- 有料閲覧
- 文献概要
定位脳手術の普及により,世界各国で行なわれているこの手術の数はおそらく年間何千という膨大なものにのぼるであろう。ところが手術の目標点をきめる基準となるmapは,もつとも標準的なSchaltenbrand&Baileyのatlasでもわずかな数の脳の切片にもとついているにすぎない。この著書はこれに反して26個の視床—これは15人の脳からとつたものであるが—について1mmごとの精密な切片をつくり,統計的な分析を行なつて,もつとも平均的なmapを作つたものである。前記のSchaltenbrand & Baileyのatlasでは写真が主体であつて,その上に写真をなぞるように線画があつて,写真のこまかい核区分などの理解をたすけているが,この本では関係はまつたく逆である。すなわち線画が標準的な座標にしたがつてかかれていて,写真はその補助的なものとしてのせられているにすぎない。定位脳手術を実施する人は,この線画にしたがつて目標の座標を定めればよいようになつている。さらに視床の主な核について実際の数値もあげられていて,はなはだ便利である。
この著書のもうひとつの特徴は座標軸が前交連後交連線(AC-PC li—ne)ではなくて,空間孔後下縁と後交連を結ぶ線(FM-PC line)であることである。これはFMが視床の前縁を示すので,後縁を示す視床枕のかわりにPCをもつてきて,FM—PCでほぼ視床の前後径をあらわしたものと思われる。ACは時として良く描出されないことがあるので,AC-PC lineを基準線としたSchal—tenbrand & Baileyのatlasのほかに,この著書をそなえておけば実際の手術の際に,大いに便を得ることがあると思われる。定位脳手術に関心をよせられている方々に,その意味でもおすすめしたいと思う。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.