誌説
変形性膝関節症と半月板とアライメント
古賀 英之
1
1東京医科歯科大学大学院運動器外科学分野教授
pp.752-752
発行日 2021年6月1日
Published Date 2021/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_752
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近年,膝関節機能における半月板の役割の重要性が再認識されるようになってきている.私自身,スポーツ整形外科に興味をもつようになってから,膝スポーツ外傷・障害,特に前十字靱帯損傷に対する予防と治療を中心に臨床,研究を行ってきたが,特に前十字靱帯再建術後の成績が半月板機能の温存に大きく左右されることを痛感するようになり,興味の対象が大きく半月板にシフトしている.一方で,変形性膝関節症(膝OA)の予防と治療を考える際に,半月板機能の低下がその発症に従来考えられていたよりもかなり大きく関与していることがわかってきている.しかしながら膝OAの発症をきたす中高年においては半月板自体が変性しており,変性半月板損傷に対する手術的治療のみで膝OAの発症や進行を食い止めることには限界がある.近年はさまざまな再生医療が臨床応用されており,また基礎研究段階の薬物治療や遺伝子治療などにも膝OA治療の未来が託されているが,外科医としてはやはりメカニカルな要素,すなわちアライメントの矯正が膝関節の環境を変えうる現時点でもっとも有効な手段と考える.そこで現時点で私が考えうる,整形外科医としての膝OA予防の可能性について述べてみたい.
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