保健婦雑誌 48巻9号 (1992年9月)

  • 文献概要を表示

 日本看護学会地域看護分科会と,全国地域保健婦学術研究会と,神奈川地域保健婦研究会の3学会・研究会について,昭和60年から平成元年の5年間にわたり,内容を比較,分析した。その結果,次のことが明らかになった。

●地域は病院からの報告が半数以上を占めており,全国,神奈川は,保健所,市町村がほとんどである。

●研究の種類をみると,調査研究が,3学会,研究会ともに35%以上を占め,特に全国が多い。事例研究は地域が多く,全国が少なく,その傾向は過去5年の傾向と同様である。単なる報告として発表されているものは,全国が半数にみられるが,地域は1/3であり,この傾向も過去の資料と同様である。

●具体的な研究方法としては,地域,神奈川では,質問紙が多く全国は面接が多い。

 研究方法の組み合わせは,地域,神奈川が全国に比して有意に多い。記録の分析は10%前後と減少傾向を示している。

●対象者は,成人を対象としたものが3学会,研究会ともに多いが,老人を対象としたものでは,地域が最も多い。小児は,神奈川が多い。

●対象疾病別分類では,地域は慢性疾患,身体障害者が多く,全国では精神障害が,神奈川では,身体障害,難病が多く,その傾向は異なっている。

●研究内容をみると,地域は,継続看護,在宅ケアが約40%を占めている。全国と神奈川は,実態調査,意識調査,保健指導が約30%を占めている。衛生教育,地区管理活動は神奈川に多く,組織化,集団検診は全国に多く,神奈川は地域に比して,やや多くなっている。

  • 文献概要を表示

はじめに

 平成2年度から,保健婦教育課程のカリキュラムが改正され,「地域保健活動の実践を通じて公衆衛生看護の役割を学ぶ」という主旨に基づいて,実習は「公衆衛生看護学」に位置づけられ,基礎的学習をより確実に理解させるため,内容の充実を図る構成とすることになった。

 そこで,私たちは上記の主旨を実行に移すにあたり,まず旧カリキュラムにおける実習内容を評価し,実習目標達成上の問題点がどこにあったかを明らかにしたうえで,新カリキュラムの実習に反映させることとした。

  • 文献概要を表示

はじめに

 腰や膝の病気の多くは直接生命に関わることはないが,日常生活や仕事への影響が大きく,行動半径が狭められ,活動能力の低下を余儀なくされることも少なくない。

 高齢化社会を迎えた今,足腰が丈夫であることは,老後を楽しく活動的なものにするために最も大切であり,基本的なことでもある。

  • 文献概要を表示

はじめに

 日本人の食生活の西欧化に伴い,日本人の疾病構造は急激に変化を示している1)。総カロリー摂取量,脂肪摂取量の増加に伴う肥満ならびに血中脂質の増加に関連する疾患の増加は顕著である2)。特に動脈硬化に伴う虚血性心疾患は,今後も増加の可能性が危惧されており3),公衆衛生上効率的な予防対策を行うことが急務とされている。

 動脈硬化の重要な危険要因の1つとされている高脂血症は,明確な自覚症状に乏しいことから,病院や健康診断で偶然に診断される場合が大部分で,高脂血症の成因とその予防対策について疫学的に十分に検討がなされているとはいえない。また,1989年に施行された労働安全衛生法の改正により4),ほとんどの企業体で高脂血症のスクリーニングが行われるようになり,高脂血症を診断する機会が大幅に拡大した。これは同時に,高脂血症に対する保健指導の機会が増大することを示唆している。

  • 文献概要を表示

問題と目的

 未熟児(本稿での未熟児とは,出生体重2500g未満の児である)の出生率が今後増加する予測1)の中で,長期追跡研究の必要性が指摘されている2)。これと同時に未熟児のフォロー体制の点検も必要であろう。未熟児のフォローの上では母親へのサポートも重要である。未熟児の出生を正常な新生児とは異なる新生児期の問題や事態が母親へ及ぼす心理的影響に焦点を当てて検討し,それらをフォロー体制へ生かすことが必要であろう。その際,未熟児に特有な問題の1つとして,catch upに代表されるように予後が年齢と共に変化することがあげられる。

