臨床皮膚科 73巻1号 (2019年1月)

  • 文献概要を表示

要約 26歳,女性.4年前に自殺企図し8種類の向精神薬を内服していた.当科受診の約2か月前より自宅で寝たきりの状態となり仙骨部褥瘡が発生.初診時,仙骨部中央に直径6cmのポケットを有する褥瘡を認めた.通院中に大転子部,踵部にも褥瘡が発生し入院となった.同時に消化管穿孔を認め穿孔部閉鎖術と人工肛門造設を行った.褥瘡はデブリードマン,陰圧閉鎖療法の後,仙骨部は大臀筋皮弁,大転子部は縫縮術にて治癒した.若年にもかからず褥瘡が重症化した原因にうつ病に対しての向精神薬の多剤併用による過鎮静が考えられた.向精神薬の多剤併用は副作用の錐体外路症状や過鎮静となるリスクが高く褥瘡発生のリスクも上がる.自験例では入院後,適切なケアに加えて向精神薬を減量できたことで全身状態の改善と褥瘡の治療が可能となった.精神疾患を有する患者において早期からの褥瘡予防処置とともに精神科医との連携による薬剤の適正使用がきわめて重要である.

  • 文献概要を表示

要約 58歳,女性.蕁麻疹様紅斑が先行し,1か月後に発熱,2か月後に関節痛が出現した.個疹は,軽度の瘙痒を伴う浮腫性紅斑で,数日で消退するも出没を繰り返し,消退後に色素沈着を伴った.病理組織学的所見では真皮上層の血管壁は膨化,変性し,血管壁と周囲の膠原線維間に好中球を中心とした炎症細胞浸潤があり,組織球や核塵,赤血球の血管外漏出像を伴っていた.抗核抗体,抗ds-DNA抗体,抗C1q抗体の上昇と補体の低下があり,腎生検ではループス腎炎Ⅱ型の所見を認めた.以上より,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)に伴った低補体血症性蕁麻疹様血管炎(抗C1q血管炎)と診断した.蕁麻疹様血管炎がSLEの初発症状となることがあり,特に低補体血症を認める場合には,十分な精査が必要である.

  • 文献概要を表示

要約 75歳,女性.34歳頃より両側の膝窩・鼠径部・腋窩・肘窩・前胸部に紅斑が出現し,1983年当科を初診した.皮膚生検の結果,Hailey-Hailey病と診断し軟X線療法やステロイド外用を行った.2012年以降は近医で加療されていたが,症状悪化のため2016年再度当科を受診した.腋窩・乳房下・鼠径部・膝窩・肘窩に紅斑とびらん,右上肢に膿疱・丘疹・痂皮・鱗屑を伴う紅色局面を認めた.再度皮膚生検を施行してHailey-Hailey病と診断した.末梢血を用いた遺伝子変異検索でATP2C1遺伝子のexon 17にヘテロ接合性にc. 1429delT(p. C477Vfs3)の新規変異が同定された.抗ヒスタミン薬内服とともにステロイド外用に加えてwet wrap法を行ったところ有効であったので,今後本症の治療法の1つとなりうると考え報告する.

  • 文献概要を表示

要約 56歳,女性.掌蹠膿疱症性骨関節炎に対し,インフリキシマブの投与を開始した.関節痛は軽快したが,2回目の投与の1週間後に,全身に紅暈を伴う膿疱と丘疹,咽頭痛,顎下リンパ節腫脹,角結膜炎が出現した.膿疱は無菌性.病理組織学的に膿疱形成と好中球とリンパ球の浸潤がみられた.インフリキシマブのparadoxical adverse reactionと診断した.ステロイドの外用とシクロスポリンの内服にて皮疹は改善した.関節症状が残存したため,ウステキヌマブ投与を行い,関節症状も改善した.paradoxical adverse reactionの現症メカニズムや診断確定方法についてはいまだ一定の見解は得られておらず,今後の同様の症例の蓄積に期待したい.

