臨床雑誌内科 119巻2号 (2017年2月)

非専門医にもできる! リウマチ・膠原病診断

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非特異的な主訴や症状から膠原病疾患を疑って,より特異的な所見を探索していくための病歴聴取や身体診察がポイントである.年齢層と疾患カテゴリーを意識しながら鑑別を考えることが膠原病診断の役に立つ.

膠原病の疫学 舟久保 ゆう , 三村 俊英
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関節リウマチの有病率はおよそ1%だが,ほかの膠原病は比較的まれな疾患で指定難病として厚生労働省難治性疾患克服研究事業の対象になっている.診断技術の向上と治療法の進歩により膠原病の5年生存率は改善しつつある.関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症,多発性筋炎/皮膚筋炎,血管炎症候群の死亡率は一般人口の2倍以上である.膠原病の死因として原疾患の合併症や,強力な免疫抑制療法によって併発した感染症が多く,長期予後を改善させるためには合併症の管理と副作用対策が重要である.

関節痛・関節炎 横川 直人
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関節痛の診断は,総合内科的アプローチ,整形外科的アプローチ,リウマチ膠原病科的アプローチの順で鑑別を進めれば見落としがない.頻度の高い整形外科系の局所疼痛は,解剖の苦手な内科医でも十分に対応できる.リウマチ膠原病系の疾患は,焦って誤診するより,時間はかかっても確実に診断をつけるほうが大切である.

筋痛・筋力低下 金下 峻也
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筋痛は全身性か局所性によって鑑別が分かれ,筋力低下はasthenia(無力症)と神経筋疾患に由来するtrue muscle weaknessで原因疾患は分かれる.問診では併存症状,増悪因子・発症様式,家族歴,既往歴,内服歴を確認する.診察では神経診察,関節診察を中心に筋症状の分布,程度を確認し全身を網羅的に評価していく.検査については抗体検査を含めた血液検査,尿検査,筋電図/神経伝導速度検査などの生理機能検査,画像検査,筋生検まで多岐にわたる.そのため,詳細な問診と診察から想定される鑑別疾患をもとに,不必要な検査は避けるよう留意する.

皮疹 山本 雄一
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膠原病の皮膚病変は多彩であるが,多くの膠原病で診断上あるいは経過を観察するうえできわめて重要な情報をもっている.膠原病のなかで個々の疾患に特徴的にみられるのが特異的皮疹で,確定診断に重要である.一方,非特異的皮疹は特定の膠原病に限らずにいくつかの疾患に共通してみられるもので,早期診断のきっかけとして,また全身症状との関連において意義がある.膠原病の皮膚症状には疾患活動性に相関するものとしないものがあり,その区別が必要である.疾患活動性に相関する皮疹は,治療効果の判定にも有用であり,また各種検査値の変化に先立って再燃することも多く,治療強化の判断にも重要である.よって単に皮疹の有無のみならず,個々の皮疹の正確な解釈が必要である.

肺病変 冨島 裕
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間質性肺炎:原因が不明な場合は,膠原病を一度疑う.喘息:中等度の好酸球増多症(1,500/μL以上)+肺外症状で,EGPAを疑う.胸水:滲出性でリンパ球優位の際,悪性胸水と結核性胸水でなければ,膠原病を疑う.ADAが高値ならば,胸腔鏡検査を検討する.

腎病変 葉末 亮 , 藤田 芳郎
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尿検査は,スクリーニングとして試験紙法,その後鏡検法・尿生化学検査を施行し,軽微な腎障害の発見に努める.Crが上昇しているときは腎障害がある程度進行しているものと考え,早期に治療介入できるように検査を進める.ループス腎炎・ANCA関連血管炎は腎病変をきたしやすい代表的疾患であるが,現在の病理分類・治療については不十分な点も多く,今後の改善が期待される.

