胸部外科 68巻5号 (2015年5月)

  • 文献概要を表示

ニプロ体外式補助人工心臓(VAD)装着患者のうち、繰り返すポンプ内血栓症に対して一時的なRotaflow遠心ポンプを使用した9例について検討した。Rotaflowによる循環補助は計25回行われ、使用期間の中央値は15日(2~128)であった。血液ポンプ交換前後の血液検査では、RotaflowからニプロVADへのポンプ交換後に3.0以上の有意なHct値の低下を認めたが、交換前後で肝・腎機能に有意な変化は認めなかった。Rotaflowの使用中、ポンプ交換が必要と判断された血栓形成は1回のみで、また脳血管障害発生率は1.39回/患者・年であった。しかし、Rotaflowにて循環補助中の患者はニプロVAD装着中の患者に比べ離床やリハビリテーションが困難で、器機の取り扱いに慣れた集中治療室での管理を要した。

まい・てくにっく

  • 文献概要を表示

73歳男。約14年前に右上葉肺腺癌に対し右肺全摘術を受けていた。今回、近医での胸部X線にて左肺異常陰影を指摘され当科紹介となった。胸部CTでは左肺S6に18×15mm大のスピクラを伴う不整形腫瘤を認め、左肺癌が強く疑われたため同意を得て手術の方針とした。静脈脱血・静脈送血体外式膜型人工肺と気管支ブロッカーを併用して左肺部分切除術を施行し、病理組織学的に臨床病期IA期の大細胞神経内分泌癌と診断し、術後はcarboplatin+etoposideによる化学療法を4コース施行した。術後は合併症なく良好に経過し、術後1年の現在、再発は認めていない。

  • 文献概要を表示

71歳女。約2年前にS状結腸癌に対し開腹S状結腸切除術(D3郭清)、術後補助化学療法の既往があった。今回、術前より認めていた左肺S6の小結節が2年の経過で増大し、肺転移が疑われたため胸腔鏡下肺部分切除術を施行した。しかし、約7ヵ月後に左側胸部痛が出現し、CTで左第6肋骨外側部に腫瘤性病変を認め、PET/CTで同部位へのFDGの集積は軽度で、腫瘍性病変は否定的であった。術後1年目のCTでは更なる病変の増大を認め、MRIより胸壁転移を疑い左第6~7肋骨を含む胸壁切除を施行し、病理組織学的に大腸癌の胸壁再発(ポート孔再発)と診断した。再手術後1年4ヵ月経過の現在、再発はない。

  • 文献概要を表示

日齢0男児。在胎37週4日に帝王切開にて出生し、体重1912g、Apgarスコア6/8点、チアノーゼを認めた。精査の結果、肺動脈弁欠損を伴うFallot四徴症(TOF/APV)および気管軟化症と診断し、生後14日に呼吸不全から徐脈となる既往があり、NPPVによる呼吸管理を開始した。以後は呼吸状態の安定が得られ、生後5ヵ月にLecompte法による気道圧迫解除を含む心内修復術を施行した。術後経過は良好で、約5ヵ月後に気管軟化症が改善したため、NPPVを離脱し軽快退院した。3歳時の胸部CTで右肺動脈が上行大動脈へ食い込むような形態の右肺動脈狭窄および上行大動脈弁上狭窄を認め、その後、右室流出路逆流の進行、肺血流左右不均衡が著明となったため、3歳8ヵ月時に人工血管による右肺動脈再建を施行した。再手術の翌日に呼気の延長を伴う呼吸困難を来たしNPPV装着となったが、β刺激薬の貼付で呼気症状は改善し、第5病日にNPPVを離脱し軽快退院した。

  • 文献概要を表示

73歳女。失神を主訴とし、精査の結果、僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症を合併した重症大動脈弁狭窄症と診断し、僧帽弁・大動脈弁置換術、三尖弁形成術を施行した。なお、術中にTreasure分類I型の左室破裂を認め、心停止下に心内膜側から修復術を行い、再建弁輪の脆弱性を考慮し負担を軽減するためスカート付き人工弁を作成し、左房壁にtranslocationして縫着した。術後1年の現在、日常生活は自立し、良好に経過している。

