連載 地域ターミナルケア—看とりを支える沼隈町の通所訓練教室・14
思いは50cm先に
森下 浩子
1
1広島県沼隈町
pp.740-743
発行日 1992年9月10日
Published Date 1992/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900567
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思いが50cm先を走り,舌足らずの文章となって走ってしまうこの思い。とても恥ずかしくて嫌な気持ちである。東京の菊地頌子さんのように頭が清流のように澄み,仕事では厳しく大らかで,理解できない我々に上手に“納得!”と思わせる文章や絵を示す技術。これぞまさしく“保健婦”といえるその菊地さんの足元にも及ばぬ我々。沼隈町のチームでは束になってもやれることではない。この程度の我々と悟りながら,昨年の8月号から続けてきた『地域ターミナルケア』の連載も最終回となってしまった。
自分が書いたのだから責任を取らねばならないことは百も承知しているが,原稿の締め切りが過ぎてわが家に遅く帰り机に向かう真夜中。書くべきことが先を走って,昼間何日間も,このように書こう,このことを書かねばと思っていたことが筋書通りに浮かんでこない。書き始めるととんでもない方向へ行ってしまう。さっき風呂の中で“これでよし!”とつぎつぎと浮かんだ言葉など,どこを探しても出てこない。夜中の2時半を過ぎてどうやら原稿のページが足りるかな,と思う頃1つの方向ができてきた。しかし思いの方向とは違った道へ文が進んでいるが,それなりに我々のやっていることを映し出している。このことには嘘はない。要領よく書けなかった。かっこうが悪いだけではない。
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