臨床眼科 18巻5号 (1964年5月)

特集 第17回日本臨床眼科学会講演集(その4)

学会講演集

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I.はじめに

 水晶は良好な弾性体で応力,歪み曲線は殆んどヒステリシス損失を示さない。また水晶の振動は機械的振動であるが,これによつて内部に応力と歪みを発生し,1879年キューリ兄弟によつて発見された圧電気効果により,振動している水晶の表面に振動電荷が発生し,偏極を生ずる。これを利用して,種々の電気回路と組合せて,共振,または発振などの振動を行わすことが出来る。この場合,電気的な素子に置き換えて考察する。この回路を等価電気回路と呼ぶ。

 水晶振動子とは上述のように振動する板状,棒状の水晶片のことで,このものは等価回路内抵抗素子が少く,等価回路のQが高い。このQは普通の電気素子インダクタンスLと静電容量Cの回路では達することの出来ない高い値で,数万から数十万を有する。したがつて発振回路と組合せて発振させるときは極めて安定である。

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 ソ連製Maklakoff型眼圧計を用いて,非緑内障105眼,緑内障32眼において眼圧測定を行い,その成績を,Goldmann圧平眼圧計並びにSchiö_tz眼圧計(5.5g及び10g)の測定成績と比較しつつ検討を行つた。

 Maklakoff 5 gでの測定が他の眼圧計の値と比較的最も近い値を示したが,尚且つ他の眼圧計の値よりも高く,然も重いものを使う程測定値は高くなり,従つて他の眼圧計の値より益々離れて行つた。

 5,7.5,10,15gの4種類の重さの測定値をグラフにプロットした所謂エラストトノメトリー曲線について,その形,傾斜の工合などを検討してみたが,緑内障診断の参考となるような特徴を掴むことが出来なかつた。

 然し全測定値につき,Goldmann, Schiötzの値との相関を見ると,可成りのバラツキはあるが明かに平行関係が認められ,眼圧計としての使用可能性は十分に立証される。但しmmHgに換算する表乃至定規が修正改訂されない限り,mmHgの絶対値を問題にすれば現今のトノメトリーの通念よりすると,混乱を招く惧れがある。

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 神経の支持組織である神経膠組織から発生する神経膠腫が視神経より発生せる症例についての報告は比較的少ない。文献によると本邦に於ては現在までに16例の症例報告がなされているが,今回著者等も視神経から発生せる神経膠腫の一例に遭遇する機会を得たのでここに症例を報告する。

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I.緒言

 眼内圧測定に際して眼球壁の弾性がその測定値に重要な影響を及ぼす事は既に1863年Dondersが指摘しており1937年にはFriedenwaldにより鞏膜抵抗率の概算方法が発表された。それ以来鞏膜抵抗率の意義や測定方法に関する多くの研究発表がなされ,今日鞏膜抵抗を無視しては眼内圧を論ずる事は出来ない。この輩膜抵抗は又眼底血圧測定に際しても同様であり,外力による眼内圧上昇態度を規定するFactorの中で鞏膜抵抗の占める比重は極めて大きい。私は今回電気眼底血圧計の使用に際し記録紙の紙送り速度並びに加圧速度が一定であるに拘らず実際に記録された加圧曲線はFig.1の如くその勾配にかなりの個人差がみられる事に着日し,眼内圧上昇の反応として記録された加圧曲線を主として初眼圧並びに鞏膜抵抗の面より検討し眼内圧上昇態度と初眼圧並びに鞏膜抵抗との関係,更に眼球後部組織との関係について考察したのでここに報告する。

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I.緒言

 緑内障の早期診断には種々なる方法があるが,何れも充分な確実性を有してはいない。緑内障の様に治療法が未だ完全でない疾病においては,早期に診断を確立し,視野の狭窄,及び視力の低下を早くから予防することがその治療の上の要点と考えられる。従つて緑内障治療における現在の最大の目標は早期診断でなければならないと考える。而して多数の早期診断法の内現在最も信用されている方法はGrant Tonographyである。然しながらTonographyの根底をなす理論式も亦既にFriedenwald或はLanghamの批判する様に,多くの誤差を含んでおり早期診断に使用するにはその成績は余りに巾がありすぎる欠点を有している。更に実測上の誤差を含めて考えるならば,早期診断の目的から著しくかけ離れてしまうのではないかと危ぶまれる。

