臨床皮膚科 59巻9号 (2005年8月)

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Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 91歳,男性.30年ほど前に右頬部に褐色斑が生じた.その後,徐々に拡大し,色調も濃くなってきた.暫く前から,一部が隆起してきた.

 初診時,右頬部に径25×15mmの黒褐色斑が存在し,その前方部に径10mmの黒褐色結節が認められた(図2).

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金持ちほど長生きする(Life at the top is longer)

 アメリカでは金持ちほど良い暮らしをして,長生きをする.金持ちが豊かな良い暮らしをするのは古今通じて世界共通のことであるが,アメリカの金持ちの長生きの原因はアメリカ社会の仕組みと大きく関連している.犯罪,事故などが金持ちほど少ないことも一因ではあるが,大人の死因の大半は心筋梗塞,脳卒中,癌の3大疾患であることを考えると,健康に関する意識の違いと実際に受ける医療の違いが大きく貢献していることが想像できよう.医療の質が病院によって多少異なるのは日本でも同じであろうが,アメリカではこれにさらに保険制度が絡んでくるので,より複雑である.アメリカの医療保険は多種類あることは前回説明したが,個々の保険によって病院が限定され,カバーする診療内容,検査,薬,手術が異なってくるし,カバーする金額も異なる.

 では,実際に心筋梗塞になった場合にどう違うのか.ニューヨークタイムズ紙に,3人のニューヨーカーの顛末が載っていたので,ここにまとめてみる.

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要約

 毛巣洞は毛髪を含む瘻孔,囊腫とその周囲の肉芽腫形成からなり,仙骨部の増悪・軽快を繰り返す発赤・腫脹・疼痛を呈する病変としてしばしば日常診療で経験する.新潟県立がんセンター皮膚科で1999~2004年に経験した仙骨部毛巣洞15例を対象とし,臨床および組織所見,特に深部の切除範囲について検討を加えた.15例の内訳は男性12例,女性3例,平均年齢26.5歳.Body mass index (BMI)は平均27.2で,12例に多毛を認めた.治療は全例筋膜上で全切除,単純縫縮を施行したが,BMIが30を超えていた2例で術創の部分離開がみられた.組織切片上で計測した皮表から病変最深部までの垂直径は平均10mm(3~21mm),皮表から深部切除断端までは平均18mm(12~29mm)であり,根治目的には筋膜上での切除が必要と考えた.

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要約

 58歳,男性.初診の5年前に左上腕の小豆大腫瘤を自覚し,徐々に増大した.左上腕内側に約4cm大の多房状を呈する弾性硬の皮下腫瘤を認めた.組織学的には真皮内に線維性被膜に包まれた多房性囊胞状構造を有する腫瘍巣を認め,囊胞内は粘液様物質が貯留し,その中に浮遊するように腫瘍細胞塊が存在していた.他臓器の悪性腫瘍病変は認めず,mucinous carcinoma of the skin(MCS)と診断した.術後2年を経過するが再発・転移はみられていない.MCSの好発部位は眼瞼や頭皮である.発生部位について検討を加えた結果,上腕の発生は本症例が初めての報告であった.体幹・四肢に発生した場合は特に消化管由来の転移癌との鑑別が難しく,発生部位と発生起源の関連については今後も検討が必要である.

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要約

 32歳,女性.1993年(28歳)に顔面の紅斑,光線過敏,関節痛を生じSLEと診断された.約3年間ステロイド内服後,自己判断で中止していた.1996年に両肘,両膝の常色小結節に気づき,2003年8月より急速に増加した.皮疹部からの病理組織像では真皮全層で膠原線維間が離開し,同部にムチン沈着を認めた.本症例をSLE患者にみられた結節性皮膚ループスムチン症(NCLM)と診断した.結節の増加と同時期より,顔面の紅斑の拡大,関節痛の悪化,抗核抗体価の上昇を認めた.2004年1月よりプレドニゾロン(PSL)20mg/日の内服を開始したところ,顔面の紅斑,関節痛は軽快,肘および膝の結節も消失した.

