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タイトルのようなテーマの原稿依頼を頂きました.新人の勧誘に日本一力を入れていて若手が増えてきた熊本大学にいたからでしょうか,あるいは日本研究皮膚科学会きさらぎ塾やあおば塾のチューターであったイメージからでしょうか.いずれにせよ,そういったことに熱心と思っていただけるのはありがたいことです.私自身,これまで東京大学,東京逓信病院,熊本大学,そして和歌山県立医科大学などと異なる環境に身を置いてきましたが,何もしなくても勝手に入局者が集まってきた東京大学とは異なり,熊本では甘い言葉を駆使してなんとか入局させた若手をどのように育成していくかについては責任を感じておりましたし,和歌山に移った現在,その重要性を再認識しています.特に,東京大学や熊本大学ではせっかく入局してくれた若手が1年足らずですぐ退局するという苦い経験をいたしました.和歌山ではそういった思いはもうしたくありません.新専門医制度により皮膚科の入局者が増えるのかどうか予測がつかない状況で虎の子の若手たちをどう鼓舞するか,どこの施設も頭を悩ませているのではないでしょうか?
さて,googleで「若者を鼓舞するコツ」を検索してみるとさまざまな会話術や褒め方,叱り方が出てきます.書籍ではカーネギーから『暗殺教室』のような漫画まで,参考になるものが多数あります.私の愛するプロ野球では,モチベーター型の監督として星野仙一元監督が有名であり,「選手の家族の誕生日にはプレゼントを贈り,2軍の選手の両親には心配なさいませんようと手紙を書く」というようなエピソードに事欠きません.ただ,こういったテクニックを真似できるかどうかは指導医側の個々のキャラクターにもより,個人技の要素が強いです.それから,(特に地方では)一般企業に比べて思いきり売り手優位市場なので,若手のモチベーションやロイヤルティはどうしても個人差が大きくなります.個人個人に合わせてきめ細かくフォローできればいいのですが,なぜ指導医がそれになかなか注力できないのかと考えるとやはり日々の業務が忙しいからなのでしょう.どんどん成功体験を積ませればいいとも聞くのですが,そんな都合の良い症例ばかりではありません.私としては,日々の診療や研究がそのまま鼓舞につながるようなシステムを構築してしまうことができれば理想だという結論に至っています.
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