臨床雑誌整形外科 61巻11号 (2010年10月)

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METRx microscopic discectomy(MMD)法を施行した腰椎椎間板ヘルニア76例を対象に、その臨床成績と低侵襲性について検討した。手術時間は平均63±17分で、出血量は全例、少量であった。周術期合併症として、ヘルニアと強い癒着がある2症例に硬膜の僅かな損傷を認めたが、2例ともくも膜は無傷で、髄液漏は認めなかった。JOAスコアは術前と最終観察時の比較で有意に改善しており、改善率は85%であった。ODIも改善し、日常生活に支障をきたすような遺残症状は認めなかった。再発は4例で、遺残ヘルニアの再発と思われた。経過観察中の再手術は、再発ヘルニア2例、椎間孔狭窄の合併2例であった。術後体温変化は、術翌日のみ術前に比べ、有意な上昇を認めた。創部痛のvisual analogue scaleは術翌日のみ3.9±2.0で術後2日目には有意に改善していた。術後入院日数は平均3.2±0.7日で、患者に対する調査では退院可能時期は平均2.2±0.5日と回答していた。以上より、腰椎椎間板ヘルニア治療としてMMD法は安全で、低侵襲な方法であると考えた。

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脊椎脊髄疾患による疼痛・しびれに対し、ガバペンチンを投与した44例のうち副作用で中止した13例を除いた31例(男16例、女15例)を対象に鎮痛効果と副作用について検討した。疾患の内訳は、腰部脊柱管狭窄症15例、椎間板ヘルニア5例などであった。痛みの原因は、術後遺残性上肢・下肢痛16例、術後遺残性腰痛3例、術後遺残性しびれ5例、神経根性疼痛7例で、うち神経因性疼痛を5例に認めた。その結果、術後遺残上肢・下肢痛では有効が11例、やや有効が2例、無効が3例で、術後腰痛ではやや有効が1例、無効が2例であった。しびれに関しては全例無効であった。神経根性疼痛では5例が有効、1例がやや有効、1例が無効であった。副作用としては、初回投与で中止となった全例で、眠気、めまい、ふらつきを認めた。投与継続例では、眠気、ふらつきが10例、頭痛が1例であった。全44例では眠気(11例)、ふらつき(10例)が多かった。術後遺残性疼痛では、神経根性の分布パターンを認めたものに有効例が多かった。また、痛みとしびれが併存した例では有効例は多かったが、足底の錯感覚例には無効であった。腰痛は無効例が多く、神経因性疼痛は全例有効であった。以上よりガバペンチンは神経根性・神経因性疼痛に有効であると考えた。

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7年間で胸郭出口症候群(TOS)と診断した534例を対象に、肩関節周囲炎や上腕骨外側上顆炎などの疼痛性疾患の合併頻度と発症時期を検討し、両者の関連について調べた。その結果、2疾患のどちらかの合併を89例に認め、肩関節周囲炎66例で、女性が有意に多かった。上腕骨外側上顆炎の合併は38例で、男女差はなかった。また、2疾患を同時にもつ例は15例であった。その他に狭窄性腱鞘炎の合併が15例、上腕骨内側上顆炎が6例であった。最近2年間の全整形外科全新患数8090例中、肩関節周囲炎患者は434例、上腕骨外側上顆炎患者が98例、TOS患者は227例であった。そのうち、TOS合併肩関節周囲炎患者は26例、上腕骨外側上顆炎患者は17例であった。TOS患者中の肩関節周囲炎合併頻度は11.5%、上腕骨外側上顆炎合併頻度は7.5%で、非TOS患者と比べて高頻度であった。発症時期においては、肩関節周囲炎患者ではTOS先行は52%、同時または不明は36%、後発は12%であった。上腕骨外側上顆炎ではTOS先行は63%、同時または不明は32%、後発は5%で、TOSが先行する場合が多かった。以上より、TOSにおいて肩関節周囲炎や上腕骨外側上顆炎の合併は少なくなく診断・治療に留意すべきものと考えた。