  • 文献概要を表示

49歳男。20歳代で骨形成不全症(OI)と診断されていた。約1年半前に他院にて発作性心房細動に対しカテーテル治療を施行され、経過観察中に心拡大と拡張期心雑音を指摘され当科紹介となった。精査の結果、大動脈弁閉鎖不全症と診断して大動脈弁置換術を施行し、OIを合併していたため、手術時には胸郭や組織に対する愛護的な操作と、出血に対する様々な対策を講じた。術後経過は良好で、術後11日目に軽快退院し、術後約3週間で仕事に復帰した。

  • 文献概要を表示

40歳代男。咳嗽に伴い喀血が出現し、近医での胸部造影CTにて上行大動脈に接する40mm大の腫瘤を指摘された。胸部X線で左肺門部は腫大し、下行大動脈内側に透亮像を認め、胸部CTでは腫瘤周囲にブラを認め、周囲にスリガラス状陰影が広がっていた。胸部造影CTで腫瘤内部のCT値は軽度高吸収で、内部に造影構造はなかった。流入血管は、左腕頭動脈、左内胸動脈から分岐していた。内科的治療を継続するも血痰が持続したため、胸腔鏡下に手術を施行した。手術所見で腫瘤は左上葉S3に存在する肺嚢胞で、表面に蛇行・拡張した血管を認めた。縦隔胸膜と癒着を認めたため剥離を行い、左肺を部分切除して腫瘤を摘出した。病理組織所見では胸膜直下の肺嚢胞内に血液貯溜を認め、肺胞腔内にヘモジデリンを貪食した組織球を多数認めた。肺内に破断した血管はなく、悪性所見も認めなかった。術後経過は良好で、術後4ヵ月経過の現在、再発はない。

胸部外科医に必要な最新の病理診断(第9回)

  • 文献概要を表示

79歳女。労作時胸部不快感を主訴とし、心臓超音波・胸部CT・冠状動脈造影所見より重症大動脈弁狭窄症と診断して大動脈弁置換術を予定した。開胸下に大動脈弁尖を切除し、弁輪の石灰化を除去した後、生体弁を用いて弁置換術を施行したが、術中にStanford A型急性大動脈解離を発生したため、循環停止下に送血部位を切除しパッチ形成術を行った。術後22日目に軽快退院し、術後5年で腎不全増悪のため血液透析の導入を必要としたが、術後8年目の胸部CTで再解離の所見はなく良好に経過している。

  • 文献概要を表示

74歳女。突然に両側下肢痛、腰痛が出現し、近医CTにて両側下肢虚血を伴うStanford B型急性大動脈解離を指摘され、発症から5時間後に当院救急搬送となった。入院時の造影CT所見より、両側下肢虚血と弓部大動脈瘤を伴うStanford B型急性大動脈解離と診断し、手術侵襲を考慮して二期的手術を行う方針とした。初回手術では下肢の血流量を確保するため、サポート付き人工血管2本を用いて、右腋窩動脈-右大腿動脈バイパスと左腋窩動脈-左大腿動脈バイパスの非解剖学的血行再建術を行った。次いで、初回手術の3ヵ月後に弓部大動脈瘤に対して上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した。術後経過は良好で、第13病日に独歩退院した。

  • 文献概要を表示

81歳女。呼吸困難、胸背部痛を主訴に救急外来を受診し、心エコーにて重症大動脈閉鎖不全症(AR)と診断され緊急入院となった。X線では縦隔拡大、心拡大を認め、経胸壁心エコーでは大動脈弁中央より心尖部に向かう重症ARを認めた。経食道心エコーでは上行大動脈に内膜の亀裂や壁肥厚、血腫を示唆する所見は認めず、CTでは上行大動脈の拡大、大動脈弓部の石灰化を認めたが、大動脈解離を示唆する所見は認めなかった。利尿薬投与とNIPPV管理にて心不全コントロールを行った後、第34病日に重症ARを原因とするForrester分類II群の心不全に対し大動脈弁置換術を予定した。しかし、手術所見にてDeBakey分類II型の大動脈解離と診断となり、Bentall手術に変更した。病理組織所見では大動脈中膜の外側寄りが開離しており、炎症性細胞浸潤を認めた。

