手術 71巻12号 (2017年11月)

特集 直腸癌に対する経肛門アプローチのすべて

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直腸癌に対する手術は,直腸癌の基礎的な研究を通した病気の本態に対する深い理解と手術手技・手術機器の発展により継続的に進歩し,腫瘍学的なoutcomeと患者の生活の質(quality of life;QOL)の両者を改善させてきた(表1)。直腸癌に対する根治切除術は,1907年にMilesによりはじめて行われ,その後,1921年にHartmann手術,1948年に腸管吻合を伴う前方切除術が発表された。1982年,total mesorectal excision(TME)の有用性がHealdによりはじめて報告され,1970年代後半まで50%以下であった直腸癌術後の5年無病生存率はTMEにより80%まで上昇した1)。

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近年,低位直腸癌に対する新しいアプローチ方法としてtransanal(perineal)total mesorectal excision;Ta(p)TMEが注目を集めている。この術式のメリットは腹腔内から到達することが難しい,狭骨盤や肥満,巨大腫瘍でも骨盤底の安定した手術操作が可能なことである1)。そして,トンネル工事に似た暗くて狭い術野での括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection;ISR)や腹会陰式直腸切除術(abdominoperineal resection of rectum;APR)の肛門操作に,明るく精細な視野と術野の共有をもたらしたことは,Ta(p)TMEの最大の恩恵ではないかと考えている。

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直腸癌手術における腸管吻合は,原則として自然肛門温存手術と直腸部分切除において行われる。直腸癌に対する自然肛門温存手術の変遷・歴史を表1に示すが,根治手術としてはMiles(1908)によるリンパ節郭清を行う直腸切断術,Heald(1982)によるtotal mesorectal excision(TME),ならびにSugihara(1996)による側方リンパ節郭清の根治的意義などが報告されている。

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経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(transanal endoscopic microsurgery;TEM)はBuessら1)が提唱し,現在も施行されている直腸腫瘍に対する手技であるが,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)が発達・普及してきたため,その適応症例は限られてきている。それに加え,その手技や鉗子の特殊性や高価な専用器具のためにTEMを施行できる施設はそう多くはない。

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直腸の切除手技である前方切除術は,とくに,肛門側切離線が腹膜翻転部以下となった場合,低位前方切除術と呼ばれる。その原則は,TME(total mesorectal excision)またはTSME(tumor-specific mesorectal excision)であり,癌の進行度,肉眼的な神経浸潤の有無などを考慮して,根治性を損なわない範囲で排尿機能・性機能温存のため,自律神経の温存に努める。

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下部直腸癌に対する直腸切断術は1900年頃から開始された。Milesが直腸および肛門周囲組織を広く切除してsurgical marginを確保し,さらにリンパ節郭清を加えて根治性を高めた術式(abdominoperineal resection;APR)として確立し,100年以上が経った現在でも標準術式として広く行われている。

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直腸癌に対する手術のコンセプトは,Healdら1)が提唱した直腸間膜全切除術(total mesorectal excision;TME)がgold standardであり,CRM(circumferential resection margin)を確保することが重要である。TME完遂とCRM遵守は,直腸癌の治療において短期成績のみならず,長期的な予後の面でも成績向上に寄与している2)。

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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の患者数はここ10年で倍増し,約20万人に達している。内科的治療の進歩も著しく,従来は緊急手術となっていた症例でも寛解導入が可能となったため,病悩期間が延長した症例が増加している。それに伴い,手術適応は変化しており,難治例が減少し,癌/ dysplasiaでの手術症例の増加が著しい。

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食道胃接合部癌は近年,増加傾向にあり,切除術式選択や至適リンパ節郭清範囲などを中心に議論がなされている。2013年には日本胃癌学会・食道学会合同でのワーキンググループによる「食道胃接合部癌の至適リンパ節郭清範囲を検討するための全国調査」が行われ,長径4 cm以下の腫瘍に対する至適リンパ節郭清範囲のリンパ節郭清アルゴリズムが示された1)。

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単孔式腹腔鏡手術をはじめとしたreduced port surgeryでは術野展開が重要である。多くの単孔式手技では臍部創部から3本以上のトロッカーを挿入するため器具の操作性が困難で,良好な術野展開を得るのに苦慮する。

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完全直腸脱は肛門管を超える直腸の全層性脱出により,不快感や疼痛,出血だけでなく肛門括約筋の損傷による排便機能障害を伴い,患者の生活の質を著しく損なう疾患である。本疾患はリスクの高い高齢者に多く,腰椎麻酔や局所麻酔下で施行可能なGant-Miwa法やDelorme法などの低侵襲な経会陰手術が施行されてきたが,これらの術式は術後再発が比較的高頻度であることが問題とされる。

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悪性腫瘍を有する症例の所属リンパ節に乾酪性壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認めるが,サルコイドーシスに伴う全身性の病態を合併しない症例がまれに報告されており,サルコイド反応(salcoid reaction)と呼ばれている1)。その原因や意義に関しては不明であるが,海外の報告では子宮癌・乳癌に合併する症例が多く,わが国では胃癌・肺癌に伴った症例が散見される2-4)。しかし,食道癌に伴うサルコイド反応の報告例は非常に少数である5-7)。

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パラガングリオーマは副腎外褐色細胞腫ともいわれ,自律神経系の傍神経節細胞より発生する。発生部位は,大動脈周囲,膀胱,胸郭内,頭頸部,骨盤腔など多岐にわたるが,腹壁発生は非常にまれである。今回われわれは,腹腔鏡下に摘出したパラガングリオーマの1例を経験したため報告する。

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成人腸重積症は比較的まれな疾患であり,その原因は器質的疾患による場合が多く,病変の切除が治療の原則となる。近年,消化管手術に腹腔鏡手術を選択する施設が増えているが,腸重積症に対する腹腔鏡手術の可否に関しては一定の見解が得られていない。今回われわれは,横行結腸脂肪腫が原因の成人腸重積症に対して術中に大腸内視鏡により腸重積を整復し,単孔式腹腔鏡手術を施行した1例を経験したので報告する。

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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の治療時に,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC)が併発することがある1-6)。UCにおけるDICの発症にはさまざまな誘因が報告されており,慎重かつ迅速な対応が求められる。 今回,われわれはDICを併発した難治性UCに対して,手術を行い救命できた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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手術
71巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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