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距骨下関節固定付き足底板(吊り下げ型足底板)の効果について、過去に装具による治療を受けたことがない内側型変形性膝関節症(膝OA)患者182例(平均年齢65.0±9.2歳、男35例、女147例)を対象に無作為化前向き試験を行った。対象を吊り上げ型足底板を4週間装着させた足底板群と膝軟性装具装着させた膝装具群の2群に分けた。その結果、脱落例の割合や治療開始前の患者背景は有意差はなかった。ADLに伴う疼痛を訴えた患者の改善率については、起床時の疼痛は足底群で有意に高い改善率で、階段降り時の疼痛および1kmの歩行に伴う疼痛は膝装具群で有意に高い改善率であった。その他の項目については両群間で有意差はなかった。以上より、日常生活での長距離歩行が膝の疼痛のために障害されている例では膝軟性装具が、起床後すぐに活発な作業をする例や階段使用の多い生活を営む例には吊り下げ型足底板の適応があると考察した。

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77歳女。近医にて頸椎から仙椎にいたる広範囲脊椎硬膜外膿瘍を認めたため、当院へ転院となった。軽度の貧血と炎症反応を認めた。脊椎MRIにて、C2~S2の硬膜後方にT1強調画像で等信号、T2強調画像で高信号を呈し、周囲のみ造影効果を受ける硬膜外占拠性病変を認め、L5/S1椎間板はT2強調画像で高信号を認めた。以上の所見からC2~S2にいたる広範囲脊椎硬膜外膿瘍、L5/S1椎間板炎と診断した。進行性の神経学的欠落所見も認めたため、緊急手術を行った。Th2、L1に左片側椎弓切除術を行った。椎弓直下に不良肉芽を認め、これを除去すると硬膜外腔に白色混濁した膿瘍を認めた。膿瘍の吸引・洗浄を行った。L5/S1両側拡大開窓を行ったところ、椎弓後方の筋層にも膿性組織がみられ、汚染が強い状態であったが、L5/S1椎間板周囲には明らかな膿瘍は認めなかった。起炎菌の同定は出来なかったが、四肢筋力も徐々に回復し術後は経過良好であった。

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51歳男。誘因なく右背部の疼痛が出現し受診した。MRIではTh2椎体右側および胸壁に浸潤する腫瘍像を、CTではTh2椎体右側後の骨溶解像を認めた。胸部X線、胸部CTでは右肺尖部腫瘍像、胸壁、椎体の浸潤像を認めた。CTガイド下針生検によりadenocartinomaと診断し、転移は認めなかった。以上より、Pancoast腫瘍のStage IIIbと診断した。導入療法として放射線照射とシスプラチン、ビノレルビン酒石酸塩投与を行い、手術を行った。Th1-Th3椎弓切除、C7-Th4を椎弓根スクリューで固定した。肩甲骨遠位を弓状に切開し、右肺上葉切除、右第1~4肋骨切除、上縦隔リンパ節郭清術の後Th2椎体全摘、腸骨を用いてLift-Jおよびsingle rod & screwで固定し、胸郭再建術を行った。腫瘍は肉眼的には全て切除できた。術後は良好で、退院後はテガシール・ウラシル内服となった。職場復帰していたが、その後、両下肢のしびれ、脱力を生じた。MRIにてTh1椎体の腫瘍による圧潰および硬膜管の圧迫を認め、状態が徐々に悪化し死亡した。

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40歳女。5年前より背部痛を自覚し、3ヵ月前に人間ドックで肋骨の異常を指摘された。右背部に楕円形腫瘤を蝕知し、軽度圧痛を認めた。肋間神経に沿ったTinel兆候を認めた。単純X線で右第7肋骨の圧排像を認め、MRIでは腫瘍は第7肋骨に接して胸腔内に膨隆しており、神経との連続性を認めた。腫瘍はT1強調画像で均一な低信号、T2強調脂肪抑制画像では全体的に高信号であったが、その中に一部信号強度の低下した領域を認めた。CTでも肋骨への圧排像や内部に石灰化も認め、リング状に造影される領域と一部造影される領域があった。以上の所見より、神経鞘腫と診断し手術を施行した。手術は第7肋骨に沿って皮切を加え、肋骨を骨膜下で剥離し、切除すると被膜に覆われた腫瘤を認めた。迅速病理検査にて神経鞘腫と診断し、ほとんどの神経線維を温存した状態で腫瘍を摘出した。術後は3年経過しているが再発は認めなかった。

