看護教育 61巻7号 (2020年7月)

特集 「地域・在宅看護論」をカリキュラムにどう取り入れるか

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今回の指定規則改正にて、統合分野「在宅看護論」から、基礎看護学に続く「地域・在宅看護論」へと変更されます。この変更は、単なる教育・科目内容の移動にとどまらず、「療養する人々」から「生活する人々」へと看護の対象そのもののとらえ方を転換した、看護基礎教育の大きな改革といえるでしょう。

本誌では2号にわたって特集を組み、この「地域・在宅看護論」の新たな枠組みを解説します。

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はじめに

 令和元(2019)年10月に厚生労働省より「看護基礎教育検討会 報告書(以下、報告書)」1)が示され、令和2(2020)年度に、「保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下、指定規則)」および「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン(以下、指導ガイドライン)」2)が改正される予定である。その時期を厚生労働省に問い合わせると夏ごろ、ということであった(5月18日現在)。

 いずれにしても、報告書と大きく変わることはないと考えて、各学校・養成所はカリキュラム編成に取り組んでいるのではないかと思う。

 日本看護学校協議会では、令和元年度厚生労働省看護職員確保対策特別事業「看護師等養成所におけるカリキュラム改正支援事業」の委託を受けて、「地域・在宅看護論等強化が求められる教育内容検討委員会(以下、検討委員会)」*1を立ち上げ、今回の改正のポイントの1つである「地域・在宅看護論」への期待と、そこで何を教えるのかについて、検討を行った。

 今まさに、カリキュラム編成に取り組んでいる学校・養成所の参考になればと思い、検討委員会の検討結果を中心に以下に報告する。なお、詳細な検討内容と結果は「地域・在宅看護論の教育内容」としてまとめ、一般社団法人 日本看護学校協議会のホームページで公開している3)

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はじめに

 昨年公表された「看護基礎教育検討会報告書」1)では、看護基礎教育において、対象を生活者としてとらえ、地域に暮らす人々の理解とそこで行われる看護について学ぶことの強化が示されました。北里大学保健衛生専門学院(以下、本学院)では、従来から看護の対象を「生活者」ととらえることを基盤としたカリキュラムで教育を行っています。本稿では、本学院の「生活者」に関連した基礎看護学・在宅看護論の教授法やその展開、さらに新カリキュラム構想の一部を紹介します。

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 ポラリス保健看護学院(以下、本学院)は、1977年に3年課程の看護師養成所として開校した。その後、少子・高齢化の進行、慢性疾患患者の増加、在宅志向および医療の高度専門化など社会の変化に伴う看護職への多様な期待に応えられることをめざし、1997年に修業年限4年の保健師看護師統合カリキュラムへ課程変更した。

 本学院では、人や地域とのかかわりをとおして豊かな人間性を形成し、社会に貢献できる人材の育成をめざし、地域の人々との触れ合いの機会を大切にしてきた。現在、実習施設は付属施設15か所に加え、外部施設82か所に協力をいただいている。やはり、人と人が触れ合うことは何にも勝る学びがある。学生時代にさまざまな対象にかかわることで視野の拡大が図れ、さまざまな対象の思いを理解できると考える。また、地域に出向くことで地域の特性や人々の暮らしを肌で感じることができ、この地域の課題は何か、人々に必要な支援は何か、活用できる資源は何かなど、「地域」*1の視点をもった看護職を育成できると考えている。

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はじめに

 本学は、本州最北端にある青森県の青森市に位置しており、学校法人青森田中学園として創設74年の歴史があります。創設時より、「愛あれ、知恵あれ、真実(まこと)あれ」を建学の精神として教育に取り組んできました。2006(平成18)年には、地域の保健医療の充実に貢献できる人材育成をめざし、青森中央短期大学看護学科として3年制の看護教育を開始、2014(平成26)年4月には青森中央学院大学看護学部として4年制の看護学教育へと転換しました。看護学部では、建学の精神を教育理念として、豊かな人間性・幅広い教養を基礎に高い専門力と技能を身につけ、主体的に自己研鑽し、地域に貢献できる人材の育成に努めています。

