特集 看護研究における報告ガイドライン1
序—報告ガイドラインの意義
中山 健夫
1
1京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
pp.10-12
発行日 2020年2月15日
Published Date 2020/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201706
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研究公正と出版倫理
人間を対象とした研究の倫理に関しては,国内においても2000年前後から研究参加者の保護,個人情報の扱い,インフォームドコンセント,倫理審査などの課題について関係者の認識が広まり,倫理指針の策定や倫理審査委員会の体制の整備など,研究者の意識の変化も着実に進んできた。その一方,もう1つの研究倫理ともいえる研究公正(research integrity),そして研究上の不正行為(scientific misconduct)への対応という極めて重要で,決して稀ではない問題は,多くの研究者が我が事としての認識に至っていなかった。公的な研究費の不正利用という限られた課題では一定の関心が寄せられ,2010年前後からは利益相反のマネジメントという喫緊の問題から,日本医学会をはじめ各学会でルールづくりと製薬企業との関係の見直しが進んだが,それに比して,公正な科学研究の全体的な議論の深まり,関係者間での共有,教育への反映は数段の遅れがあったといえる。
そのような中,日本の科学・医学研究にとって大きな転機を迎えたのは2014年,生命科学領域におけるSTAP細胞,臨床研究領域における降圧薬ディオバンをめぐる研究不正の社会問題化であった。これらの問題を受けて,2015年4月に施行された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」では,研究結果の事後的な検証を可能とするために,それまでの「研究終了後のデータ」の扱いを「廃棄」から「保管」へと大きく方針を変更し,研究費の申請にあたっては,研究不正問題も含めた研究倫理に関する講習の受講が必須とされるようになった。
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