助産婦雑誌 56巻2号 (2002年2月)

特集 生殖補助医療

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はじめに

 1978年に英国で初めて体外受精—胚移植(Invitro fertilization and embryo transfer,以下IVF-ET)による児が誕生して以来,不妊治療の技術的な進歩は目を見張るものがある。特にこれまで難治とされてきた卵管性不妊,男性不妊および原因不明不妊に対して,高い成功率を上げることができるようになり,不妊治療の方法が大きく変換した。

 しかし一方では,卵巣過剰刺激症候群(Ovarian hyperstimulation syndrome,以下OHSS)の発生や多胎妊娠の頻発などの副作用が増加し,医療上のみならず,社会的な問題になっている。また長野県の医師により血縁者からの精子や卵子を用いた非配偶者間体外受精が学会の会告に反して実施され,親子関係の混乱がもたらされるなど,倫理的な問題もクローズアップされてきた1)

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「厚生科学審議会生殖補助医療部会」開催までの経緯

はじめに

 わが国では現在,10組のカップルのうち1組が,なんらかの不妊に関する問題をかかえているといわれています。また,不妊治療の影響等もあり,ふたご,みつごを含めた多胎児の出産が増加しています。平成11年では,分娩総数1,201,381件のうち,ふたこの分娩件数は11,606件,みつごでは341件。また,低出生体重児の増加もみられ,昭和45年では出生体重2,500g未満の出生数の割合が5.7であったのが,平成11年では8.4となり,また,1,500g未満の出生数の割合は昭和45年では0.4であったのが,平成11年では0.7となっています。

 現在,助産婦の勤務場所が病院と診療所が合わせて約8割となっており,助産婦諸氏は多かれ少なかれ,不妊女性や家族と関わっておられることでしょう。

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 生殖(Reproduction)という語彙は,生物学においては古くから使われているが,「生殖医療」という名が医療用語として使用されるようになって20年に満たない。

 不妊症治療は,受精から着床に至る医療であるが,生殖医療は受精前の配偶子(精子,卵子)の形成をも含む。すなわち受精を操作することが可能となって誕生した新しい医療である。

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はじめに

 「生殖医療研究協会」は医師,エンブリオロジストおよび生殖医学関係の研究者が中心となって,高度生殖医療を学び,望ましい不妊治療の普及を目指そうと,1992年,組織された。そして1997年,正式に全国組織として改組され,「日本生殖医療研究協会」が発足した。1998年から,不妊カウンセラー・体外受精コーディネーター養成講座を主催し,現在まで9回開催している。

 日本生殖医療研究協会が体外受精コーディネーターを養成しようとした背景には,急激に普及した体外受精を中心とする不妊治療に,患者,報道,一般社会からもいろいろな批判が発せられたことが契機となっている。不妊治療を担う医療者に,患者の痛みに対する認識が足りないとの印象を人々が持ったのがその理由かもしれない。このような状況を反映してか,近頃,患者の心理的サポートを含めた対応や,社会的側面にも触れた医学関係の著書も見られるようになった1)

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はじめに

 日本で先端生殖技術による妊娠への医療介入が開始されてから,およそ20年の歳月が流れた。この間,産婦人科医療の現場では,数多くの看護職がクライアントと出会ってきたことであろう。ことに日本は,従来の産婦人科診療のシステムの中で不妊診療を行なう施設が少なくないために,看護婦と同じくらいの数の助産婦が関与しているのではないかと思われる。

 しかしながら,助産婦を含め,看護職はどれほどクライアントのニーズに応えてきたであろうか。この領域における看護職,助産婦の役割は何であろうか。

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なぜ不妊であることは隠されるのか?

