臨床皮膚科 71巻12号 (2017年11月)

連載 Clinical Exercise・123

Q考えられる疾患は何か? 齋藤 京
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症例

患 者:84歳,女性

主 訴:顔・陰部・四肢先端の弛緩性水疱を伴う紅斑

既往歴:多発性脳梗塞および二次性てんかん

現病歴:6年前の脳梗塞発症以降の食事は半消化態栄養剤であるテルミールソフト® と半固形食で取っていたが,徐々にテルミールソフト® 中心になっていた.当科受診の1か月前から顔・陰部・四肢先端に紅斑が出現し徐々に増悪した.

初診時現症:眼瞼・鼻孔・口囲に痂皮を伴うびらん,紅斑を認め,また臀部から陰部にかけ辺縁に浸軟を伴うびらん局面がみられた(図1a,b).四肢には弛緩性水疱や痂皮を伴う紅斑が散見していた.また,軽度の意識レベル低下が観察された.

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 1.はじめに

 教育というと何を思い浮かべるだろうか? どこで学習者と深く関わるかにより異なると思うが,卒前卒後教育や市民・患者啓発を含めすべての医師に教育力は必要だと考えている.

 また,現代では知識を教えるだけでなく,臨床推論や問題解決能力を高めていくことが求められている.医学知識が膨大となり,講義だけでは分厚い教科書を網羅することは難しい.つまり「主体的に学べる学習者を育てる」ということである.また,医学生は教育体制の整ったところで初期研修や専攻医研修をしたいと考えているようであるから,教育力をつけることは人材獲得にも重要なのである.

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要約 1992〜2011年の20年間に当科で病理組織学的に診断しえた転移性皮膚腫瘍86例について,原発腫瘍の種類,部位,大きさ,臨床像,病理組織像,他臓器転移の部位,皮膚転移出現後の予後について検討した.原発腫瘍は,男性では肺癌(13例,32%),咽頭・喉頭癌(6例,15%),食道癌(5例,12%)の順に,女性では乳癌(31例,67%),肺癌(3例,7%),子宮癌(3例,7%)の順に多かった.原発巣の診断から皮膚転移出現までの期間と,皮膚転移出現から死亡までの期間はいずれも男性に比べ女性で有意に長かった.皮膚転移巣の診断を契機に原発巣の診断に至った症例が3例あった.症例数は少ないながら皮膚転移巣を契機に原発巣が診断される症例があること,皮膚転移巣を診断することで予後の推測に役立つと考えられることから,皮膚転移巣の早期発見・診断は重要と考えられた.

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要約 30歳,女性.初診の10日前から下肢の浮腫,淡紅色斑,瘙痒感が出現した.初診時,両下腿に指圧痕を残さない浮腫と,浸潤を触れないびまん性の紅斑を認めた.白血球11,300/μl(好酸球33.9%),IgM 309mg/dlと上昇がみられた.オロパタジンを1週間内服したが,症状の改善がみられず,プレドニゾロン20mg/日の内服をしたところ,臨床症状,検査所見ともに軽快し,その後症状の再燃は認めなかった.自験例は下腿に皮疹が限局し,ステロイド内服が著効したこと,その後再燃を認めないことからnonepisodic angioedema associated with eosinophilia(NEAE)と診断した.症状の再燃を繰り返すepisodic angioedema associated with eosinophiliaはIgM値が上昇することが多いとされている.NEAEが提唱された以後の本邦報告例を検討したがIgMと再燃の有無に関連はみられなかった.

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要約 86歳,女性.右下腿の潮紅と腫脹を主訴に来院した.病理組織学的に血管炎の所見はなく,脂肪織小葉隔壁中心に軽度の炎症細胞浸潤と著明な線維化を認め,血管エコーで血栓像は認めず,臨床像・病理組織学的所見より硬化性脂肪織炎と診断した.脂肪織炎の原因の精査をしたところ,Sjögren症候群の合併を認めた.胸部CTで初診から5か月後に間質性肺炎を認めた.硬化性脂肪織炎は日常診療でよく遭遇する疾患であるが,自験例のように膠原病を基礎疾患として発症することもあるため,うっ滞性皮膚炎などの静脈還流障害のない原因不明の硬化性脂肪織炎では,基礎疾患について精査をすることが大切である.