腹痛・下痢 上地 英司
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消化器症状を主訴とした患者さんから膠原病を診断する場合,消化器系以外の病歴聴取と身体所見も確認することが第一歩となる.炎症性腸疾患関連関節症は末梢関節炎の特徴と軸関節炎の特徴的病歴である炎症性腰痛の確認が重要である.腸管型Behcet病の診断には,消化管内視鏡所見と併せて特徴的な粘膜・皮膚や眼所見が重要である.IgA血管炎は特徴的な経過を示す腹部症状と皮膚紫斑の診察が診断の糸口となる.ループス腸炎は全身性エリテマトーデス患者の腹痛においては鑑別診断として想起する.画像検査は有用であるが,とくに免疫抑制下の患者では感染性腸炎の除外診断をしっかり行わなければならない.

発熱 下郡 佳 , 萩野 昇
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膠原病診療は他疾患の鑑別が必ず診断のプロセスに含まれる.(1)発熱に膠原病を疑う所見を伴うものにおいてはその疾患とmimickerの鑑別を進め,(2)発熱に非特異的な所見しか伴わないものにおいてはいわゆる不明熱のアプローチを行う.検査所見はいずれも単独で診断が可能なものはないため,すべてを総合的に判断して診断する必要がある.診断はときに長期におよび侵襲のある検査も伴うため,患者との関係づくりは最も重要である.複数の医師でディスカッションを行うことで,不明熱が不明熱のままとなることを避けやすくなる.

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ドライアイ・ドライマウスの原因としては,高齢・抗コリン作用の薬剤・糖尿病などは頻度が高く,必ず検討する.問診・診察(+血算や生化学,尿検査など安価な検査)を通してSjogren症候群,IgG4関連疾患,リンパ腫,サルコイドーシスなど全身性疾患の可能性を検討し,必要時,特殊検査を追加する.

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リウマトイド因子は関節リウマチに感度が高い一方で特異度が低いという欠点があった.抗CCP抗体はリウマトイド因子と同程度の感度がありながら,特異度が高い抗体である.関節症状を有する場合には両抗体ともに早期診断に有用であるが,無症候性者ではRF陽性の意義は乏しい.一方で抗CCP抗体陽性は無症候者であっても近い将来のRA発症を強く示唆する所見である.

抗核抗体陽性 野村 篤史
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抗核抗体の測定法のスタンダードは間接蛍光抗体法であり,染色パターンから得られる情報は大きい.抗核抗体陽性の場合は全身性エリテマトーデス,混合性結合組織病,全身性強皮症,Sjoegren症候群,多発性筋炎/皮膚筋炎を念頭に問診・身体診察を行うが,臓器特異的な自己免疫疾患や薬剤,感染症などによっても抗核抗体陽性となりうる.抗核抗体陽性以外に症状や所見が何もない場合は非特異的な上昇の可能性を考えるが,膠原病を疑う症状や所見がある場合には分類基準を満たさない膠原病の可能性や今後の発症に注意を要する.

ANCA陽性 押川 英仁
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ANCAはANCA関連血管炎の診断補助を目的として測定されるが,ANCA関連血管炎以外にもさまざまな疾患や薬剤で陽性となる.感染症ではとくに亜急性細菌性心内膜炎や結核,薬剤では抗甲状腺薬やhydralazine,minocyclineなどに注意が必要である.BVASの評価項目はANCA関連血管炎の臨床徴候のチェックリストとしても有用である.ANCAは血管炎のスクリーニング目的に使用すべきではない.原因不明の発熱や体重減少などの全身症状や,強膜炎やぶどう膜炎,慢性中耳炎や副鼻腔炎,血性鼻汁・痂皮,間質性肺炎や肺野異常陰影,肺胞出血,糸球体腎炎,全身症状を伴う紫斑や皮疹,多発単神経炎などを認める場合にANCAを提出する.

血球減少 東 光久
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膠原病に伴う血球減少は偶然指摘されることが多い.膠原病で血球減少が分類基準に採用されているのは全身性エリテマトーデス(SLE)ぐらいであり,その他の膠原病では随伴所見である.血球減少を契機に膠原病の診断をする場合には,他の疾患・病態(ウイルス感染症,薬剤性血球減少)や合併症(血栓性血小板減少性紫斑病,血球貪食症候群)に十分注意する必要がある.血球減少が,1系統のみか,2系統以上であるかが鑑別に役立つ.

