臨床皮膚科 73巻2号 (2019年2月)

  • 文献概要を表示

要約 78歳,女性.初診の7年前から両眼瞼周囲に瘙痒を伴う紅斑,腫脹が出現し,ステロイド軟膏を外用するも増悪寛解を繰り返していた.2か月前から両頰,下顎部まで紅斑,紅色丘疹,小膿疱が拡大し,当院に紹介された.使用中の点眼液3剤のうち,パッチテストで陽性を示したβ遮断薬であるミケラン®点眼液による接触皮膚炎と診断した.点眼中止により症状は消失し,その後再発もみられていない.点眼液使用中に生じた眼瞼周囲の難治性湿疹症例では,アレルギー性接触皮膚炎の可能性を念頭に置き,パッチテストを施行すべきである.また,β遮断点眼液では多剤で交差反応の可能性や,同じ成分を含む内服薬でも薬疹を生じる可能性があるため,原因薬以外のパッチテストも施行し,今後使用可能なβ遮断点眼液やβ遮断内服薬を検討すべきである.

  • 文献概要を表示

要約 84歳,女性.数年前から仙骨部の褥瘡があり,往診診療等で加療されていた.2016年夏頃から摂食困難となり,栄養状態が悪化していた.9月に誤嚥性肺炎にて当院内科へ救急搬送された.入院時,仙骨部に直径6.5cm大のポケットを有する褥瘡を認め,褥瘡から膿汁の排出があった.CT検査では仙骨と直腸の間に膿瘍形成があり,直腸・膿瘍腔・褥瘡の交通を認めた.感染コントロールのため,人工肛門造設術を施行し,膿瘍腔にサンプチューブ®を留置した.サンプチューブ®を使用した持続洗浄や陰圧閉鎖療法,ヨウ素含有軟膏外用などを行った.壊死組織は消失し,感染コントロールは可能となったが,褥瘡は残存した.子宮体癌に対して20年程前に放射線治療を施行した既往があり,直腸瘻の一因と考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 18歳,男性.初診1か月程前から,受験勉強をストレスに感じはじめ,四肢に小さい膨疹が出現するようになった.また,朝に増悪する傾向のある腹痛を伴い,通学困難となった.四肢に白暈を伴う数mm大の膨疹が散在していた.運動負荷試験,アセチルコリン皮内注射では皮疹は誘発されず,ノルアドレナリン皮内注射にて皮疹の再現を認めた.特徴的な皮疹と検査結果より,アドレナリン性蕁麻疹と診断した.また腹痛時に撮影したCTにて腸管浮腫を認め,アドレナリン性蕁麻疹に伴う腸管浮腫が腹痛の原因と考えられた.βブロッカー内服により,皮疹,腹痛ともに軽快した.アドレナリン性蕁麻疹は稀な疾患とされるが,コリン性蕁麻疹と診断されている可能性がある.周囲に白暈を伴う特徴的な膨疹を認める場合は,アドレナリン性蕁麻疹の可能性を検討する必要があると考えられる.

  • 文献概要を表示

要約 31歳,女性.全身性エリテマトーデスと抗ラミニン332型類天疱瘡に対し,プレドニゾロン10mg,タクロリムス5mg,ヒドロキシクロロキン200mgを内服していた.ST合剤の予防内服で肝障害の既往があり,内服を中断していた.2016年5月,ST合剤を内服再開.翌日に口唇の腫脹,口唇・口腔粘膜・陰部のびらんと水疱が出現した.四肢にも小紅斑が出現し,眼球結膜上皮障害も伴っていた.病変部の病理組織像では表皮細胞・粘膜上皮細胞に個細胞壊死,基底膜部の空胞変性があり,真皮浅層にリンパ球が浸潤していた.ST合剤内服の中止とステロイド全身投与により症状は改善した.ST合剤の薬剤リンパ球刺激試験は陰性であったが,皮疹部におけるST合剤のパッチテストが陽性となり,同時に非貼付部にも紅斑が誘発された.以上よりST合剤による多発性固定薬疹と診断した.固定薬疹は多彩なさまざまな臨床形態を示すことを再確認した.