 本学看護学部は、2018年に1期生を送り出しましたが、前年の2017年に1期生のカリキュラムを総括した結果、いくつかの課題が浮き彫りになりました。たとえば、①地域の看護師養成校として後発設置校のため、各施設における実習期間が限定されている、②そのため冬期間の実習配置となり、感染性疾患の流行や通学時の事故発生など学生の実習時期として適当ではない、③地域の高齢化が進んでおり、施設実習において成人看護学実習・老年看護学実習の対象者の年齢層や発達段階に違いがない、④3年次後期から4年次後期にかけて、実習が過密であるため看護研究や看護師国家試験に向けた学習体制を整えにくい、などの課題があげられました。

 そこで、2017〜2018年にかけて、2019年度からの新カリキュラムによる教育に向けた検討を行いました。今回は、本学における現行の「在宅看護学実習」を紹介するとともに、2021年度に始める3年次の実習をどのように展開しようとしているか、また2022年度に予定している改正指定規則に基づく教育に向けてどのように取り組みたいと考えているかを紹介します。

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暮らしを知ることから始める大切さ

 天理医療大学医療学部看護学科精神看護学領域では、すでに現行カリキュラム(2020年度)において、対象者が地域でいかに暮らしていくかを学びの中心としたカリキュラムを構築しています。実習においても、まず地域、そして病院という順序にしています。

 この背景には、人は地域で暮らすことが当たり前であり、いったん調子を崩し、入院することになったとしても、いずれまた自身のネットワークに戻っていくものだという考えがあります。そして対象者の日常の暮らしを支えることが看護師の役割である以上、看護基礎教育においても、学生は、日常の暮らしを知ることから始まるべきだととらえています。

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本当に考えたい「利用者主体」ということ

―指定規則の改正にて、看護基礎教育において、地域で暮らしている方を支えるための学びが重視される方向性が打ち出されました。今回は、複数の教育機関から実習も受け入れていらっしゃる、訪問看護ステーションみのり(以下、「みのり」)の小瀬古伸幸さんに、地域で得られる学びについて、現場目線でお話をお伺いできればと思います。

小瀬古 今回の看護基礎教育の改正は、いい方向性だと思います。まず人の生活を知ること、対象者の生活のスタンダードを学ぶことは、とても大切です。

特別記事

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なんでもかんでもリハビリ?

 学生のハルナさんの素朴な疑問は、実はとても鋭いのです。この感性は大切にしたいものです。実習中の学生は、誰よりも患者との接触時間が長く、患者のことを最もよく知っているはずです。でも、看護師や教員から「リハビリが大事」と刷り込まれて(?)いくと、学生は患者にもっと頑張ってもらわなければ、という強迫観念のような感情にとらわれていきます。

 もともとリハビリテーションとは、単なる機能回復訓練ではなく、新しい生活を送れるように支えることが本来の考え方です。

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看護の視点で人間や病気をとらえる教育

 先月から、「松下看護専門学校の挑戦」というタイトルにて、パナソニック健康保険組合立 松下看護専門学校(以下、当校)の教育実践について連載を始めることとなった。1回目は、当校の3つのポリシーの策定から独自の科目群の設定へと進めたカリキュラム編成の道のり1)について述べた。

 2019年10月に出された看護基礎教育検討会報告書2)では、「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」が1単位増加されるとともに、別表3の留意点には「看護学の観点から人体を系統だてて理解し」「臨床判断能力の基礎となる演習を強化する」という文言が追加された。

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はじめに

 臨地実習においてカンファレンスは、学生が実習での問題を解決し、学びを深めるために必要不可欠である。そのため、教員は学生がカンファレンスの進め方を学習し、効果的なカンファレンスを行えるように教授する必要がある。しかし、筆者はこれまで臨地実習におけるカンファレンスの教授活動のあり方に不足を感じながらも、十分な支援が行えていなかった。