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感染症は膠原病関連疾患と類似した症状を呈することがあるため,慎重に鑑別を進めていく.予期せぬCRP・ESRの上昇を経験したときには,痛風・偽痛風による上昇も疑う.膠原病関連疾患は症状が同時に出現するとも限らないため,過去の所見にも遡ることができる問診,とくに既往歴の確認は大切なステップである.頭頸部の診察から多くの情報を得ることができる.リウマチ性多発筋痛症を疑う場合は,身体に触れて疼痛の範囲を確認する.間質性肺炎以外にもCT検査から膠原病関連疾患を示唆する所見はある.検査をするときは副鼻腔も含めると診断の助けになることがある.ESRとCRPの乖離(ESRは著明に高値だが,CRPはほぼ正常)があれば,全身性エリテマトーデス,Sjoegren症候群,IgG4関連疾患などが鑑別となる.ただし,多発性骨髄腫,MGUSに注意する.

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補体の活性化は炎症の惹起,制御の両面で生体防御を調節している.補体値を正確に評価することは,膠原病疾患における臓器障害の理解を助け,診断や疾患活動性を評価するうえで重要である.

動脈瘤・大動脈炎 高杉 浩司
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動脈瘤・大動脈周囲の壁肥厚をみたら,大動脈炎を起こす疾患の鑑別を行う.大血管炎では,罹患血管が大きいため進行するまで出血や虚血症状が出現しにくい.大動脈炎をみたら,まず感染症の除外が必要である.

骨密度異常 松井 和生
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骨粗鬆症は,骨密度低下と骨の微細構造の異常を特徴とし,骨が脆弱となり,骨折リスクが増加する疾患である.骨密度は,若年成人平均値(YAM),WHOによる骨密度診断カテゴリーにより判定する.FRAX骨折リスク評価ツールにより10年以内の主要骨粗鬆症性骨折リスクの評価が可能である.脆弱性骨折の既往がある場合,とくに骨折リスクは高くなる.65歳以上で骨量減少がある場合,65歳未満でリスク因子がある場合,X線撮影により椎体形態骨折の有無の評価を行う.骨粗鬆症の診断では,病歴・身体診察・検査により,続発性骨粗鬆症の原因や骨粗鬆症類縁疾患を鑑別する.

ビッグデータの活用 徳田 安春
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ビッグデータの基本コンセプトはイベントを予測することである.ビッグデータの特徴は,膨大なデータ量と種類,そして処理速度の速さである.ビッグデータ分析の成果は研究結果として出てきている.ビッグデータで学習した人工知能の臨床応用がすでに始まっており,その影響は大きい.

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全身性膠原病の一つであるPM/DM患者血清中には,さまざまな自己細胞成分を標的とする自己抗体の存在が知られている.興味深いことに,筋炎に見出される自己抗体の多くは筋炎以外では認められず,疾患特異性がある.それらの特異自己抗体は特定の臨床症状と密接に関連しているため,自己抗体の測定が,実臨床上,PM/DMの診断,病型分類,治療法の選択,予後の推定などに非常に有用である.PM/DMに見出される自己抗体として,以前から抗ARS抗体が有名であるが,近年,PM/DMを含む特発性炎症性筋疾患に特異的に見出される新たな自己抗体が報告され注目されている.

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関節エコーにより,軟部組織の炎症,構造変化,ならびに結晶沈着を描出することが可能である.関節エコーにより,関節リウマチ,脊椎関節炎,結晶誘発性関節炎,および変形性関節症などの特徴的病態を描出可能である.関節エコーは線維筋痛症の診断において,器質的疾患の除外に有用である.