  • 文献概要を表示

要約 87歳,女性.初診の8か月前から上肢に瘙痒性皮疹が出現し,全身に拡大した.近医にて抗ヒスタミン薬,ステロイド外用剤で加療されるも難治で,瘙痒に伴う不眠に悩まされていた.当院初診時,顔面を除く略全身に大豆大までの一部痂皮を伴う暗赤色丘疹が多発し,左上肢に米粒大の緊満性水疱を認めた.病理組織検査,蛍光抗体法,血清抗体価より結節性類天疱瘡と診断した.プレドニゾロン20mg/日,ニコチン酸アミド,テトラサイクリン塩酸塩の投与で皮疹は徐々に軽快したが,瘙痒,不眠が遷延した.シクロスポリン100mg(1.75mg/kg)/日(分2朝夕食前投与)を併用したところ,瘙痒が消失し,十分な睡眠時間を確保できるようになった.シクロスポリンの投与方法の工夫により,より少量の投薬で,結節性類天疱瘡の難治性瘙痒,皮疹に対して効果がある可能性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要約 70歳,男性.既往に統合失調症あり.30歳頃から頸部,軀幹に瘙痒を伴う紅斑が出現し,ステロイド外用にて軽快増悪を繰り返していた.数年前より腋窩にびらんを生じ,疼痛を伴うようになった.腋窩の皮膚生検で表皮細胞の棘融解を伴う裂隙形成を認め,また腹部の皮膚生検で表皮に裂隙形成と異常角化細胞を認めDarier病と診断した.臨床的に間擦部にびらんを呈する疾患としてHailey-Hailey病との鑑別を要した.両疾患ともにカルシウムポンプ異常を原因とする遺伝性疾患である.典型例では全く異なる臨床像をとるが,稀に類似した臨床像をとることがある.間擦部にびらんを伴う紅色局面を認めた場合,Darier病の可能性も考え全身の皮疹の有無を確認し積極的に生検を行う必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 61歳,男性.それまで尋常性乾癬と診断されていたが関節症性乾癬を発症した.アダリムマブ(ADA),次にウステキヌマブ(UST)で加療したところ,皮疹,関節痛が増悪したためADAを再投与した.投与中に血清KL-6値(以下KL-6)が徐々に上昇した.胸部CTの変化と呼吸器症状がなかったため継続投与が可能であった.その後二次無効になり,再度USTに変更したところ2回投与後にKL-6が再上昇し,胸部CTですりガラス状陰影が出現した.薬剤性間質性肺炎と診断しUSTを中止した.KL-6は徐々に低下し,皮疹,関節痛が再燃したためセクキヌマブを導入した.その後KL-6の増加と,胸部CTで異常は生じていない.TNF-α阻害薬に比べ,USTによる間質性肺炎の文献報告数は少ないが,投与前にKL-6高値の場合間質性肺炎を発症する可能性があるので,投与開始後定期的にKL-6の測定,胸部CTを行う必要があると考えた.

  • 文献概要を表示

要約 60歳,男性.50歳時,濾胞性リンパ腫と血液内科で診断され,それ以降,多剤化学療法を数回施行された.最初の化学療法後,右足底に単発性の結節が生じた.57歳で化学療法が再開されると,小結節が右下肢1か所,右上肢3か所に新たに生じた.右足底の結節が歩行時に圧痛を伴うようになったため近医皮膚科を経て当科を受診した.5か所すべてについて切除したところ,いずれも病理組織学的にeccrine poromaの所見と矛盾しなかったためeccrine poromatosis(EP)と診断した.EPはeccrine poromaが多発する稀な疾患である.悪性疾患に対する放射線治療・化学療法に際し発症したとの報告の割合が多く,自験例でも因果関係が考えられた.造血器腫瘍などの悪性疾患に対する放射線治療・化学療法に際し生じた多発性皮膚結節では,EPを念頭に置く必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 76歳,女性.半年前より左膝内側に圧痛のある小結節を自覚し,増大してきたため,受診した.受診時,結節の長径は5mm,表面は紅色調であった.局所麻酔下に単純切除した.表皮は不規則に肥厚し,表皮直下から真皮下層にかけて,多結節状,シート状に,異型性の乏しい類円形核と淡好酸性の豊富な細胞質を持つ,細胞境界の不明瞭な細胞が増殖していた.表皮との連続性は明らかではなかった.間質には,軽度のリンパ球浸潤があった.腫瘍細胞はS100蛋白,EMAがびまん性に陽性,AE1/AE3,CAM5.2,FXIIIa,SMAが一部に陽性であり,皮膚筋上皮腫の中でも,特徴的な所見を示す,cutaneous syncytial myoepitheliomaと診断した.稀な良性腫瘍であるが,真皮を主座とする良性腫瘍であり,皮膚科医は認知しておくことが望ましい.

