Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
概要
医療分野で行なわれる多くの研究方法は観察研究であるが(Glasziou,Vandenbroucke, & Chalmers,2004),報告の質が十分ではないものも多く(Pocock et al., 2004),研究の強み・弱み,および,一般化可能性を評価することが妨げられているという問題がある。このような観察研究の報告の質の改善を目的として,観察研究で何が計画され,実際に何が行なわれ,そして,何が発見されたのかに関わる明確な報告を強化するために開発されたのが,STROBE声明である(上岡,津谷訳,2008)。
STROBE声明は,STROBEイニシアチブ・グループによって開発され,2007年にチェックリスト(表,文末に掲載)(von Elm et al., 2007;上岡,津谷訳,2008),および,その詳細と解説(E & E)(Vandenbroucke et al., 2007/福原ら監修・訳,2009)が発表された。STROBE声明には,観察研究の主要な研究デザインであるコホート研究,ケース・コントロール研究,横断研究について,なぜこれらの項目が必要なのか,観察研究に特有の交絡・バイアスへの対処法に関する記述のポイントについて,論文の記載例もまじえて詳しく解説されている(観察研究のうち,症例報告,ケース・シリーズ研究は,STROBE声明の対象外である)。
STROBE声明には,拡張版(extensions)が多数発表されている。看護学分野の研究でも使われやすい報告ガイドラインには,例えばケース・コホート研究の報告(Sharp, Poulaliou, Thompson, White, & Wood, 2014),日常的に収集する医療情報を用いた研究の報告〔The REporting of studies Conducted using Observational Routinely-collected health Data(RECORD)Statement〕(Benchimol et al., 2015),傾向スコア(プロペンシティスコア解析)(Yao et al., 2017)がある。拡張版を活用することで,各研究デザインに特有の方法論に対応した,より具体的な留意点を把握することができる。特に近年行なわれることが多い既存の健康・医療情報を用いたretrospective cohort studyについては,RECORD声明が参考になる(本特集のpp.40-46参照)〔拡張版に関する詳しい情報は,STROBEのウエブサイト(https://strobe-statement.org/index.php?id=strobe-home),または,EQUATOR NetworkのSTROBEのページ(https://www.equator-network.org/reporting-guidelines/strobe/)を参照されたい〕。
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.