臨牀透析 39巻12号 (2023年11月発行)

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　血液浄化法に応じた食と栄養

はじめに　血液浄化療法と栄養素喪失の関係加藤　明彦 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1367-1368

PDF(143KB)

有料閲覧

文献概要を表示

現在，腎代替療法は多様化しており，標準的な週3回，4〜5時間の血液透析（hemodialysis；HD）から血液濾過透析（hemodiafiltration；HDF）へ急速に置き換わっている．2021年度末の「わが国の慢性透析療法の現況」（日本透析医学会統計調査委員会）によると，全国では約17.7万人（50.5％）がHDF治療を受けており，HD治療の16.1万人（45.9％）を上回っていた．さらに，週3回，6時間以上，週18時間以上の長時間HD，あるいは週5回以上の頻回HDが増加傾向にあり，在宅HD患者数も748人（0.2％）となっている．

1．血液浄化療法における栄養代謝異常と対策神田　英一郎 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1369-1376

PDF(283KB)

有料閲覧

文献概要を表示

高齢透析患者は増加傾向にある．透析患者は，透析条件，慢性の栄養状態などからPEWという特異的な低栄養状態に陥るだけでなく，身体機能が低下することでADLの低下も生じやすい．低栄養や身体機能の低下は，生命予後の増悪につながるためできるだけ早期に発見し，増悪を防がなくてはならない．透析患者の栄養状態の現状把握のためには，栄養状態や食事摂取の定期的なモニタリングが不可欠である．各患者の病状・栄養状態・社会状態に合わせたトータルケアの一環として，食事療法と運動療法を各患者の状態に合わせて行うことが重要である．

2．通常血液透析上殿　英記 , 森　克仁 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1377-1383

PDF(751KB)

有料閲覧

文献概要を表示

血液透析をはじめとするCKD患者では，PEW（protein-energy wasting）と呼ばれる特徴的な栄養障害を呈する．PEWは，サルコペニア，フレイルといった加齢による老年症候群とも関連し，CKD患者の予後に大きく影響する．とくに血液透析患者では，ほかの腎代替療法と比較して血液透析によるアミノ酸，蛋白漏出のリスクが高いため注意が必要である．血液透析患者の栄養状態の悪化は，総死亡，心血管疾患死，感染症関連死などの予後と深く関連している．栄養障害の早期発見・早期介入は，透析患者の予後改善，さらに健康寿命延伸につながる可能性がある．

3．血液ろ過透析（前希釈，後希釈）鈴木　一裕 , 人見　友啓 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1385-1389

PDF(243KB)

有料閲覧

文献概要を表示

On-line HDFで愁訴を取り除く目的にα1-MGの除去が注目されている．しかし，過度のα1-MGの除去はAlbの漏出増大をもたらす．近年，透析患者の高齢化が進んでおり，Albの漏出は大きなリスクとなる．後希釈法で置換液量を増加させると高い除去効率を得られ，愁訴を改善できる可能性があるが，Alb漏出量の増大も危惧される．前希釈HDFでは，アミノ酸漏出量が低く，Alb漏出量の点からも栄養学的観点で見ると前希釈のほうが優れているといえる．「栄養」と「愁訴」を両天秤にかけ希釈法を変えていくことも大切である．PMMA膜でのon-line HDFは，蛋白吸着による瘙痒感の改善や栄養改善，筋力維持などの効果もあり，栄養保持をしながら愁訴を改善できる可能性がある．

4．長時間血液透析（1）長時間施設血液透析患者の栄養とQOL 角田　政隆 , 坂本　杏子 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1391-1396

PDF(231KB)

有料閲覧

文献概要を表示

長時間血液透析は，患者のQOLを高め，栄養状態を改善するために有用な方法であると考えられるが，アミノ酸の過剰除去による栄養不良の懸念も指摘されている．今回，自施設の症例を通して長時間血液透析の効果を検討した．透析中に食事を提供し，多くのエネルギーを摂取しているが，自宅での摂取状況には変動が見られた．それにもかかわらず，栄養指標には問題は見られず，日々楽しんで生活している様子が伺われた．食事に関しては自分の生活サイクルに合わせて自由に行っている．また，透析中の十分なエネルギー摂取は蛋白節約効果により栄養状態へ好影響を与える可能性もある．本症例からも，長時間血液透析は患者の栄養状態，QOLに貢献するものと考える．

