連載 新生児医療最新トピックス・12
サイトカイン:生体の細胞と細胞の間を駆けめぐる不思議な物質(下)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター
pp.76-79
発行日 2002年1月25日
Published Date 2002/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902804
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サイトカインによる新生児感染症の早期診断
多くのサイトカインが感染などの生体への刺激に反応して産生されることはすでに述べた。それらが発熱や発赤などの炎症の病態も作り出すのだが,TNF-αやIL-1およびIL-6などは,肝細胞を刺激してCRP(C反応性蛋白)などの急性反応物質を産生する。それ故,CRPなどの急性反応物質の上昇を見て感染の有無を判断する方法に比べれば,それを作り出す刺激物質となるサイトカインの上昇をとらえれば,より早く感染を兄つけることができると考えられる。感染のみならず,CRPなどは,手術や特に新生児の場合は,出生というストレスによって生理的な上昇をすることが知られている。図1,2は,分娩に伴うCRPとIL-6の生理的上昇が分娩時のストレスによることを示したデータである1)。IL-6がCRPよりも12時間早期にピークを作っていることは,IL-6がCRP産生を刺激していることの証明である。それによって,より早く児の異常を発兄できることを示している。
急性反応物質を産生させるサイトカインとしては,IL-1,IL-6,TNF-αがよく知られており,感染のバロメータとして,多くの研究がなされてきた。最近IL-8も子宮内感染の児で上昇することや,院内感染の早期発兄に利用できることなどが示されている2)。サイトカインを測定することの迅速性に加え,従来のCRPなどの組合せにより,その特異性を高めることが,ひとつの方法として試みられている3)。いずれにしろ,サイトカインへの知識が高まり,より迅速に簡便に測定できるようになれば,新生児感染の対策は,さらに一歩前進するであろう。
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