Brain and Nerve 脳と神経 23巻5号 (1971年5月発行)

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神経眼科アトラス1

欝血乳頭三島　済一 23巻5号 , 1971年5月 , pp.451-453

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　網膜，視神経乳頭は直視し得る唯一の中枢神経系である。又，細小血管の変化と循環動態を直接見ることが出来るのも網膜である。従って眼底検査が神経疾患，血管系疾患等の診断に大きく寄与することは言うまでもない。このシリーズでは興味ある眼底変化を中心とし，更に眼球運動系の変化をも加えて，神経系疾患と関係ある眼科的な問題を述べる予定である。

研究

椎骨・脳底動脈の巨大な動脈瘤—症例報告と文献症例の診断学的考察松本　正久 , 三浦　のり子 , 滝沢　利明 , 安間　嗣郎 , 益沢　秀明 , 塚本　泰 , 橋爪　敬三 23巻5号 , 1971年5月 , pp.457-469

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はじめに

　椎骨・脳底動脈領域の動脈瘤は，佐野^21）によれば頭蓋内動脈瘤の5％，Locksley^13）によつて報告された1966年の米国の集計をみても5.3％を占めるに過ぎない。McDonald　＆　Korb^14）などの統計では，24.3％などと高率であるが，この中には，最近のものと異り，梅毒性や，mycoticのものなどが高率に含まれているので，最近の統計と同一視するわけにはゆかない。この比較的稀れな椎骨・脳底動脈動脈瘤の中には，クモ膜下出血によつて発症するよりも，後頭蓋窩腫瘍の症状をもつて発症するものが多いことは，白尾ら^22），鈴木ら^23）の報告に見られる通りであり，海外おいてにも，後述するように可成りの報告がみられる。1944年，Yaskin　＆　Alpers^19）は，生前，後頭蓋窩腫瘍を疑つたが，手術せぬまま死亡し，剖検により巨大動脈瘤と判明した自験例を報告するとともに，文献上記載の充分な35例の後頭蓋窩動脈瘤中，21例の占居性を示した症例につき，症状などを詳細に分析した。しかし，当時の結論としては，術前の鑑別診断上，これぞといつた特徴的なものを指摘し得ないとしている。1965年，Duvoisin　＆　Yahr^7）が，27例の後頭蓋窩動脈瘤を報告し，その中に，巨大動脈瘤5例が含まれている。27例中，6例目までは剖検によつて始めて判明し，第7例は気脳撮影によつて診断されたという。1957年から1963年の間の症例は19例あり，17例が血管撮影によつて診断され，1例が手術で，1例が剖検によつて診断確定された。かかる経験により彼らは，椎骨動脈撮影の重要性を強調した。同様のことは，Pribram^15）らによつても強調されている。さらに，Weibelら^18）も，全て，血管撮影によつて診断し得た27例を報告している。一方，気脳撮影の有用性についても，Jannettaら12）を始め何人かの人により指摘されているが，Pribramら^15）もいうように，気脳撮影後悪化，乃至は死亡することが間々あり得る。

　最近，著者らは，椎骨動脈撮影により，一見tortuousdiffuse ectasia様の像を得，剖検により，巨大な椎骨・脳底動脈動脈瘤であることが判明した症例を経験したが，生前の状態が悪く，気脳撮影を強行しなかつた。かかる際に，生前どの程度までの診断をつけ得るかという疑問を持つて，文献上の症例の症状や諸検査所見を検討することとした。

頸性眩暈の検討金山　重明 23巻5号 , 1971年5月 , pp.473-486

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はじめに

　眩暈を訴えて脳神経外科外来を訪れる患者は多く，新患々者の約30％を占めている。眩暈の原因はMénière病をはじめとする耳疾患，聴神経腫瘍をはじめとする脳腫瘍，脳動脈瘤などの脳血管障害，血液，内分泌疾患等の全身性疾患，さらに心因性眩暈，頸性眩暈等多岐に渡り原因のはつきりしないものも多く，診療に際して我々を悩ますものの一つである。

　Barré^2）（1926）が頸部交感神経異常に基く眩暈のあることを推定して以来，眩暈発生に頸部が1つの大きな因子として考えられて来てはいるが未だ確たる知見は得られていない。