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要約

 67歳,男性.皮膚筋炎あり.広範に水疱,血疱を形成し,上咽頭癌を合併した.水疱形成を伴う場合は悪性腫瘍の合併率が高いことが知られているが,当初,全身検索で悪性腫瘍を見いだせなかった.しかし,経過中に嚥下困難を訴え,それを機に耳鼻咽喉科的精査をしたところ,上咽頭癌を見いだした.嚥下困難は上咽頭癌の直接症状というよりは,皮膚筋炎に基づいた症状であると思われたが,文献的にも嚥下困難は悪性腫瘍の合併を示唆する所見の1つとして重要と思われた.皮膚筋炎に合併する腫瘍として,本邦では上咽頭癌は稀であるが,中国南部やシンガポールでは上咽頭癌が最多とされる.悪性腫瘍の合併が疑われるが,呼吸器,消化器,婦人科領域の精査で異常がない場合は,上咽頭癌の可能性も念頭におき,EBウイルス(EBV)IgA抗体価の測定や耳鼻咽喉科的精査も考慮すべきと思われた.

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要約

 31歳,女性.妊娠34週目から腹部に痒みを伴う紅斑が出現した.徐々に腰・腹部,両上肢,両大腿に拡大したため,産後3日目に当科を受診した.皮疹は中毒性紅斑様病変と湿疹様病変とが混在しており,病理組織学的におのおのの臨床像を裏づける所見が得られた.治療はステロイド外用を行い,産後約2週間で痒みは消失し,色素沈着を残して治癒した.妊娠時にしかみられない特異的な変化としてのpruritic urticarial papules and plaques of pregnancy (PUPPP)の典型例を経験したので,病理組織学的所見を含め,考察を加えて報告する.

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要約

 65歳,男性.四肢,体幹に紅色丘疹が出現し,次第に水疱・痂皮を伴う浸潤性紅斑となり全身に拡大した.病理組織所見では真皮全層に血管,付属器周囲を中心に多数の好酸球の浸潤を認め,典型的なflame figureの像も散見された.ステロイド内服に同意が得られず,塩酸ミノサイクリン,DDSを投与したが,いずれも無効であった.次いでロキシスロマイシン300mg/日の内服を開始したところ,皮疹は軽度の浸潤は残ったがすべて色素沈着となった.マクロライド系薬剤は抗菌以外にもさまざまな作用をもつことが研究・報告され,近年,本症をはじめとする好酸球浸潤を伴う皮膚疾患に対するロキシスロマイシンの有効性が報告がされている.同薬剤は比較的副作用も少ないことから,Wells症候群に対してステロイドを全身投与する前にまず試みる価値のある薬剤と考えられた.

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要約

 62歳,女性.伯父に関節リウマチ.特記すべき既往歴はなく,薬剤内服歴もない.2週間前から左下腿前面にそう痒性皮疹が出現・消退を繰り返し,増数してきた.初診時,左下腿前面になだらかに隆起する,一部黄色調を帯びた大豆大の軟らかい淡紅色結節が手拳大の範囲に集簇していた.ほかに皮疹はなく,光線過敏やRaynaud現象,腹痛,関節痛はなかった.白血球,補体,腎機能,甲状腺機能は正常であった.血沈促進,γ-グロブリン高値,RA陽性,抗核抗体陽性,抗SS-A/Ro抗体,抗SS-B/La抗体陽性,胸部CTで軽度の肺線維症を認めたが,全身性エリテマトーデス(SLE),Sjogren症候群,全身性硬化症(systemic sclerosis:SSc),混合性結合織病(MCTD)の診断基準は満たさない.組織像では真皮上層の血管の壁は破壊され,周囲に好中球浸潤と核破砕像,赤血球漏出を伴っていた.罹患血管の周囲にムチンが沈着していた.鑑別疾患について若干の考察を行った.

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要約

 69歳,男性.左内果に硝酸イソソルビド,セフトリアキソンナトリウム,ヘパリンを含む薬剤の点滴漏れを生じた.その2日後に,刺入部から血管の走行に一致して上行性に強いそう痒と浸潤を伴う紅斑と漿液性丘疹が出現した.病理組織像は,真皮浅層の著しい浮腫と表皮下の水疱および真皮全層の血管・付属器周囲と脂肪小葉内に稠密なリンパ球,好酸球の浸潤を認めた.また,明らかな血管炎はなかったが,一部に血管内皮細胞の膨化を認めた.臨床像および組織像より,点滴剤による血管障害のほか,遅延型アレルギー機序の関与も考えた.