4．長時間血液透析（2）今日から実践可能な，透析患者の低栄養への根本的対策菱田　学 , 岡崎　雅樹 , 西堀　暢浩 , 今泉　貴広 , 金田　史香 , 丸山　彰一 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1397-1404

PDF(1790KB)

有料閲覧

文献概要を表示

近年，血液透析患者の高齢化を背景に，低栄養や，痩せた患者の死亡リスクが高いことが問題となっており，栄養状態を良好に維持することの重要性が認識されている．一方で，日々の診療ではカリウム，リン等の上昇や除水量の増加を回避するため，食事や飲水の制限が求められることも多く，患者は十分な栄養を摂取することが難しい状況に置かれている．透析時間を延ばすことで十分な浄化と緩徐な除水が実現され，患者は食事を摂取しやすい環境を得ることができる．透析患者の低栄養への根本的な介入方法として，積極的な食事摂取を長時間透析で支えるという治療戦略が有用である．

5．短時間頻回血液透析（施設）一色　啓二 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1405-1408

PDF(237KB)

有料閲覧

文献概要を表示

1回1.5〜3時間未満，週5回以上と定義される短時間頻回血液透析（short daily hemodialysis；SDHD）は，体液量管理に優れ，溶質除去量が増加し，透析効率も高い．循環動態が安定し，生命予後の改善が期待される．栄養状態も改善し，患者生活に有利な透析処方と考えられるが，わが国における施設でのSDHDは診療報酬上運用が難しく，患者数が非常に少ない．栄養学的な面も含め実臨床での施設におけるSDHDの総合的な評価には，患者数の増加に伴うさらなる経験と研究と知見の蓄積が必要である．

6．在宅血液透析の食事療法政金　生人 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1409-1413

PDF(242KB)

有料閲覧

文献概要を表示

施設血液透析では，さまざまなコホート研究から導き出された生存や合併症回避に有利な栄養指標が当てはまるように，食生活の改善を指導する．在宅血液透析では，患者が望む食生活が基本にあり，それを実現可能にするための透析プログラムを考案する．前者は多くの場合食事摂取制限になり，後者は多くの場合不足分，とくにたんぱく質摂取を促す指導になる．食生活は文化でもあり，患者個人の生活に深くかかわるものである．21世紀の医療の中心概念は患者中心であり，在宅血液透析は慢性透析患者の食生活を尊重できる治療であるという特性をもっている．

7．腹膜透析患者の栄養管理松岡　直也 , 勝野　敬之 , 伊藤　恭彦 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1415-1419

PDF(253KB)

有料閲覧

文献概要を表示

腎代替療法の一つである腹膜透析（PD）は全透析患者の3％弱である．しかし，生存率に関しては血液透析（HD）と比べても遜色はなく，通院回数や治療する時間に比較的自由度があることからQOLの向上を見込むことができる．PD患者もHD患者と同じく高齢化が進み，フレイルをきたしやすくなっており，この点を考慮した栄養管理が必要となる．高齢PD患者の栄養管理は減塩とフレイル予防が重要であり，患者ごとに経時的に栄養状態の評価を行っていき，その都度指導を行うプロセスを継続する必要がある．そのためには，医師，看護師，管理栄養士，臨床工学技士，理学療法士，ソーシャルワーカーなどの多職種での包括的な栄養管理が有用である．

8．腹膜透析（APD）土井　秀悟 , 石橋　由孝 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1421-1426

PDF(300KB)

有料閲覧

文献概要を表示

腹膜透析（PD）患者における栄養管理は長期PD継続や生命予後にも関わる非常に重要な要素だが，総エネルギーや塩分，たんぱく質，リン，カリウムなど多面的な目標設定となるため容易ではない．とくにAPD（automated peritoneal dialysis）を施行している患者では残腎機能の低下や透析液量の増加により，さらに課題を抱えることが多い．PD患者の栄養管理についてはエビデンスの蓄積が待たれる部分も多いが，透析メニューの処方と同様に身体面・心理社会面を考慮した個別な評価と介入が必要不可欠である．