Hypercapniaの脳血管透過性におよぼす影響について田中　隆一 23巻5号 , 1971年5月 , pp.487-493

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はじめに

　脳浮腫の発生ないしは促進に関与すると考えられている種々の要因のうち，hypercapniaに関しては，脳浮腫との関連で追求された研究がほとんどなく^3），その意義は明らかではない。Fox^5）は，脳のCO₂濃度が高くなると，細胞膜の水素化した脂質の層が，水溶性イオンの正常の拡散を妨げ，さらにブドウ糖などの不可欠の物質の透過が困難になると，細胞内のグリコーゲン，脂質および蛋白質が分解し，結合イオンや分解産物を細胞液の中に放出する。これらの水溶性の物質が細胞内にとどまつていると，滲透圧の関係で細胞内に水をさそいこむ。さらに細胞膜中の分子に結合している水や細胞内物質の分解の結果生じた水が，細胞腫脹の原因となる，と推測し，hypercapniaの脳実質細胞の細胞膜への作用を強調している。

　一方，hypercapniaが，フェノバルビタール^21），サリチル酸，アセタゾールアミド，尿素^7）8）およびRISA^1）2），など種々の物質の血中より脳内へのとりこみを増加させることが報告されており，hypercapniaの脳血管の透過性におよぼす作用も推測されるが，これは脳浮腫との関連を論ずるとき，重要である。

ヒト悪性神経膠芽腫細胞への超高圧X線照射の影響神野　哲夫 , 中沢　恒幸 , 山田　雅宏 , 工藤　達之 23巻5号 , 1971年5月 , pp.497-505

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緒言

　悪性脳腫瘍の手術的療法には限界があり，成績が悲観的である場合が少くない。このため近年は放射線療法と制癌剤の応用が注目されつつある。

　われわれは悪性脳腫瘍に対し手術療法と共に超高圧X線療法を行なつて既に6年以上を経ているが，その遠隔成績は必ずしも満足出来るものでない。放射線療法によつて，より良き臨床成績を得るためには，より効果的な放射線治療を確立する必要があると考えられる。

全摘不可能なcraniopharyngiomaの治療法—とくに¹⁹⁸Au嚢腫内注入療法について中山　俊郎 , 児玉　万典 , 松角　康彦 23巻5号 , 1971年5月 , pp.509-513

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はじめに

　脳腫瘍のなかでも病理組織学的には良性腫瘍に属するcraniopharyngiomaの治療法は手術的に全摘するのが理想的であることは言をまたない。しかし全摘手術に関しては未だ議論のあるところであり，1950年頃よりcorticosteroidsが使用されるようになつてからは手術成績が向上したとはいえ，術後の内分泌，水分代謝障害の対策に長期闇にわたり悩まされたり，完全に腫瘍を摘出したと思われる症例にも再発を見ることがある。また腫瘍の発生部位や成長の度合，方向によつては嚢腫内容の吸引除去，または腫瘍の部分摘除にとどまらざるを得ない症例にもしばしば遭遇する。これらの姑息的手術を余儀なくされた症例に対しては従来色々な治療的試みがなされてきた。すなわち嚢腫内容の間歇的吸引除去，照射療法，嚢腫内放射性同位元素または組織固定液の注入などである。

　われわれは発症以来14年間に5回に及ぶ開頭術による嚢腫内容液の排除，腫瘍の部分摘除をくり返したあとで¹⁹⁸Au嚢腫内注入を施行した結果，注入前と比較して明らかな一般状態の改善をみ，また¹⁹⁸Au注入1年以上を経過した現在，公務員として勤務し有為な生活を送つている1例を経験した。全摘不可能なcraniopharyngi—omaの治療法について文献的検討を加えて報告したい。