 したがって,予後の違いや経年的変化によって母子をフォローする場合の問題点が異なると予想される。この点を整理するための前提作業として,未熟児医療に対する母親の意識を把握する必要がある。

  • 文献概要を表示

目的

 保健婦の行う家庭訪問では,対象者のホームグラウンドで相手に受け入れられたうえで,専門的立場からの助言や指導をしていくという特殊な状況に立たされる。また,保健婦は単独でその場で判断をして効果的な方法を見いだしていかなくてはならない。そこで,個別事例ごとにしっかりとしたスーパービジョンが必要になるわけであるが,現在,自治体ごとに老人訪問指導事業が推進されるようになってきて,数量的にも多大な訪問活動が実施されるようになっている。

 本研究では,老人訪問指導の実施過程で,保健婦はどのような課題に遭遇しているのかを調べ,現状においてそれらの課題を克服するための保健婦など,看護専門職の間ではどのような対策が必要であるかを考える資料を得たい。

  • 文献概要を表示

はじめに

 現代の社会背景の変化によるストレスは,健康を脅かすものとして社会が強く意識し,またストレスに起因する疾病が増加しており,問題になっている1)。しかし,中心は労働衛生の分野においてであり(トータルヘルスプロモーション2)),地域の公衆衛生分野(保健)におけるその取り組みは少ない3)

 地域における精神保健活動は,精神保健法の中で保健活動として位置づけられているが,これまで保健所では精神障害者を中心とした地域のサポートシステムを構築することがねらいであった4)。もちろん,この活動は重要なことではあるが,同時に広く住民の心の健康に関して積極的に働きかける必要がある。

  • 文献概要を表示

はじめに

 当村は,長野県最西北端に位置する豪雪山村であり,冬期間はスキー観光を中心産業としている。一方,小谷杜氏として知られる酒造業に出稼ぎをする人も多い。

 村では,糖尿病教室を実施しているが,1989年の教室出席者36名中,肝障害を併せ持つ人が6名もいた。参加者の中にはアルコール性肝炎と診断され治療中のケースがいる。糖尿病のコントロール不良で,何回も内科へ入退院を繰り返しているが,本人の自覚はもとより,家族の理解のないままアルコールへの認識がなされていないことにも気がつく。また,村の家庭を訪問すると,昼間からお茶代わりに酒を出すことがあるという話も聞く。

  • 文献概要を表示

 「ホワイエだより」を本誌に連載中の稲毛ホワイエ(以下ホワイエ)は,ボランティアが運営する民間の痴呆性老人デイルームで,月・火・木曜日の1週間に3日開かれている。場所は千葉市のJRの稲毛駅から徒歩2分にあるマンションの2階部分の30坪を使っている。近くで開業している精神科医の大塚明彦先生が「ぼけ老人をかかえる家族の会」の会員に,それまで診療所として使っていた場所を提供したことがきっかけとなってホワイエが発足,今年の秋で開設されて5年目を迎える。ホワイエとはフランス語で炉,ホールとかホーム,または憩いの場という意味だそうだ。

 ホワイエの1日は,家族に送られて来るお迎えることから始まる。8時30分,ボランティアは,やって来たお年寄りに話しかけて気分をほぐす一方,家族たちとお年寄りの様子などの情報交換と忙しい。お年寄りがそろったところでミーティング。その日の予定,注意事項,昼食のメニューなど打ち合わせる。当日みえたお年寄りは7名。ボランティアのいない間,静かに椅子に腰掛けている人,眠ったままのような人とさまざまである。

  • 文献概要を表示

 本年(平成四年度)のわが校の保健学科に入学した22名が,いま生き生きとして授業に臨んでいる姿はうれしい。ところでここ2〜3年特に気のつくことがある。それは保健婦を目指す者が年々増加しており,極めて狭き門になりつつあるということである。これはわが学校のみならず全国的な傾向ではなかろうか。いつの時代でもそうであるが,若い人たちの時代先取りの感覚は鋭い。深刻な看護婦不足の実態を熟知する彼女らが,看護婦からさらに保健婦へと進学する理由は,これらにかかわっている私どもにはよくわかる。きたるべき21世紀を目前にして,新時代のニーズに保健婦が質・量ともにこれに応えるものでなくてはいけない。そこで私自身の気にかかることを少し述べてみたい。

