連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・13
心臓―1階と2階は別物
阿久津 裕彦
1,2
1順天堂大学解剖学生体構造科学講座
2東京芸術大学美術解剖学講座
pp.1
発行日 2019年1月25日
Published Date 2019/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201149
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特別な感情をハートマークで飾るように、心臓(ハート)は他の臓器とは違う特別な印象を与え続けています。一方、医学ではその働きをシンプルに「血流をつくるポンプ」だと説明します。いずれにしろ、心臓はパワフルでスタミナのある心筋組織から構成される唯一の臓器であり、自ら拍動するなど特殊な性質も有しています。心臓は2階建てで、血液は2階の心房から入り1階の心室から出ていきます。血液を押し出す心室の壁は非常に厚いものですが、実は心房の壁との連続性はほとんどなく、弁の部分の結合組織が両者をつなぎとめています。
造形は先の尖った左心室から始めます。続いて、それを取り囲むポケットのように右心室を作り、上部に大きな房室弁と小さな動脈弁を作れば1階心室部の完成です。2階の心房部は、動脈弁を避けるように“コの字”で、犬の垂れ耳に似た心耳を左右に作ります。静脈は右心房には上下に、左心房には左右に付きます。続いてT字の肺動脈を弁に付けて後ろへ曲げ、最後に大動脈を付けて肺動脈に被さるように後方へ曲げると大動脈弓になります。
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