 私はフルオレスチンが生体においてその濃度を測定し得る点,及び前房内には比較的出現し難い点の二つを利用し,緑内障の早期診断即ち前房水のturn over rate測定の可能性の有無について検討を試みた。

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I.緒言

 およそ,50年前からosmotic agentsによる血液滲透圧の変動が,脳脊髄液圧や眼圧に影響を及ぼすことから,脳浮腫や緑内障に対する治療として,高張液の静注が行なわれて来た1)。その中で,尿素の点滴静注と,脳脊髄液圧の下降剤であるMannitolの滲透圧に基づく利尿作用が,緑内障の治療に有効であるとして,最近米国で脚光を浴びている1)。ところが最近,Virno等2)(1961〜1963)は,Glycerolの内服がosmotic age—ntsとして,脳浮腫消退及び緑内障の眼圧下降に有用であることを発表した。私共もGlycerolを種々なる緑内障眼に使用し,著明な眼圧下降をみたので,臨床例は僅かであるが報告すると共に,先般,すでに発表1)したMannitolの点滴静注による緑内障治験例の追加をする次第である。

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I.いとぐち

 眼圧上昇に対する薬物療法としてはAcetazol—amide及びDichlorphenamide等の炭酸脱水酵素阻害剤と高滲透圧剤とがあるが,眼圧下降効果は前者のAcetazolamide等は高眼圧症例では必ずしも速効的ではなく,また確実を期し難い場合がある。このため緑内障急性発作時及び眼圧上昇眼に対する手術の前処置としては更に速効的で確実な眼圧下降作用を有するOsmotherapyが有効であり,このうちでもGalin氏等1)及び相沢氏等2)により提唱された高張尿素液がすぐれているとされ広く用いられて来ている。しかし高張尿素液にも溶血を来すことがあり3),電解質変動を来し,心電図上にも変化をもたらし4)5),腎及び心障害を有する症例に対する投与は考慮されねばならない他,局所刺激性が強い等の少からざる欠点を有することが知られて来た。このため相沢氏6)は尿素投与法を経口投与法に変えることにより,これらの欠点をやや補いうるとしているが,高張尿素液にまさる理想的な滲透圧利用による眼圧下降剤の出現が望まれる処である。

 上昇眼圧に対する高滲透圧剤の選択は上昇脳圧に対するそれと一致するものであり,現今理想的脳圧下降剤とし,次第に応用されつつある高張マンニットール液7)8)も眼圧下降剤として応用し得る筈であり,実際昨年Weiss氏等9)は10例に対して本剤を用いた結果を報告している。

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I.緒言

 副腎皮質ステロイドの眼圧に及ぼす作用については従来意見があつて,眼圧を上昇せしめないとするものもあるけれども,副腎皮質ステロイドの全身,或は局所投与により緑内障をおこしたという報告もある。

 先に岩田は"春季カタルと緑内障の合併についで"という演題で,第13回臨床眼科学会席上において,コーチゾンの長期点眼を行つた春季カタルに発生した慢性緑内障の3症例について報告したが,最近Goldmann (1962)は長期間強力な副腎皮質ステロイドの局所療法により一見正常眼に起つた慢性緑内障5例につきcortisone glauco—maという病名で報告している。然し従来報告例のうちにはコーチゾンのみならず各種副腎皮質ステロイド剤の全身或は局所使用により起つた緑内障例が報告されているから,今日一般に本剤投与によつて発生したと思われるiatrogenicの疾患をsteroid diabetes,steroid ulcer,steroidcataract等呼ぶのにならいsteroid glaucoma或はcorticosteroid glaucomaと呼びたいと思う。

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I.緒言

 隅角組織所見については,古くから数多くの報告がなされている。しかしその報告の大部分は死後摘出した眼球か又は絶対緑内障等で摘出したものから得た隅角組織につき,種々検討し報告されたものである。1960年,Milton FlockはEyeBankより得た原発緑内障15例を報告したが,これも摘出眼より得た隅角所見の報告である。1961年H.H UngerとJ.Rohenが緑内障患者でトレパナチオン手術を施行し,これより得た原発緑内障50例のBiopsyの報告を行なつている。当教室において,1956年より1963年9月迄に隅角切除術を行なつたもの250眼以上に達したが,これらの臨床的な遠隔成績は本年の日眼紙上に発表した。今回は本術式により得たBiopsyの病理的な所見について報告する。