  • 文献概要を表示

要約 44歳,男性.約25年前に乾癬と診断され光線療法,外用薬にて加療開始するも,約2年半前より皮疹が増悪し当科を受診.シクロスポリン2mg/kg/日内服にて安定していたが,約2年前に38℃台の発熱と略全身に鱗屑を付着する紅斑がびまん性に生じ,一部で膿疱も伴い,膿疱性乾癬と診断した.シクロスポリンを中止しインフリキシマブ(IFX)5mg/kgを開始し,5回目でPASI 2.1まで改善した.その後も安定していたがIFX 10回目より悪化しPASI 20.8となった.IFXを6mg/kgへ増量し,投与間隔を4週間隔にしたが改善なく,IFX 12回目より週1回計5回の顆粒球単球吸着除去療法(granulocyte monocyte adsorption apheresis:GMA)を併用した.GMA施行後にPASI 7.5まで改善し,IFX投与後の効果も再び得られた.GMA施行3か月後でPASI 4.1,GMA施行5か月後でPASI 0.8まで改善し,その後も再燃はない.以上より,膿疱性乾癬のIFX二次無効症例に対してGMAの併用は有効であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 54歳,女性.両眼瞼と頰,鼻の腫脹と開眼困難が出現し受診した.皮膚生検では非特異的脂肪織炎の所見で悪性所見はなかった.ステロイド内服は有効であったが減量で再燃し,CHOP療法を施行したところ,プレドニンを減量,終了できた.25年前の重瞼術・隆鼻術施行歴が判明し,鼻背インプラントを抜去した.5年間再発なかったがその後眼瞼,頰の紅斑,腫脹が再発した.頰から再度皮膚生検を施行し,空胞状構造を多数形成する異物肉芽腫がみられ,パラフィノーマと診断した.病理組織像からは油脂類注入が推測されたが,患者は否定した.その後も眼瞼・頰部に発赤,腫脹を繰り返しており,局所症状のコントロールに難渋している.美容施術による皮膚障害は,本人の申告がないと,診断が困難なことがあり,まずは疑うことが重要である.

  • 文献概要を表示

要約 症例1:34歳,女性.初診1年前に左耳介に紅色結節が出現した.初診半年前の妊娠を契機に左額〜側頭部〜左耳介に増数・増大した.エストロゲンの関与が疑われたが出産後も縮小はみられず,外科的切除,ステロイド局注を併用した.症例2:71歳,男性.非Hodgkinリンパ腫にて化学療法施行中の初診1か月前に右大腿に紅色結節が出現した.全切除し再発なし.2例とも病理組織像では病変が結節状に形成され,内皮細胞が内腔に突出した血管の増生とその周囲に多数のリンパ球と好酸球の浸潤がみられた.リンパ濾胞様構造は認められなかった.ALHEは約8割が頭頸部領域に発症,真皮内に病巣部位が限局することが大半である.下肢発症および皮下脂肪織に限局する症例は稀である.

  • 文献概要を表示

要約 60歳代,女性.10年程前から右下口唇辺縁部に小丘疹を自覚し,数か月前から増大した.既往に脂質異常症があり,黄色腫の疑いで当院を受診した.右下口唇に接して約1cm大,淡黄色調で弾性硬の結節がみられた.ダーモスコピーでは,淡黄褐色の背景に腫瘍全体にわたる黄白色調の小円形,ないし索状の構造と,周囲の線状血管が観察された.パンチ生検病理組織像では汗管に類似した小管腔の増生がみられ,核異型等は明らかではなく汗管腫が疑われた.しかし典型的な病理組織像ではないため,全切除した結果,真皮浅層には微小角質囊腫が多数みられ,汗管様構造を呈する腫瘍細胞がびまん性に増殖し,筋層間や脂肪組織まで浸潤していた.以上より,自験例を微小囊胞状付属器癌(microcystic adnexal carcinoma:MAC)と診断した.本疾患は時に汗管腫や良性毛囊系腫瘍との鑑別が困難であり,ダーモスコピーでみられた黄白色調の小円形構造は,MACに特徴的な微小角質囊腫に対応すると考えた.ダーモスコピーの所見はMACの有用な参考所見となる可能性がある.

