臨床放射線 68巻5号 (2023年5月発行)

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診療

低悪性度子宮内膜間質肉腫のMRI像の把握，および臨床的問題点との関連性の考察樋本　祐紀 , 木戸　晶 , 坂田　昭彦 , 森畠　裕策 , 倉田　靖桐 , 鈴木　彩子 , 松村　謙臣 , 舌野　富貴 , 川原　清哉 , 久保　滋人 , 梅岡　成章 , 万代　昌紀 68巻5号 , 2023年5月 , pp.429-432

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低悪性度子宮内膜間質肉腫は，進行は緩徐ではあるものの，リンパ節転移や肺転移・腹膜播種をきたしうる，希少な悪性腫瘍である。MRIの形態として，子宮筋層の間を分け入るように芋虫状に進展する腫瘍形態が典型像としてよく知られる^1）。一方で，それとはまったく異なった，rim状のT2強調像低信号に取り囲まれ，境界明瞭に見える腫瘍形態も報告されている^2）。しかし，その希少性もあり，低悪性度子宮内膜間質肉腫の画像診断の報告は，いずれも数例での報告にとどまっており，多くの症例に基づいてのMRIの典型像およびその頻度，その他のとりうる形態，などの全体像の理解が難しい。

症例

Follicular pancreatitisの2例岩﨑　莉瑛 , 原留　弘樹 , 田島　弘 , 五十嵐　一晴 , 一戸　昌明 , 高橋　博之 , 奥脇　興介 , 井上　優介 , 隈元　雄介 , 村雲　芳樹 , 草野　央 68巻5号 , 2023年5月 , pp.433-439

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follicular pancreatitisは反応性胚中心を伴う多数のリンパ濾胞形成を組織的特徴とする，まれな限局性膵炎の一型で，結節性病変を呈し，悪性を含む膵腫瘍との鑑別が問題となる。しかしながら，画像知見に乏しく，鑑別診断に難渋するため，診断目的を含めた外科的切除が施行されることが多い。今回，外科的切除後に診断されたfollicular pancreatitisの2例を，文献的考察を含め報告する。

EOB-MRIの肝細胞相で腫瘤周囲に広範な低信号域を呈した肝内胆管癌の1例熊澤　秀亮 , 伊藤　茂樹 , 加賀谷　理紗 , 河合　雄一 , 館　靖 , 森　雄司 , 荒川　拓也 , 髙田　莉央 68巻5号 , 2023年5月 , pp.441-446

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EOB-MRIの肝細胞相で腫瘤周囲に広範な低信号域を伴うという興味深い所見を呈した肝内胆管癌の1例を経験したので，その組織的背景を中心に文献的考察を加えて報告する。

転移巣の脂肪成分の存在が診断の契機となった低分化肝細胞癌膵転移の1例鈴木　皓佳 , 佐野　勝廣 , 永松　洋明 , 福村　由紀 , 桑鶴　良平 , 青木　茂樹 68巻5号 , 2023年5月 , pp.447-454

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肝細胞癌は肝内に転移しやすく，肝外の転移先として主なものは，肺（55％），リンパ節（53％），筋骨格系（28％），副腎（11％）が知られているが，膵臓への転移は約1％と報告されており，非常にまれである^1）。また，悪性腫瘍全体の転移先としても，膵臓は全体の2～5％ほどと非常に少ない^2）。一方，転移性膵腫瘍の原発として主なものは，腎癌（30％），肺癌（23％），乳癌（12％），軟部肉腫（8％），大腸癌（6％），悪性黒色腫（6％）とされている^3）。今回，肝細胞癌の膵転移を生検前に画像的に診断し得た症例を経験したため報告する。

特発性食道粘膜下血腫の1例宮崎　修平 , 大木　望 , 田崎　裕太郎 , 石丸　英樹 , 上谷　雅孝 , 東家　亮 68巻5号 , 2023年5月 , pp.455-459

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特発性食道粘膜下血腫はまれな疾患であり，1957年William^1）が特発性食道粘膜下剝離として報告したもの，我が国では1982年Etani^2）らが報告したものが最初である。特発性食道粘膜下血腫は，Mallory-Weiss症候群や特発性食道破裂と一連の病態で起こるまれな疾患である。また，まれではあるが，致死的疾患である大動脈食道瘻との鑑別も重要となる。我々が経験した1例を，他疾患との鑑別点を含めて，文献的考察を加えて報告する。

