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Generalized peeling skin disease(PSD)は,アトピー性皮膚炎様症状,喘息,アレルギー性鼻炎を伴う,稀な常染色体劣性遺伝性の魚鱗癬様紅皮症である.PSDの組織学検査では,角質層が顆粒層から剥がれ落ちる所見がみられる.Netherton syndrome(NS)と臨床的・病理組織学的に共通点を持つが,NSの責任遺伝子であるSPINK5に変異はない.PSDの原因遺伝子の同定を行った結果,コルネオデスモシン遺伝子にc.175A>Tという変異が見つかった.この変異はコルネオデスモシン蛋白の59番目のリジンが終末コドンに変化しているnonsense mutationであった.コルネオデスモシンは角質細胞同士を接着するコルネオデスモソームに存在する細胞接着蛋白である.患者皮膚を用いた免疫ブロット検査および蛍光抗体検査にて,患者皮膚ではコルネオデスモシンが全く発現していないことがわかった.この変異をホモ接合体で持つことにより,コルネオデスモシンが完全欠失し,角質細胞の接着が減弱することで角質層の剥離を招き,最終的にPSDを発症すると考えられた.
患者皮膚から採取したケラチノサイトを用いて三次元皮膚モデルを作成し,皮膚バリア機能検査を行った.患者由来の三次元皮膚モデルでは,表皮の物質透過性が増しており,コルネオデスモシンの欠失によって重篤な表皮バリア障害が起きていることが示された.近年,フィラグリン変異による角質バリア障害がアトピー性皮膚炎だけでなく,喘息・食物アレルギー・アレルギー性鼻炎などのアトピー疾患の発症要因となることが注目されている.PSDではコルネオデスモシンの完全欠失により重篤な角質バリア障害をきたすことで,表皮のアレルゲン透過性が増し,アトピー疾患の発症をもたらすと考えられた.
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