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要約

 53歳,女性,看護師.勤務先の病院で,注射用抗生剤の溶解・点滴業務中に,指先より痒みを伴う紅斑が出現,蕁麻疹となって全身に拡大し,血圧低下,呼吸困難,意識消失をきたすアナフィラキシーショックを繰り返した.使用していた製剤を含めた多種の注射用抗生剤のオープンパッチテストで,ピペラシリンとセフォぺラゾンが陽性であった.この2剤の化学構造をみると,ピペラジン環を含んだ側鎖部分が共通しており,自験例での抗原決定基となっている可能性が強いと思われ,接触蕁麻疹症候群と診断した.

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要約

 49歳,女性,ホームレス.長年にわたり粗末な食餌摂取とアルコール多飲を続けていた.数年前より歩行時のふらつきが認められた.数か月前からは露光部に境界明瞭なびらんを伴う紫紅色斑が生じた.ほかに複視や下肢のしびれ,下痢も認められるようになった.生化学検査にて血清亜鉛,ビタミンB1,トリプトファン,ニコチン酸の低値が認められた.これらの臨床所見と検査所見によりペラグラと診断した.入院加療は他院にて行われ,下肢のしびれに対してビタミンB12製剤の投与,皮膚症状に対しては,院内で支給される通常の食餌摂取により,約3週間後,症状は軽快した.

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要約

 66歳,女性.5年前より頭頂部に潰瘍形成を繰り返す紅斑局面があった.初診時,頭頂部に潰瘍を伴う径3cmの比較的境界明瞭な紅斑あり.自覚症状はなかった.背部,左側頭部にも鱗屑をつける紅斑があった.組織所見では,表皮基底層を中心に,大型で濃染する核をもち,胞体の明るい,いわゆるPaget細胞様外観を呈する異型細胞が表皮内に浸潤し,潰瘍部の真皮には,濃染する大型の核をもつ細胞,核分裂像を認めた.免疫組織化学的所見は,表皮内および真皮内にみられる異型細胞は,CD3陽性,CD4,CD8ともに陰性のTリンパ球であった.頭頂部と背部の紅斑は切除し,側頭部の紅斑には放射線照射を行った.pagetoid reticulosisの本邦報告例を検討したところ,皮疹が限局した領域に複数個存在した場合でも,治療に反応し再発がない場合は限局型に分類され,予後は良い.自験例も皮疹は多発するが限局型と考えられる.しかし,限局型から播種型への移行例も報告されており,今後も注意深い観察が必要である.

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要約

 15歳,男児.1999年頃から尋常性ざ瘡があり,2002年3月に突然,膿疱,丘疹が顔面全体に急速に拡大し,抗生剤による加療を受けたが不変であった.39℃台の発熱を伴い,右肘,背部に関節痛が生じた.初診時,前額部,両頬部から下顎部にかけて紅褐色斑と色素沈着があり,帽針頭大~粟粒大の膿疱と厚い痂皮が付着し,ところどころに瘢痕を認めた.病理組織では毛囊破壊と真皮全層の好中球浸潤を認めた.細菌培養ではStaphylococcus epidermidisを検出し,血液検査で炎症反応,X線で胸骨の骨改変像,骨シンチで胸骨,仙腸関節,胸椎に異常集積を認めたことより,acne fulminansと診断した.ステロイド内服が著効した.

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要約

 生後7か月,女児.生後2か月より大泉門部に徐々に増大する皮下腫瘍が出現し,帽状腱膜下より境界明瞭な囊腫を摘出した.病理組織学的所見にて囊腫壁に汗腺・脂腺・毛包を多数認め,dermoid cystと診断した.大泉門部のdermoid cystは比較的稀である.同部位のdermoid cystの特徴として,内容物が水様透明物質であることが多く,本症例は典型と考えた.