 宮崎県立看護大学(以下、本学)では、3年次に「臨地実習Ⅱ(老人)」を履修する。筆者が科目責任者を務めるこの科目において、学内の「FD検討・報告会」への課題提出の機会を活用し、「臨地実習において効果的にカンファレンスを運営するための教授活動への支援」に取り組んだ。FDへの取り組みの過程で、筆者の指導を受けながら教授活動を行っている新人のA教員(臨床経験5年)の事例を選出し領域内で検討した結果、臨地実習におけるカンファレンスの教授活動への支援について示唆を得たので紹介したい。

連載 今日から使えるアイスブレイク・7

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ねらい

自分の体と心の状態を観察する

推奨科目:実習、演習、集合研修

推奨場面:講義、演習、実習や研修の合間

適正規模:何人でもOK

所要時間:5分

準備物品:なし

連載 「食べたい」をめぐって・4

「食べたい」を集める 太田 充胤
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他者の「食べたい」を借りる

 「帰ったらまず、コロッケ食べようと思って」

 退院したらなに食べたいですか、といういつもの質問にそう答えたのは40代の男性。小児期に1型糖尿病を発症し、食事や投薬によって自分の血糖値がどう動くのかすっかり知り尽くした、筆者にとっては先輩みたいな患者さんである。

連載 コミュニケーションの「困った」をスキルで解決!・4

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病院での実習をいくつか終えて、3年生のDさんは在宅看護実習のため訪問看護ステーションに来ています。この日はあいにくもうひとりの学生が体調不良で欠席していました。Dさんの様子を教員が見ていると、実習記録があまり進んでいないように感じたため教員は声をかけました。Dさんは、これまでの実習と在宅看護実習の視点の違いを感じているようで、計画立案の仕方や実習記録への記載の仕方がわからなかったということでした。

教員は実習環境や体調についてDさんと話しながら、実習について困っていることやつまずいているところがないか話し始めました。

連載 看護教育×法律相談 知っておきたいトラブル対応のポイント・7

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事例

 実習先の病院から、本校の学生が患者の個人情報やプライバシーをSNSに拡散した、と苦情を受けました。実習先に芸能人が通院しているらしい、ということを書いてしまったようです。これに関連して、他の学生の保護者から「学校の評判にかかわる問題なので、書いた本人を特定して情報公開してほしい」「自分の子どもも風評被害を受ける被害者であり、責任を追及したい」という要望が寄せられました。学校としてはどのように対応すればよいですか。

連載 〈教育〉を哲学してみよう・12【最終回】

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大は私たちの生活を大きく変えた。緊急事態宣言による移動自粛や休業要請だけでなく、学校の一斉休校や大学での教育研究の制限など、教育を取り巻く状況も様変わりした。もちろん、医療の現場の方々の多くは目の前の患者と向き合われており、また、本誌読者の方々も、働く看護師の不安を取り除いたり、研修を提供したりすることなどに専念されていることだろう。そのことは承知のうえで、しかし、連載最終回ではCOVID-19の影響下における〈教育〉のあり方を考えてみたい。

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目次

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単なる「緊張ほぐし」ではなく「固定観念を揺さぶる」研修に

 「学生・新人看護師の目の色が変わる」と副題がついた鮮明な青色の本が、私の書棚に加わりました。本の名前は『アイスブレイク30』。学生や看護師への教育を行っている3人の著者が紹介する参加者主体型学習活動集です。

 「アイスブレイク」には、緊張や警戒心を解きほぐすという意味合いがあります。たとえばこの本では、「新聞紙タワー」「なりきりヒーローインタビュー」と名づけられたグループワークが紹介されていて、受講者同士の緊張を緩和させる効果があると思います。

新刊紹介

基本情報

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看護教育
61巻7号 (2020年7月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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