  • 文献概要を表示

要約 3歳,女児に認められたinfantile myofibromatosisの1例を経験した.後頭部に2cm大で弾性硬の皮下腫瘤を認め摘出術を施行した.病理組織学的には小型の紡錘形細胞が密度高く束状に配列,多結節性に増殖し,免疫染色でビメンチン,α-SMA陽性,デスミン陰性であった.高度な異型はないが核分裂像が散見され乳児型線維肉腫との鑑別が必要であったが,ETV6遺伝子のFISH解析でキメラ遺伝子の存在を示すsprit signalは認められず除外された.CTによる全身検索で他部位に腫瘍を認めず,孤発型のinfantile myofibromatosisと診断した.術後約3年で再発は認めていないが,局所再発が7〜10%とされており,術後も画像検査を含めた注意深い経過観察が必要である.

  • 文献概要を表示

要約 51歳,女性.数年前から顔面に皮疹が多発し増加傾向のため当科を受診した.生活歴にヒアルロン酸,A型ボツリヌス毒素注入歴がある.前額部,両頰部に粟粒大程度の常色の小丘疹が多発していた.ダーモスコピーでは淡紅色と白色の領域が混在し,わずかに不明瞭な線状血管があった.病理組織像では真皮中層から深層にかけて好酸性に染まる,被膜で囲まれた骨組織があった.続発性骨形成を証明できる既往歴・生活歴がないことからmultiple miliary osteomas of the faceと診断した.本疾患は本邦では稀な疾患とされているが,海外では放射線科医の中で比較的ありふれた疾患であるとの報告もある.現時点では注射を明らかな原因とする顔面骨腫の報告例はないが,将来的に同様の症例の集積がみられれば,ヒアルロン酸やA型ボツリヌス毒素などの注射歴のあるものは,続発性皮膚骨腫の診断となりうるかもしれない.

  • 文献概要を表示

要約 76歳,男性.初診10年前より左足縁の皮疹を自覚していた.初診時,径25mmの鱗屑を伴う類円形紅斑を左足外側に認めた.ダーモスコピーではわずかに顆粒状の黒褐色領域を認める以外は,基底細胞癌を疑う所見は得られず,当初はBowen病を疑い生検した.病理組織学的所見では,表皮と連続して下方に突出する基底細胞様細胞からなる腫瘍胞巣,その辺縁に柵状配列を認め,表在型基底細胞癌と診断した.足部発症の無色素性あるいは低色素性基底細胞癌は稀であり,本邦での報告は自験例が2例目である.Fontana-Masson染色では,腫瘍内にメラニン顆粒を認めるものの,対照に用いた通常の色素性基底細胞癌と比較すると少量であった.低色素を呈した機序として,メラノサイトの絶対数低下や,メラニン産生の抑制が推測された.

  • 文献概要を表示

要約 76歳,女性.約3か月前より右前腕に表面が淡褐色調の結節を自覚し,受診した.局所麻酔下に右前腕の結節を単純切除した.病理組織学的には,真皮に長径約5mmの比較的境界明瞭な結節状病変を認めた.表皮・付属器との連続性や被膜はなかった.結節状病変は,糸様の薄い細胞索が内部をつなぐ篩状構造を有する胞巣や充実性胞巣から構成されていた.腫瘍辺縁の一部は,境界不明瞭で,1個〜数個の細胞からなる小型の腫瘍胞巣が膠原線維間に散在していた.腫瘍細胞の核は濃染し,大小不同を認めた.cytokeratin(CK)7はびまん性に陽性.epithelial membrane antigen(EMA)は一部の腫瘍細胞に加え,管状構造にも陽性であった.c-kitは多数の腫瘍細胞に陽性.Ki-67陽性率は5%以下であった.Cutaneous cribriform carcinomaは稀な腫瘍ではあるが,これまで邦文での記載がなく,見過ごされている可能性がある.