  • 文献概要を表示

要約 55歳,女性.初診数年前より右腋窩に皮下腫瘤があった.自発痛を認め,緩徐に増大したため当院を紹介受診した.常色で弾性硬,径8mm大の皮下腫瘤を認めた.病理組織学的には真皮から皮下組織にかけて立方状で類円形核を持つN/C比の大きい異型細胞が腺管形成を示し線維性間質を伴って増殖していた.周囲には副乳に相当する乳腺組織を認めた.免疫組織化学染色では腫瘍細胞はestrogen receptor(ER),progesterone receptor(PR)が陽性,human epidermal growth factor receptor-2(HER-2)が陰性であった.以上より副乳癌(浸潤性乳管癌)と診断した.本症は汗腺系腫瘍との鑑別が問題となる.診断には副乳腺組織の存在と浸潤性乳管癌の判断が必要である.また病歴や臨床所見も併せて総合的に判断する.ER,PR,HER-2の検索は治療方針決定に必須である.

  • 文献概要を表示

要約 76歳,女性.左第2趾原発の悪性黒色腫に対し,転移検索目的にFDG-PET/CTを施行したところ原発巣の他同側の左膝と左鼠径部にFDGの集積を認めた.足趾離断,膝病変切除および鼠径リンパ節郭清を行った.病理組織像で原発巣と左鼠径リンパ節は悪性黒色腫であったが,膝病変はCD68陽性泡沫状細胞が増生しており,悪性黒色腫の転移ではなく,色素性絨毛結節性滑膜炎であった.術後は悪性黒色腫に対しインターフェロンβ維持療法を行っていたが,肺転移を認めたためニボルマブ投与へ変更した.下垂体性副腎不全および認知症を発症したため治療を中止したが,3年3か月時点で生存中である.FDG-PET/CTは悪性腫瘍の転移巣検索として広く使用されているが,FDG集積を認める病変として悪性腫瘍以外にも炎症疾患や感染症,良性腫瘍があり注意を要する.本症では術前の画像検査のみでは色素性絨毛結節性滑膜炎と診断できなかった.非典型的なFDG集積を認めた場合は組織診を含め追加検査が必要と考えた.

  • 文献概要を表示

要約 77歳,男性.背部悪性黒色腫,肺転移,多発リンパ節転移に対して他院にてニボルマブ(2mg/kg)を,12回まで副作用なく投与された.肺転移巣は縮小傾向にあったが,多発リンパ節転移が増大傾向にあったため,ニボルマブ開始1年1か月後に当科を紹介され受診した.当科での精査でニボルマブの効果はSDと判断し,ニボルマブを継続した.ニボルマブ開始1年3か月後,特に自覚症状はなかったが,定期CT検査にて間質性肺炎を認めたため,ニボルマブを休薬し,プレドニゾロン(PSL)1mg/kg/日の投与を開始した.CT所見の改善を確認してPSLを漸減し中止したが,中止後に間質性肺炎の再燃を認め,再度PSLを投与した.現在投与を終了したが,症状の再燃はない.ニボルマブによる副作用は投与期間の長短に関わらず出現することを認識し,また出現した際には十分な量のPSL治療後,早期に現疾患に対する治療の再開を検討する必要があると考えた.