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要約 61歳,男性.14年前に壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum:PG)と診断され,他院にてヨウ化カリウム,塩酸ミノサイクリン,およびプレドニゾロン20mg/dayの内服で治療されていた.2015年6月に人工股関節置換術を施行後,創部に潰瘍を発症した.同部位の病理組織像で真皮全層と皮下脂肪織に好中球の浸潤を認め,PGによる潰瘍と診断した.その後,同年7月に結腸ポリープに対してポリペクトミーを施行した.2か月後に同部位に消化管穿孔を発症した.右結腸切除術および人工肛門造設術を施行したところ,創部皮膚に穿掘性の潰瘍を生じ,PGの再燃と診断した.治療に抵抗性を示し,敗血症に伴う多臓器不全を合併し永眠した.壊疽性膿皮症は炎症性腸疾患を合併することが多く,しばしばポリペクトミーを施行することがあるが,それにより病態が崩れ,PGの再燃を惹起する可能性があり報告する.

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要約 65歳,女性.喘息などのアレルギー疾患の既往はない.2か月前より両下腿にかゆみの強い浮腫性紅斑や紫斑が出現した.初診時は,両下腿に浸潤を触れない紫斑が散在していた.初診の2週後,発熱,両下肢の痺れが出現し,歩行困難となった.大腿の紫斑の病理組織像で,真皮小血管に好酸球浸潤を伴う白血球破砕性血管炎を認めた.末梢血好酸球増加はみられなかった.血管炎の診断にてプレドニゾロン1mg/kg/日の内服を開始して発熱と皮疹は速やかに消失したが,下肢の痺れは持続した.このため,免疫グロブリン大量静注療法を追加したところ,痺れの著明な改善を認めた.Chapel Hill Consensus Conference 2012による血管炎の定義には合致しないが,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に近い病態と考えられた.

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要約 40歳,女性.1年前より頸部の紅斑,半年前より両側上腕を中心に圧痛を伴う紅斑と弾性軟の皮下結節が出現した.皮膚生検を施行し,結節性皮膚ループスムチン症と診断した.ストロンゲストクラスのステロイド剤外用で皮疹は改善傾向であったが,その後全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の病勢悪化に伴ってステロイド全身投与を行い,皮疹は完全に消退した.結節性皮膚ループスムチン症は1985年に長島らにより疾患概念が提唱されて以降,本邦報告例は34例と稀である.自験例を含む35例中28例(80%)でSLEを合併しており,28例中26例(92.9%)でSLEの病勢との相関を認めた.結節性皮膚ループスムチン症の診断をした場合,SLEの注意深い経過観察が必要であると考える.

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要約 59歳,男性.6か月前に右鎖骨部に自覚症状のない結節が出現し徐々に増大した.2か月前より疼痛が出現した.同部に外傷や中心静脈カテーテル挿入などの既往はない.右鎖骨上窩に25×20mm大のなだらかに隆起する常色の皮下結節を認めた.外頸静脈上にあり,体位による変化や結節の拍動は認めなかった.超音波検査では,結節は皮下に位置する低エコーの単房性で,内部エコーは同心円状を呈し,後方エコーは増強,側方エコーは認めなかった.カラードプラーでは結節内部には血流はなく,外頸静脈に接していた.全切除した病変の病理組織像では,赤血球,フィブリンを容れる類円形の囊腫を認めた.囊腫壁内側に血管内皮細胞を認め,CD34陽性だった.術後は合併症もなく,再発も認めていない.Venous aneurysmは比較的稀な疾患であるが,側頸部に軟らかな皮下結節をみた際には考慮し,超音波検査など施行し,血流や外頸静脈との位置と関係を確認する必要があると考える.

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要約 43歳,男性.7年前から左腸骨稜下方に無症候性腫瘤を自覚した.様子をみていたが腫瘤は緩徐に増大してきた.初診の約1か月前から同腫瘤の一部が急速に増大したため当科を受診した.左腸骨稜下方から左大腿骨大転子部にかけて正常皮膚色の台形状に隆起する表面平滑な12×13cm大の皮下腫瘤を認めた.境界明瞭で弾性軟,可動性は不良であった.超音波検査,MRI,針生検を行ったが慢性拡張性血腫(chronic expanding hematoma:CEH)や悪性軟部腫瘍との鑑別に苦慮し,全摘術を行った.病理組織学的所見よりCEHと診断した.CEHは呼吸器外科や整形外科,形成外科などの領域で多く報告されているが,皮膚科での報告は比較的少ない.長期間にわたり増大する皮下腫瘤では,鑑別疾患の1つとして挙げる必要があると考えた.

