看護教育 46巻1号 (2005年1月)

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はじめに

平成16年3月に「看護学教育の在り方に関する検討会」の第2次報告書が出され,看護系大学の学生が卒業時までに身につける必要があるとされる看護実践能力の到達目標が提示された。それ以前より,平成14年3月の「在り方検討会」の報告(第1次報告書)を受け,各大学で看護実践能力向上のための教育改善の実例が報告されている1─3)。

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はじめに

 今日,看護基礎教育における看護実践能力の育成の充実が求められている。その背景として,医療の著しい進歩に伴う医療機器の増加とその情報量の多さ,患者の高齢化や疾病構造の変化に伴う看護業務の複雑多様化などにより,安全で質の高い看護が求められていることがある。身体侵襲を伴う看護技術を行うことも多くなっており,2002年9月に厚生労働省医政局長通知1)で「看護師等による静脈注射は診療補助行為の範疇である」と法解釈の変更がなされたことで,静脈注射を安全に施行するための学習を行う必要も示された。また,患者や家族の知識・意識構造の変化により,「患者中心の医療」が明確に意識化されてきている。このような社会の高い医療ニーズに伴って,質の高い看護実践が提供できる人材を育成することは,時代の要請といえる。

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 人は生きているか死んでいるかのどちらかである。しかし,臓器移植という医療は,「死んだ」とされる人からの「生きている」臓器を必要とする。この医療を推進するとどういうことが起こるか。世界でもっとも臓器移植が盛んなアメリカの実情から考えてみたい。

 1970年代までは明らかに実験的であった死体からの臓器移植は,1980年代初頭からサイクロスポリンなどのある程度有効性が高い免疫抑制剤の開発以降,外科技術・術後管理術の向上もあって,この20数年間に次第に盛んになり,欧米では現在,通常の医療として定着している。医療としての有効性が評価されているということであり,さまざまな専門家の努力と臓器を提供してくれたドナーと家族,データを提供してくれたレシピエントのおかげである。しかし,この医療はその発展とともに問題を増幅するという性質をもつ。なぜなら,「死んだ」とされる人の「生きている」臓器を必要とするため,生死の境界線が危うくなるからである。

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はじめに

 戦後のわが国の児童福祉といえば,主に児童の健全育成と愛護(保護)であり,そこでの看護師の役割とは母性と乳幼児の健康の保持および増進に関わる母子保健であった。しかし,近年,児童虐待と配偶者からの暴力が顕在化し,それらへの対応は看護をはじめとした医療専門職にも求められてきている。

看護師国家試験の出題基準改定(2003年5月)では,新しい項目が幾つか加えられたが,中でも,児童虐待防止法とDV防止法の2つはここ数年の間,社会問題にまで発展した国民の関心の高いテーマである。看護職に関係するこの2つの社会福祉の動きは,国家試験対策という一面のみならず,看護師を目指す学生に必要な知識として身につけて欲しい事柄である。

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はじめに

 平成16年10月23日午後5時56分,土曜日夕刻を迎えた中越地方を予測もしない大地震が襲った。激しい揺れで身動きがとれなかった多くの人々は,地震の揺れがおさまると同時に屋外に飛び出し,度重なる余震で大きく揺れる大地の上で,言い知れぬ恐怖と不安に襲われた。これは,いつ終わるともしれない不安な日々の始まりであった。

 新潟県中越地震―川口町で震度7を記録したこの大地震は,人々の暮らしを一変させた。地震直後から家屋の倒壊・損壊そしてライフラインの途絶によって,10万人を超える人々が避難所や車などでの不自由な避難生活を強いられることとなった。

 長岡赤十字看護専門学校(以下,当校と略)も,震度6の烈震に見舞われた。学校施設自体への被害はほとんどなかったが,家屋の倒壊のみでなく,道路の寸断や崖崩れの発生など,次第に明らかとなる被害の大きさに,1週間の休校を決断せざるを得なかった。

 大地震発生直後からの当校の危機対応を振り返るとともに,今後必要とされる中・長期的な取り組みについて述べてみたい。

新潟県中越地震に対して 林 幸子
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 10月23日,中越地震は突然やってきた。土曜日の夕刻,私は丹念にむいた栗ご飯を仕込み,昨夜の残りのシチューを温めなおしていた。すると17時56分,激しい揺れが。「いつもと違う!」と直感し,火の元の確認に走った。