9．併用療法の食と栄養中山　昌明 , 伊藤　雄伍 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1427-1432

PDF(250KB)

有料閲覧

文献概要を表示

併用療法は腹膜透析（PD）単独では管理できない体液過剰や溶質除去不足を是正するために開発された治療法である．興味深いことに，併用療法導入後に血清アルブミン値が上昇する例が観察されており，本治療が栄養状態改善に寄与することが期待される．しかし，当該治療患者に対する食事管理指針はなく，また，本課題は十分な議論もされないまま今に至っているのが現状である．そこで，本稿では，併用療法患者におけるいっそうの栄養状態向上を目指すために，PDと血液透析（HD）それぞれ特有の栄養状態を踏まえて，併用療法におけるあるべき食と栄養について考えたい．

10．腎移植後の食事と栄養吉田　朋子 , 阿部　哲也 , 石井　大輔 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1433-1438

PDF(730KB)

有料閲覧

文献概要を表示

腎移植後は免疫抑制薬の影響や尿毒症の症状消失によって食欲の亢進がみられ，食事摂取量が増えることで体重は増加しやすい．過度な体重増加は，腎移植後合併症の発症や移植腎の負担につながる．また，腎移植レシピエントは免疫抑制薬による拒絶反応の予防を行う一方で，過剰免疫抑制による感染症といった相反する病態を持ち合わせている．これらは移植腎機能に早期に直結する病態である．しかし，その一方で，食事療法は腎硬化症を防ぎ，長期的に良好な移植腎機能を下支えするための重要な治療戦略であり，病態や治療，精神面などを考慮し個々に合わせた食事療法・栄養管理を行う必要がある．

栄養資料 1）たんぱく質（BCAAを多く含む食品）猪野瀬　渚 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1439-1442

PDF(308KB)

有料閲覧

文献概要を表示

たんぱく質は筋肉や臓器など身体を構成する要素として重要な栄養素である．それだけではなく，さまざまな酵素やホルモンなど，多くの生理作用を有する生命維持に関係する．たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成され，体内で合成できるものと合成できないものがある（表1）．体内で合成できるアミノ酸を「非必須アミノ酸」，合成できないアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼ぶ．必須アミノ酸のなかで，「バリン」・「ロイシン」・「イソロイシン」は分岐鎖アミノ酸（branched chain amino Acid；BCAA）と呼ばれ，筋肉のエネルギー代謝や合成に関して注目されている（図）．

栄養資料 2）リンが高くなる要因を食事の面で考えよう長谷川　由起 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1443-1446

PDF(380KB)

有料閲覧

文献概要を表示

たんぱく質と結合したリンは「有機リン」といい，豆腐などの植物性食品，魚介類・肉類・卵類・乳類などの動物性食品が該当する．「有機リン」はたんぱく質源のおかずをたくさん食べると，リンの摂取量も増加する．食品添加物として食品加工に使われる食品添加物は「無機リン」という．体内での利用効率（吸収率）は，「有機リン」の植物性食品20〜40％，動物性食品40〜60％に対し，「無機リン」は90％以上と高く，食品添加物を利用した加工食品はリンの吸収率が高い．

栄養資料 3）カリウムを多く含む食品野﨑　梢 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1447-1450

PDF(428KB)

有料閲覧

文献概要を表示

「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では，血液透析患者のカリウム摂取量は2,000 mg/day以下を目標量としている．カリウム制限では，カリウム含有量の多い食品を控えたり，調理によってカリウムを減らすこととなるが，カリウムの栄養成分表示は一部の商品に限られており，カリウム含有量の多い食品を理解しておく必要がある．

栄養資料 4）亜鉛を多く含む食品北岡　康江 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1451-1453

PDF(399KB)

有料閲覧

文献概要を表示

亜鉛は，私たちにとって必須微量元素であり，皮膚疾患である口内炎や褥瘡・味覚障害や脱毛・貧血・食欲低下など亜鉛欠乏の症状は多彩である．

OPINION

食・健康・未来と管理栄養士の役割北島　幸枝 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1365-1366

PDF(136KB)

フリーアクセス

透析食のレシピ

ひじきチャーハン／卯の花炒りつくね山尾　尚子 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1454-1454

PDF(58KB)