びまん性に著明な卵殻状石灰化が認められた食道平滑筋腫の1例岡部　将仁 , 浅野　雄大 , 児島　克英 , 槇本　怜子 , 檜垣　文代 , 田中　健大 , 平木　隆夫 68巻5号 , 2023年5月 , pp.461-468

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食道平滑筋腫は食道に発生する良性腫瘍^1）であり，全食道腫瘍の約0.4％^2），食道良性腫瘍の約60～70％^3）を占める。石灰化をきたすのは約1.8％とまれであり^2），その場合は胸部中部食道で認められることが多い。今回，巨大食道憩室をフォローアップ中に，下部食道にびまん性に著明な卵殻状石灰化を伴う食道平滑筋腫が認められた症例を経験したため報告する。

大網捻転との鑑別が困難であった消化管外アニサキス症の1例川上　直樹 , 扇　和之 , 松下　広 , 奈良岡　祐子 , 菊岡　吉朗 , 赤井　隆司 , 佐々木　愼 , 熊坂　利夫 68巻5号 , 2023年5月 , pp.469-473

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消化管外アニサキス症はアニサキス虫体が消化管壁を穿通して腹腔に脱出し，大網や腸間膜などに移行して肉芽腫を形成する病態である^1）2）。画像所見では腹腔内の脂肪織濃度上昇，炎症性結節や腹水などが報告されているが，本症に特異的といえるほどの所見ではなく，診断が困難な場合も多い^2）3）。一方で，大網捻転は大網の一部または全体が捻転を起こして血行障害をきたす疾患である^4）5）。捻転した大網はCT上，脂肪混濁を伴う腫瘤としてとらえられ，血管の渦巻き状・同心円状の層構造（whirl sign）を伴うとされている^5）6）。消化管外アニサキス症では虫体が自然死滅して症状が改善するため保存加療が原則とされているが，一方で大網捻転では大網壊死部の切除が原則のため外科的切除が第一選択とされており，治療方針が異なるという観点から両者の鑑別は重要である^7）8）。今回，大網捻転との鑑別が画像上は困難であった消化管外アニサキス症の1例を経験したが，血液検査での末梢血好酸球増加が両者の鑑別に寄与する可能性があり，若干の文献的考察を加えて報告する。

造影CTで指摘し得た空腸angioectasiaの1例坂原　朝子 , 海地　陽子 , 東野　諒 , 東堀　遥 , 西原　礼介 , 吉田　航大 , 古土井　明 68巻5号 , 2023年5月 , pp.475-479

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angioectasiaは粘膜や粘膜下層に発生する拡張した毛細血管異常で，時に消化管出血の原因となる。消化管出血のうち，小腸出血は上部消化管内視鏡や大腸内視鏡で出血源が同定できず，診断や治療に難渋することが多い。今回我々は，繰り返す小腸出血の症例において，造影CTで同定し得た空腸angioectasiaの1例を経験したので報告する。

抗凝固療法中に発症した小腸壁内血腫の2例長岡　将太郎 , 八木　俊洋 , 米田　憲二 , 加藤　一希 , 吉本　敬一 , 高川　清 68巻5号 , 2023年5月 , pp.481-486

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小腸壁内血腫はまれな疾患であり，非外傷性例では抗凝固療法によるものが最多である。我々は抗凝固療法中に発症した小腸壁内血腫を2例経験した。1例は手術加療を施行し，1例は保存的加療を施行した。線溶系亢進下での手術はリスクが高く，小腸壁内血腫と診断できれば手術を回避できる場合もある。小腸壁内血腫について画像所見と文献的考察を交えて報告する。

ポリープ状の形態を呈した腎細胞癌胆嚢転移の1例安部　時子 , 藤田　展宏 , 牛島　泰宏 , 石松　慶祐 , 門司　恵介 , 古賀　裕 , 石神　康生 68巻5号 , 2023年5月 , pp.487-491

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腎細胞癌は肺，骨などに転移しやすいが，まれに胆嚢に転移し，画像上，胆嚢ポリープや胆嚢癌との鑑別が困難なことがある。今回我々は，ポリープ状の形態を呈した腎細胞癌胆嚢転移の1例を経験したので，画像による術前診断の可能性を含め若干の文献的考察をふまえ報告する。

腎皮質壊死の1例―病態生理と画像所見の考察羽賀　すみれ , 古田　昭寛 , 伊藤　久尊 , 大倉　良太 , 宇都宮　友輔 , 前倉　拓也 , 古賀　健一 , 中川　江里子 68巻5号 , 2023年5月 , pp.493-497

