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概要
近年,日々観察されて集められている健康情報(疾患登録や診療情報等を含む),いわゆるリアルワールドデータを用いた研究が増加している。この背景には,臨床試験においてランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial;RCT)が倫理的な観点等から実施困難な場合,結果が出るまでに時間を必要とすること,費用がかかること,そして高齢者など臨床試験を実施しようとしても対象者の確保が難しいことといった状況が考えられる。さらに,臨床試験では理想的な条件下で新しい治療の効果や有害事象を把握できるというメリットがある一方で,対象者が限定されることから,高齢者を含む一般集団への有効性を評価することが難しい。そこで,高齢者等を含むすべての患者の診療実態の把握や,一般集団における新規の治療の有用性のエビデンスを探るために日々観察されて集められている健康情報を用いた研究が注目されている。
しかし,こうした健康情報は,研究を目的としてデータが収集されているわけではない。このような日々集められている健康情報を用いた研究について系統的な文献調査をした結果をみると,不透明な報告が多いことが指摘されている(Hemkens et al., 2016)。そこで,Benchmol博士,Langan博士らか中心となり,日々集められている健康情報を用いて行なう研究の報告のガイドラインであるRECORD(The REporting of studies Conducted using Observational Routinely collected health Data)が開発された(Benchimol et al., 2015)。
RECORDの目的は,健康情報を用いた研究の報告の質を向上させることであり,論文の読者がその研究の内的・外的妥当性を評価し,研究結果を正しく理解するのに必要な情報を論文中に記載することを促すものである(Benchimol et al., 2015;Glasziou et al., 2014)。RECORDは,観察研究の報告基準であるStrengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology(STROBE)を基盤とし,STROBEの基準を拡張するような形で,日々の健康情報を用いた研究の報告において特に論文中に記載するべき点を追加している。
RECORDは,EQUATOR(Enhancing the QUAlity and Transparency Of health Research)Networkが推奨している報告基準の作成プロセスに沿って,修正デルファイ法を用いて開発された。開発過程には医療研究者だけでなく,臨床医,学術雑誌編集者等さまざまなステイクホルダーが参加し,日々の健康情報を用いた研究の報告基準に含めるべき事項に関して意見収集が行なわれた。さらに,公開フォーラムでの討議を経て,2015年に公表された。現在,RECORDは,JAMAやBMJ等の主要な医学学術誌において支持されており,ドイツ語,中国語,フランス語,そして,筆者らによる日本語版がRECORDの公式ホームページで公開されている。
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