臨床雑誌整形外科 72巻7号 (2021年6月)

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は じ め に

 Simunovicら1)は2010年に大腿骨近位部骨折の早期手術は肺炎や褥瘡発症が少なく,死亡率は低いと報告した.その後,欧米のガイドラインでは,大腿骨近位部骨折は整形老年病医が参加した集学的プログラム管理下に入院後36~48時間以内の早期手術が推奨されている2).しかし,大腿骨近位部骨折手術は早ければ早いほど予後がよいのかという問題がある.この問題に対して,国際多施設共同研究によるaccelerated surgery versus standard care in hip fracture(HIP ATTACK)trialの研究成果3)が報告された.

 一方,わが国のガイドライン4)では,できる限り早期の手術が推奨されている.欧米とは違う医療体制のわが国でどこまで早く手術を行えばいいのかという問題に対して,本研究では,大腿骨近位部骨折患者の救急外来受診後,手術まで6時間未満の超早期手術と6時間以降24時間未満の早期手術後の30日死亡率,術後合併症および入院期間を比較・検討したので報告する.

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は じ め に

 われわれは奈良県内における急性期脊髄損傷の発症状況調査を行った1).脊髄損傷治療は再生医療の分野において発展してきているが,根本的な治療法はいまだ確立されておらず,麻痺が完成すると,その後の麻痺の回復は乏しい.現在,脊髄損傷患者の多くは急性期病院で手術を含めた初期治療を行い,その後リハビリテーション目的で回復期リハビリテーション病院へ転院となる.そのため,脊髄損傷患者において急性期治療に携わった医療関係者の多くが回復期リハビリテーション病院退院時の麻痺の程度や退院後の把握が困難な状況である.

 本研究でわれわれは,奈良県内における脊髄損傷患者の回復期リハビリテーション病院における診療経過や転帰を明らかにするため調査をしたので報告する.

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は じ め に

 頚椎症性筋萎縮症(cervical spondylotic amyotrophy:CSA)は,頚椎の変性変化によって,前根もしくは脊髄前角が障害され,結果として上肢の筋力低下・筋萎縮を主訴とする病態である1,2).障害高位により三角筋や上腕二頭筋などの近位筋が萎縮を認める近位型と,手指などの遠位筋が萎縮する遠位型に分類される3).近位型CSAに対する良好な手術成績4)が散見されるが,予後不良因子として高齢5,6),長期の罹病期間5~7),術前の筋力低下8),錐体路徴候陽性4)があるとされている.

 本研究の目的は,当院で手術的治療を行った近位型CSA患者の術後成績を明らかにし,術後成績に影響を及ぼす因子を調査することである.

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は じ め に

 腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis:LSS)患者の健康水準は国民標準値よりも低いと報告されている1).LSS患者は,下肢感覚障害や筋力低下,腰痛,また抑うつなどの精神症状を訴えることもあり,健康水準の低下はさまざまな要因が考えられる.本研究の目的は,下肢感覚障害を訴えるLSS患者において健康水準の低下に影響を及ぼす因子を同定し,リハビリテーション介入に役立てることである.文献的考察を加えて報告する.

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は じ め に

 仙腸関節障害は腰殿部痛や下肢痛・しびれを呈する疾患であり1,2),腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症との鑑別を要する.臨床症候と理学所見をもとに,最終的に仙腸関節ブロックの効果で確定診断が行われる3).仙腸関節障害に対する治療法としては,安静,薬物療法,仙腸関節ブロック療法,骨盤ベルトなどの装具療法,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)に代表される仙腸関節の動きを正常化させる徒手療法が非常に有効である4,5)

 仙腸関節由来の痛みの大部分は,関節の微小な不適合による機能障害が原因であると報告されている6).仙腸関節には,もっとも弛む姿勢(least-packed position:LPP)ともっとも締まる姿勢(close-packed position:CPP)7)があることが知られている.日常生活動作(ADL)のなかで弛みの肢位である中腰姿勢で不用意に重い物をもったり,腰を捻じったり,反復性作業することが,仙腸関節面に微小な不適合を生じる誘因と考えられている6)

 仙腸関節ブロックは診断と治療の主軸であり,多くの症例では仙腸関節後方靱帯ブロックが有効であるが,一部の症例では関節腔内ブロックを要することがある8).また多くは骨盤ベルトや徒手療法で疼痛が軽快するが,逆に疼痛が悪化する症例もある.このように,一見,同様の仙腸関節障害の症候を呈していても,その病態は異なっている可能性がある.