 不妊のカップルは10組に1組と言われているが,多くの人は日常的には不妊の存在を意識していない。不妊かどうかは外からはわからないため,そもそも可視化されにくい。子どもがいないことは他者からわかる事実だが,不妊の存在が意識されない状況では,それはまだ生まれていない状態として認識されてしまう。だから子どもがいることが自明のこととして,「お子さんは?」という挨拶が繰り返されてきた。この結果,可視化されにくい不妊が,当事者にとっては隠すべき存在となってきた。

 最近,少子化やさまざまな生殖医療をめぐる話題の中で,不妊はたびたび取り上げられいる。しかし,それは隣に存在するかもしれない不妊とは結びつかず,実像から離れた不妊像,生殖技術への期待を作り出していくだけである。次々にマスコミに紹介される新しい技術,「不妊のカップルに朗報」という記事を目にするたびに,頭をかかえている当事者も多い。それが自分たちにさらなる圧力になることを知っているからだ。人々が不妊治療の実態を知らないことが偏見を生み,その偏見がさらに不妊を隠すべきものにしていく。

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はじめに

 世界で初めて体外受精によるベビーが1978年に生まれてから,約四半世紀経った。日本では最初の体外受精児が1983年に東北大学医学部で生まれたのを皮きりに,1990年までに1708人,1991年だけで1700人にと,生殖補助医療(ART:assisted reproductive technology)で生まれた子どもの数は急増している。今日生殖補助医療は,女性週刊誌に体験者の記事が紹介されるほど日常化し,商業主義化している。インターネットには日本人に,アメリカでの体外受精を勧める情報が流され,卵ドナーや代理母を提供する「国際受精機能センター」や「家族創造社」といった会社に費用をだせば,体外受精を受けることができる状況がある17)

 しかし,それでよいのであろうか。 生殖補助医療は「ひとつの命」を生み出し,その人が人類史上,前代未聞の人生を,時代のパイオニアとして生きなければならないことにつながる。私たちは今,「生まれてくる子どもの幸せを保障できるのか」という現実的な課題に直面している。

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 本誌 今日は,元・大阪府子ども家庭センター(児童相談所)の児童福祉司だった才村眞理先生に,わが国における養子縁組制度についてお話を伺います。

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育児相互支援を子育て中の母親と共に

 子育て支援グループamigo(アミーゴ)は,2001年4月1日に設立された,育児中の母親たちが中心となって活動しているグループです。産前から産後約1年の母子のケアを中心に,地域に根付いた育児相互支援の拠点を目指しています。現在7人のスタッフのもと,約100人のお母さんたちが参加しています。

 本稿では,その設立の動機と特徴,今後の展望について述べたいと思います。

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 2001年8月に,家族中心の出産ケアを行なっていることで知られるフィンランドを訪問した。

 目的は現在,家族中心の出産ケアを行なっているフィンランドを訪問し,出産サービスの現在のありよう,そこに至るまでの政策的推移,周産期疫学指標の変化,人的資源の職能変化とトレーニング内容,女性の側の受け止め方,等について調査を行なうこと。同調査結果を参考とし,日本のよりよい出産サービスに向けての施策,特に出産に関するソフトの改善,ハード(出産施設)の改善,および出産休暇等の制度の確立に向けての提言を行なうことにある。

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 産後のお母さんが育児のいいスタートがきれるように地域の中でサポートしようと,2001年4月,助産婦の大坪さんと育児支援コーディネーターの松田さんは,東京・世田谷で子育て支援グループamigo(アミーゴ)を立ち上げました。amigoはスペイン語で「友達」の意味です。

 amigoの特長は,お母さんたちの育児支援グループに助産婦という専門家が関わっていること。また,お母さんが支援の受け手になる従来の育児支援から,お母さん同士がお互いに支援者になる育児相互支援へと発想を転換し,地域ぐるみの子育て,地域コミュニティの復権をも目指しています。

連載 新生児医療最新トピックス・13

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 筆者はこれまで25年余にわたって「安定同位元素を用いた新生児研究」を行なってきた1)。放射線に感受性の高い新生児および周産期医療においてこそ,非放射性で赤ちゃんにやさしい安定同位元素を標識とした研究が行なわれるべきであり,この機会にその中で最も広く知られている13C呼気テストを紹介する。