  • 文献概要を表示

43歳男。持続する前胸部圧迫感を主訴とした。胸腹部CT所見よりStanford B型急性大動脈解離および右鎖骨下動脈起始異常を伴う最大径56mmのKommerell憩室と診断し、急性期は降圧加療を行い、2ヵ月後に待機的に手術を行うこととした。手術では左側開胸循環停止法を選択し、良好な視野展開が得られ、右鎖骨下動脈in situ再建を行い得た。術後経過は良好で、術後9日目に軽快退院した。

  • 文献概要を表示

26歳男。既往歴に感染性心内膜炎に対する僧帽弁置換術、左側頭葉の塞栓性梗塞があった。また、2年前より難治性アトピー性皮膚炎に対しciclosporin内服が開始されていた。今回、発熱、意識障害が出現し、頭部CTで左側頭葉に陳旧性の脳梗塞、右側頭葉~後頭葉に新規の脳梗塞を認めた。経食道心エコーでは僧帽弁位機械弁に疣贅を認め、培養検査では皮膚落屑からMRSA、血液からMSSAが検出された。Ciclosporinは中止し、抗生剤投与後に炎症所見は改善し、意識障害も回復したが、急性期の脳梗塞であったため、発症2週間後に僧帽弁再置換術を行った。術後経過は良好で、術後5週目に独歩退院した。なお、アトピー性皮膚炎は、保湿を主とする皮膚ケアとステロイド外用薬にて改善した。

  • 文献概要を表示

72歳男。遠位弓部嚢状大動脈瘤に対するオープンステント法併用弓部置換術が行われ、術後2年7ヵ月より発熱、胸背部痛が出現し、前医での胸部X線・CTにて左胸水、遠位弓部外側の嚢胞性病変を指摘され当院搬送となった。入院時、炎症反応が高値を示し、左胸水に対し胸腔ドレナージを行い、培養でMRSEが検出され、抗生剤投与、胸腔洗浄を行った。入院35日目に炎症反応は軽快したが、入院49日目のCTで瘤の急速な拡大とステントグラフトの移動、エンドリークの進行を認め、感染性遠位弓部大動脈瘤と診断して入院55日目に手術を行った。胸骨正中切開+左前側方開胸を行い、弓部人工血管と遠位大動脈吻合部に血腫・出血・膿瘍腔を認め、感染波及による吻合部被覆型破裂と考えられた。左肺S1+2の肺区域切除を行い、胸腔の視野を確保した後、人工血管を切断、感染性動脈瘤および内包されるステントグラフト、先に切除した左肺S1+2をen blocに切除した。周辺組織の十分な郭清と洗浄を行った後、弓部人工血管を再建した。術後経過は良好で、術後第37病日に独歩退院し、術後3年経過の現在、再発徴候は認めていない。

  • 文献概要を表示

70歳男。人間ドックの胸部X線像にて縦隔陰影の拡大を指摘された。胸腹部造影CTで上行大動脈に最大径57mmの紡錘型動脈瘤を認め、人工血管置換術を施行し、術後の病理組織学的所見より巨細胞性動脈炎による胸部大動脈瘤と診断された。術後経過は良好で、術後17日目に軽快退院した。

  • 文献概要を表示

71歳女。65歳時に右尿管癌、67歳時に膀胱癌の既往歴があった。右尿管癌術後6年目の定期検査で左胸部異常陰影を指摘され当科紹介となった。胸部X線で左中肺野に境界不明瞭な結節陰影を認め、胸部CTでは左S6胸膜直下に長径14mmの結節陰影を認めた。FDG-PETでは左肺病変の部位に一致する集積像があり、気管支鏡では可視範囲に異常所見は認めず、擦過細胞診でも悪性所見はなかった。以上より、原発性肺癌または転移性肺腫瘍を疑い手術を施行した。左肺部分切除を行い、迅速病理検査では尿管癌の肺転移の診断であったが、術後の病理組織所見で肺原発扁平上皮癌が疑われ、免疫染色所見より最終的に肺原発淡明細胞型扁平上皮癌の診断となった。術後に左下葉の追加切除をすすめたが、本人が希望せず経過観察となった。術前上昇していたCYFRAとProGRPは、術後8ヵ月に基準範囲内に低下したが、術後18ヵ月に再上昇し、胸部CTで左肺切離線近傍に結節陰影を認め、現在局所再発が疑われている。

基本情報

24329436.68.05.cover.jpg
胸部外科
68巻5号 (2015年5月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

文献閲覧数ランキング(
6月29日~7月5日
)