 元栓を止め,長男と屋外に出,隣の庭に2家族が避難し,お互いの無事を確認しあった。「大根を洗っていたら肩を瓦がかすめて…。あと10センチずれていたら…」と,話す隣人の声はふるえている。追って2回の大きな揺れを過ごしたころ,家族が帰宅し安堵した。しかし自宅は真っ暗で余震もあり,入ることはできない。きれいな月夜で,冷えも強く,その夜は近くの中学校に避難した。

特別記事 野生ザルの研究一筋の伊澤紘生氏に聞く

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堀 先生は,ずっとサルの研究をしてこられたわけですが,その先生が教育の場に移られた理由からお聞かせいただけますか。

伊澤 私がこの大学にいるのは,偶然といってもいいでしょう。愛知県の犬山市に,日本モンキーセンターというサルの研究博物館が1956年にできまして,その後1967年に,京都大学にサル学専門の研究所(京都大学霊長類研究所)がモンキーセンターに隣接して設立されました。モンキーセンターは財団法人で,単一寄付者が名古屋鉄道。名古屋鉄道は観光施設の1つと考えていたわけです。そして,霊長類研究所の設立にあたってお荷物の研究部門を敷地の半分とともに京都大学に委譲し,1975年からモンキーセンターはサル専門の動物園になることになって,ちょうどそのとき,私はそこの研究員だったのです。

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 日本と欧米の看護教育システムや看護職の地位に関しては多くの相違があるようです。ここ十数年来,日本の看護教育システムは大きく変化しています。また最近では,外国の看護職を就労者として受け入れる案件も現実味をおびてきました。本論文は,日本の大学で教育経験のある著者の率直な意見が記述されています。原本はボリュームのある内容ですが,主要な箇所を短く翻訳してみました。

連載 ユースカルチャーの現在・53

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 はじめに

A 今日は,「第7回世界青年意識調査」の結果を検討してみることにします。5年ごとに内閣府が実施している国際比較調査です。2003年に7回目の調査が実施され,2004年の秋に報告書がでました。509ページにわたる報告書で,調査の概要,調査の分析,資料の3部構成です。教育社会学者の藤田英典さんをはじめ5人の研究者が詳細な分析検討を行っています。今回と次回,この報告書の資料の部分を利用させてもらいます。詳しい結果の分析は,是非,報告書のほうを見てください。

B 5年ごとに7回目というと30年も続いているわけですね。

A 調査対象者は,各国18~ 24歳ですから,第1回目の対象者はもう50歳をこえています。時系列調査と国際比較調査が同時に行われている貴重な調査研究です。サンプリングも厳密です。今回,日本では1450人の若者が調査対象者になっています。

B 特に前回までと変化した点はありますか?

A 調査対象国が減っています。前回の11か国から5か国になってしまいました。日本,韓国,アメリカ,スウェーデン,ドイツの5か国です。国の数が減った理由はわかりませんが,貴重な調査研究だけに残念なことだと思います。

連載 わがままな漫画・12

夜は友達 横谷 順子
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 「昨日から寝てないの~」友人との待ち合わせで,時々言うせりふ。こう言えば,すこしは同情を買えるだろうと,ちょっと計算したりもする。

 しかし,ナース関係者だと,「私もです」という答えが返ってくる確率が,同業者以上に高い。ので,もちろん同情も買えず,こちらが「だいじょうぶ?」と言いたくなる。

 「教えてメール」を出した時の返事も,ものすごい時間(夜中の3時とか明け方)に返信が来たりして,びっくりすること多し。でも, そういうとき,なんだか嬉しい。「ああ,あなたもこんな時間なのに起きているのね」と,にんまりする。なんだか不思議な連帯感がある。

連載 看護師資格試験における良質な問題の作成システムおよびプール制度導入に関する研究・3

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はじめに

 日本の看護師国家試験では,看護師の資格試験として適切かつ妥当な試験内容を出題し,難易度を安定させることが火急の課題である。このため,第93回看護師国家試験(平成15年度)からは受験生による試験問題の持ち帰りが禁止され,平成16年度からはウェブサイト上で試験問題の公募が始まるなど,試験問題のプール制*1が本格的に導入されている。

 前回,本研究班が開発した「多肢選択式問題作成マニュアル」(以下,マニュアルとする)について報告した。本稿の目的は,このマニュアルに基づいて作成した試験問題の妥当性の検討を通して本マニュアルの有用性を検証し,それらの結果をふまえて看護師国家試験の問題作成に関していくつかの提言を行うことである。

連載 看護教員の資質向上をめざして 都立看護専門学校における取り組み(9)