連載 誕生の詩—滝沢助産院物語・2

14歳の夏 川野 裕子
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 妹が誕生した。

 7ヶ月先に妹の誕生があると知ることは、2ヶ月前に何があったかを知ることだった。人間の命のいとなみ。

連載 とらうべ

縄文の人に学ぶ 木村 守男
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 国際時代の中で次世代に思いをいたすとき,国民一人ひとりが,今何が大事なのか,立ち止まって足もとを見つめ,日本の将来のために考えなければならないことでしょう。子供にとって,健やかに,個性豊かに育まれる環境が大切だと思います。子供たちが,他人の悲しみや苦しみに涙し,喜びを友と分かち合える子であってほしい,自然の美しさや不思議に気付く感性に優れた子であってほしい,豊かな創造性と個性をもち,未来に向かって大きな夢を抱く逞しい子供たちを育むこと,これが全ての人の願いだと思います。

 そのために何が大事でしょうか。それは,少子社会脱却だと思います。

連載 判例にみるジェンダー・13

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児童虐待の実態と法

 わが国の児童福祉法第25条には児童虐待の通告規定があるが,関係者に十分知られているとはいえない。しかし,旧厚生省の1990年から児童相談所に寄せられた虐待相談件数の調査によると,1999年には過去最高の11,631件となり,90年当初の約10倍に増加している。表に現われない数はその10倍とみてよいであろう。やっと,2000年11月20日に施行された児童虐待防止法は,現状の状況を踏まえ,「親権」の制限,福祉関係者の立ち入り調査,さらに通告者の職種が明記された。しかし,残念なことに通告者の職種に「助産婦」は明記されていない。

 児童虐待に至る動機には親側の育児の疲れ,孤独もあるが,深刻な児童虐待にいたる背景には,夫婦の関係,夫による妻への暴力も無視できない。

連載 りれー随筆・207

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 私は助産婦として大阪の聖バルナバ病院で3年程勤務した後,結婚して,上京,1年余り助産婦として働きました。長男の出産を機に退職し,その後さらに1男1女に恵まれ,現在は8歳(男)を頭に6歳(男),4歳(女)の3人の子供と主人とで,アメリカで生活をしています。

連載 英国助産婦学生日記・14

勉学と看護実習の秋 日方 圭子
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●2002年10〜11月

 9月にのんびりしていた分,10,11月は課題の提出締め切りが続いて落ち着かなかった。小論文はこれまで何度か書いたけれど,資料集めにも時間がかかるし,書き始めてからも課題の内容に沿っているか再確認しないと,質問と食い違ったことを書いていたりするから危ない。いつもクラスメイトのシャメリーや指導教官のアナ,それに上級生のフラットメイトに相談して,助言をもらって,触発してもらっている。

 課題はバングラデシュからの移民が妊娠した例をもとに,この状況で起こってくる問題を論じるケーススタディ。私の住んでいるサリー州は外国人人口が2.5%と低いけど,実習先でインド,パキスタン,バングラデシュ出身の妊産婦と会う機会は時々あってコミュニケーションの難しさは実感していたし,イギリスの医療サービスに馴染めない彼女たちの戸惑いは,同じ外国人として理解できるので,この課題に取り組むのはおもしろかった。

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若者の中絶の増加

 10代女性による妊娠中絶が増加している。80年代に入って漸増傾向が続いていたが,特に目立つのは96年以降の急増である。2000年の件数は44,477件,人口千人中の実施率は12.1で,いずれも週去最高を記録した。70年代末と比べると,総件数は半分近くまで減少しているのに,10代の中絶は逆に3倍に増加している。そのため,優生保護法施行後はほぼ一貫して減少してきた総件数が,99年には増加に転じた(以上,厚生労働省母体保護統計)。

 厳密にいうと,20代前半の中絶率も同様の増加傾向を示しているから,10代後半からの10年間に行なわれる中絶がここ5年間で急増したということである。つまり90年にティーンエイジャーの仲間入りをした世代の女性,そしてその女性たちと性交した男性たちが,問題の直接の当事者であるということだ。

基本情報

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助産婦雑誌
56巻2号 (2002年2月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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