 仙腸関節障害の治療方針を決定するうえで病態分類と重症度の把握は重要であるが,これまでその指標がなかった.本研究の目的は,これまで観察した仙腸関節障害の症候と理学所見から,個々の病態分類を試み,病態に適した治療方針を提示することである.

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は じ め に

 橈骨遠位端骨折は日常診療でよく遭遇する外傷であり,わが国では1万人あたり10.9~14人の発生率で,女性は男性の約3倍多く発生する疾患である1).橈骨遠位端骨折の70~90%は保存的治療が行われ,手術的治療が治療法全体に占める割合は20~30%になっており1),骨折の転位にもよるが保存的治療が行われることが多い.

 長母指伸筋(extensor pollicis longus:EPL)腱断裂は橈骨遠位端骨折の合併症として,発生率0.8~4.9%と報告されている1).整復を要しない転位の軽度な骨折に多く,受傷後3~8週で好発すると報告されている2~5).転位の軽度な骨折は,保存的治療を施行後,比較的早期に日常生活や社会への復帰が見込まれる.しかしEPL腱断裂が生じると,腱移行術などの手術的治療が必要となり,日常生活・社会復帰の遅れにつながりかねないため,EPL腱断裂の早期発見や予防は重要である.

 橈骨遠位端骨折後のEPL腱断裂を検討した報告は多数あり,CT所見での検討が散見される3,6~8).CTはX線像よりも骨折部の詳細な評価に優れているが,転位が軽度な橈骨遠位端骨折に対してはX線像での診断が主となる.

 われわれは橈骨遠位端骨折に対して保存的治療を施行中にEPL腱断裂を生じた5例を経験したため,X線所見に着目して検討した.

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は じ め に

 腱性マレット指は,一般的に装具療法や鋼線を用いた伸展位固定による保存的治療が行われることが多く,よい成績が得られると認識されている.しかしながら,長期の保存的治療にもかかわらず20°以上の伸展不全を呈する成績不良例に遭遇することがあり,患者,医師両者にとって落胆は大きい.そこで,腱性マレット指の保存的治療の治療成績を文献的に検索すると,成績不良例も数多く報告されている.岡ら1)は,腱性マレット指の保存的治療46例の治療成績において蟹江の評価法2)で不可と評価されたものが5例あり,全例初診時伸展不足角が41°以上かつ39歳以上の症例であったと報告しており,筆者の経験に近い.本稿では初診時伸展不足角が40°以上で年齢が40歳以上の腱性マレット指に対して手術的治療を行ったので,その結果を報告する.

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は じ め に

 高齢者大腿骨近位部骨折に対しては,できる限り早期手術が推奨され1),欧米のガイドラインでも24~48時間以内の早期手術が推奨されている2,3).Hapuarachchiら4)は,90歳以上の大腿骨頚部骨折骨接合例を検討し,48時間以内の手術では死亡率は有意に低かったと述べた.しかし,Ishidaら5)は,90歳以上の大腿骨近位部骨折を検討し,手術の時期と生存には相関はないと報告しており,90歳以上の大腿骨近位部骨折の手術の時期と有用性の関係については,いまだ議論のあるところである.

 当院では大腿骨転子部骨折の全例に対して,24時間以内の骨接合術をめざしている.本研究の目的は,90歳以上の大腿骨転子部骨折において,早期手術が有用であるか否かを検討することである.また,90歳以上の大腿骨転子部骨折の早期手術(24時間以内)ができなかった症例を調査し,その要因を検討した.

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 近年,膝関節機能における半月板の役割の重要性が再認識されるようになってきている.私自身,スポーツ整形外科に興味をもつようになってから,膝スポーツ外傷・障害,特に前十字靱帯損傷に対する予防と治療を中心に臨床,研究を行ってきたが,特に前十字靱帯再建術後の成績が半月板機能の温存に大きく左右されることを痛感するようになり,興味の対象が大きく半月板にシフトしている.一方で,変形性膝関節症(膝OA)の予防と治療を考える際に,半月板機能の低下がその発症に従来考えられていたよりもかなり大きく関与していることがわかってきている.しかしながら膝OAの発症をきたす中高年においては半月板自体が変性しており,変性半月板損傷に対する手術的治療のみで膝OAの発症や進行を食い止めることには限界がある.近年はさまざまな再生医療が臨床応用されており,また基礎研究段階の薬物治療や遺伝子治療などにも膝OA治療の未来が託されているが,外科医としてはやはりメカニカルな要素,すなわちアライメントの矯正が膝関節の環境を変えうる現時点でもっとも有効な手段と考える.そこで現時点で私が考えうる,整形外科医としての膝OA予防の可能性について述べてみたい.