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要約

 43歳,女性.数年前より左拇指末節屈側に,自覚症状を伴わない4mm径,表面平滑,軽度隆起性,常色の角化性小結節が生じた.病理組織学的に真皮内の境界が明瞭な腫瘍で,増生した膠原線維間には紡錘形ないし星型の細胞や多核巨細胞を多数認め多形性を示す.pleomorphic fibromaと診断し,術後7か月間,再発を認めていない.pleomorphic fibromaは1989年にKaminoらにより命名された比較的新しい疾患概念で,本邦での報告は2例目である.sclerotic fibroma,pleomorphic sclerotic fibromaとの鑑別も含めて,腫瘍の位置づけについて考察を加えた.なお,自験例では右第1趾の爪下外骨腫を併発していたが,過去にpleomorphic fibromaと他の腫瘍との合併例の報告はなく,自験例の併発は偶然と考えている.

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要約

 51歳,女性.婦人科検診で外陰部の黒色斑を指摘され,当科を紹介された.左小陰唇粘膜側に直径2mm大の黒色斑があり,弾性硬に触知した.病理組織学的所見では真皮内に大小の囊腫が存在した.囊腫壁は1~数層の細胞からなり,筋上皮細胞と思われる扁平な細胞と,胞体の明るい円柱状あるいは立方型の細胞から構成されていた.内腔側の細胞には乳頭状に増殖する部分もあり,一部で断頭分泌の像を示した.壁細胞の免疫染色はCEA,S-100蛋白ともに陰性であった.壁細胞質内および囊腫内の多くに褐色の顆粒を認めた.以上より,アポクリン囊胞腺腫と診断した.また,腫瘍内の顆粒は黄金褐色の自家蛍光を発し,Schmorl反応における青緑色陽性の結果と合わせて,リポフスチンと考えた.アポクリン囊胞腺腫の臨床像,特に色調は多彩である.自験例では腫瘍内の多量のリポフスチンにより,黒色調を呈したと考えた.

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要約

 43歳,男性.幼少時より前頸部に大豆大の自覚症状のないしこりが存在し,3~4年前より比較的急速に増大した.右前頸部に44×47mmの半球状の常色の皮下腫瘤があり,弾性硬に触知され,一部に圧痛を認めた.単純CTでは,皮下から広頸筋上に被膜を有する電子密度のやや不均一な低吸収域を認めた.病理組織像は大型類円形の好酸性塊状物と,それに接して大小の腫瘍胞巣を認めた.塊状物質は好酸性の無構造物,すなわち血漿成分で,一部に出血を伴い,辺縁のごく一部に網目状の細胞索がみられた.間質には拡張した毛細血管が存在した.充実性胞巣の部分は典型的なspiradenomaの像で,腫瘍の大半を占める部分は血漿成分の沈着で,毛細血管の拡張を伴っていたことから,spiradenomaの亜型であるgiant vascular eccrine spiradenomaと考えた.

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要約

 55歳,男性.1993年に口唇上部に結節が出現し,1994年に近医で切除されたが,その後再発し,徐々に拡大した.初診時口唇上部に径8mm大,皮膚色の結節を認め,臨床所見からtrichoblastomaを考えた.病理組織において皮膚混合腫瘍の組織像を呈する部分と,毛芽様構造を認めtrichoblastomaの組織像を呈する部分とが混在した.毛包への分化を示した皮膚混合腫瘍と考えた.

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要約

 28歳,男性.約10年前より陰囊左側に米粒大の丘疹が出現した.徐々に拡大し,寒冷時痛を伴う正常皮膚色,弾性硬の腫瘍を認めた.病理組織学的には,陰囊肉様膜を発生母地とする単発性陰部平滑筋腫(solitary genital leiomyoma)と診断した.これまでの本邦報告例では,その7割が左側に発症している.陰囊左側に好発する理由として,陰囊左側の発生および発育との関連性が考えられた.

