手術 71巻13号 (2017年12月)

特集 腹腔鏡下肝切除に必要な外科解剖と手術手技

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腹腔鏡下肝切除(laparoscopic liver resection;LLR)は肝腫瘍に対する根治性と低侵襲性を提供し得る新たな外科的選択肢であり,わが国では2010 年度に腹腔鏡下肝部分切除および肝外側区域切除が保険収載され,急速に普及している。2014 年に行われた第2 回腹腔鏡下肝切除国際コンセンサス会議にて示されたとおり,minor LLR(Couinaud の分類におけるSegment 2, 3, 4b, 5, 6での腹腔鏡下肝部分切除および肝外側区域切除を指す)は,世界的にみても標準的術式として考えられるようになった1)。

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肝臓は動脈および門脈による2 重の流入血支配を受け,産生した胆汁を流出する胆管とともにGlisson を構成する。肝内においてはGlisson と流出系血管である肝静脈が立体的な関係を構築している。肝内における脈管の走行は変異に富んでおり,肝切除手術を行うにあたってはその解剖の習熟が重要であることはいうまでもない。腹腔鏡下肝切除術において特別に開腹手術と異なる解剖理解が必要ということはなく,各脈管の基本的走行関係や変異の型式についての知識を獲得したうえで手術に臨むべきである。腹腔鏡手術が開腹手術と異にすることは尾側や背側からの視野(caudalview)を得ることができる点であり,それを理解することで肝臓解剖の習得がより進むものと思われる。

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肝臓領域における腹腔鏡手術が,低侵襲性・拡大視効果・背側からの手術視野などの有用性を基軸として発展・拡大を遂げている。一方,手術視野・手術操作性の制限など制約された手術環境下における安全性・根治性を追求するうえで,空間認知・触覚を補完する術前シミュレーション・術中ナビゲーションの重要性が広く認知されている。筆者らは以下の術前シミュレーション・術中ナビゲーションを腹腔鏡下肝切除術の手術計画・術中画像支援に用いている。

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腹腔鏡下肝部分切除は,2008 年のLouisville(米国),2014 年のMorioka(日本)のコンセンサスミーティングを経て,すでに標準手技として確立されたと考えられている1)。そして,さまざまな術式が存在する肝切除のなかでも最も平易であり,外科医が最初に取り組むべき腹腔鏡術式とされている。したがって,比較的難易度が低いとも思われがちだが,腫瘍の場所や深さによっては定型的な大肝切除より難しいこともある。

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腹腔鏡下肝外側区域切除術は1994 年にKaneko ら1)によって報告され,その後,術式が徐々に普及し,2010 年4 月に保険収載されて消化器外科医の習熟すべき手術となった。

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腹腔鏡下肝切除へ解剖学的切除を導入するためには遵守すべき基本事項があるが,Pringle 法による流入血遮断,Glisson 枝へのアプローチと処理,demarcation line による切除領域の確認,intersegmental plane への到達とその維持,肝静脈からの出血制御(IVC に対する肝静脈の高位化,気腹圧の利用,下大静脈圧のコントロール)が挙げられる。本稿ではこれらの基本手技に基づき,自施設での経験を元に述べてみたい。

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腹腔鏡下肝切除は低侵襲性と整容性に優れ,2010 年4 月に先進医療から部分切除および外側区域切除が保険収載された。さらに2016 年4 月には血行再建や胆道再建を伴わない場合に限り,亜区域切除,区域切除,2 および3 区域切除まで適応拡大されたが,肝切除術を年間20 例以上,腹腔鏡手術を年間100 例以上などの施設基準に加え,NCD(National Clinical Database) と肝臓内視鏡外科研究会の前向き全例登録制度への登録が義務付けられた。

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腹腔鏡下肝切除は,2010 年4 月に肝部分切除と肝外側区域切除が保険収載され,2016 年4 月には,肝葉切除や区域切除などの術式も保険収載されるに至った。腹腔鏡下肝右葉切除は肝門部脈管処理, 肝授動, 中肝静脈(middle hepaticvein;MHV)に沿った肝離断,右肝静脈(righthepatic vein;RHV)処理など,肝切除の主要な操作がすべて網羅されており,腹腔鏡下majorhepatectomy を代表的する術式である。下大静脈(inferior vena cava;IVC)や主肝静脈根部での不慮の大出血をきたす可能性のある操作が多く含まれており,安全に施行するためには開腹下major hepatectomy と腹腔鏡下肝切除の十分な経験が必須である1,2)。

