看護研究 53巻1号 (2020年2月)

特集 看護研究における報告ガイドライン1

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 看護研究領域において,報告ガイドラインの重要性が高まっています。研究の質向上や研究の学際化・国際化をめざす上では,さまざまな報告ガイドラインを知り,それらを有効に,かつ形式に陥ることなく有意義な形で活用することが重要です。その一方で,なぜ報告ガイドラインが必要なのか,その利点はどこにあるのかという報告ガイドラインの存在意義を考える必要があると思われます。

 そこで本誌では,友滝愛先生(国立看護大学校),深堀浩樹先生(慶応義塾大学大学院),宮下光令先生(東北大学大学院)ご企画のもと,本号と次号の2号にわたって特集を組むこととしました。数ある報告ガイドラインの中から,特に看護研究において有用と思われるガイドラインを紹介し,これからの研究のヒントにしていただけたらと考えています。今回の1号では,ガイドラインの必要性や意義を踏まえた上で,特に重要と思われる6つのガイドライン(CONSORT,STROBE,PRISMA,RECORD,COSMIN,COREQ)についてご紹介します。

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研究公正と出版倫理

 人間を対象とした研究の倫理に関しては,国内においても2000年前後から研究参加者の保護,個人情報の扱い,インフォームドコンセント,倫理審査などの課題について関係者の認識が広まり,倫理指針の策定や倫理審査委員会の体制の整備など,研究者の意識の変化も着実に進んできた。その一方,もう1つの研究倫理ともいえる研究公正(research integrity),そして研究上の不正行為(scientific misconduct)への対応という極めて重要で,決して稀ではない問題は,多くの研究者が我が事としての認識に至っていなかった。公的な研究費の不正利用という限られた課題では一定の関心が寄せられ,2010年前後からは利益相反のマネジメントという喫緊の問題から,日本医学会をはじめ各学会でルールづくりと製薬企業との関係の見直しが進んだが,それに比して,公正な科学研究の全体的な議論の深まり,関係者間での共有,教育への反映は数段の遅れがあったといえる。

 そのような中,日本の科学・医学研究にとって大きな転機を迎えたのは2014年,生命科学領域におけるSTAP細胞,臨床研究領域における降圧薬ディオバンをめぐる研究不正の社会問題化であった。これらの問題を受けて,2015年4月に施行された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」では,研究結果の事後的な検証を可能とするために,それまでの「研究終了後のデータ」の扱いを「廃棄」から「保管」へと大きく方針を変更し,研究費の申請にあたっては,研究不正問題も含めた研究倫理に関する講習の受講が必須とされるようになった。

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はじめに

 報告ガイドラインとは,論文報告の質改善を目的として開発された文書で,代表的な報告ガイドラインとしては,ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial;RCT)の研究報告ガイドライン(reporting guideline)であるCONSORT声明(Consolidated Standards of Reporting Trials Statement)が有名です(Schulz, Altman, Moher, for the CONSORT Group, 2010)。そして,CONSORT声明の初版が発表された1996年以降(Begg et al., 1996),CONSORT声明も改訂が重ねられ,ランダム化比較試験のさまざまな方法論に対応した拡張版(extensions)も発表されています。またランダム化比較試験以外にも,非ランダム化比較試験,観察研究,質的研究などのさまざまな報告ガイドラインがあります。

 報告ガイドラインのデータベースであるEQUATOR(Enhancing the QUAlity and Transparency Of health Research) Network(http://www.equator-network.org/)によると,現在すでに419の報告ガイドラインがあります(2020年1月5日時点)。EQUATOR Networkについては,本誌『看護研究』の48巻7号(2015年)でも,EQUATOR NetworkのDeputy DirectorであるDr.I.Simeraによる「優れた研究のための触媒となるEQUATORネットワーク」で紹介されており(Simera, 2015),2015年当時は,EQUATOR Networkに収載されている報告ガイドラインは284であったと記されています(2015年9月30日時点)。このことから,この4年の間で135もの報告ガイドラインが増えたことになります。

 筆者は,EQUATOR Networkのウエブサイトを見たときに,400を超える報告ガイドラインに途方に暮れそうになりましたが,「どのような報告ガイドラインがあるのかをまずは見てみよう!」と思い,すべての報告ガイドラインのタイトルに目を通してみることにしました。その結果,特定の医学分野に特化した報告ガイドラインが多数ありましたが,一方で,研究分野を問わず共通する「研究デザイン」をベースとした報告ガイドライン,看護学研究者に関心があると思われる心理社会学的な側面を取り扱った報告ガイドラインなどが複数あることがわかりました。またこれらの報告ガイドラインのうち,日本語訳されたものは非常に限られており,まだ日本で知られていない報告ガイドラインも数多くあるのではないかと思われました。