  • 文献概要を表示

要約 症例1:1歳5か月,女児.頭部に脂漏性湿疹様皮疹,体幹四肢には紫斑,丘疹があり,Langerhans細胞の骨髄浸潤と,CT検査で蝶形骨の破壊像を認めた.症例2:5か月,女児.下腹部や鼠径部に点状紫斑や丘疹があり,CT検査で右下顎骨の骨溶解を伴う腫瘤性病変を認めた.症例3:5歳,女児.鼠径部および大腿内側に褐色調の紅斑,丘疹があり,CT検査で第5頸椎の圧迫骨折を認めた.いずれの症例も皮疹からLangerhans細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)を疑い,病理組織学的検査,電子顕微鏡検査にて多臓器型のLCHと診断した.化学療法もしくは経過観察で,皮疹は改善傾向である.LCHの皮疹は多彩であり,視診だけで診断することは困難である.LCHの皮膚病変を疑った場合は積極的に皮膚生検を行い,病型を確定する必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 77歳,男性.アルコール多飲歴と4年前に頸部,下顎の脂肪腫切除歴があった.1年前に接触性皮膚炎で当科受診時に,両下顎,頸部,両肩から上肢,前胸部を中心とした上半身と鼠径部に,弾性軟の皮下腫瘤を左右対称性に認めた.病理組織像で,被膜を有さない成熟脂肪細胞が増生し,特徴的な臨床像とあわせて,良性対称性脂肪腫症と診断した.本疾患の機序はいまだ明確ではないが,自験例のようにアルコール多飲に伴う報告例が多い.また,頸部,体幹,四肢近位に好発し,これが褐色脂肪組織との分布に一致することから,褐色脂肪細胞由来とする説が根強い.一方で,病理組織像では形態学的に白色脂肪細胞の増殖がみられ,いわゆる古典的褐色脂肪細胞とは必ずしも合致しないため異なる機序が示唆される.最近,褐色脂肪様細胞のベージュ細胞の存在が判明しており,本症との関連が注目される.

マイオピニオン

  • 文献概要を表示

 現在,鳥取大学医学部附属病院で皮膚科と卒後臨床研修部門を担当しております.このような立場にあることで知りえた「若手医師」をとりまく日本の医学教育の動向をご紹介させていただき,日々感じていることを述べさせていただきます.

連載 Clinical Exercise・137

  • 文献概要を表示

症例

患 者:36歳,女性.妊娠36週,初産婦.

主 訴:全身性の瘙痒を伴う紅斑,緊満性水疱,口腔内のびらん

現病歴:約3週間前より手背に瘙痒を伴う紅斑が生じ,近医でステロイド外用により加療されたが改善せず,緊満性水疱が出現,四肢にも多発してきたため受診した.

現 症:小指頭大までの緊満性水疱,びらんが四肢を中心に全身に散在し,手背,足背は浮腫状で,紅暈を伴った拇指頭大までの緊満性水疱とびらんを多数認めた(図1a).口腔内には地図状に分布するびらんを認めた(図1b).外陰部や眼球および眼瞼結膜の粘膜病変はみられなかった.

--------------------

目次

欧文目次

文献紹介

文献紹介

次号予告

あとがき 玉木 毅
  • 文献概要を表示

 今年度の診療報酬改定で「妊婦加算」というのが加わった.何やらモメそうと思っていたが,改定直後は特に何もなかったので,3割負担で初診時225円・再診時114円と,まあ大したことない金額だからかな?と思っていた.だが最近になってSNSなどで広まり「炎上」し,マスコミが急に大騒ぎし出したこともあって,ついに1月から算定「凍結」となるらしい.当初は単に負担増に気づいた妊婦が少なかっただけで,時とともに気づいた妊婦の人数が増え,「臨界」に達して一気に広まったというところだろう.小泉進次郎議員が自民党厚生労働部会長になり,「このままではいけないだろう」とコメントしたことも,騒ぎに拍車をかけた.個人的に別途気になったのは,「妊娠が終了したことをどうやって判断するか?」ということである.外見だけで判断するのは無理? 再来のたびに「まだ妊娠されてますか?」と聞くのもウザがられそう.さらにもし流産などで終了した場合にそんな質問した日には…

 投与禁忌薬やX線など,妊婦の診療に一定の「手間」がかかり,それを「加算」という形で評価するということ自体は,それなりの意義があり不合理な仕組みというわけでもない.ただ,「患者の自己負担額がそれだけ増えてしまう」という想像が足りなかったのではないだろうか? その分妊婦の自己負担比率を下げるとか出産一時金を増額するなどの対応も考えられたのではないだろうか?

基本情報

00214973.73.1.jpg
臨床皮膚科
73巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月11日~11月17日
)