私論

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 私事ながら大学病院で骨・軟部腫瘍の治療を主体に従事する機会を15年間近くいただいています.常日ごろ感じている疑問を記述する機会を本誌の編集室からいただきましたので,いささか偏見に満ちた暴論(?)になるかもしれませんが,私論を述べたいと思います.特に,過去の論文を拡大(?),過大(?)解釈しているかもしれない点にはご容赦いただきたいと思います.

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 症 例.58歳,女.

 主 訴:前方注視困難.

 既往歴:30歳代に多発性硬化症(両視神経炎)の加療歴があるが,すでに治癒していた.深在性エリテマトーデス,掌蹠膿疱症,高血圧症.

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 悪性腫瘍合併妊娠は1,500例に1例程度存在する.わが国ではライフスタイルの変容から高齢出産が増加しており,今後出産年齢の上昇から悪性腫瘍合併妊娠を経験することが増える可能性がある.われわれは,妊娠中に腸骨軟骨肉腫に罹患し母体は救えなかったが,胎児を娩出しえた症例を経験したので,悪性腫瘍合併妊娠の治療の問題点を考察し,報告する.

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 肘関節脱臼の多くは後方脱臼であり,一般的にその徒手整復は比較的容易である.筆者らは肘関節の外側側副靱帯(LCL)損傷を伴った内側脱臼で,上腕骨滑車後内側に鉤状突起先端が引っかかることで整復困難をきたし,手術的に脱臼整復を要した症例を経験したので報告する.

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は じ め に

 骨肉腫は若年者に好発するものの,社会の高齢化とともに,高齢発症例の増加がみられる.本研究では,高齢者原発性骨肉腫4例を経験したので報告する.

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は じ め に

 先天性膝蓋骨脱臼は,出生時より膝蓋骨が脱臼し伸展制限や外反膝を伴うまれな疾患である.低年齢では膝蓋骨が骨化していないためX線診断がむずかしく,放置された場合,二次的骨格変形や関節面の変性が進行することが多い.本稿では,先天性膝蓋骨脱臼に対するStanisavljevic法1)とRoux-Goldthwait法2)を併用した手術法および治療成績を報告する.

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は じ め に

 人工膝関節全置換術(TKA)の術後の臨床成績には,良好な下肢アライメントを獲得することが重要である.術後のコンポーネント設置不良はポリエチレンの早期摩耗やインプラントの弛み,生存率の低下を引き起こし,患者満足度に影響を及ぼす.そのためには,正確な骨切りおよびインプラントの設置が必要である1~3).筆者らは,2017年から変形性膝関節症に対するTKA施行時の骨切りにMy Knee[patient-specific instrumentation(PSI):Medacta社,Castel San Pietro]を導入した.本研究の目的は,初回TKA施行時の骨切りにPSIを使用したPSI群と従来法で骨切りを行った従来群において,手術の有用性および術後のアライメントの精度について比較・検討することである.

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 変形性関節症(OA)の特徴は,関節軟骨の変性・破壊であり,関節機能の障害や疼痛を招く.OAの軟骨変性に関与するシグナルは,内軟骨性骨化にかかわるシグナルと共通するところが多い.Hedgehog(Hh)シグナルは,骨・軟骨成長に必須の因子であると同時に,その活性化によりOA変性を引き起こす1).このHhシグナルが,OA軟骨において細胞内コレステロール(cholesterol:chol)を調節していると報告されたことは非常に興味深い2).近年,OAとメタボリックシンドロームとの関連が注目され,高chol血症などの高脂血症も膝OA増悪の誘因と考えられたが,膝OA大規模コホート研究であるROAD studyでは,高脂血症とOAとの直接的関連性は認められなかった.そこで,全身的なcholや脂質が,局所である軟骨へ及ぼす影響よりも,骨・軟骨成長,関節軟骨では,細胞内のcholや脂質調節がより重要ではないかと考え,研究を開始した3)

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は じ め に

 変形性膝関節症(OA)の有病者数は2,530万人と推定され,きわめて多い1).またOAは経年的に進行増悪するため,早期診断することの意義が報告されている2).ただし,OAの診断はX線撮影が一般的であり,医療機関への受診が必要となるが,多くの患者は,疼痛自覚により整形外科を受診する.そのため,OAでは有症率と有病率は必ずしも一致せず,臨床症状が出現した時点では病期が進行している場合が多い3)

 OAではさまざまな症状が出現するが,病期とともに日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が大きく影響すること4)からADL困難感と病期の関連性が示唆される.ADL困難感を聴取する患者立脚式質問紙はさまざま報告5)されているが,初期OAを対象とした場合,より高難度なADLを項目に選定する必要性が考えられる.