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要約 69歳,女性.初診1年前より下腹部に疼痛などの自覚症状を欠く皮下腫瘤を自覚するも放置していたところ,徐々に増大したため当科を受診した.初診時,恥骨上に100×60mm大のドーム状に隆起する可動性良好で紅斑を伴う腫瘤を認めた.切除後,病理組織学的に真皮から皮下組織にかけて粘液腫状の間質を背景に,好酸性の胞体をもつ類円形細胞の網目状の増殖を認め,免疫組織染色にてEMA,S100蛋白が陽性,AE1/AE3,GFAP,カルポニン,αSMAが一部陽性であったため筋上皮腫と診断した.切除後,10か月経過時点で再発を認めていない.筋上皮腫は乳腺,唾液腺からの報告が多く,皮膚軟部組織に生じた報告は稀であるが,組織学的に良性であっても局所再発の可能性があるため長期にわたる経過観察が必要と考えられた.

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要約 82歳,男性.初診1年半前から自覚していた左耳前部結節が増大してきたため近医を受診した.生検病理組織像より平滑筋肉腫と診断され当科を紹介され受診した.初診時,左耳前部と右前額部に紫紅色結節を,左口角,左側胸部に皮下結節をそれぞれ認めた.CTにて下大静脈腫瘤と多発性の肺結節があり,下大静脈原発平滑筋肉腫の多発性皮膚・肺転移と診断し,皮膚・皮下結節すべてを切除した.切除標本病理組織学的所見では,真皮から皮下にかけて,比較的境界明瞭な腫瘍塊があり,大小不同の紡錘形から楕円形の核を有する腫瘍細胞が束状に密に増殖していた.これまで本邦において報告されている皮膚転移を生じた内臓原発平滑筋肉腫15例のうち,下大静脈原発例はみられない.しかし同部位発症例は血管壁原発平滑筋肉腫の60%を占めるため,皮膚転移をみた際には下大静脈由来の可能性を念頭に置いた検索を要する.

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要約 77歳,女性.5年前より後頭部に結節を自覚,徐々に拡大傾向にあった.初診時,15mm大,弾性硬の凹凸のある淡紅色結節を認めた.圧痛なし.病理組織学的に明るい胞体を持つ小型〜中型の類円形細胞や紡錘形細胞が充実性胞巣状に増殖していた.免疫染色では構成細胞はCK7陽性,CK20陰性,シナプトフィジン,クロモグラニンA,estrogen receptor,progesterone receptorはいずれも陽性だった.胞巣内の管腔の内側に沿ってCEAとEMA陽性であり,管腔内はアルシアンブルー染色陽性,細胞質はPAS染色陽性であり細胞内外にムチンが存在した.転移性乳癌との鑑別を要したが画像上,乳癌原発巣は認められなかった.Endocrine mucin-producing sweat gland carcinomaと診断した.

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要約 40歳,男性.6年前にアブに刺された左大腿部外側に結節が生じ,徐々に増大してきた.自然経過にて様子を見るも手拳大まで拡大したため近医皮膚科を受診し,石灰化上皮腫の診断で当科を紹介受診した.悪性腫瘍の可能性も否定できないため全身麻酔下で十分な切除マージンを確保し腫瘍全摘切除および単純縫縮術を施行した.術後の病理組織診断はpilomatrix carcinomaとされたが切除断端は陰性であり,所属リンパ節への転移も認めないことから術後補助療法は施行せず経過観察している.術後6か月経過したが再発転移は認めていない.Pilomatrix carcinomaは報告が少なく,診断に難渋する場合があるが再発転移を起こすことが知られており注意すべき疾患であると言える.

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要約 72歳,女性.2001年に子宮体癌で広汎性子宮全摘術,術後放射線療法を受けた.2010年下腹部に熱感を伴う紅紫色腫瘤が出現し,病理組織所見/免疫染色所見よりリンパ管肉腫と考えた.膀胱と左頸部リンパ節に遠隔転移を認める進行性のリンパ管肉腫として化学療法を開始したが,翌年左頸部リンパ節が40mmに腫大し,リンパ節郭清術を行った.その後薬剤変更し,現在も化学療法継続中である.化学療法に伴う好中球減少や頻発する下肢蜂窩織炎に対する加療を行いながら,現在7年間完全完解を維持している.リンパ管肉腫は血管肉腫と比較し患肢切断などにより根治的治療が可能なこともあり,長期生存例も複数報告されている.自験例は原発巣の手術を施行せず,化学療法が奏効しかつ7年以上の長期完解を得られているきわめて稀な症例であり,過去の文献的考察を含め報告した.