  • 文献概要を表示

はじめに

 広島県は,国体の開催や平成6年のアジア大会を1つの動機づけとして,「時代の流れに対応した組織づくり:小笠原広島県副知事」を目指して,県の組織改革を進めている。ここでは,広島県における保健と福祉分野での組織改革の動向とその経過を事例として,今後の課題と方向性を探ってみたい。

連載 アンケート調査の方法入門—市町村老人保健福祉計画策定のために

  • 文献概要を表示

はじめに

市町村老人保健福祉計画とニーズ把握

 保健・福祉行政の分野においては,地域住民の生活実態や各種サービス需要を把握するために,アンケート調査が実施されることが多い。この際に,調査の目的,調査の実施計画のデザイン,アンケート調査票の作成,データ入力,解析方針の明確化,データ解析などの一連の過程について的確に予定を立てておかないと,せっかく多大な時間と費用を消費し,多くの機関の協力を得てアンケート調査を実施しても,不適切なデータしか得られなかったり,また回収された多くのアンケートを目の前にしてどうやって解析をし,何を導き出せばいいのか,途方にくれてしまう場合もある。特に平成2年6月の老人福祉法などの改正に伴い,市町村は平成5年度に老人保健福祉計画策定が義務づけられたため,市町村の保健福祉担当者は,中高年者の保健・医療・福祉にかかわる生活実態と各種サービス需要の具体的把握のため,地域住民を対象とした大規模なアンケート調査を実施する機会が多いと思う。

 著者らは昭和61・62年に,広島県の高齢者の保健・医療・福祉システムの構築のための基礎資料を得る目的で,広島県の農山間部(庄原市・比婆郡)および都市部(海田町・府中町)において,65歳以上の高齢者を対象に,保健・医療・福祉の実態ならびにサービス需要に関するアンケート調査を実施し,両地区における保健・医療・福祉サービスの供給と需要の実数を把握した1-3)

連載 保健婦日記—七年目のひとりごと・3

ネットワーク 伊藤 雅代
  • 文献概要を表示

はじめに

 産業保健は、保健婦がたった一人頑張ってもたいした活動はできないもので、チームがあって初めて効力のある活動が展開できるものだと、最近つくづく感じている。企業で今までいわれてきた「安全衛生」という視点から考えると、総括安全衛生管理者、専任の衛生管理者がいて専属の産業医が必要である。しかもその三者が、安全衛生活動に興味と理解と熱意を持って取り組んでいる、という状況がベストである。現在、労働省で提唱されている健康の保持増進活動・健康づくりという視点から考えると、上記の三者に加え看護職の他に栄養士、ヘルスケアトレーナー、カウンセラーなどの専門家の力が必要となってきたというのが現状である。

 企業はトップの姿勢が、そのまま仕事の体制に直接影響を及ぼすために、一般的には熱心な工場長や所長がいる事業所の活動は非常に活発で、そうでないところはそれなりに……となっているようである。また、大変熱心なスタッフがいて、その熱意と努力がトップを動かしたという事業所も多い。

連載 ホワイエだより・18

ホワイエで学んだこと 大塚 明彦
  • 文献概要を表示

はじめに

 精神科医の筆者が「ホワイエ」をボランティアの皆さんに提供した経緯については『ぼけとたたかう』(新日本新書,1991.5.10)に詳しく述べられているので参考にしていただき,ここでは日頃考えていることを思いつくままに述べてみたい。

連載 保健所長のひとりごと

  • 文献概要を表示

35年やって思うこと

 昭和32年,宮城県気仙沼保健所を振り出しに,衛生行政一筋に35年勤め上げた。振り返って見るといろいろなことがあったが,保健所は常にその時の社会情勢に振り回されてきたといえる。その中にあって,保健所はいったい何をなすべきか?今,世の中は保健所に何を期待しているのか?を考えて努力してきたつもりである。