小児の大脳半球萎縮症—その脳神経外科的考察児玉　南海雄 , 高久　晃 , 鈴木　二郎 23巻5号 , 1971年5月 , pp.515-523

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はじめに

　脳神経外科外来を訪れる小児の中に，片麻痺や痙攣，知能発達遅延等を主訴として来院する患児は決して少くない。このような患児に対して神経学的諸検査を施行すると気脳写および頸動脈撮影により大脳の萎縮を少なからず発見することが出来，この点，脳萎縮症は日常極めて一般的な疾患であると云える。さて，脳萎縮という名称であるが，これはあくまでも形態学的な見地よりつけられたもので，その原因および組織化学的検討はあとになつて加えられたという歴史をもつため，臨床的に脳萎縮症という場合，その原因および病理学的，組織化学的見地，臨床経過等の面からも極めて多彩な内容をもつ種々の疾患を含んでいる。従つてその分類も概念も人により異なり，未だはっきりしたcriteronをとるには至つていない現状である。一般的には「脳萎縮とは何らかの病的過程により脳の全体あるいはその一部が容積を減じたもの」と定義され，さらに発生病因により，一次性および二次性脳萎縮，気脳写による萎縮の局在によりcorti—cal atrophyとか，cerebral hemiatrophy等と分類されているのが多いようである。しかしこの脳萎縮に関する脳神経外科学的考察は意外に少ない^1）2）3）。今回はこれら大脳萎縮症の中で，特に神経学的にlateralityを示し，また一側大脳半球にのみ萎縮像が認められた15歳以下の小児例につきその種々相を検討し脳神経外科的治療に関し若干の考察を述べたいと思う。

幼児の多発性巨大頭蓋内動脈瘤—自験例および文献的考察川上　千之 , 新井　弘之 , 杉山　義昭 , 宮沢　登 23巻5号 , 1971年5月 , pp.525-532

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はじめに

　頭蓋内動脈瘤はすべての年齢に発生しているが，幼児に発生した頭蓋内動脈瘤はまれである。McDonald andKorb^14）によれば，彼らの集めた年齢の明らかな頭蓋内動脈瘤の症例で545例中89％が20歳以上であった。またMcKissockら^15）の頭蓋内動脈瘤599例中，40歳から70歳までの症例が91％を占めていた。

　小児の頭蓋内動脈瘤についてのいくつかの報告はあるが，小児の巨大な頭蓋内動脈瘤の報告は非常に少なく，さらに小児に多発した巨大な頭蓋内動脈瘤の報告を見い出すことができない。

海外文献

Creutzfeldt-Jacob病，他 Vernon,　M．　L． , Horta-Barbosa,　L． , Fuccillo,　D．　A． , Sever,　J．　L． , Baringer,　J．　R． , Birnbaum,　G． 23巻5号 , 1971年5月 , pp.469

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　Creutzfeldt-Jacob病（CJ）は錐体路，錐体外路の症状を伴う進行性のdementiaで，組織学的にはneuro—nal loss, astrogliosis，灰白質spon—giosusなどが特徴である。病巣分布は症例によりさまざまである。本病がビールス性炎らしいことはGi—bbs （Science 165：1023, 1969）が指摘した。

　さて著者らは37歳南米の家婦，入院8カ月で重症CJと決定，69歳男，数年来の痴呆にて入院重症CJと決定。この2例について光顕，電顕の精査を行なつた。1000〜4000倍で灰白質はどこにもspongy cha—nge．　neuropilの空泡化部は細胞から来ている。第2例の方が軽度だが，両例ともneuron, gliaの細胞核のクロマチンが変性して塊状化。astrocyte nucleiは非常に大きく多形性。neuron, astrocyteにlipofu—scinと思われる濃い小体あり。これが内部に構造をもちelectron-palecomponentをその周囲に環状のlow-density層につつまれて持つている。髄鞘にも広汎な変化があり。30000倍以上では，2型のビールス様particleあり。もつとも多く見えるのは65〜85mμ径，球状，se—cond coatをかぶり細胞膜から遊離された感じ。全体がdense core，このものは細胞核内にはない。第2型は48mμでもつと薄くindistinctのcore，細胞外に1個ないし2〜3個存する。有髄軸索の表面にみえることもある。また別にビールス様nucleoprotein filamentが2例とも見えた。このfilamentは内空で15mμ，ordered periodicityあるように見え，破れた細胞から遊離したように細胞外にあるのが多い。

