特集 VR/AR/MR 教育への応用最前線
看護教員がつくるVR教材の小児看護教育への応用—子どもと母親の様子を観察し、プレパレーションツールを作成する
合田 友美
1
,
西田 千夏
1
1宝塚大学看護学部看護学科
pp.42-47
発行日 2019年1月25日
Published Date 2019/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201157
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VR教材作成に至る過程と作成の実際
看護基礎教育課程における小児看護学教育の限界と課題
看護師は、子どもの権利を擁護し、子ども自身が主体的に治療や検査、処置を受け入れ対処できるよう援助することが求められる。このようななか、病気や治療によって引き起こされる子どもの心理的混乱を最小限にし、子どもの対処能力を高めるための心理的準備を促すケアとしてプレパレーションが実施されている。しかし、子どもと接する体験が少なくかつ看護の学習過程にある看護学生が、子どもの権利を守る必要性を実感しつつ対象にあったケアを実施することは容易ではない。そのため、看護基礎教育ではシミュレーション教育が注目を集め、シミュレータや模擬患者を用いた演習によって、より実際の場面を想定できる教育が実施されている。しかしながら、小児看護学領域では、対象の特性からシミュレータの種類が限られ、模擬患者の活用にも限界がある。
これまで、筆者らも大学内での講義や演習において、学生がリアルな子どもイメージを描けるように、さまざまな視聴覚教材やモデル人形を活用してきた。しかし、臨地において、啼泣し四肢を激しく動かす患児を目の当たりにして「こんなに動くなんて」「泣き声に驚いた」「イメージと違った」と戸惑う学生が複数いた。そして、学生は自身と患児の信頼関係の構築に目が向き、児が受けている治療や検査、それにともなう苦痛、生活への影響等になかなか視点が向かず、子どもの安全面への配慮が不十分になるケースがあった。
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