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腹腔鏡下肝切除は,2010 年4 月に部分切除,外側区域切除が保険収載された。2016 年度の診療報酬改定では,胆道,もしくは血行再建を伴わない肝切除のうち開腹で行っているほとんどのものが腹腔鏡下でも保険収載となった。しかし,腹腔鏡下肝胆膵手術における過去の反省・教訓から,その実施のためには厳格な施設基準が定められ,実際に本稿の主題である腹腔鏡下肝後区域切除を実施している施設は限られる,と思われる。

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腹腔鏡下肝切除は,肝葉切除・亜区域切除にも保険適応が拡大され,その術式は治療手段の1 つとして認知されつつある1)。対象となる悪性疾患は,そのほとんどが肝細胞癌や転移性肝癌であり,それら癌自体の特性により残肝再発がその再発形式となることが多い。

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食道胃接合部癌は近年,わが国を含めた先進国を中心に増加傾向にある。食道胃接合部癌は食道と胃の境界領域という解剖学的な特徴からリンパ節転移の頻度や郭清効果など不明な点も多いため,日本胃癌学会・食道学会が合同で全国調査を行い,2014 年に至適郭清範囲の暫定的アルゴリズムを提示した1)。しかしながら,依然としてコンセンサスの得られた標準的な術式は確立されていない。食道胃接合部癌に対する手術手技のポイントは,必要に応じて下縦隔や食道裂孔周囲,胃上部,噴門のリンパ節を確実に郭清することと,口側断端を腫瘍縁から2 cm 以上確保して安全に再建を行うことである。下縦隔操作のアプローチに関しては2 通りあり,通常の食道癌手術に準じた経胸的アプローチもしくは経食道裂孔的アプローチが挙げられる。両者には一長一短があり,適応を十分に考慮し,各施設で適したアプローチ法を選択することが必要となる。

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食道癌根治切除後の再建は,使用する臓器と再建ルートによっていくつかのバリエーションが存在する。わが国においては多くの施設で再建臓器として胃が用いられている1)。主な理由として血流が豊富で伸展性に富み,他の臓器に比べ胃管作製や吻合が1 カ所で容易であることがあげられる。一方で胃切除後や胃の重複癌などの理由で胃が使用できないケースもまれではない。その場合は胃の代用臓器として小腸2-5)や大腸1,6-10)を用いるが,選択基準は施設によって異なり標準術式は確立していないのが現状である。

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近年,早期胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術は広く普及してきた。安全かつ適確なリンパ節郭清のためには術前に血管破格の有無を把握しておくことが重要である。腹腔動脈の分岐形態はさまざまな破格があり,足立はⅠ〜Ⅳ型1〜28 群に分類している1)。今回,われわれはAdachiⅥ型28 群の破格を有する症例を経験した。頻度は約0.02〜0.3%1,2)とされており,まれな破格であるが,MDCT によってその破格を術前に診断し,安全に腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行し得たので報告する。

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Granulocyte-colony stimulating factor(GCSF)は好中球の産生を特異的に促進する造血因子であり,G-CSF を産生する悪性腫瘍の存在が知られている。G-CSF 産生腫瘍は肺癌に多く,そのほかにも甲状腺癌,膀胱癌などさまざまな悪性腫瘍で報告されているが,肝内胆管癌の報告は非常にまれである。また,原発臓器にかかわらず低分化癌,未分化癌が多く,一般的に予後不良である。今回,きわめて急激な転帰を辿り死亡したG-CSF 産生肝内胆管癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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膵癌は予後不良な悪性腫瘍で,診断時にすでに手術不能であることも多く,手術可能な場合でもその後の5 年生存率は他の癌腫と比較し非常に低い1)。近年,FOLFIRINOX やアブラキサンなどの薬物療法が適応となり予後の改善が得られてきたものの,依然として予後不良な癌腫である。

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手術
71巻13号 (2017年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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