 このような報告ガイドラインは,各分野を専門とされている方はすでにあたりまえのこととしてご存知であったり,また報告ガイドラインがなくても各分野の方法論を学んでいれば,当然のことが書かれているにすぎないと思われたりする方もいらっしゃるかもしれません。一方で,例えば,新たな分野の研究やこれまでにあまり経験してこなかった研究デザインの研究に着手するとき,あるいは,大学院生や研究者で論文執筆のトレーニング中にあるときには,馴染みがないものもあるのではないでしょうか。このような場合,報告ガイドラインはその論文報告の質を高めたり,論文執筆を指導する上で非常に参考になるものと思われ,研究の熟練者にとっても有用となる可能性があります。また,看護学研究は学際的な研究が多いことから,その知見は看護専門職のみならず,さまざまな分野に寄与することができます。このような点から,看護学研究の意義や独自性を高めていくことをめざすと同時に,それらを国内外問わず,看護学分野以外の研究者や論文の読者に対して伝えていくときの共通言語のひとつとして,国際的な報告ガイドラインに則った論文執筆が求められる場面もあるのではないかと筆者は考えています。こうした傾向は,今後ますます高まっていくかもしれません。

 一方で,膨大なすべての報告ガイドラインに目を通すことは現実的ではなく,自分に必要な報告ガイドラインを取捨選択する必要があります。これらの中から,看護学研究者にも関連するであろう報告ガイドラインを紹介することで,読者の方々の論文報告の質の向上や,論文執筆の学習や指導のツールとして役立つのではないかと考えました。そこで,多くの研究者のご協力を得て,本号と次号の2号にわたり報告ガイドライン特集を企画することとなりました。

誰でも知っておきたい! よく使われている報告ガイドライン

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本号では,よく使われている下記6つの報告ガイドラインを紹介します。

CONSORT CONSORT 2010声明:ランダム化並行群間比較試験報告のための最新版ガイドライン

STROBE  疫学における観察研究の報告の強化(STROBE声明):観察研究の報告に関するガイドライン

PRISMA  システマティック・レビューおよびメタアナリシスの報告における望ましい報告項目:PRISMA声明

RECORD  日々観察されて集められている診療情報を用いた研究の報告基準

COSMIN  健康関連尺度の選択に関する合意に基づく指針

COREQ  質的研究論文の統合基準チェックリスト

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概要

 CONSORT声明は,被験者をランダム(無作為)に各群に割り付け,介入群に割り付けられた被験者に対してのみ介入し,各群の結果を比較するランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial;以下,RCT)を報告するためのガイドラインである。RCTは,背景因子によるバイアスを回避し,客観的に介入効果を評価することを目的とした研究方法であり,一次研究としては最もエビデンスレベルが高い研究方法と位置づけられている。また,RCTはさらにエビデンスレベルの高い二次研究であるメタ分析を含んだシステマティック・レビュー(本特集のPRISMA声明を参照,pp.34-39)の基盤となる研究手法でもある。

 しかし,RCTによって示されるエビデンスは,厳格性をもって計画・実施され,そのプロセスが透明性をもって報告されることが前提であり,方法論的な厳格性を欠いていた場合は,バイアスの入った結果を生み出すことになってしまう。そのため,RCTを適切に評価するためには,その研究方法と結果について,明快で,透明性の高い情報が論文にて報告される必要がある。本稿で紹介するCONSORT声明はRCTの報告を改善するために開発され,現在では世界中で広く用いられている。

 CONSORT声明は1996年にBeggらによって初版が開発され(Begg et al., 1996),2001年の改訂を経て,最新版は2010年にShultzらとThe CONSORT Groupによって発表された(Schulz,Altman,Moher,for the CONSORT Group,2010)。この論文は,BMJ,Lancet,Obstetrics and Gynecology,PLoS Medicine,Annals of Internal Medicine,Open Medicine,Journal of Clinical Epidemiology,BMC Medicineといった国際誌において無料で公開(オープンアクセス)されている。また,津谷らによって翻訳された日本語版が2010年に「薬理と医療」誌に掲載され(津谷,元雄,中山訳,2010)(2016年に成書としてまとめられている。前ページの「ガイドラインの入手方法」参照),現在はCONSORT公式ウエブサイトにおいて無料で公開されている。