 本研究では,OA患者にとって高難度となりうるADL(HL-ADL)として5項目を選定し,その実施状況を横断的に調査した.また調査したHL-ADL項目が症状の有無や病期に与える影響について検討した.

連載 革新的技術がもたらす小児運動器難病の新展開――基礎から臨床へ

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は じ め に

 先天性側弯症は「先天的な椎骨の形態異常により生じる側弯症」と定義され,生下時から認められる側弯のうち椎骨奇形がない他の疾患に合併した側弯症とは明確に区別されている.先天性側弯症は出生数が減少した現在,その発生数としては減少傾向にあるといえる.しかし,医療の進歩により高度な変形を合併した小児が救命されることがまれではなくなり,その一方で幼小児期には軽度でみつからず年をとり変性疾患に合併して奇形椎が腰痛や下肢痛の発生原因となる症例もめずらしくなくなった.

 先天性側弯症の治療で特に目新しいものは近年報告されていないが,その考え方,対応の仕方には過去の実績を積み上げた結果としての進歩がみられている.本稿では,現在における先天性側弯症の診断と治療方法決定上のポイントについて述べる.

連載 X線診断Q&A

X線診断Q&A 廣津 匡隆
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Question

 症 例.20歳,男.

 主 訴:右膝関節痛.

 既往歴:特記すべきことはない.

 家族歴:特記すべきことはない.

 現病歴:約1ヵ月前に,飼育中の家畜が右膝に外側から衝突し,同部に痛みが生じた.近医を受診し,関節腫脹と膝蓋骨内側に疼痛を認めたため関節穿刺で血性関節液25mlを吸引した.保存的治療で経過観察を行うも疼痛が持続し,徐々にロッキング症状が出現するようになり当科を紹介され受診となった.

 身体所見:当科受診時,膝蓋骨内側に軽度圧痛はあるものの,明らかな腫脹・熱感はなかった.疼痛の場所は移動するとのことであり,ロッキング症状が出現すると疼痛が増強するようであった.右膝の外反不安定性はなく,Lachman testも陰性であり,右膝関節の可動域制限を認めなかった.

 X線所見:図1に他院初診時の右膝関節単純X線像を示す.

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は じ め に

 筆者は,整形外科医としてのキャリアの多くを,「がんセンター」あるいは「大学病院」で過ごしてきた.これらの施設では医師の異動が多く,さまざまな他診療科医師との交流があった.われわれは骨・軟部腫瘍を専門とするため,肉腫や血管腫,軟骨芽細胞腫など専門病院での診療を要する疾患に多くの診療時間が割かれる結果,他科のがん患者への診療時間は確保しづらい.しかし,自分たちにとって不十分といわざるをえない対応ですら,「これまでの病院では整形外科医がほとんど対応してくれず,ここまで動けるようになるとは感激です」とたびたびいわれることに,戸惑いを隠せなかった.これほどまでに,他科でがんの治療を受けている患者の運動器にかかわる問題は放置されてきたのである.

 日本は,1970年に65歳以上が全人口に占める割合(高齢化率)が7%以上の高齢化社会を迎えたが,高齢化は加速し続け,37年後の2007年には高齢化率が21%以上の超高齢社会に突入した.2020年の日本の高齢化率は28.7%にも及び,世界中のどの国よりも高齢化率が高く,今後も上昇を続けることが予想されている.そのような世界一の超高齢社会のなかで,高齢であっても運動機能を保つことが重要であることは,いまさらながらいうまでもない.骨折や変形性関節症,脊椎疾患などの動けない状態を改善する手術のみならず,その動けない状態を未然に防ぐべく,生活指導をしたりリハビリテーションを行ったりすることは,個人のみならず都市全体を,さらには国全体を健康に保つことにつながり,非常に重要である.

 高齢者か否かにかかわらず,個々の運動機能を保つための努力は,運動器の専門家である整形外科医として惜しむべきではない.しかしながら,がんを理由にその努力をしようとしない整形外科医が少なくない哀しき現実がある.日本人の2人に1人が生涯にがんと診断される,まさに「がん時代」を迎えたにもかかわらずである.

 本稿では,いかに整形外科医が「がん時代」に求められているか,整形外科がどのように「がん時代」に役に立てるかを伝えたい.今後の整形外科を担う皆さんにとって,本稿が「がんロコモ」に関心をもち,正しく理解し対応していくための第一歩となることを期待する.

連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング

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 症 例.51歳,男.

 主 訴:右股関節痛.

 家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

 職 業:機械工.

 現病歴:オートバイ乗車中に交差点内に直進で進入した際に対向車線から右折したトラックの左側に衝突して受傷し,救急搬送された.

