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はじめに
平成15年には看護系大学の数は107校となり,学問としての看護を学ぶ場は徐々に拡がってきた。しかし,看護系大学であってもそのカリキュラムの大部分は保健師助産師看護師学校養成所指定規則に基づく授業科目・内容で構成されており,卒業のためには,臨地実習等の必須単位の取得が必要になっている。一方,平成13年7月,保健師助産師看護師法(以下,保助看法)における欠格条項の改正によって看護業務に関わる絶対的欠格事由は廃止され,相対的欠格事由へと変更された。欠格条項の改正は,業務の一部を適正に行うことが可能である限り免許を付与する方向に改めるべきとして行われたものであり1),このことは,看護教育においても,障害を持つ学生に対して保健師,助産師,看護師の免許取得の門戸を開いたことを意味するといえる。すなわち,資格取得の面での障害者の権利制限の不利益,不公平が軽減されると同時に,障害を持つ学生に看護を「学ぶ」機会を大きく開いたものと考える。
諸外国での障害者の欠格条項の現状を見ると,一般に先進国では「障害による欠格はなく,能力で判定」されている2)。また,ある種の障害者に対してある種の医療専門職に就くことに制限がある場合があるが,これは法律ではなく専門職団体の規則で決められており,各ケースで個別に判断される方向に徐々に変わってきている2)。看護系大学においては,入学の許可を前提として,障害を持つ学生に対してどのような受け入れや設備の供給をするのかなどの具体的事項が検討されつつある3, 4)。これは,看護職に従事するかどうかは別として,障害を持つ学生が看護を学ぶ機会を得られるように変化しつつあることを示していると考える。
このように,諸外国では障害があっても何ができるかが着目され,看護学教育においては,具体的な受け入れの取り組みが進んできているが,わが国の看護系大学ではどうであろうか。障害を持つ学生への対応が変化しつつある日本の現状について,一般大学の受験および受け入れについての調査5)は一部で行われているが,看護系大学における受験の可否等についての実態は明らかにされていない。本研究は,この現状を明らかにすることを目的とし,看護系大学における障害を持つ学生の受験可否が障害の種類や程度,設置主体等によってどのように違うか,また,障害を持つ学生の受験可否の方針決定および検討の状況がどのようになっているのかについて調査をした。
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