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要約

 55歳,女性.初診の6か月前より右肩に2cm大の紅色隆起性腫瘍が出現した.また5年後,右鼠径部に同じ性状の腫瘍が出現した.ともに顆粒細胞腫と診断した.欧米においては多発例が全報告例の10~15%あり,家族発生例の報告も散見された.一方,本邦では皮膚多発例の報告はなかった.これは,多発に気づかれていないのか,人種間の差異があるのか現時点では不明である.本症例は同時期発症ではないが,皮膚多発例であり,本邦ではきわめて稀と考えられた.皮膚以外の臓器多発例があることも考慮して,現在,経過観察中である.

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要約

 75歳,男性.39歳頃より背部に疣状腫瘤があった.58歳頃より一部隆起してきたため近医を受診し,皮膚生検術が施行され,hydroacanthoma simplexと診断されたが,放置していた.71歳頃より同部位がさらに隆起し,出血を伴うようになってきたため当科を受診した.初診時,左下背部に90×60mm,赤~黒褐色隆起性の腫瘍を認めた.病理組織にてeccrine porocarcinoma (EPC)と診断した.eccrine poroma (EP)の一部からEPCが発生したと推測されたが,このような症例は現在まで少数が報告されている.EMAなどの免疫染色結果も併せて報告した.EPの診断時に切除しておくことが望ましいと考えた.

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要約

 80歳,女性.1990年頃,左側頭部に紅褐色局面が出現した.1997年頃,同部位に腫瘤が出現し,徐々に増大した.びらんを伴う紅褐色局面は病理組織学的に表皮の液状変性,角化細胞の異型性が認められ,日光角化症と診断した.腫瘤部の真皮内には好塩基性腫瘍細胞が充実性に増殖し,NSE染色陽性,電子顕微鏡上有芯顆粒(dense core granule)の存在が認められ,Merkel細胞癌と診断した.本例では被覆表皮に日光角化症の合併が認められたが,両者の間に組織学的移行像はなかった.しかし,いずれも露光部位である顔面に認められ,両者の発生に紫外線が関与していることが示唆された.

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要約

 46歳,女性.初診の約2年前,右後頭部に皮下腫瘤が出現し,徐々に増大してきた.径30×20mm,弾性軟,可動性はなかった.臨床的には粉瘤を疑い,局麻下に全摘した.組織学的には真皮内に線維性被膜で覆われた充実性腫瘍を認めた.内部はさらに線維性隔壁により明瞭に区画され,隔壁内は粘液様物質が充満していた.個々の腫瘍細胞は小型で大きさは均一であり,核異型性,細胞異型性は乏しかった.腫瘍塊は充実性胞巣構造,一部に管腔様配列を呈し,粘液中に浮遊するかのように認められた.血液生化学検査では異常はなかった.内臓悪性腫瘍の皮膚転移との鑑別のため全身検索を施行したが,異常所見は認めなかった.以上よりmucinous carcinoma of the skinと診断した.前回術創部より辺縁を3cm離して,下は骨膜まで切除し,人工真皮植皮術を施行後,右大腿部より分層植皮術を施行した.術後経過は良好であり,現在まで再発・転移は認めていない.

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要約

 76歳,男性.初診の約1年前から臍部に黒色腫瘤を自覚した.色調に濃淡のある辺縁不整の黒色腫瘤であり,悪性黒色腫が強く疑われた.術前の画像検査にて,左腎に腫瘍性病変が発見された.辺縁約2cm離して臍部腫瘍の全切除を行い,同時に左腎の摘出も行った.臍部の腫瘍は悪性黒色腫,左腎の腫瘍は腎細胞癌の病理組織診断であり,直接の関連はないものと考えられた.悪性黒色腫の術後診断はpT4,N0,M0,stageⅢであった.その解剖学的構造から,臍部の悪性腫瘍は転移性腫瘍の比率が高いとされている.臍部に生じる原発性腫瘍の中には悪性黒色腫も挙げられるが,その報告例は少なく,重複癌との合併例は本邦では本症例が初めてである.現在のところ,悪性黒色腫における重複癌の合併には特別な臨床的意義はないとされているが,治療に際しては問題となり,当症例でも治療に苦慮する面が多く,症例の蓄積による治療方針の確立が待たれると考えられた.