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概要

 医療分野で行なわれる多くの研究方法は観察研究であるが(Glasziou,Vandenbroucke, & Chalmers,2004),報告の質が十分ではないものも多く(Pocock et al., 2004),研究の強み・弱み,および,一般化可能性を評価することが妨げられているという問題がある。このような観察研究の報告の質の改善を目的として,観察研究で何が計画され,実際に何が行なわれ,そして,何が発見されたのかに関わる明確な報告を強化するために開発されたのが,STROBE声明である(上岡,津谷訳,2008)。

 STROBE声明は,STROBEイニシアチブ・グループによって開発され,2007年にチェックリスト(表,文末に掲載)(von Elm et al., 2007;上岡,津谷訳,2008),および,その詳細と解説(E & E)(Vandenbroucke et al., 2007/福原ら監修・訳,2009)が発表された。STROBE声明には,観察研究の主要な研究デザインであるコホート研究,ケース・コントロール研究,横断研究について,なぜこれらの項目が必要なのか,観察研究に特有の交絡・バイアスへの対処法に関する記述のポイントについて,論文の記載例もまじえて詳しく解説されている(観察研究のうち,症例報告,ケース・シリーズ研究は,STROBE声明の対象外である)。

 STROBE声明には,拡張版(extensions)が多数発表されている。看護学分野の研究でも使われやすい報告ガイドラインには,例えばケース・コホート研究の報告(Sharp, Poulaliou, Thompson, White, & Wood, 2014),日常的に収集する医療情報を用いた研究の報告〔The REporting of studies Conducted using Observational Routinely-collected health Data(RECORD)Statement〕(Benchimol et al., 2015),傾向スコア(プロペンシティスコア解析)(Yao et al., 2017)がある。拡張版を活用することで,各研究デザインに特有の方法論に対応した,より具体的な留意点を把握することができる。特に近年行なわれることが多い既存の健康・医療情報を用いたretrospective cohort studyについては,RECORD声明が参考になる(本特集のpp.40-46参照)〔拡張版に関する詳しい情報は,STROBEのウエブサイト(https://strobe-statement.org/index.php?id=strobe-home),または,EQUATOR NetworkのSTROBEのページ(https://www.equator-network.org/reporting-guidelines/strobe/)を参照されたい〕。

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概要

 システマティック・レビュー(Systematic Review;以下,SR)は,ある特定の疑問やテーマに対して,厳密かつ透明性の高い方法を使用して,多くの関連した研究を包括的で公平に統合したものである。少し平易に言い換えると,SRは既存の知識を統合して要約することを目的とし,そのテーマに関連する根拠の「すべて」を明らかにしようとするものである。

 EBM,EBNの実践にあたり,例えば「Aという介入方法はどのような対象者に,どのくらい効果が見込めるのか」を知りたいとき,1つひとつの研究論文を丁寧に読むことはもちろん大切だが,忙しい臨床活動の中で介入方法Aに関する何十何百もの論文を読んだ末に臨床的な判断をするというのは現実的ではない。臨床家にとってはエビデンスに基づいた実践を提供するために,研究者にとっては既存の研究を概観し次なる課題を設定するために,SRは近年ますます重要になっている。

 上述したようなSRの目的を達成するためには,論文として報告する際に研究手順や厳密性,透明性を丁寧に説明することが求められる。例えば,文献をどのデータベースから,どのような検索式で収集したのか。収集した文献はどのような選択基準(除外基準)でレビューに組み入れられたのか。文献からどのようなデータに焦点を当てて抽出し,それらをどのようなプロセスを経て分析し統合していったのか。SRの品質の良し悪しは,一連のプロセスの中で,エラーとバイアスのリスクを最小限に抑えるための方法にどのくらい厳密に従ったのかということに大きく依存する。前置きが長くなったが,高品質なSRを報告するためのガイドラインが,本稿で紹介するPRISMA声明である。

 PRISMA声明は,MoherらによるThe PRISMA Groupによって開発され,2009年に公開された(Moher, Liberati, Tetzlaff, Altman, & The PRISMA Group. 2009)。さらに,PRISMA声明には多くの拡張版(extensions)が発表されているが(表1),これ以外にもPRISMAグループとの共同制作として,PRISMA for Children,PRISMA Protocol for Childrenが存在する。なお,これら拡張版の日本語版は公表されていない。