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 線状刀を用いて角膜切開を行う場合の刺出目標について,第1報1)において前房内線状刀のsa—gittal結像による見かけ位置を基に検討したが,今回は非点収差によるmeridional,sagittal及び最小錯乳円の像位置を計算し,さらに観察角,角膜曲率半径,角膜切開の長さが,真の刺出点と刺出目標点との間の喰違いに及ぼす影響について綜合的な検討を行なつた。

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 糖尿病患者に見られる白内障の多くは臨床的に老人性白内障の所見を呈し,只屡々その進行が通常の老人性白内障に比較して急速である事はよく知られている所である。又,従来糖尿病性白内障と云う診断名を下してもよい臨床像として(1)前後嚢下皮質の微塵状或いは粉雪状溷濁1)(2)急速な進行を示す所謂Cataracta intumescens,(3) Ga—rdestern-artig即ち後嚢下のロゼッテ状溷濁で吸収可能なもの,以上3者が挙げられている。(1)は通常多く見られる型であるが,他の2者は稀であり,(2)は若年者,(3)は老齢者に時に見られるといわれる2)

 我々は今回糖尿病患者に見られる白内障を臨床的並びに病理組織学的に観察し,次の知見を得たので報告する。

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I.緒言

 前報にて,家兎への水晶体移植を報告し,此の度,人眼へ移植する機会を得たので,ここに報告する。

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I.緒言

 原因の不明な眼精疲労の中には緑内障がかなり含まれているのではないかとの考えから,我々には眼精疲労を訴える患者全てに対して一般眼科的検査の他に眼圧測定,須田氏圧迫試験を行ない,その結果は先に報告した1)が約10%は充分緑内障が疑えるとの結論に達した。我々は更に他の一面より検査を追加施行する事により眼精疲労の中の緑内障を一層精確にせんとし,今回は眼圧日差変動の測定を試みた。そして又,日差変動と須田氏圧迫試験との関連性についても検討を試みた。

色覚検査新試法 堤 修一
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I.はじめに

 すでに,日眼萩原教授記念論文集に,その最初の試みの一端をのべた通り,正常眼に色フイルターをかけて,人工的につくり出した,仮性色覚異常眼の色紙に対する彩度識別能力のしらべのつづきである。

 今回は主として,濃淡3種の色フイルターを利用して,仮性強度,中等度,弱度3つの色覚異常に近い状態をつくりだし,色紙に対する彩度の識別能力をしらべた。

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I.緒言

 涙嚢鼻腔吻合術は,Toti氏が1904年にその術式を発表して以来,多数の改良,追試が報告され,又近年薬剤の進歩も加わつて,本手術が慢性涙嚢炎に対する治療としては最良の方法であるとされている。而し乍ら慢性涙嚢炎が眼科と耳鼻科の境界上の疾患であるために,現在でもなお本術は一般的な手術とはなり得ず特に本邦においては,欧米における程多数の手術例は報告されていない。幸いにも我々は過去1年2ヵ月の間に協同して涙嚢鼻腔吻合術(10例),涙小管鼻腔吻合術(2例)を経験する機会を得た。又以上の手術の術後経過観察をし,さらに本年9月〜10月に亘つて,本症例の遠隔成績を調査した結果良好な成績を得る事が出来たので,ここに報告する。

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I.緒言

 同種全層角膜移植は1906年Zirm21)28)により始めて成功し,同種表層角膜移植の成功は1908年Plange19)21)により報告され,1911年Magitot19)28)は5℃で溶血血清に眼球を8日間保存した角膜を用いて同種表層角膜移植に成功した。

 角膜移植は近来手術器械及方法,抗生物質及抗アレルギー製剤の発展に伴いこの手術がより安全に行える様になつてきた。一方屍体眼球の利用は1912年Schimanovsky1)が推め,1922年Fila—tov19)により導入され,1945年Paton19)により眼球銀行の組織が設けられる様になつた。

眼科問答

1.眼底検査について
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 A:先生,今日は眼底検査について,色々御意見を伺いたいと思います。まずはじめに眼底カメラについて。

 R氏;そうですね。今までのカメラは写つた写真がぼやけていて,とても細かい血管や病変の記録など思いもよらない程度のものでしたが,最近のカメラの進歩で国産のものでもかなりシャープに記録出来るようになりましたね。

