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文献紹介 皮膚の制御性T(Treg)が上皮幹細胞の分化を促進する
江上 将平
1
1慶應義塾大学
pp.996
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205251
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組織の恒常性の維持には免疫細胞による免疫調整と幹細胞による分化,増殖が重要だが,免疫細胞が幹細胞に及ぼす影響についてはよくわかっていない.制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)は免疫における作用が有名であるが,近年では組織のレジデントTregが臓器特異的に免疫以外にも代謝や組織保護に関与していることが報告されている.
皮膚のTregが上皮幹細胞の存在する毛包部に多く存在することに着目した著者らは,Tregが毛包部の幹細胞に及ぼす影響を研究した.皮膚におけるTreg数を測定すると,毛周期に合わせて増減していることがわかり,休止期にTreg数が増え,成長期に入るとTreg数が減少した.Tregを一時的に欠乏させたトランスジェニックマウスでは,抜毛刺激後の毛の再生が有意に低下し,幹細胞の増殖や分化に関連する遺伝子発現も低下していたことから,Tregが毛周期を休止期から成長期にシフトさせていることが示唆された.一時的にTregを欠乏させたマウスの皮膚組織ではコントロールと比べて有意な炎症はみられず,幹細胞への影響が炎症とは無関係であることが示された.皮膚Tregのトランスクリプト解析でNotchリガンドファミリーの1つであるJag1の高発現がみられ,著者らはコンディショナルノックアウトマウスを用いて,TregにおけるJag1の発現が毛包幹細胞の増殖と分化において重要であることを証明した.
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