手術 72巻1号 (2018年1月)

特集 この手術に欠かせない必須デバイス紹介─こだわりの理由と正しい使用法

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胸部食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術は,胸壁破壊の軽減や出血量の減少などに加え,高解像度カメラによる拡大視効果に基づく高精度の縦隔リンパ節郭清が可能となるなどの利点がある。胸腔鏡手術のアプローチ法として側臥位,腹臥位,ハイブリッドなど,複数の方法が開発され,わが国では近年,胸腔鏡下食道切除術が急速に普及してきた。

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縦隔鏡を用いて食道切除を最初に行った報告は,文献上1993 年のBumm らによるものと思われる1)。Bumm らはendodissector を頸部創から挿入し,working channel を通じてはさみ,電気メスなどを使用し,またendodissctor を360°回転させることで,食道の剥離が可能としている。また,その操作は下縦隔までおよび,気管分岐部ならびに心嚢までみえることが論文中の図で示されている。Bumm らの主目的は,それまでblind で行われていたいわゆる食道抜去術blunt dissection,transhiatal esophagectomy(THE)を安全に行うことであり,リンパ節郭清には触れていない。食道抜去術を最初に報告したのは,1933 年のTurner であり2), その際の道具は「指(finger)」であった。頸部創,腹部創から手を縦隔に入れて指で食道周囲の線維組織を引っ張り出してきては切るというやや乱暴なものであった(実際,筆者もこれまではそのように行っていた)。その後,1975 年にAkiyama らは指以外のring dissector やstripper を用いた食道抜去術を報告している3)。それでもblind であったことは間違いなく,その意味で,Bumm らのdirect vision下で食道を剥離するという試みの意義は大きかったものと思われる。ただし,食道抜去術,THEは縦隔内リンパ節郭清が不十分であり,適応は下部食道腺癌や開胸困難症例に限られていた。2004年にTangoku らは独自に開発したmediastinoscopeを用いたTHE を報告している4)。適応はやはり同様に限られるが,上部食道周囲リンパ節郭清が可能であり,左反回神経がきれいに露出されている写真が示されている。食道抜去術,THE においてもデバイスの進化が重要であることを示す史実と考えている。

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早期胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術は,広く受け入れられているが,腹腔鏡下胃全摘術(laparoscopictotal gastrectomy;LTG)はいまだ難度の高い術式とされている。その理由の1 つに,腹腔鏡下での食道空腸吻合の困難さがあげられる。上腹部の狭い視野,かつポートから遠い位置での吻合・縫合操作が必要であり,技術的に難しい手技といえる。しかし,吻合トラブルは重篤な合併症となるため,安全で確実な手技が求められる。

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腹腔鏡下噴門側胃切除術は,腹腔鏡下幽門側胃切除術に比し難易度が高いとされている。その理由として,脾門近傍で行う短胃動脈に沿うリンパ節郭清や十二指腸を切離せず行う膵上縁リンパ節郭清,そして,食道残胃あるいは食道空腸などの体腔内吻合の難易度が高いことが挙げられる。

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肝臓は易出血性の臓器であり,肝切除術では不要な出血をきたしたり,止血操作を誤ると致命的になることがある。このためすべての手技において繊細さが要求される。外科医は手術器具を介して,基本操作である切離,剥離,縫合を行うため,肝臓を愛護的に扱うことのできる道具が必要である。古典的な手術器具だけでも手術は可能だが,最近は医用工学の進歩により,さまざまなエネルギーデバイスが開発され,肝切除にも応用されている。本稿では肝切除におけるデリケートな手術操作に必要な手術器具を紹介する。

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開腹術においても難度の高い肝切除を腹腔鏡下に施行するために,デバイスの発展が大きく寄与してきた。そのなかで,手術のメインパートである肝実質切離,および切離時の止血におけるデバイスの選択と使用方法に目が行きがちであるが1,2),デバイスを適確に使用するためにも安定した良好な視野が欠かせない。今回,腹腔鏡下肝切除における視野展開のコツとそれを実行するうえで欠かせないデバイスおよびその使用法を紹介する。

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膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)は,消化器外科手術のなかで,高難度手術の1 つに位置付けられている。Kimura らによるNational Clinical Database(NCD)のデータを用いた報告では,PD 術後の在院死亡率は2.8%,術後合併症の発生率は40%と報告されている1)。PD は食道癌,肝切除とならび死亡率の高い術式であり,まだまだ改善の余地がある。近年,さまざまな医療器具,エネルギーデバイスが開発され,手術時間の短縮や合併症低減に寄与していると考えられる。PD は原疾患や患者因子によって膵実質の硬度が異なるうえ,局所進展による郭清の程度に差があり,血管合併切除の有無など手術手技が多岐にわたる。そのため多種の手術器具を用いる必要がある。エネルギーデバイスの有無やデバイス同士の有用性を比較した報告は非常に限られており2-4),各施設がそれぞれの好みでデバイスを選択しているのが現状と考えられる。

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1990 年代に入り,腹腔鏡手術は胆嚢摘出術をはじめ世の中に広く普及し,その手術症例数は急速に増加してきた。それに伴い,多くのエネルギーデバイスや鉗子が製品化・販売されている。胆嚢摘出術をはじめ,胃・大腸切除術などはすでに腹腔鏡手術手技の定型化が進み,各施設で使用するデバイスも固定化してきている。しかし,腹腔鏡下膵手術は,2012 年に良性および低悪性度腫瘍に対する膵体尾部切除術の保険適用が開始され,2016 年に悪性腫瘍への適用拡大が認められたばかりである。Nakamura ら1)はpropensityscorematching を用いた大規模な比較試験を行い,良性疾患に対する腹腔鏡下膵体尾部切除術の利点を報告しており,本術式は今後広く普及していくことが予想される。しかし,現時点では腹腔鏡下膵体尾部切除術は,腹腔鏡下胃切除術や大腸切除術に比べるとわが国での蓄積症例数は少なく,手技の定型化も遅れていると思われる。