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疾患の絶対的な定義・分類がいまだ確立していないリウマチ膠原病診療においては,診断基準に依存し過ぎることなく,系統的,論理的に臨床の問題を解決する能力が必須である.米国のリウマチ内科研修では,臨床推論の基礎の習得にとくに力が入れられている.すなわち,パターン認識に基づいた直観的なアプローチと,客観的なデータに基づいて鑑別診断を系統的に吟味批評する解析的アプローチを使い分ける術を学ぶ.同研修では,診断の精度を向上すべく,さまざまな認知バイアスが己れの思考過程に与える影響を熟知するよう指導される.

あなたのプレゼン誰も聞いてませんよ! 秘密の特訓編(第17回)

キホンをシンプルに考える 体液・電解質・酸塩基平衡異常のとらえ方(第9回)

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<Key Point>検査で血清K濃度の上昇がみられた場合には必ず再検査を行うとともに,真の高K血症かを検討する.高K血症はさまざまな要因が重なって発症することがほとんどのため,すべての要因を考慮した診療が大切である.高K血症の治療には発症速度と増加程度の把握が大切であるため,高K血症をきたしやすい症例では定期的な血清K値の測定が重要である.

感染症Basicレクチャー 明日からの診療に使えるエッセンス

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Clostridium difficile関連腸炎は,腸管内細菌叢の菌交代現象の結果としてみられる.Clostridium spp.の感染対策は,芽胞への対策が重要である.Listeria monocytogenesは,細胞性免疫不全者,高齢者,妊婦で想起すべき微生物である.

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80歳男。心不全の治療歴があり、今回、全身倦怠感、筋力低下、顔面・四肢の浮腫、嘔吐・下痢が出現し、血圧低下も認めた。入院時、意識レベルは低下し、検査所見で炎症反応の上昇(ウイルス感染)、低Na血症、腎機能の悪化、甲状腺自己抗体陰性の甲状腺機能低下症を認めた。また、血性アミロイドAが高値で、心電図・心エコー・心生検所見より心アミロイドーシスと診断し、免疫組織化学的所見よりtransthyretin amyloidosisと判断した。更に、甲状腺エコーでびまん性腫大を、細胞診でアミロイド様の沈着物を認め、アミロイドーシスによる甲状腺機能低下症と診断した。日本甲状腺学会粘液水腫性昏睡の診断基準の必須項目、症候・検査項目を全て満たしていることから、同症と診断した。Hydrocortisone投与を開始し、漸減と共にlevothyroxineを低用量で開始したところ、症状、検査所見、全身状態は改善し退院となった。

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労作後の極度の消耗,遷延する疲労感を特徴とし,多彩な症状を呈する慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome:CFS)の原因として,2011年,筋痛性脳脊髄炎(myalgic encephalomyelitis:ME)による中枢神経系の機能調節障害が国際委員会(International Consensus Panel)より提唱された.本症の成因に循環器的異常が密接に関連することが,近年明らかにされた.本症患者にはsmall heart例が多い.すなわち,やせ型の若年女性に多く,低血圧や起立性低血圧をしばしば認め,胸部X線像上,心胸郭比は小さい.心エコー検査でも左室拡張末期径が小さく,1回拍出量,心拍出量は低値となる.左室収縮性の指標の低下は認めない.強度の疲労,めまい,集中力低下,身震い,悪心などの症状により立位維持困難を訴える起立不耐症(orthostatic intolerance:OI)は,CFS患者の立位時症状としてもよくみられ,QOL,労働能力を低下させ,生活機能障害を規定する最重要因子となっている.公表された診断基準には,心血管系症状としてOIが含まれた.OIの病態生理は,立位時の脳血流不足であり,交感神経系の高度緊張も症状に関わる.CFS患者では循環血液量の減少から前負荷の低下による低心拍出量状態を認めるにもかかわらず,血漿レニン活性の上昇はなく,血漿アルドステロン系および抗利尿ホルモン(ADH)濃度は健常人より低値である.OIの病態には,レニン-アルドステロン系およびADH系の活性化不全も関係しているようである.前負荷の低下による低心拍出量状態を十分認識することが,本症患者の診療の重要な手助けになるとともに,本症研究の進展のbreakthroughになるであろう.

基本情報

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臨床雑誌内科
119巻2号 (2017年2月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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