手術 73巻8号 (2019年7月)

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ポイント

・横行結腸間膜の解剖が複雑なのは発生の胃回旋,腸回転によって,本来,出会うはずのない胃と横行結腸が近接することに起因する。

・発生学的に背側胃間膜である大網の後葉が横行結腸間膜に“横行結腸間膜前葉”として付着しているために,解剖把握が難しい。

・横行結腸癌手術では背側胃間膜由来臓器の大網・膵・脾をどのように横行結腸間膜から剥離していくか,がポイントである。

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横行結腸切除術がなぜ腹腔鏡手術のランダム化比較試験から除外されてきたか。1つの理由は血管解剖の複雑さと考えられる。横行結腸は主に上腸間膜動静脈系の支配であるが,ときに下腸間膜動静脈系支配となる部分も存在する。また,血管の分岐形態は非常にバリエーションに富んでいるため処理する血管もさまざまであり,横行結腸癌切除の術式も結腸右半切除から脾彎曲部の結腸切除まで多様である。最近は3D-CT画像の進歩により,術前に血管分岐形態を把握できることも多くなったが,認識されない細い分枝が存在することもあり,基本的な分岐形態の理解とともに比較的よくみられるバリエーションについて把握することは重要である。

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2019年版の大腸癌治療ガイドライン1)では,「横行結腸癌に対する腹腔鏡手術は高難度であり,解剖学的特性に支配血管根部周囲の郭清手技の難度を考慮して適応を決定する」と記載されている。しかし,近年,血管の分岐形態の把握および腹腔鏡手術手技の向上に伴い,横行結腸の早期癌から進行癌に対しても手術適応が拡大されつつある。

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本特集の総説で述べられたように,横行結腸の血管系の変異は,他の部位よりも多彩であり,確実にD3リンパ節郭清をするためには,主幹血管の同定がきわめて重要である1,2)。あらかじめ画像検査を精査して,主幹動静脈の走行を同定しておくことは大切であるが,患者の体型や撮影条件などにより,必ずしもこれらの血管の同定は容易ではない。このため,横行結腸間膜を十分に展開して,支配血管を確認しつつ,手術操作を進める必要がある。

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横行結腸癌に対する腹腔鏡手術には,「①腫瘍位置(肝彎曲・中央・脾彎曲)によって郭清すべき支配血管が異なり,術式が豊富。②中結腸動静脈(middle colic artery / vein;MCA / V),副中結腸動静脈(accessory middle colic artery /vein;acc-MCA / V)などの解剖学的変異が多く,それらの術中同定も難しい。③症例数が少なくlearning curveが得にくい」などの問題点がある。

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横行結腸癌に対する腹腔鏡手術は,血管解剖のバリエーションによる郭清範囲決定の複雑さや十二指腸や膵臓などの重要臓器損傷のリスクなどから難度が高い。近年3D-CTにより原発巣の部位やリンパ節腫大,血管解剖の関係などの詳細な情報から,十分なリンパ節郭清と残存結腸への血流温存を両立させることができるようになった。

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横行結腸癌に対する腹腔鏡手術は,国内外の大規模臨床試験から除外されることが多い。その理由として,症例数が少ない,血管のバリエーションが多彩である,中結腸動脈(middle colic artery;MCA)領域の郭清が必要である,十二指腸や膵,脾などの重要臓器が近接している,両側結腸曲の授動が必要なこと,などが考えられ,術式の定型化が難しい。

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大腸癌に対する腹腔鏡手術は,機器の改良や手術手技の向上により,近年,急速に普及している。基本術式としては,5ポートを設置して行うMPS(multi port surgery)が定型化されている。

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結腸癌の手術において欧州では,2009年にHohenbergerらによってCME(complete mesocolic excision)の概念が提唱され,転移の可能性のあるリンパ節を含むように全結腸間膜を切除することで,従来の手術と比較して予後が向上する可能性が示された1)。一方,日本においては動脈に沿ったリンパ節郭清(早期癌に対するD2郭清,進行癌に対するD3郭清)が標準術式として行われてきた。いずれにおいても癌細胞が,腫瘍からのリンパ流に沿って流れていき,到達したリンパ節に転移するという理論を背景に,その領域のリンパ流,リンパ節を含む腸間膜を切除するという点で一致している。