書評

—荻島　秀男・下村　克躬　共著—米国の医学教育と医療事情小川　鼎三 23巻5号 , 1971年5月 , pp.505

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　私が米国に留学したのは戦前の1937-38年であつて，シカゴのノースウエスタン大学とニューヘイブンのエール大学で赤核の問題その他を研究した。戦後は2度アメリカに渡つたが，これは短期間で，訪れた場所も限られていて，広く米国の医学教育の実情を知りたいと念願しながら，その機会をもたなかつた。アメリカでは医学教育も医療事情も日本とは非常にちがうことを漠然と感じていたに過ぎない。

　本書を一読して，なるほどそんな訳かと，たびたび膝をたたいた次第で，荻島，下村両氏の力作がこんど出版されたことを甚だありがたく思つている。これだけ豊富な資料を収集して，纒め上げるのはたいへんな大事業であり，おそらく多忙な他の仕事の間に成し遂げたことと思うので両氏の絶大な努力に大いに敬服している。

—J．　Andrew　＆　E．　S．　Watkins著—A Stereotaxic Atlas of the Human Thalamus and Adjacent Structures 佐野　圭司 23巻5号 , 1971年5月 , pp.552

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　定位脳手術の普及により，世界各国で行なわれているこの手術の数はおそらく年間何千という膨大なものにのぼるであろう。ところが手術の目標点をきめる基準となるmapは，もつとも標準的なSchaltenbrand＆Baileyのatlasでもわずかな数の脳の切片にもとついているにすぎない。この著書はこれに反して26個の視床—これは15人の脳からとつたものであるが—について1mmごとの精密な切片をつくり，統計的な分析を行なつて，もつとも平均的なmapを作つたものである。前記のSchaltenbrand　＆　Baileyのatlasでは写真が主体であつて，その上に写真をなぞるように線画があつて，写真のこまかい核区分などの理解をたすけているが，この本では関係はまつたく逆である。すなわち線画が標準的な座標にしたがつてかかれていて，写真はその補助的なものとしてのせられているにすぎない。定位脳手術を実施する人は，この線画にしたがつて目標の座標を定めればよいようになつている。さらに視床の主な核について実際の数値もあげられていて，はなはだ便利である。

　この著書のもうひとつの特徴は座標軸が前交連後交連線（AC-PC li—ne）ではなくて，空間孔後下縁と後交連を結ぶ線（FM-PC line）であることである。これはFMが視床の前縁を示すので，後縁を示す視床枕のかわりにPCをもつてきて，FM—PCでほぼ視床の前後径をあらわしたものと思われる。ACは時として良く描出されないことがあるので，AC-PC lineを基準線としたSchal—tenbrand　＆　Baileyのatlasのほかに，この著書をそなえておけば実際の手術の際に，大いに便を得ることがあると思われる。定位脳手術に関心をよせられている方々に，その意味でもおすすめしたいと思う。

—吉井　信夫著—図説　脳波検査の実際稲永　和豊 23巻5号 , 1971年5月 , pp.558

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　さきに「脳波のとり方とよみ方」を著わされた吉井博士によつて「図説脳波検査の実際」が完成された。今迄わが国ではかなり多くの脳波の教科書が出版されているので，吉井博士がどのような点で御自身の特色を出そうとしておられるかを大いに楽しみにしながら読ましていただいた。先ず脳波とはどんなものかということから書き出してあり，次いで脳波計のしくみが説明されている。この部分は電気的な基礎知識があまり専門的にもならず，消化しやすいように記載されている。もちろん脳波検査技師の人々にとつては大切な項目であり，一読の価値はあるが脳波を判読する医師にとつても理解しやすいように説明されており，またトランジスタについての解説も加えられており，時代の要求にもそつている。

　検査室の構成とシールドルームの項は実際に検査室を新設する時に役立つように説明が加えられている。

症例報告

両側対称性脳動脈瘤—中大脳動脈瘤の2例吉本　高志 , 高久　晃 , 鈴木　二郎 23巻5号 , 1971年5月 , pp.541-544

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はじめに

　脳動脈瘤の約10〜20％を占めるといわれる多発性脳動脈瘤の中には左右全く対称性に発生する特異な症例があり，1955年Bigelow^1）は自験の8例をも含めて62例の左右対称例を，"Symmetrical bilateral intracranialaneurysms"として報告した。それ以来これらの報告は散見されてはいるが当教室においても現在まで両側中大脳動脈および両側内頸動脈後交通動脈分岐部に鏡像にみられた多発性脳動脈瘤7例を経験している。これらの動脈瘤は動脈瘤の発生要因を探索する上に興味ある事実でもあり，またその治療に関しても種々問題が多いと思われる。今回は特にわれわれが経験した両側対称性脳動脈瘤の中で中大脳動脈に発し，一回の手術により同時処置した症例につき報告し，その治療方法および病因論につき多少の文献的考擦を加へ報告する。