有料閲覧

透析患者の薬，どう使いわける？

便秘治療薬　第2部―便秘症治療薬の使用方法，スタッフへのワンポイントアドバイス味村　俊樹 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1455-1460

PDF(353KB)

有料閲覧

文献概要を表示

透析患者における便秘症治療薬の使用方法に関して，第1部では，便秘の特徴と便秘症治療薬の種類・作用機序に関して概説したが，本第2部では，便秘症治療薬の使用方法を解説するとともに，スタッフへのワンポイントアドバイスも記す．

症例による透析患者の画像診断

多発性囊胞腎の透析患者の肝囊胞感染にMRIが有用であった1例吉村　和修 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1461-1465

PDF(3659KB)

有料閲覧

文献概要を表示

多発性囊胞腎は腎臓に多くの囊胞が形成される疾患であり，囊胞感染はよく見られる合併症の一つである．囊胞感染は囊胞内に細菌が侵入し感染が起こる状態を指す．症状は発熱や腰痛，腹部不快感などを示すことが多い．一方，多発性囊胞腎では多数の囊胞が存在するため囊胞感染をきたしてもその局在を特定することは必ずしも容易ではないことをしばしば経験する．CTや超音波検査に比較し，MRIは囊胞感染の診断に有用な可能性が報告されている．今回，多発性囊胞腎の透析患者における肝囊胞感染においてドレナージを行ううえでMRIが有用であった1例を経験したため報告する．

------------

目次 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1362-1363

PDF(179KB)

フリーアクセス

投稿規定 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1466-1466

PDF(156KB)

フリーアクセス

次号予告 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1467-1467

PDF(108KB)

フリーアクセス

編集後記 39巻12号 , 2023年11月 , pp.1468-1468

PDF(166KB)

フリーアクセス

基本情報

臨牀透析
39巻12号
(2023年11月発行)

電子版ISSN：2433-247X 印刷版ISSN：0910-5808 日本メディカルセンター

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
3月24日～3月30日
)

第1位 3．骨粗鬆症の診断（1）生化学検査・骨代謝マーカーはどこまで利用できるか後藤俊介臨牀透析 41巻 3号 pp. 249-253 (2025年3月10日) 日本メディカルセンター
第2位 MIA症候群とは? 本田浩一,秋澤忠男臨牀透析 29巻 8号 pp. 1175-1180 (2013年7月10日) 日本メディカルセンター
第3位 9．脳血管障害急性期の透析法江里口雅裕臨牀透析 36巻 6号 pp. 599-604 (2020年6月10日) 日本メディカルセンター
第4位カルシウム受容体作動薬（カルシミメティクス）-シナカルセト，エテルカルセチド，エボカルセト，ウパシカルセト横山啓太郎臨牀透析 38巻 8号 pp. 1123-1129 (2022年7月10日) 日本メディカルセンター
第5位 4．骨粗鬆症の薬物治療（2）ビタミンD製剤鈴木正司臨牀透析 41巻 3号 pp. 277-282 (2025年3月10日) 日本メディカルセンター
第6位 2．CKD・透析患者における骨粗鬆症診療ガイドライン中川洋佑,駒場大峰臨牀透析 41巻 3号 pp. 242-248 (2025年3月10日) 日本メディカルセンター
第7位 2．ステップ2：研究会・学会で看護実践を発表する―発表に取り組むための準備とその実際（1）看護実践報告・研究の計画書をつくる三村洋美,田村由衣,川村晴美,中澤沙織臨牀透析 40巻 3号 pp. 265-272 (2024年3月10日) 日本メディカルセンター
第8位 2．ステップ2：研究会・学会で看護実践を発表する―発表に取り組むための準備とその実際（3）看護実践報告・研究の抄録の書き方西山陽子臨牀透析 40巻 3号 pp. 280-286 (2024年3月10日) 日本メディカルセンター
第9位 9．低血圧対処法―透析中/非透析時中井健太郎臨牀透析 40巻 2号 pp. 187-193 (2024年2月10日) 日本メディカルセンター
第10位観察研究　症例報告、症例集積研究伊丹儀友臨牀透析 29巻 4号 pp. 395-402 (2013年4月10日) 日本メディカルセンター

投稿規定

年間購読申込