 パブリック・ヘルス・マインドという言葉があるが,臨床畑から移って来た所長が多くなったためか,必ずしも,発想が公衆衛生的ではないことが多くなった。先日,全国所長会で,低肺機能者に保健婦が援助しないか?という話があったり,部長から,終末医療に保健所保健婦があたってくれないか?ということだったが,私は両方とも直ちにお断りした。

連載 地域ターミナルケア—看とりを支える沼隈町の通所訓練教室・14

思いは50cm先に 森下 浩子
  • 文献概要を表示

 思いが50cm先を走り,舌足らずの文章となって走ってしまうこの思い。とても恥ずかしくて嫌な気持ちである。東京の菊地頌子さんのように頭が清流のように澄み,仕事では厳しく大らかで,理解できない我々に上手に“納得!”と思わせる文章や絵を示す技術。これぞまさしく“保健婦”といえるその菊地さんの足元にも及ばぬ我々。沼隈町のチームでは束になってもやれることではない。この程度の我々と悟りながら,昨年の8月号から続けてきた『地域ターミナルケア』の連載も最終回となってしまった。

 自分が書いたのだから責任を取らねばならないことは百も承知しているが,原稿の締め切りが過ぎてわが家に遅く帰り机に向かう真夜中。書くべきことが先を走って,昼間何日間も,このように書こう,このことを書かねばと思っていたことが筋書通りに浮かんでこない。書き始めるととんでもない方向へ行ってしまう。さっき風呂の中で“これでよし!”とつぎつぎと浮かんだ言葉など,どこを探しても出てこない。夜中の2時半を過ぎてどうやら原稿のページが足りるかな,と思う頃1つの方向ができてきた。しかし思いの方向とは違った道へ文が進んでいるが,それなりに我々のやっていることを映し出している。このことには嘘はない。要領よく書けなかった。かっこうが悪いだけではない。

連載 保健婦はおもしろい

  • 文献概要を表示

 保健婦稼業の30年の歳月は,前半を保健所で,中間を家族の在宅ケアと母校の看護学校で,後半は老健法の制定と共に再び保健所に戻る中で,さまざまな地域の人々との生活の場での出会いを体験し,人間の生き方のすさまじさやほのぼのとした温かさなどを通して生きることの意味を学ばせてもらえたと思います。この体験は保健婦ならではのものと思います。

 また近年,私の体験の中でもかなり大きなエネルギーを必要とする仕事にぶつかりました。昭和62年に開始された保健・医療・福祉の連携による地域ケアシステムの推進のモデル事業に参加したことです。この事業の展開にあたっては,昭和50年から開始された訪問指導事業の10数年にわたる事例を分析し,どんなシステムがあったらあの患者さんや家族の生活が改善できたのかという視点に立って課題を整理し,地域の関係機関や団体による協議組織に提示し,討論の素材としてきました。

  • 文献概要を表示

 悩んだなァー。今だって仕事の悩みは尽きないけれど,保健婦になっての10年間は「保健婦ってなァーに」とか「保健婦の仕事って何だろう」と新人保健婦のガイドブックのようなタイトルで,ずっと悩んでいた。片っ端から研修会に出てみたが,これだと思ってつかんで帰ると,水の中のお月様をすくった時のように,スルリと逃げてしまう。まるで鬼ごっこだ。

 その頃一番の苦手は家庭訪問。「私が行って何かしてあげられる?」と思うと足がすくんで行けなくなってしまう。おかしな話だが,今一番楽しい仕事が家庭訪問。

連載 海外の文献から・6

ポリオ撲滅運動 城川 美佳
  • 文献概要を表示

 全世界からポリオ(小児麻痺)を駆逐することは,予防接種拡大計画(EPI : Expanded Programme on Immunization)における3つの重要施策の1つである。この施策を進めるために,EPIではサーベイランス体制の確立・改善とその情報に基づいたプライマリ・ヘルスケアの改善に努めている。

 今回紹介するのは,WHOがまとめた1988年から1992年1月までの全世界におけるポリオ撲滅状況と,それを可能にしたサーベイランスシステムの概要である。

基本情報

00471844.48.9.jpg
保健婦雑誌
48巻9号 (1992年9月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月14日~9月20日
)