 なお,SRの定義については研究者間でもやや混乱がみられるため,ここで少し整理をしておきたい。効果指標の値を統計学的に統合し分析する「メタ分析(メタアナリシス)」を含むものをSRと定義するのか,あるいはメタ分析を含まなくともSRと定義されるのか,という話題である。これに対して,Chalmers, & Altman(1995)は,メタ分析という用語は統計学的統合のプロセスに限定されること,つまりメタ分析はSRの一部である場合とそうでない場合があることを示唆している。これに沿う形で,オーストラリアのジョアンナ・ブリッグス研究所(Joanna Briggs Institute;JBI)が示すSRのガイダンスでは,メタ分析を含まないもの,ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial;以下,RCT)以外の研究方法を統合したものもSRとして位置づけている。この解釈は今後の議論よって変化していく可能性があるが,現状では論文タイトルや抄録にメタ分析を含むSRなのか,メタ分析を含まないSRなのかについて明示しておくことがよいだろう。

 本稿にて紹介しているPRISMA声明は,メタ分析を含むSRの報告を念頭に置いて構成されている。そのため,RCT以外の文献も検討し,メタ分析を含まないSRの報告にPRISMA声明をそのままの形ですべて適用することが難しい。しかし,PRISMA声明で推奨されている項目にはメタ分析を含まないSRにも適用できる項目も多く存在するため,1つのテーマに対してメタ分析が可能なほどRCTが集積されていないことが多い看護学領域の研究であっても,PRISMA声明を部分的に活用することは意義があるだろう。

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概要

 近年,日々観察されて集められている健康情報(疾患登録や診療情報等を含む),いわゆるリアルワールドデータを用いた研究が増加している。この背景には,臨床試験においてランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial;RCT)が倫理的な観点等から実施困難な場合,結果が出るまでに時間を必要とすること,費用がかかること,そして高齢者など臨床試験を実施しようとしても対象者の確保が難しいことといった状況が考えられる。さらに,臨床試験では理想的な条件下で新しい治療の効果や有害事象を把握できるというメリットがある一方で,対象者が限定されることから,高齢者を含む一般集団への有効性を評価することが難しい。そこで,高齢者等を含むすべての患者の診療実態の把握や,一般集団における新規の治療の有用性のエビデンスを探るために日々観察されて集められている健康情報を用いた研究が注目されている。

 しかし,こうした健康情報は,研究を目的としてデータが収集されているわけではない。このような日々集められている健康情報を用いた研究について系統的な文献調査をした結果をみると,不透明な報告が多いことが指摘されている(Hemkens et al., 2016)。そこで,Benchmol博士,Langan博士らか中心となり,日々集められている健康情報を用いて行なう研究の報告のガイドラインであるRECORD(The REporting of studies Conducted using Observational Routinely collected health Data)が開発された(Benchimol et al., 2015)。

 RECORDの目的は,健康情報を用いた研究の報告の質を向上させることであり,論文の読者がその研究の内的・外的妥当性を評価し,研究結果を正しく理解するのに必要な情報を論文中に記載することを促すものである(Benchimol et al., 2015;Glasziou et al., 2014)。RECORDは,観察研究の報告基準であるStrengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology(STROBE)を基盤とし,STROBEの基準を拡張するような形で,日々の健康情報を用いた研究の報告において特に論文中に記載するべき点を追加している。

 RECORDは,EQUATOR(Enhancing the QUAlity and Transparency Of health Research)Networkが推奨している報告基準の作成プロセスに沿って,修正デルファイ法を用いて開発された。開発過程には医療研究者だけでなく,臨床医,学術雑誌編集者等さまざまなステイクホルダーが参加し,日々の健康情報を用いた研究の報告基準に含めるべき事項に関して意見収集が行なわれた。さらに,公開フォーラムでの討議を経て,2015年に公表された。現在,RECORDは,JAMAやBMJ等の主要な医学学術誌において支持されており,ドイツ語,中国語,フランス語,そして,筆者らによる日本語版がRECORDの公式ホームページで公開されている。