 初診時所見:意識清明,呼吸・循環安定.右股関節は伸展不能でばね様固定がみられ,同部の強い痛みを訴えていた.

 初診時画像所見:単純X線正面像(図1)および股関節CT(図2),3D-CT(図3),徒手整復後の単純X線正面像(図4),股関節CT(図5)を示す.

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【要 旨】

 目 的:三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷が原因の遠位橈尺関節(DRUJ)ロッキングの病態,治療,成績について調査する.

 対象および方法:TFCC損傷が原因のDRUJロッキングに対して治療した24例を対象とした.本病態の受傷機転,画像所見,手術所見,治療成績について後ろ向きに調査した.

 結 果:DRUJロッキングは比較的小さな外傷の後に発症した.自動および他動運動による回外可動域は制限され,回内可動域は正常であった.DRUJロッキングの正確な診断は術前には困難で,術中所見で確定した.断裂した背側橈尺靱帯(15例),掌側橈尺靱帯(8例),TFCのフラップ(1例)が尺骨頭の掌側への移動を制限していた.ロッキングの解除の手技は徒手整復が4例,鏡視下手術が8例,直視下手術が12例であった.平均回外可動域は術前11°から術後84°と改善し,成績は良好であった.

 結 論:TFCC損傷が原因のDRUJロッキングは,まれではあるが前腕の回外制限の鑑別として考慮することが重要である.

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【要 旨】

 目 的:前方アプローチ(DAA)での人工股関節全置換術(THA)の合併症の一つとして大腿神経麻痺があり,寛骨臼前壁との近接性からレトラクタ挿入が原因になりうると報告されている.しかしどの領域がもっとも近いかは不明である.寛骨臼前壁へのレトラクタ挿入による大腿神経麻痺リスクを最小化するため,屍体を用いて大腿神経と寛骨臼の解剖学的関係について検討した.

 対象および方法:ホルマリン固定された解剖献体44体84股を対象とした.仰臥位で皮切後,鼡径靱帯近位から寛骨臼下端まで腸腰筋ならびに大腿神経を剖出した.縫工筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋を腸骨から切離,関節包と関節唇は切除し,寛骨臼前縁と大腿骨頭を露出させた.上前腸骨棘と寛骨臼中心を結ぶ基準線を定め,寛骨臼縁との交点を0°として前方方向に30°ずつ150°まで計測点を設定した.各計測点で骨性寛骨臼縁と大腿神経辺縁の最短距離をディバイダーで計測した.大腿長,鼡径靱帯長,骨頭径,骨頭中心高位での腸腰筋の幅・厚み,関節包の厚みを計測し,年齢,性別と合わせて最短距離に関連する因子を検討した.

 結 果:大腿神経-寛骨臼縁間の平均最短距離は0°で33.2mm,30°で24.4mm,60°で18.4mm,90°で16.6mm,120°で17.9mm,150°で23.2mmであり,90°がもっとも短かった.重回帰分析の結果,腸腰筋厚,大腿長が90°での神経-寛骨臼縁間距離に関連する因子であり,いずれも正の相関関係であった.

 結 論:解剖学的な距離の観点から考えると,レトラクタの挿入,設置は特に小柄で腸腰筋厚が薄い症例では基準線から前方90°の位置を避けるのがより安全と考えられた.

Vocabulary

電子制御膝継手 田中 洋平
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 義足の膝継手は電子制御膝継手(microprocessor-controlled prosthetic knee:MPK)と非電子制御膝継手(non-microprocessor-controlled prosthetic knee:NMPK)に分けられる.MPKはコンピュータ制御膝継手とも呼ばれる.従来から普及している一般的な膝継手は,NMPKに分類される.日本で厚生労働省に認可されている代表的なMPKは,オットーボック社(Duderstadt)のGenium(ジニウム)[図1],C-Leg4,Kenevo(ケネボ),ナブテスコ社(東京)のAllux(アルクス),オズール社(Reykjavik)のリオニーXCである.

喫茶ロビー

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 2018年に放送されたNHKの大河ドラマ「いだてん」は前回(1964年)の東京オリンピックの閉会式をもって終了した.1912年のストックホルム大会に金栗四三がマラソンで,もう一人が短距離で参加したのに始まり,ロサンゼルスやベルリン大会での日本人選手の活躍をもとに嘉納治五郎が中心となって1940年に東京オリンピックを誘致したものの,戦争のため辞退するはめになった.嘉納治五郎の亡き後,田畑政治が中心になって1964年東京オリンピックを誘致した.

基本情報

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臨床雑誌整形外科
72巻7号 (2021年6月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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