Japanese
English
経験と考察
橈骨遠位端骨折の保存的治療施行中に生じた長母指伸筋腱断裂
-――X線所見に着目して
Evaluation of rupture of extensor pollicis longus tendon during conservative treatment for distal radius fracture focusing on X-ray findings
久保田 聡
1
,
久保田 亘
1
S. Kubota
1
,
W. Kubota
1
1久保田整形外科医院
1Kubota Orthopaedic Clinic, Hiratsuka
キーワード:
distal radius fracture
,
EPL
,
tendon rupture
Keyword:
distal radius fracture
,
EPL
,
tendon rupture
pp.747-751
発行日 2021年6月1日
Published Date 2021/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_747
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は じ め に
橈骨遠位端骨折は日常診療でよく遭遇する外傷であり,わが国では1万人あたり10.9~14人の発生率で,女性は男性の約3倍多く発生する疾患である1).橈骨遠位端骨折の70~90%は保存的治療が行われ,手術的治療が治療法全体に占める割合は20~30%になっており1),骨折の転位にもよるが保存的治療が行われることが多い.
長母指伸筋(extensor pollicis longus:EPL)腱断裂は橈骨遠位端骨折の合併症として,発生率0.8~4.9%と報告されている1).整復を要しない転位の軽度な骨折に多く,受傷後3~8週で好発すると報告されている2~5).転位の軽度な骨折は,保存的治療を施行後,比較的早期に日常生活や社会への復帰が見込まれる.しかしEPL腱断裂が生じると,腱移行術などの手術的治療が必要となり,日常生活・社会復帰の遅れにつながりかねないため,EPL腱断裂の早期発見や予防は重要である.
橈骨遠位端骨折後のEPL腱断裂を検討した報告は多数あり,CT所見での検討が散見される3,6~8).CTはX線像よりも骨折部の詳細な評価に優れているが,転位が軽度な橈骨遠位端骨折に対してはX線像での診断が主となる.
われわれは橈骨遠位端骨折に対して保存的治療を施行中にEPL腱断裂を生じた5例を経験したため,X線所見に着目して検討した.
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