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概要

背景

 近年のがんや生活習慣病,慢性疾患の増加に伴い,合併症の発症率や入院率,死亡率などの客観的指標による評価のみならず,患者の視点で評価される主観的指標,患者報告アウトカム(patient reported outcome;PRO)が重要になっている。特に,2009年に米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)が医療品の申請に際しPROが必要であるというガイダンスを公表して以来,その重要性が広く認識されてきた。

 PROによって健康関連QoL(Health related quality of life)や自覚症状(痛み,口喝,うつ状態,睡眠障害等),機能状態(身体機能,社会機能,認知機能等),治療に対する満足度,治療の遵守度などを測定することができる。

 PROの測定時は,主観的指標であるという特性を考慮した,妥当性と信頼性を担保できる適切な尺度を用いなければならない。しかし,実際には,信頼性や妥当性が十分に評価されていない尺度が使用されていたり,尺度特性に関する用語の定義が研究者間で異なっていることも,これまでしばしばみられてきた。

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概要

 医学系雑誌にも数多くの質的研究論文が投稿されるようになったが,投稿のためのガイドラインは,ICMJE(医学雑誌編集者国際委員会)でもいまだ提示されていない(Tong,Sainsbury, & Craig,2007)。質的研究方法の教育と実践においても,広く認知された研究報告のための包括的ガイドラインは提示されていない。個の体験のユニークさや,多様性を強調する質的研究方法においては,そのイデオロギーや,方法論が多様であるという特性から,ガイドライン作成になじまないとされている(Booth et al., 2014)。

 本稿で解説するCOREQの基準は,査読者や編集委員が投稿論文の査読に用いることを目的として,既存の複数のガイドラインに共通する要素を抽出し,統合する作業を経て作成された。そのため,専門家による会議や意見の集約を経ていない。開発者であるTongら(2007)は,このガイドラインは開発の端緒にあり,今後の洗練や発展の可能性があると述べている(Tong et al., 2007)。このガイドラインを投稿の際に用いているのは,BMJとJournal of Advanced Nursingにとどまっているとされている(Booth et al., 2014)。

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はじめに

 報告ガイドラインは「論文執筆時に使うもの」と,読者の多くの方々は考えられてはいないだろうか。もちろん,当初はその目的で作成されたのであるが,報告ガイドラインは研究の計画時から最終的な査読の対応まで,研究のすべてのプロセスで活用されるべきものである。本稿では,論文執筆時のみならずさまざまな活用場面を紹介しながら,ガイドラインの意義と今後のさらなる活用可能性について考えていく。

連載 集まる つながる 広がる 若手研究者のバトン・10

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若手研究者は,今日も看護の未来に向けて疾走中。

ここはそんな同じ目標を抱く者同士が,ぷらっと立ち寄り語り合う場所。

誌面をフィールドに,思いをバトンに乗せて語り継いでいきます。

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 編著者である佐藤紀子氏とは,初めての出会いからかれこれ50年になろうとする年月が経っていることに感動を覚えながら読んだ。1970年代の安保闘争や沖縄返還の時代に,私達は看護基礎教育を受け,看護師人生が始まった。そして,定年までの14年間に佐藤氏は「看護生涯発達学」領域を創設し,多くの看護職と出会い,まさに劈くに至った看護のフィロソフィーをここに表現したといえる。本書は,彼女の生きられた体験の蓄積であり,経験化された証であろう。43人の大学院生を輩出した佐藤ゼミが醸成した「臨床の知」をこのように具体的に書くことで,看護実践や教育の神髄を読み手に波及できていることを心から尊敬する。

 看護師が大学院で学ぼうとする動機はそれぞれであるが,その多くが現実の看護に悩み,もがき,もっと良い看護を実践したいと思ったとき,研究という手法で何とか切り拓きたいと進学してくる。ところが,いざ研究課題の絞り込みになると,自分が何をしたかったのか怪しくなる。研究を仕上げるには,この問いを避けては通れない。先行研究,自問自答,仲間や指導教員の助言……多くのプロセスを経て,自分の扉を開いていく。このプロセスこそが大学院修士課程の入り口では重要であり,ゼミで教員や院生との対話を重ね,深め,納得していく,自分の研究課題への取り込みこそが肝になるであろう。佐藤ゼミで修士論文,博士論文を仕上げた多くの修了生が,苦しかったけれど,大きな収穫を得たことを本書で具体的に記載している。

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目次

INFORMATION

今月の本

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次号予告・編集後記

基本情報

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看護研究
53巻1号 (2020年2月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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