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要約 69歳,男性.右腹部に紅色皮疹が出現し,7日後に右腹部の膨隆に気づいた.近医で帯状疱疹と診断され,バラシクロビル3,000mg/日内服で加療され,腹部膨隆について当科を紹介された.右Th10〜11領域に痂皮を伴う紅斑が帯状に配列し,Th9〜11領域で腹壁の膨隆を認めた.腹部CT所見で右側の外腹斜筋と内腹斜筋が左側に比べ伸展し菲薄化しており,帯状疱疹に伴う腹筋麻痺と診断した.帯状疱疹関連疼痛やイレウス症状がないため筋力トレーニングを行い,約6か月で腹部膨隆は軽快した.帯状疱疹に伴う運動麻痺は稀な合併症である.過去37年間の本邦報告例を検討したところ,78%で改善を認め,予後は比較的良好であった.

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欧文目次

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 組織の恒常性の維持には免疫細胞による免疫調整と幹細胞による分化,増殖が重要だが,免疫細胞が幹細胞に及ぼす影響についてはよくわかっていない.制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)は免疫における作用が有名であるが,近年では組織のレジデントTregが臓器特異的に免疫以外にも代謝や組織保護に関与していることが報告されている.

 皮膚のTregが上皮幹細胞の存在する毛包部に多く存在することに着目した著者らは,Tregが毛包部の幹細胞に及ぼす影響を研究した.皮膚におけるTreg数を測定すると,毛周期に合わせて増減していることがわかり,休止期にTreg数が増え,成長期に入るとTreg数が減少した.Tregを一時的に欠乏させたトランスジェニックマウスでは,抜毛刺激後の毛の再生が有意に低下し,幹細胞の増殖や分化に関連する遺伝子発現も低下していたことから,Tregが毛周期を休止期から成長期にシフトさせていることが示唆された.一時的にTregを欠乏させたマウスの皮膚組織ではコントロールと比べて有意な炎症はみられず,幹細胞への影響が炎症とは無関係であることが示された.皮膚Tregのトランスクリプト解析でNotchリガンドファミリーの1つであるJag1の高発現がみられ,著者らはコンディショナルノックアウトマウスを用いて,TregにおけるJag1の発現が毛包幹細胞の増殖と分化において重要であることを証明した.

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 医療現場でクスリの副作用ケースが増えています.高齢化,マルチモビディティ,ポリファーマシー,新薬開発,ガイドラインによる推奨などが要因です.それでも,処方した医師には副作用を早期に発見し対処する責任があるといえます.そのためには処方する医師には「特別」な学習が必要です.なぜ特別かというと,悲しいかな,薬の副作用についての臨床的に役立つ実践的な知識は薬のパンフレットや添付文書を熟読しても習得できないからです.

 本書はそのような実践的な知識をコンパクトにまとめてエビデンスを提供してくれる新しいタイプのリソースです.著者は総合診療エビデンス界のプリンス,上田剛士先生(洛和会丸太町病院救急・総合診療科).本書では,得意技である円グラフを駆使して,徹底的な科学的エビデンスを提供してくれています.

次号予告

あとがき 中川 秀己
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 円滑な人間関係を構築するためには良好な質の高いコミュニケーションが大切なのは言うまでもありません.職場(特に患者さんの診察),家庭,学会などその他の社会で相手の気持ちを聞かず(忖度せず)に自分だけの要求を貫いてしまった,理不尽な相手の要求を断れなかった,お互いに遠慮し過ぎて時間のかかった割には得るものがきわめて少なかったなど不完全燃焼感を覚えることはほぼ毎日と言っていいほどあるのではないでしょうか.

 診療の場(特に初診)においては自己主張の強い患者さん,依存性の強い神経質な患者さん,何件も病院を回って医師に不信感を抱いている患者さん,モンスターキャラで手に負えなくなったためか紹介状を持って押し付けられてきた患者さんなどに加えて,患者さんの家族もいるため,どうコミュニケーションを取っていくかがいつも悩みの種となります.兎に角よく話を聞いてから丁寧な言葉でお話しするしかありませんが,「診察を受けて幸せだった」と感じてもらいたいという奉仕の精神でボランティア活動していると思えば何とかこなせるものです.もちろん,言葉だけの聴覚情報だけでなく,紙媒体を用いてわかりやすく視覚で説明したり,表情を変えたり,ジェスチャーを交えるとこちらの伝えたいことがより正確になります.このようにして初診でコミュニケーションがうまくいくと治療効果も上がるし,その後の再診時間の短縮が可能となってきます.

基本情報

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臨床皮膚科
71巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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