臨牀透析 33巻4号 (2017年4月)

透析患者の薬剤処方-ポリファーマシーを考える

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ポリファーマシーは薬物有害事象,アドヒアランス不良など多くの薬物問題と関連する.ポリファーマシー対策には,疾患や薬剤の優先順位を考慮した処方薬の絞り込みを心がける必要がある.とくに,日本老年医学会による「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」に示されているように,高齢者にふさわしくない薬物があることを理解する.さらに,高齢者では認知機能やコミュニケーション能力の低下を認める場合も多く,個々の患者の服薬管理能力を把握し,アドヒアランスを維持するための手法を実践することが求められる.

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一般的なポリファーマシーの定義(内服薬6剤以上)を用いれば,透析患者におけるポリファーマシーの頻度はおよそ90%であると報告されている.しかし,それに関連する問題点は明確化されていない.基本的に薬剤師は現在の投薬に関する有効性や安全性を評価する必要がある.それに加えて,透析患者にとって問題となる投薬に関する注意喚起を怠ってはならない.現在の投薬を適正化するためには,医師や薬剤師が定期的にそれを評価することしか方法はない.ポリファーマシーは簡単には解決できない問題なのである.医療スタッフはポリファーマシーがその患者において問題であることを認識していると表明することが,意思の共有のためにも重要である.問題解決のために多職種連携が何よりも大切である.

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透析患者は薬物相互作用が発生しやすい多くの要因を有する.また,透析患者には種々の静注製剤が投与されるため,ポリファーマシーを静注製剤を含めた概念として捉える必要がある.薬剤関連有害事象を筆頭に,ポリファーマシーがもたらすさまざまな弊害が想定されるが,透析患者におけるエビデンスは乏しく,減薬介入手順やそれによる転帰も不明である.さらに医療現場では,処方医がポリファーマシーに陥るピットホールが数多くある.不適切処方薬を見つけるツールや減薬プロトコールが提唱されているものの,透析患者に適用可能かも検証されるべき課題である.

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透析患者の高齢化が進み,腎不全だけではなく,さまざまな疾患や合併症を抱えていることが多く,数種類の薬物を服用している場合がある.服薬行動も,高齢者の特徴から管理が十分できなかったり,院外薬局の増加から管理不十分となり,薬物に伴う有害事象が起きている現状がある.このような状況で,看護師ができることは,まず透析患者の身体的・心理社会的特徴を十分把握し接することである.次に,患者の小さな変化を見逃さず観察し,適切にアセスメントすることである.さらに,薬剤師も患者を守るチームの一員であることを医療者全員が意識し,看護師が得た情報と院外薬局の薬剤師がもっている情報を共有し,連携することが重要である.

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透析患者における血圧は,透析室における血圧のみならず家庭血圧を含めて評価するべきである.心機能低下がない,安定した慢性維持血液透析患者における降圧目標値は,週初めの透析前血圧で140/90mmHg未満を目標とする.目標血圧の達成にはドライウエイトの適正な設定がもっとも重要であり,ドライウエイトの達成/維持後も降圧が不十分な場合には降圧薬を投与する.不整脈を合併した透析患者では器質的心疾患を有する可能性が高く,心臓超音波検査や必要に応じて,冠動脈造影検査を施行する.また,心房細動に対する安易なワルファリン治療は行わないことが望ましい.

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透析患者の糖尿病治療として,1型糖尿病では強化インスリン療法が必須であるが,2型糖尿病では,経口薬と注射薬のなかから単剤あるいは複数の薬剤が選択される.現在7クラスの経口薬と5剤のGLP-1受容体作動薬が上市されているが,透析導入後も使用可能な経口薬はα-グルコシダーゼ阻害薬,速効型インスリン分泌促進薬,およびDPP-4阻害薬の3クラスであり,GLP-1受容体作動薬ではリラグルチド,リキシセナチド,およびデュラグルチドである.複数の血糖降下薬の使用,さらには血糖降下薬以外に低血糖を起こしうる薬剤と経口血糖降下薬を併用することで,低血糖がより高頻度となるポリファーマシーの問題が生じるため,注意が必要である.

