焦点
「臓器移植大国」アメリカの実情―生死の境界線を危うくする過渡期の医療
会田 薫子
1
1東京大学大学院医学系研究科健康科学専攻修士課程
pp.23-30
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100575
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人は生きているか死んでいるかのどちらかである。しかし,臓器移植という医療は,「死んだ」とされる人からの「生きている」臓器を必要とする。この医療を推進するとどういうことが起こるか。世界でもっとも臓器移植が盛んなアメリカの実情から考えてみたい。
1970年代までは明らかに実験的であった死体からの臓器移植は,1980年代初頭からサイクロスポリンなどのある程度有効性が高い免疫抑制剤の開発以降,外科技術・術後管理術の向上もあって,この20数年間に次第に盛んになり,欧米では現在,通常の医療として定着している。医療としての有効性が評価されているということであり,さまざまな専門家の努力と臓器を提供してくれたドナーと家族,データを提供してくれたレシピエントのおかげである。しかし,この医療はその発展とともに問題を増幅するという性質をもつ。なぜなら,「死んだ」とされる人の「生きている」臓器を必要とするため,生死の境界線が危うくなるからである。
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