  • 文献概要を表示

要約 60歳,女性.初診の2週間前より,下痢・血便がみられ,その後左足外果部が発赤,腫脹した.近医で切開処置,抗生剤内服治療を行われたが改善なく,急速に潰瘍化してきたため当科を受診した.初診時,炎症反応の著明な亢進,低アルブミン血症,貧血がみられた.皮膚生検では,真皮全体に血管炎を伴わないびまん性の好中球浸潤の所見を認めた.また,腹部造影CT検査,下部消化管内視鏡検査からは重症の潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)の所見が得られ,UCに合併した壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum:PG)と診断した.UCの治療として,メサラジン3,600mg/日の内服,および顆粒球除去療法(granulocytapheresis:GCAP)を計11回施行したところUCとPGの症状がともに軽快した.合併症のないPGに対してGCAPが有効であった症例の報告もあり,自験例を通じて,PGの治療としてもその効果が期待されると考えた.

マイオピニオン

  • 文献概要を表示

1. はじめに

 皮膚科心身医学は,皮膚科学の中ではマイナーな分野で,皮膚科心身医学療法の対象となる患者は不定愁訴が多い,神経症やうつ病など精神科疾患の合併が多いと思う方もいるかもしれない.皮膚科心身医学療法の有用性について述べ,前述の誤解を解きたい.

連載 Clinical Exercise・138

Q考えられる疾患は何か? 石川 治
  • 文献概要を表示

症例

患 者:3歳,女児

家族歴:家系内に同症なし.血族結婚なし.

既往歴:在胎41週,正常分娩.出生時体重2,080g.

現病歴:生下時,上肢の異常に気づかれた.当院小児科を受診し,前腕彎曲,内反手,拇指低形成があり橈側裂形成不全症と診断された.生後2か月頃から体幹に淡褐色斑が出現し,顔面および上肢に漸次拡大した.

現 症:身長72.4cm,体重6,970gと体格は小柄だったが,言語・精神発達に遅滞はなかった.顔面,耳介に米粒大までの淡褐色斑と脱色素斑が多発し,毛細血管拡張を伴っていた(図a).前腕伸側から手背にかけて粗大網状の紅斑および淡褐色斑,脱色素斑が多発し(図b),大腿遠位から足背も同様の変化を呈していた.両前腕は短く,橈側に彎曲し,手は内反していた(図c).上肢X線写真では,橈骨の全欠損,尺骨の短縮・彎曲,手関節脱臼,内反手を確認した(図d).両眼に軽度の白内障はあったが,爪,歯牙に異常はなかった.毛髪は細めであったが,疎毛や脱毛はなかった.

--------------------

目次

欧文目次

文献紹介

次号予告

あとがき 石河 晃
  • 文献概要を表示

 働き方改革の波が医療界に押し寄せてきています.読者の皆様の勤務時間はどのくらいでしょうか.勤務医,特にレジデントの場合には,外来,病棟診療はもちろんのこと,各種書類作成,臨床写真整理,レセプトチェックなどのさまざまな業務に追い回されていることと思います.さらに,これに加えてカンファレンス準備,学会発表,学会出席,講習会聴講,論文作成も必要であり「自己研鑽」として勤務時間にカウントされない部分が存在します.この「自己研鑽」は専門医を取得するのに必須であるとともに,専門医取得後もそれを怠ると,最新の医学から後れを取る恐れがあります.「自己研鑽」は自分を高めるために行う努力のことですが,実は医師自身のためというよりは,患者さんのために行われていることなのです.日本の医療は医師の献身的「自己研鑽」により高い水準を保っているのが現状です.しかし,自分の能力を高めるために要する時間は報酬の対象になっていません.一方で,複数の診療科を受診すると1科当たりの診察料が安くなることや,フォロー中の患者が別の病気を発症して新規治療を開始しても,初診料が取れないことなど医師の診療技術に関する評価は納得できない部分があります.皮膚科専門医が足底の黒色斑を診察し,「自己研鑽」で鍛えた能力を駆使してメラノーマを鑑別したとしても,非皮膚科医が診察した場合と診察料は変わりません.全医師一律の料金体系は寿司屋に例えれば一流高級店のマグロと,100円均一回転寿司店のマグロに同じ値段をつけるようなものです.一流高級店に人が殺到するのは火を見るよりも明らかです.「神の手」を持つ外科医もしかり,能力を高めた者ほど過剰労働の危機に瀕してしまうのはとても皮肉なことです.「自己研鑽」を労働ではない,として切り捨てるのではなく,この部分をいかに評価し,いかに手当してゆくか,非常に重要な課題だと思います.私個人的には「自己研鑽」を勤務時間とするかどうかは不毛な議論であり,研鑽して得られた技能にインセンティブを付けることこそ必要なことだと思っています.

基本情報

00214973.73.2.jpg
臨床皮膚科
73巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月22日~6月28日
)