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38歳男。胸髄損傷後の対麻痺患者であった。車椅子とともに左側に転倒し、左肩関節の自発痛および運動時痛を自覚し、当院受診となった。左肩関節前方に骨性隆起を蝕知し、左肩関節の自動運動は疼痛により困難であった。単純X線にて、左肩関節前方脱臼および左肩甲窩前方下方に2×2cm大の骨片を認め、徒手整復を行った。整復後の単純X線像にて、上腕骨頭は肩甲窩に整復されていたが、2×2cm大の骨片は整復前と同じ位置に残存していた。左肩関節の自動運動は著明なROM制限を認め、患側ではanterior apprehension test陽性であった。また、CTにて左肩甲骨の骨性Bankart損傷、左肩甲骨烏口突起裂離骨折および左上腕骨のHill-Sachs損傷を認めた。以上の所見により、左肩関節前方脱臼後および左肩甲骨烏口突起骨折と診断し、Boytchev変法を行った。術後は骨片の再転位なく受傷前までADLは回復し、経過良好であった。

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73歳男。糖尿病性腎症による慢性腎不全で血液透析を開始していたが、下肢懐疽のため右下腿切断術および左大腿切除を受けていた。血液浄化状態が不良となり、当院内科にて血液透析を開始した。左上腕遠位にシャントが造設されており、左手の壊疽、潰瘍を認めた。透析中に血圧低下を繰り返した。壊疽治療のため当科紹介受診となった。左手母指から環指にかけて炭化し、手背から左前腕遠位に壊死潰瘍病変を認めた。左前腕の腫脹、前腕周囲径の左右差、左前腕遠位の閉鎖したシャント痕を認め、左肘関節屈側に内シャントが造設されていた。また、糖尿病性腎不全による腎機能障害と腎性貧血、電解質異常を認めた。左上肢の保存的治療、血行再建は不可能であったため、左上肢の切断術を施行した。術後は左上肢断端部は良好に治癒し、透析方法を腹膜透析に変更した。心血管系への負荷も軽減し血圧も安定し、術後61日目に退院した。現在は自宅で腹膜透析と定期的な通院が可能となり、生活の質は改善した。

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61歳女。ブレスレットをした状態で転倒し、地面に左手掌部を突き、左前腕の疼痛および変形を認めた。画像所見より左橈骨末端骨折と診断した。関節内骨折を伴った末梢骨折は粉砕し、骨折線は長管骨長軸方向に手関節より6.5cmに及んでいた。観血的骨接合術として、ロッキングプレートと創外固定を併用した手術を行った。その結果、術後4ヵ月目には骨癒合が得られ、術後8ヵ月目にはdisabilities of the arm、shoulder and handスコアが良好であった。橈骨長以外の矯正位損失は軽度で、術後の整復位維持は良好であった。術直後に-1.0mmであったUlnar varianceは2.0mmとなった。創外固定器抜去直後に橈骨長が少し短縮した。

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49歳男。腎不全による腎臓移植を受けていた。右小指の屈曲が誘因なく不能となり、近医にて小指屈筋腱皮下断裂と診断され、当科紹介受診となった。右小指の近位指節間は軽度屈曲可能であったが、遠位指節間は屈曲不能であった。横手根靱帯を切開し、屈曲腱を確認したところ、深指屈筋腱が断裂し、同部の遠位断裂と浅指屈曲筋は癒着していた。また、深指屈筋腱の一部は欠損し、近位断裂は滑膜組織に囲まれ手根管内で広く癒着していた。有鉤骨鉤の変形は認めないものの、通常の骨膜が欠損し骨皮質が露出していた。以上より、小指の深指屈筋腱の断裂と診断し、長掌筋腱を採取し小指深指屈筋の近位・遠位断端部に橋渡し腱移植術を行った。術後はKleinert変法を併用した早期自動運動療法を行った。術後6ヵ月の時点では可動域制限は認めているが、日常生活上での支障は特に訴えていなかった。