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透析患者の内服薬のなかで,リン(P)吸着薬やVDRA,シナカルセト塩酸塩など,CKD-MBDに関連した薬剤が占める割合は大きく,ポリファーマシーの大きな一因となっている.これら薬剤を用いるうえで勘案すべきは生命予後の改善であり,その意味では血清P値を適切にコントロールすることがもっとも重要となる.実臨床において,P吸着薬単剤のみで血清P値をコントロールすることは困難な場合が多く,多剤を併用することがほとんどである.さらにこれらの薬剤には便秘,吐気など多彩な消化器症状が併発するため,下剤や制吐薬を併用することもしばしばであり,これらがさらにポリファーマシーの原因となる.本稿では,透析患者におけるCKD-MBD関連薬剤のポリファーマシーについて,そのリスクと恩恵の両面から概説を加えていく.

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透析患者の死亡原因の第一位が心血管疾患であることが知られており,これらの患者では高頻度に心血管疾患を有している.脳,心臓,末梢血管の病変に対して,さまざまな抗血小板薬が処方されることが多く,また,透析患者では心房細動を有する頻度が高く,これに対してワルファリンが投与されることもある.想像できるように,透析患者は複数の心血管病変を合併することが多く,そのため,複数の抗血小板薬,抗凝固薬が重複されて処方されていることがあり,その必要性を検討する必要があると思われる.透析患者は,ヘパリンを透析ごとに使用されており,出血をきたしやすい状態にあるので,これらの薬の整理は重要な問題であると考える.

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透析患者では,消化性潰瘍と便秘の治療薬がしばしば投与されている.プロトンポンプ阻害薬(PPI)は,肝代謝型であり,透析患者での用量調整の必要はないが,H2受容体拮抗薬(H2RA)では減量が必要である.H.pylori除菌治療に用いるクラリスロマイシン(CAM)はCYP3A4阻害薬であり併用薬に注意する.透析患者では便秘を認めることが多いが,便秘を誘発する薬剤がないかを確認する.便秘と関連するリン吸着薬やイオン交換樹脂製剤を投薬する際には便秘の予防を意識することが必要である.

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透析患者では,不眠,抑うつ症状などの精神症状を起こしやすく,QOL低下や死亡率の増加の一因となっている.原因は多彩で,腎不全・透析に関係する要因,むずむず脚症候群などの身体的要因に加え,心理社会的ストレス因子などさまざまな要因があり,これらの病態が重複して症状に関与している.治療は,内服加療の前に,生活環境や睡眠習慣の改善などの非薬物療法を積極的に行うべきである.高齢化が進んでいる透析患者では,薬剤蓄積により予期せぬ副作用を生じる可能性が高く,多剤併用は避けるべきである.向精神薬を使用する際には症状に応じて選択し,過剰投与にならないよう注意して使用することが重要である.

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透析患者の疼痛,そう痒は客観的評価が難しく,治療による満足度が大きくないためポリファーマシーの要因となりやすい.各症状に対する処方が過剰となると有害事象が起こるだけでなく,疼痛とそう痒それぞれに対応した処方の相互作用で有害事象となる可能性も考慮しなければならない.対策としては,(1)CKD-MBD,透析条件など疼痛,そう痒の原因となりうる疾患の治療を積極的に行う,(2)疼痛,そう痒の症状に関する治療介入では複数の治療を同時に行わず,一つひとつの治療効果を判断のうえ,継続,変更,追加,使用量の調節など検討する,ことが挙げられる.

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認知症の治療は,治療手段から非薬物治療と,薬物治療とに分けられ,治療の対象からは認知機能の低下自体に対する治療と,行動・心理症状(BPSD)に対するものに分けられる.アルツハイマー病の脳内ではアセチルコリンの減少とグルタミン酸の増加がみられる.このため,認知機能低下に対しては,コリンエステラーゼ阻害薬と,グルタミン酸受容体(NMDA受容体)拮抗薬とが用いられる.一方,BPSDに対しては,非定型抗精神病薬が用いられるが,うつ症状に対しては,抗うつ薬も使用される.抗コリン薬・ベンゾジアゼピン系睡眠薬は認知機能低下と関連する可能性があり,とくに高齢透析患者ではこれらの薬剤は投与を行わない.

C型肝炎と透析・腎移植医療 西 慎一

基本情報

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臨牀透析
33巻4号 (2017年4月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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