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は じ め に
仙腸関節障害は腰殿部痛や下肢痛・しびれを呈する疾患であり1,2),腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症との鑑別を要する.臨床症候と理学所見をもとに,最終的に仙腸関節ブロックの効果で確定診断が行われる3).仙腸関節障害に対する治療法としては,安静,薬物療法,仙腸関節ブロック療法,骨盤ベルトなどの装具療法,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)に代表される仙腸関節の動きを正常化させる徒手療法が非常に有効である4,5).
仙腸関節由来の痛みの大部分は,関節の微小な不適合による機能障害が原因であると報告されている6).仙腸関節には,もっとも弛む姿勢(least-packed position:LPP)ともっとも締まる姿勢(close-packed position:CPP)7)があることが知られている.日常生活動作(ADL)のなかで弛みの肢位である中腰姿勢で不用意に重い物をもったり,腰を捻じったり,反復性作業することが,仙腸関節面に微小な不適合を生じる誘因と考えられている6).
仙腸関節ブロックは診断と治療の主軸であり,多くの症例では仙腸関節後方靱帯ブロックが有効であるが,一部の症例では関節腔内ブロックを要することがある8).また多くは骨盤ベルトや徒手療法で疼痛が軽快するが,逆に疼痛が悪化する症例もある.このように,一見,同様の仙腸関節障害の症候を呈していても,その病態は異なっている可能性がある.
仙腸関節障害の治療方針を決定するうえで病態分類と重症度の把握は重要であるが,これまでその指標がなかった.本研究の目的は,これまで観察した仙腸関節障害の症候と理学所見から,個々の病態分類を試み,病態に適した治療方針を提示することである.
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