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腹腔鏡下結腸切除術において腹腔内で操作を行う必要があるのは,主に結腸の剥離・授動,リンパ節郭清である。これらの手術操作のほとんどはエネルギーデバイスを用いて行っている。そのためエネルギーデバイスの使い分けは,出血をさせずに確実な手術を行ううえで非常に重要である。

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大腸癌における腹腔鏡手術は年々増加しており,直腸癌に対する腹腔鏡下直腸低位前方切除術は2008〜2015 年の8 年間で倍増している1)。腹腔鏡手術は,創が小さく術後疼痛が軽減することや,腸蠕動の回復が良好で早期の経口摂取が可能となるなど,従来の開腹手術に比べて侵襲が少ないとされている。腹腔鏡の特性である良好な視野と拡大視効果は狭い骨盤腔ではとくに有用と考えられる。腹腔鏡下直腸前方切除術は直腸癌に対する術式として広く行われつつある一方で,正確な外科解剖の理解,視野展開が肝要であり,剥離層の認識をおろそかにすると直腸間膜への切り込みや神経損傷などをきたし,根治性や患者QOL が損なわれてしまう。

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食道浸潤噴門癌に対する術式は,食道浸潤が3 cm 以内であれば,経裂孔的アプローチが右開胸開腹アプローチに比べ安全性が高いとされ,低侵襲である経裂孔的アプローチが主流となっており,近年,世界的に増加傾向にある。食道胃接合部癌,とくに,腫瘍中心が食道胃接合部前後2 cm 以内にあるSiewert type Ⅱ食道胃接合部癌のリンパ流はいまだ解明されていない。よって,同腫瘍に対する術式,至適リンパ節郭清範囲に関しては,いまだ一定の見解は得られていないものの,腹腔鏡手術が発展し,食道胃接合部癌のような難易度の高い手術にも応用されるようになってきた。しかしながら,術野の確保が困難な下縦隔内でのリンパ節郭清や,食道胃切除再建法の難易度はきわめて高く,術式は定型化されていない。さらに,縦隔内は陰圧であることによって術後高頻度に逆流性食道炎を生じることから,食道残胃吻合においては,逆流防止機能を付加した術式が必須である。

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腹腔鏡下胃全摘術(laparoscopic total gastrectomy;LTG)は系統的リンパ節郭清を伴った胃切除,切除後の再建ともに高度な技術が必要で,腹腔鏡手術のエキスパートにとっても困難な手術の1 つである。そのため現在でも,腹腔鏡下幽門側胃切除のように普及しているとはいえない。LTG の再建は開腹胃全摘手術同様にRoux-en-Y再建(RY)が一般に行われており,とくに食道空腸吻合に関してはさまざまな方法,工夫が報告されている1-7)。食道空腸吻合は使用するデバイスによりCircler staple(CS)法とLinear staple(LS)法に大別される。CS 法は通常の開腹手術で用いてきたCS を応用して腹腔鏡手術に適用している。それに対しLS 法は腹腔鏡手術のために開発されたユニークな手技である。われわれは①食道,空腸の口径に関係なく使用できる,②ポートからの挿入が可能で腹腔鏡下で使用しやすい,③細く視野の確保がしやすい,ことを理由にLSをLTG の再建に適したデバイスとして選択した。しかし,腹腔鏡手術に有利な点があるにもかかわらず,LS によるRY 再建は食道空腸縫合不全,狭窄,内ヘルニア,十二指腸断端瘻など重篤な合併症が報告されており,いまだに工夫が必要である8,9)。われわれはそれらの合併症対策として吻合部の直線化,挙上空腸の過度の可動性の防止,十二指腸断端の被覆,腸間膜間隙の閉鎖などの工夫を加え,Overlap 法(OL)を定型化した。本稿ではわれわれが行ってきたOL によるRY の手技とその工夫を解説する。

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近年,食道癌に対して胸腔鏡手術が導入されてきているが,video-assisted thoracic surgery(VATS) 法やhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)法の報告1,2)が多く,腹部操作も含めた完全体腔鏡下手術の報告3)は多くはない。今回,われわれは,胸腔鏡および腹腔鏡による完全体腔鏡下手術で治療し得た腹部食道癌の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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十二指腸GIST(gastrointestinal stromal tumor)は希少疾患とされるGIST のなかでも約4%程度を占めるに過ぎない非常にまれな疾患である。術式選択に際して明確なものはなく,またリスク分類の妥当性も明らかにされていない。当施設で十二指腸GIST に対して手術を行った8 例について検討し,文献的考察を加えて報告する。

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痔瘻癌は難治性の痔瘻に発生する比較的まれな悪性腫瘍である。今回,潰瘍性大腸炎(ulcerativecolitis;UC)に対して大腸全摘術を施行されたのちも難治性痔瘻を繰り返し,最終的に痔瘻癌が発生した症例を経験したので報告する。

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クローン病(Crohn’s disease;CD)は小腸・大腸を中心とした消化管全域に難治性の狭窄や瘻孔を生じる原因不明の慢性肉芽腫性炎症性疾患である。人口対10 万人の有病率は約27 人,2014年度医療受給者証交付件数は40,885 人であり,その患者数は年々増加傾向にある1)。CD において消化管内瘻を含む瘻孔の発生頻度は15〜32%とされているが2),一方で消化管膀胱瘻(enterovesicalfistula;EVF)の発生頻度は2〜5%と比較的まれである3)。CD におけるEVF は保存的治療では改善しないことが多く,外科的処置が必要となる。

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72巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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