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近年,ICG(indocyanine green)蛍光を検出可能な腹腔鏡機器が次々と市販化されている。また,ICGの効能・効果に「血管および組織の血流評価」が追加された。こうしてICG蛍光法はさまざまな外科手術におけるナビゲーションに用いられるようになった。消化器外科領域では,肝胆道外科領域,下部消化管外科領域などでICG蛍光法が数多く試みられ,報告も多い。一方で,上部消化管外科領域への応用は,報告も少なく未知数である。

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食道亜全摘術後の消化管再建には,一般に胃管再建が標準的な手術術式とされている。しかし,胃切除の既往がある場合や胃重複癌が存在し胃を再建臓器として用いることができない場合には,小腸や大腸が再建臓器として選択されている。日本食道学会登録2011年度版では,再建臓器として胃管再建が83.6%と圧倒的に多数を占めているが,次いで小腸が6.1%,大腸が3.0%使用されていることが報告されており1),腹部食道癌の再建に小腸再建が行われることを差し引いても,小腸再建が徐々に普及していることをうかがわせる。

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切除不能の進行癌による上部消化管通過障害に対し症状緩和目的に行われる胃空腸吻合術においては,術後早期のQOL(quality of life)改善が望まれ,完全腹腔鏡手術の意義は大きい。

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大腸癌に対する内視鏡外科手術の比率は72.2%にも達し1),今後さらなる普及が予想される。そのなかで2008年に単孔式の腹腔鏡下大腸切除術が報告され2),通常の腹腔鏡手術と比べ優れた低侵襲性・整容性と術後疼痛の軽減を享受することができる術式3)として,当科でも2010年8月より単孔式腹腔鏡下大腸切除を導入し4,5),安全性などに関して報告してきた6)。単孔式手術は同一創部からほぼ同じ軸ですべての手術器具が挿入されるため,鉗子間の干渉もあり技術的に難度が高いとされているが,結腸癌手術で頻度の高い右側結腸癌手術について当科の手技を述べる。

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男性の痔瘻はときに陰嚢に進展することがある1)。陰嚢進展痔瘻は瘻管が長いため,通常のseton法では切断までに長期間を要する。われわれが陰嚢進展痔瘻に対して施行している分割seton手術について,その方法や成績を報告する。

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膵十二指腸動脈(pancreaticoduodenal artery;PDA)領域の動脈瘤は内臓動脈瘤の約2%程度を占める1)。原因として,膵炎,外傷,腹腔動脈根部の狭窄などが挙げられるが,PDA領域に発生する真性動脈瘤の主な原因は,正中弓状靱帯(median arcuate ligament;MAL)の圧迫による腹腔動脈根部の狭窄や閉塞と,それによって生じるPDA領域の代償的血流量増加であると報告されている2)。本疾患では他領域の動脈瘤と異なり瘤径と破裂に相関は認められず,瘤径が小さくても破裂する可能性がある(図1)3)。また,破裂例の死亡率は約17.5~33.3%と高いため,診断された場合は治療を行うことが推奨される3-5)。

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骨盤部の直腸後面と仙骨前面および腹膜翻転部に囲まれた部位は胎生期にcaudal endが存在し,多数の胎児性組織が集合するため,種々の腫瘍が発生しやすい1)。このような腫瘍に対し,経仙骨アプローチや経腹アプローチが行われるが,肛門近傍に存在するものは経仙骨的アプローチで摘出されることが多い。今回,若年女性の肛門近傍に発生したepidermoid cystを,経仙骨的低侵襲手術下(内視鏡外科手術+小切開)に摘出した症例を経験したが,本法による摘出例の報告はなく,文献的考察を含め報告する。

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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)に対する標準術式は大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術(ileal pouch-anal anastomosis;IAA),あるいは大腸全摘,回腸嚢肛門管吻合術である。腸閉塞は大腸全摘,回腸嚢肛門(管)吻合術後の頻度が高い術後合併症の1つである。回腸嚢肛門(管)吻合術後の腸閉塞の原因は人工肛門閉鎖部と骨盤内での癒着が最も高頻度と報告されている1,2)。

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手術
73巻8号 (2019年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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