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要約

 85歳,女性.約2年前,右前腕に皮疹が出現した.皮膚科,外科にて病変部の切開,切除,外用薬治療を受けたが軽快せず,当科を紹介された.初診時,右前腕に潰瘍を伴う52×30mmの浸潤性紅斑を認めた.このときの皮膚生検,培養では確定診断に至らなかった.初診から3か月後,浸潤性紅斑は痂皮を固着し70×30mmに拡大し,さらに中枢側に径15mmの皮下結節が新生したため,皮下結節を全摘出した.スポロトリキン反応は陽性であった.組織学的に炎症性肉芽腫像を呈し,菌要素,星芒状体を認め,組織片の培養よりSporothrix schenckiiを分離同定したため,リンパ管型スポロトリコーシスと診断した.ヨードカリ0.5g/日の内服と,局所温熱療法を併用し,皮疹は8週で完治した.

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要約

 77歳,女性.ANCA関連腎炎で副腎皮質ホルモン薬を内服中であった.2003年9月22日頃より発熱が出現,カンジダ性菌血症の診断でミカファンギンを投与したが無効であった.10月8日より両大腿後面に浸潤性紅斑が出現,前腕に紅色丘疹・結節が拡大した.病理組織学的検査で球形胞子を多数認め,真菌培養でCryptococcus neoformansと同定された.10月14日よりアムホテリシンB,フルコナゾールの併用へ変更したが奏効せず,10月15日死亡した.

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要約

 皮膚科的手術後の創部管理で消毒薬を用いた例と用いなかった例について,手術後創部感染の発生を比較検討した.健康な皮膚に切開を加え手術を行った場合,部位・年齢・疾患・抗菌薬投与日数にかかわらず,術後創部管理に消毒薬を用いた群,用いなかった群いずれにも手術部位感染は認められず,良好に創治癒が達成された.術後の手術創の消毒が感染予防のために不可欠とは思われなかった.消毒で創部の清潔性が保たれるかどうかは疑問であり,むしろ早期からの入浴が勧められる.周術期の予防的抗菌薬の使用については,ごく短期間のみか,または不要と思われた.

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要約

 病理診断は皮膚疾患の診断に極めて重要であるが,一般病理医によってなされている施設もある.旭川医科大学皮膚科は,当科および北海道の広範囲にある関連施設の検体を対象として1977年8月から現在まで,組織標本の作製から診断までの全過程を皮膚科が担当している.最近は年間2,000件あまりの検体を診断しているが,そのうち約8割が地方都市の施設を受診した患者のものである.有棘細胞癌を例としてみても同様に地方都市の症例が主体であった.当科は皮膚病理診断技術の提供を通じて北海道の地域医療に貢献している.

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要約

 症例1:71歳,女性.痴呆はなかった.頸部に腫瘤が出現し,他院で切除したが再発した.その後は,治療することなく37年間放置していた.頸部から胸部にかけて頸動脈の拍動を認めるほどの深達性の潰瘍と,その辺縁に隆起する結節を認めた.エトレチナートにて加療中であったが,肺転移による呼吸不全で死去した.症例2:53歳,女性.10年来無治療で,後頭部全域にわたり頭蓋骨融解を伴う潰瘍と,辺縁が堤防状に隆起する結節を認めた.他臓器への転移はなかった.両者とも患部より二次感染および壊死組織による腐臭を発していたが,ダラシンパテの使用により改善された.ダラシンパテの組成はイソジンゲル (R)(20g),白色ワセリン(45g),カルボキシメチルセルロースナトリウム(35g),ダラシンカプセル (R)(300mg)の混合軟膏であり,殺菌作用,吸湿と臭気のコントロールに有効である.悪臭を発する癌に対して試してよい補助療法と思われた.

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要約

 81歳,男性.1981年から白斑が出現し全身に拡大した.ほぼすべて白斑となっていたが,2002年5月頃より顔面に色素が一部再生した.ハイドロキノンモノベンジルエーテル外用による脱色素療法で色素再生部は脱色し良好な結果が得られた.広範囲に拡大して長期間経過した汎発型尋常性白斑に対して,ハイドロキノンモノベンジルエーテル外用による脱色素療法は有効な治療であると考えた.

基本情報

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臨床皮膚科
59巻9号 (2005年8月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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