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 東京医大同窓会館ホールに於て主催浅山(京大)司会松尾教授(東京医大)の下に約50名の参加を得て約4時間に亘つて終始熱心な討議が行なわれた(以下敬称略)。

 出題数は11題であつたがこれを大別すると次の三グループに分類し得る。

第17回日本臨床眼科学会 研究グループ・ディスカッション(2)

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 このグループディスカッションは日大駿河台病院臨床講堂で開催され,午前中は弱視の定義と分類について,午後は網膜対応異常について討議が行われました。

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 眼性片頭痛(ophthalmic migraine)を代表とする,単に,片頭痛(migraine)と呼ばれている症候群の本態は,よくわかつていない私は本症に脳動脈写を行つて,今日まで4例の症例を得たので,ここに所見を報告する。脳腫瘍の他にも,いろいろの眼症状の源をさぐるために,脳動脈写が必要であることは,田川36,錦織26などによつて,主張せられている。又,近年注意をひきつつある脳血管性障害には眼症状が高率にあらわれていて(後述),ここにも,脳動脈写は,諸症状の焦点を探る上に有力な手段である。

 片頭痛の分類については,Walsh40によると,次の様である。

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1.全身血圧:眼底血圧(MAX)について

 ECG (—)群と,心肥大・冠硬化のECG (+)群についてBPとCAPを見ると,ECG (—)群に比べてECG(+)群は値がやや高いが僅少の差である。CAP値はECG (—)群のNon-Ret (74mmHg)に比べて,心肥大のNon-Retは79mmHg,冠硬化のNon-Retは84.4mmHgであり,ECG (—)群のRetの71mmHgに比べ心肥大は74mmHg,冠硬化は85mmHgである。BP値も同様の関係にあるが,値としては問題がない。

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ECGの変化とCAP

1)一般にECG (—)のとき,CAPはN-Ret(41mmHg)>Ret (35.6mmHg)で,5mmHg程度の差があるが,40mmHg以下の問題である。ECG (+)のとき.Ret (44.9mmHg)>N-Ret (41.75mmHg)で,Retは3mmHg位高いが,大体ECG (+)ではRetが高く,45mrnHg程度である。N-RetはECGの変化に関せずCAPは40mmHg位で高くない。反之,RetはECG (—)35.6mmHg→ECG (+)45mmHgで,ECG(+)になると10mmHg位CAPが高くなり,45mmHg辺によつてくる(第1表)。

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 眼瞼下垂に対する手術は外種多様の方法が報告されているが,これを大別すると,

1)上眼瞼挙筋に対する手術として,ブラスコビック法,イリッフ法,内田法,大野法,エルシュニヒ法,等があり,勿論これ等は上眼瞼挙筋の力を利用して下垂を矯正せんとするものである。

談話室

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1.台湾大学

 台湾には5つの医科大学があるそうである。

 台中等の台北以外の大学は行かないので話にきいただけである。台北には国立の大学と私立のものと2つある。私立のものは小さくてまだ新設なので貧弱である事はまぬかれないが,年を経るに従って完備される事であろう。国立の方は昔の台湾総督府時代からあつたもので,それになお増設されて完備されていて,日本の医科大学よりも設備もよい。医科大学とか医学部といわないで医学院をいい又附設病院といわれている。国立台湾大学医学院では学生の教育はアメリカ式で臨床部門では一般講義は殆んどない。多くは臨床講義等でカンフェレンスが非常に重きをおいている。眼科の外来でも1日の新来患者は約80名位であるが,これを8つの小さな診察室で診察している。この8つの診察室に教授,副教授,講師等の相当の眼科専門医がついて学生及びインターンが数人配属されて,まず視力とか暗室検査等をして,それから眼科の中央検査室というのがあって各種の精密検査をやつている。これは各診察室から,中央検査室にまわして結果は診察室にすぐ報告されるようになつている。学生およびインターンは診察室と検査室の間を行ききしている。又緑内障は緑内障室というのが特別にあつて各種の精密検査等をしていた。又暗順応は現在特別に研究されていて室も特別に3室準備されていた。その他弱視斜視の訓練室もあつて,女医の楊敏博士が主任として熱心に指導されていた。

基本情報

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臨床眼科
18巻5号 (1964年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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