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症例1:70歳女。2004年3月に小さな段差につまづき、転倒した際に、右大腿部痛が出現した。X線像で大腿骨骨幹部横骨折を認めた。骨折部位は皮質骨がスパイク状を呈し、健側の外側骨皮質の肥厚が見られた。髄内釘を用いて手術を行い、術後6ヵ月後には骨癒合が確認できた。その半年後、転倒しそうになり左大腿部痛が出現した。X線像で不全骨折を認め、免荷・保存的治療を開始した。3ヵ月後には骨形成を認め、荷重歩行を開始した。その3ヵ月後にも転倒しそうになり、再度左大腿部痛が出現し、歩行困難となった。X線像で大腿骨骨幹部横骨折を認め、骨折部はスパイク状を呈していた。前回同様に髄内釘を用いた手術を行った。本例は2002年6月~2005年1月にリセドロネートを内服し、その後は骨吸収抑制薬を中止していた。症例2:78歳女。歩行中に転倒しそうになり右大腿部痛が出現した。X線像で大腿骨骨幹部横骨折を認め、骨折部は同様スパイク状を呈していた。髄内釘を用いて手術を行った。本例は閉経後骨粗鬆症に対しリセドロネートを2年間服用し、次いでアレンドロネートを4年間内服し、その後受傷時迄の半年間はラロキシフェンを内服していた。受傷2日後のTRACP-5bは基準値以下であった。

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58歳男。35年ほど前に交通事故により左大腿骨開放骨折、左脛骨骨折骨折を受傷し、内固定手術を受けていた。大腿部の張りと鈍痛を自覚するようになり、前医にて骨腫瘍の疑いで当院紹介受診となった。単純X線にて、左大腿骨骨幹部で外側の骨皮質の連続性が絶たれ、前後方向には骨皮質の大きな膨隆所見と中心部に厚い骨硬化像を認めた。骨外には大きな軟部陰影があり、辺縁には斑点状の石灰化を多数認めた。CTにて骨皮質は腫瘤によって内側方向へ圧排され、前後方向に押し広げられたような形をとり、肥厚した骨皮質が髄腔を二分するように存在していた。針生検を行い、病理所見では、腫瘍は厚い線維性組織と器質化した無構造な血腫で、腫瘍性の細胞は認めなかった。また、毛細血管の増生が目立つ肉芽を皮膜下層に認め、大半が前2回同様の器質化した古い血腫であった。以上より、chronic expanding hematomaと診断した。腫瘤を辺縁切除した。周囲組織との癒着は比較的強かった。血腫の再発なく日常生活動作に支障はなかった。

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18歳男。バイク事故により左足を受傷したが、詳細な転機は不明で、当院救急搬送された。左前足部の外転偏位と中足骨の短縮があり、足底には開放創があった。創部に足底腱膜の露出を認めた。単純X線にて、Chopart関節では舟状骨が距骨に対し内側かつ底側に、立方骨が踵骨に対し外側かつ底側に脱臼し、舟状骨・立方骨間は離開していた。また踵骨前方突起の剥離骨折と舟状骨内側の亀裂骨折も認めた。Lisfranc関節では、第2中足骨が中間楔骨間に対して外側に、第1中足骨が内側楔骨状骨間に対して背側に脱臼していた。左足関節内果と脛骨遠位に亀裂骨折を認めた。初診時、創洗浄と徒手整復を行ったが、第1~第2中足骨間の離開とChopart関節の亜脱臼位の残存を認めた。整復後、第2中足骨基部の骨折と踵骨前方突起の裂離骨折を認めた。受傷10日後に観血的整復および内固定を行った。断裂した骨間靱帯は可及的に縫合した。外固定は行わず、術後1週間後に関節可動域訓練を開始した。その結果、術後5ヵ月で足挿板を使用せず全荷重歩行が可能となり、骨片の再転位はなく、関節症変化も認めなかった。

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non-rasping 、non-broaching impaction手技によるステム固定を施行した関節リウマチの人工股関節全置換術を行った関節リウマチ患者19例21関節を対象に、術中・術後の合併症の発生、術後早期X線成績について検討した。その結果、全例で術後5日以内に歩行練習が可能となり、経過観察中に大腿部痛を訴えた例はなく、後療法も順調に推移した。術後早期に3例でステムの沈下を経験したほかは良好な固定性を示した。X線像上では弛みを呈した例はなかった。また、術中肺塞栓や深部静脈血栓症、肺梗塞を発症した例はなく、術後に発症した例もなかった。

X線診断Q&A

基本情報

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臨床雑誌整形外科
61巻11号 (2010年10月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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