脳神経麻痺を初発症状とした悪性リンパ腫（ホジキン型）の2剖検例土田　正 , 中沢　省三 , 鈴木　正博 , 石崎　敬 , 小宅　洋 23巻5号 , 1971年5月 , pp.545-552

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はじめに

　悪性リンパ腫は多彩な臨床症状を呈しうることが知られており^1），神経症状を呈することも必ずしも稀ではない。Huntは449例の悪性リンパ腫に24例の神経症状を合併していたと報告している^2）。しかしその多くは全身症状の発現にともなつて，出血や浸潤によつて神経症状を呈したものであり，神経症状をもつて発症した報告例は稀である。

　われわれは最近脳神経麻痺を初発症状としリンパ節腫脹等の全身症状を呈することなく急激な経過をとつて死亡し，剖検によつて悪性リンパ腫（ホジキン型）と診断された2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

外傷性遅発性脳膿瘍及び硬膜下膿瘍—外傷後25年及び19年に遅発した2自験例とその文献的考察樋口　紘 , 青木　晃 , 高久　晃 23巻5号 , 1971年5月 , pp.553-557

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はじめに

　従来，頭部外傷に引き続いて起る急性脳膿瘍および硬膜下膿瘍については秤々論議されてはいるが，初期外傷治癒後一定期間を経てから発症する外傷性遅発性脳膿瘍および硬膜下膿瘍についてはその報告が比較的少ない。なかでも外傷後10数年以上の経過で発症するものは稀であり，これらの診療に際しては外傷の既往をも忘れがちなためその診断にも問題が多い。われわれは最近頭部外傷後25年および19年という長期の無症状期をおいて発症した脳膿瘍および硬膜下膿瘍の2例を経験し，これを全治せしめ得たので報告し，併せてこれらの成因，治療，予防等について考察を加える。

第29回日本脳・神経外科学会総会特集（於札幌）

一般演題抄録・追加・討論—一般演題〔1〜44〕藤永　亮三 , 杜　子威 , 神野　哲夫 , 水上　公宏 , 荒木　五郎 , 美原　榑 23巻5号 , 1971年5月 , pp.561-602

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演題〔1〜6〕座長：半田　肇・鈴木二郎　教授

【1】急性期くも膜下出血の検討

（その実態と外科療法の問題点）

　破裂脳動脈瘤が主たる原因である非外傷性くも膜下出血では，発作後早期に多くの症例が失われることに注目する必要がある。従来発作後早期に失われる症例については，入院に至らず死亡する症例が少くなくその実態は必ずしも明らかではない。そこでわれわれは過去5年間内科的保存療法を基本方針として治療された往診例を含む美原記念病院の180症例について発作後早期の実態と保存療法の限界を中心として検討した。これ等症例はいずれも文部省班研究におけるくも膜下出血診断基準6項目中の5項目を満たすものである。次いで最近の急性期手術を中心とした足利日赤における手術例38例につき早期手術の問題点につき検討して次の結論を得た。

　1）180例中予後判明171例，5年間保存療法における死亡は89例死亡率は52％であつた。

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編集後記佐野　圭司 23巻5号 , 1971年5月 , pp.603

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　第18回日本医学会誌総会は終わつた。いろいろの論議をのこして，いやそれどころか「反医学会総会」まで生んで。

　周知のようにこの日本医学会総会は第1回が明治35年で，当時「日本聯合医学会」と称したのであるが，第3回から聯合の字をのぞいて現在のように改称されたものである。

基本情報

Brain and Nerve 脳と神経
23巻5号
(1971年5月発行)

電子版ISSN：2185-405X 印刷版ISSN：0006-8969 医学書院

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