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腎皮質壊死は，腎皮質に限局して虚血性の壊死性病変をきたす疾患であり，周産期の発症が全体の50％程度と多い。今回，産後大量出血に続発した腎皮質壊死のダイナミックCTにおける画像所見が得られたので，文献的考察とともに報告する。

CTで病変を指摘可能であった腎盂アミロイドーシスの2例石川　翔 , 有薗　茂樹 , 藤本　順平 , 光野　重芝 , 阿部　陽平 , 原　重雄 , 安藤　久美子 68巻5号 , 2023年5月 , pp.499-504

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アミロイドーシスは，折りたたみ異常を起こした前駆蛋白質が，アミロイド線維を形成し，全身の種々の臓器，組織の細胞外に沈着し，機能障害を引き起こす疾患群であり，全身性と限局性に分類される^1）2）。腎盂/尿管に病変がみられるアミロイドーシスは比較的まれといわれており，全身性アミロイドーシスでの頻度はわかっていない^2）3）。今回，造影CTで病変を指摘でき診断につながった症例を2例経験したので報告する。

神経線維腫症1型に合併した膀胱神経線維腫の1例西原　新也 , 森田　孝一郎 , 彌富　瑞貴 , 西原　雄之介 , 安座間　真也 , 相部　仁 , 増田　正憲 , 平井　良樹 68巻5号 , 2023年5月 , pp.505-509

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神経線維腫症1型（neurofibromatosis type 1：NF1）は1882年にRecklinghausenによって報告された，カフェオレ斑と神経線維腫を主徴とする常染色体優性の遺伝性疾患である。本疾患の神経線維腫は全身のあらゆる部位に発生しうるが内臓，特に膀胱発生は極めてまれである。今回我々は血尿を契機に発覚した神経線維腫症1型に合併した膀胱神経線維腫の1例を経験したため報告する。

短期間での自然退縮が認められたSwyer症候群における性腺芽腫の1例石黒　聡尚 , 天野　太史 , 齋田　司 , 板垣　博也 , 坂本　規彰 , 森　健作 , 中島　崇仁 68巻5号 , 2023年5月 , pp.511-517

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今回我々は46,XY性分化疾患の1つであるSwyer症候群に合併した右性腺腫瘤が2カ月間でMRIでの性状変化を伴って縮小し，病理学的に性腺芽腫と診断された症例を経験した。Ⅱ型胚細胞腫瘍の自然退縮は精巣で知られるが，卵巣では知られていない。表現型女性の性分化疾患における異形成性腺での性腺芽腫，Ⅱ型胚細胞腫瘍の自然退縮に関する臨床的，画像的な報告もこれまでになく，MRI所見と病理組織所見とを対比してこれを報告する。

ポリープ状の形態を呈した子宮頸部胃型腺癌の1例松本　頌平 , 坪山　尚寛 , 佐藤　和明 , 大西　裕満 , 中本　篤 , 福井　秀行 , 太田　崇詞 , 富山　憲幸 68巻5号 , 2023年5月 , pp.519-524

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子宮頸部胃型腺癌は胃型形質の発現を特徴とする子宮頸部腺癌の組織型の1つで，予後不良と報告されている。今回，ポリープ状の形態を呈したまれな子宮頸部胃型腺癌の1例を経験したので，病理所見および文献的考察を加え報告する。

連載

今月の症例萩原　遼太 , 宗近　次朗 , 扇谷　芳光 68巻5号 , 2023年5月 , pp.525-527

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画像所見　両肺にランダム状に分布する多発嚢胞，末梢優位の小葉中心性粒状影（図1A）を認めた。X＋1年のCTで多発嚢胞は増大した（図1B）。

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目次 68巻5号 , 2023年5月

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英文目次 68巻5号 , 2023年5月

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読者アンケート 68巻5号 , 2023年5月 , pp.510-510

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次号予告 68巻5号 , 2023年5月 , pp.518-518

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正誤表 68巻5号 , 2023年5月 , pp.528-528

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バックナンバー 68巻5号 , 2023年5月 , pp.529-529

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投稿規定 68巻5号 , 2023年5月 , pp.530-531

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編集後記 68巻5号 , 2023年5月 , pp.532-532

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臨床放射線
68巻5号
(2023年5月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0009-9252 金原出版

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