者を診断するには,むしろ判断を迷わせる。本書で示された写真は,診断のために重要な所見を中心に示されており,診断のためには必要かつ十分であるといえる。さらに,その所見を理解するために,重要なものには病理像が示されている。特に,外眼部写真の横に病理写真が提示されているのが役に立つ。外眼部を診るときには,病理像を頭に描きながら行うようにと教育を受けるが,病理診断は一般臨床医にはなじみが薄く,よほど病理に詳しくない限りは難しい。しかし,外眼部写真の真横にポイントとなる病理写真があれば,2回,3回と本書を読むうちに自然に頭に入るのではなかろうか。
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