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はじめに

 都立看護専門学校では,平成7年から「専門性向上研修:専門リーダー養成『看護教育研究』」を実施している。平成15年までで52名が研修を終了しており,現在,4名が研修中である。研修生は平成14年度までは年間6名,平成15年度からは年間4名で,研修日数は,1年間に40日。この40日間は,講師による講義,ゼミ形式での研究指導,個々の研究活動,研究発表会等にあてられる。

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はじめに

 平成15年には看護系大学の数は107校となり,学問としての看護を学ぶ場は徐々に拡がってきた。しかし,看護系大学であってもそのカリキュラムの大部分は保健師助産師看護師学校養成所指定規則に基づく授業科目・内容で構成されており,卒業のためには,臨地実習等の必須単位の取得が必要になっている。一方,平成13年7月,保健師助産師看護師法(以下,保助看法)における欠格条項の改正によって看護業務に関わる絶対的欠格事由は廃止され,相対的欠格事由へと変更された。欠格条項の改正は,業務の一部を適正に行うことが可能である限り免許を付与する方向に改めるべきとして行われたものであり1),このことは,看護教育においても,障害を持つ学生に対して保健師,助産師,看護師の免許取得の門戸を開いたことを意味するといえる。すなわち,資格取得の面での障害者の権利制限の不利益,不公平が軽減されると同時に,障害を持つ学生に看護を「学ぶ」機会を大きく開いたものと考える。

 諸外国での障害者の欠格条項の現状を見ると,一般に先進国では「障害による欠格はなく,能力で判定」されている2)。また,ある種の障害者に対してある種の医療専門職に就くことに制限がある場合があるが,これは法律ではなく専門職団体の規則で決められており,各ケースで個別に判断される方向に徐々に変わってきている2)。看護系大学においては,入学の許可を前提として,障害を持つ学生に対してどのような受け入れや設備の供給をするのかなどの具体的事項が検討されつつある3, 4)。これは,看護職に従事するかどうかは別として,障害を持つ学生が看護を学ぶ機会を得られるように変化しつつあることを示していると考える。

 このように,諸外国では障害があっても何ができるかが着目され,看護学教育においては,具体的な受け入れの取り組みが進んできているが,わが国の看護系大学ではどうであろうか。障害を持つ学生への対応が変化しつつある日本の現状について,一般大学の受験および受け入れについての調査5)は一部で行われているが,看護系大学における受験の可否等についての実態は明らかにされていない。本研究は,この現状を明らかにすることを目的とし,看護系大学における障害を持つ学生の受験可否が障害の種類や程度,設置主体等によってどのように違うか,また,障害を持つ学生の受験可否の方針決定および検討の状況がどのようになっているのかについて調査をした。

新連載 電子カルテシステム導入と看護学実習─昭和大学保健医療学部の取り組み・1

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はじめに

 国家が取り組む「e-Japan 戦略」(IT 戦略本部2001年)1)を受けて厚生労働省が「保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」2)を発表したのは平成13年であった。この提言では①平成16年度までに全国の二次医療圏ごとに少なくとも1施設は電子カルテの普及を図ること,②平成18年度までに全国の400床以上の病院ならびに全診療所の6割以上に電子カルテの普及を図ることが目標として掲げられた。これを受けて全国的に電子カルテの導入が進められている。

 電子カルテシステムの普及度に関する調査は厚生労働省の医療施設調査3)(平成14年10月1日)が公表されているのみであるが,この調査によると当時400床以上の849病院のうち導入済み21病院(2.5%),具体的な予定がある234病院(27.5%)で,導入予定なし594病院(70%)となっている。しかし上記の提言に基づいて電子カルテシステムを導入する病院が増加することは必至であり,看護学教育に携わる教員は,学生がそのような病院で臨地実習を行うことを視野に入れて,今から効果的な実習指導に向けて準備をしていくことが重要となる。

 本学が電子カルテシステムを導入した系列病院で看護学実習を実施するようになって2年が経過した。実習を開始するに当たって,当該施設が開院2年目でまだ基盤整備中ということもあり,臨床側・大学側いずれも不安で一杯であった。その中で相互に連携をとり,試行錯誤を繰り返しながらより良い実習指導を目指して取り組んできた。その結果は2003年・2004年の日本看護学教育学会学術集会4─7)において報告したとおりである。これまでに得られた知見をもとに本連載で1回目は看護学実習の実際について,2回目は学習効果について,3回目は練習用ソフトの作成と実習効果について紹介していきたい。

基本情報

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看護教育
46巻1号 (2005年1月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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