連載 〈教育〉を哲学してみよう・7
「危機」に遭遇することの教育的意義
杉田 浩崇
1
1広島大学 教育学部
pp.170-174
発行日 2020年2月25日
Published Date 2020/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201431
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「行きて帰りし物語」と看護実習
モーリス・センダックの絵本『かいじゅうたちのいるところ』を手に取ったことはあるだろうか。マックスという男の子がいたずらをして母親に部屋に閉じ込められるが、その部屋の壁や天井がなくなって森になり、怪獣たちの暮らす世界へと旅立つ。そこで怪獣たちの王様となり、「怪獣おどり」などをして楽しむが、やがてわが家が恋しくなって、目が覚めると自分の部屋に戻っている。部屋には温かな食事が用意されていて、母親のやさしさが垣間見える場面でストーリーは結ばれている。
この絵本は、子どもが日常世界から離れて、非日常な世界へと行き、そこでの体験を経て帰ってくるという構造になっている。児童文学作家・瀬田貞二はこの構造を「行きて帰りし物語」と呼び、絵本や児童文学に多く見受けられると指摘している(瀬田貞二:幼い子の文学。中央公論新社、1980)。
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