臨床皮膚泌尿器科 18巻8号 (1964年8月)

皮膚科図譜・178

外陰部Paget病 棚橋 善郎
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症 例 66歳,男

家族歴・既往 歴特記すべきことはない。

皮膚科図譜・179

尋常性狼瘡 田辺 与市
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患 者 56歳 ♀ 初 診 昭和39年3月2日

家族歴母親が肋膜炎で死亡している他特記すべきことなし。既往歴 著患を知らず,特に結核性疾患なし。ツ反応陽転時期は不明。

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I.はじめに

 網状肢端色素沈着症は昭和18年北村ら1)により記載されて以来26例が報告され,この間すでに谷村らをはじめとしていくつかの綜説に接するが,今日なお新症例の報告のたびにつけ加えられる知見が少なくない。今回本症と考えられる1例を経験したので以下に報告する。

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I.緒 言

 本症は皮膚に硬い小結節,乃至は融合した局面を形成する疾患で,組織学的に真皮或は皮下組織にリンパ滬胞様浸潤像を呈し,腫瘍か,或は炎症性の肉芽腫かについて議論の多い疾患である。既に著者は山本と共にLymphadenosis benigna cutisの診断のもとにその1例の報告1)を行つたが,本邦における報告は,山碕,中野2)の第1例に始まり,石川の2例3);寺尾,工藤4);蔭山,森田5);森,三崎6);今井7)の各1例と,今回の自験例の2例をあわせ,10例を数えるに過ぎない。しかも山碕等,石川の記載以外は詳細な報告がなく,本症の疾患概念について末だ明瞭ならざる記載が多いと思われるので,ここで再び2症例を追加し,病理組織学的知見の補遺を試みたい。

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I.はじめに

 約100年前(1860年),Gibertによつて始めて記載された本症はその病因が不明な点,及びその症状が他の皮膚疾患,例えば脂漏性湿疹,自家感作性湿疹或は中毒疹の或る病型と類似する点等より,皮膚科学における分類上の位置は極めて不明確なものとされてきた。Gans1)の成書にはMy—kideの項のAnhangに本症を記載されて居り,多くの成書では原因不明の疾患,或は炎症性角化症の中に取り扱われている。最近では本症には再発をみない点よりウイルス性疾患を考慮する学者2)3)もある。組織学的には諸家の研究を一言にして言うならば非特異性炎症像として理解されているに止まつている3)4)

 私達は本症を組織学的に観察する機会を得たので,本症が組織学的特異像を有するであろうか,したがつて組織学的検査が本症診断の大きなより所となるであろうか,更に病因究明の一つの手がかりになるであろうかという考えの下に検討を進めて来た。皮膚切片の採取にあたっては特に皮疹の性状に留意した。即ち皮疹は楕円形を呈し,その長軸は割線方向に一致すること,境界鮮明であり,縁辺近くに環状鱗屑を被り,中心部は炎症消退し,稍々蒼紅色を帯びるもの,部位としては躯幹を中心として四肢にひろがるもの,経過としては急速にひろがり,治療に抵抗し,1ヵ月以上の経過を有するものを鏡検の対象とした。鏡検した切片は,6例より得た10切片である。その他ジベール型中毒疹3例,ジベール型自家感作性湿疹1例を鏡検し,参考とした。

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I.緒 言

 頭部,顔面其の他の表皮に動物の角に似た角質性の突起物を生ずることがあるが,その外観よりして皮角(Cornu cutaneum)と云われ,古くから好奇的な見世物として知られており,19世紀末より近代医学的検討が加えられる様になつた。

 またエリテマトーデスが時として最も危険な合併症として癌性変化をすることは周知の事実であり,広義の前癌状態と考えられているが,著者はエリテマトーデスの上に皮角を生じ其の基部に於て癌性変化を示した1例を経験したので報告する。

Acanthosis nigricans benigna 小林 健正
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I.はじめに

 最近の科学の進歩はAcanthosis nigricans(以下A.n.と略す)が共通の形態学的特徴を具備した症候群であることを次第に明らかにして来たが,依然としてA.n.なる診断名には規定力と支配力とを欠く所が多い。従つて我々の経験した本邦には未だ報告を見ない2世代にわたる良性A.n.の家系を紹介し,その症候的特徴を述べることは稀有疾患には相違ないが,外国に比し本邦に多い憾のあるA.n.研究に資する所があろう。

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I.緒 言

 本症は1903年土肥・百瀬1)により記載された疾患で,毛孔一致性の小黒点を中心とした円葉状の鱗屑を生じ,底面固着辺縁は僅かに遊離しているので,「恰も荷葉の水面に浮ぶに似たり」2)と形容された特異の所見を呈し,現在まで約60年間に百数十例が報告されている。しかし本邦人を除いては,柳原3)が昭和6年に中国人の28歳男子,森山4)が同年に朝鮮人の20歳男子に本疾患を確認して以来,安井5)(昭13)が中国人の25歳男子を,蛇島6)(昭15)が朝鮮人の24歳男子,川崎7)(昭18)が中国人の20歳男子を報告しているが,欧米人及び黒人例は全く見られず,昭和36年M. B. Sulzberger8)は「私ははじめてこれをみた。これを見ただけで日本に来た意味があつた」と述べており,本邦人に特有の疾患と考えられている9)

 本症の統計的観察は既に長谷川10),鈴木11),早川12)によつて試みられているが,その本態は未だ不明の点が多い。私は過去4年間に当教室を訪れた本症の6例について報告すると共に,2,3の考察を加えてみたいと思う。

小児毛孔性湿疹について 皆見 省吾
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I.まえがき

 幼児の躯幹に毛孔に一致する微小結節が多発することがあり,しばしば見られるが,最近の例を示してみる。

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I.はじめに

 末梢血流障碍,特に凍瘡に対しては今日まで数多くの局所的並に全身的治療法が行われているが,何れも常に充分な効果はあげられていない。そこで末梢血管を拡張し末梢血流の循環を促進することを目的にクレバミン(興和新薬)を凍瘡その他二,三の皮膚疾患に試み,良好な治療効果を得たので,ここに記述しようと思う。

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I.緒 言

 嚢胞腎は稀な疾患ではなく,大きなクリニークでは年に数例は必ず遭遇する。しかしながな先天性発育異常という発生病理からして,その病状進展は緩徐であり,巨大な腎腫瘤,高血圧並に慢性腎不全等典型的な症候を備うるに至つて来院するものが大部分である。

 従つて,穿刺術等の治療を行つても腎機能の改善を期待しうるものは少く,また,再発の可能性も存し,その予後はかなり悲観的と考えねばならない。

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I.緒 言

 腎外傷に対する腎摘除術の際,何等かの事情により腎実質の一部が取残され尿瘻を形成することは稀ながら経験される。その場合,腎動脈を遮断された腎実質が如何なる機構により血液の供給をうけるか,即ち腎の副行血液循環が問題になる。

 我々は腎断裂に対する手術時,偶然取残された部分腎による尿瘻を治療する機会に恵まれ,この問題について若干の知見を得たので報告する。

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I.緒 言

 臨床症状を来して外科的手術を必要とするような比較的大きな腎腺腫の報告はなお稀れである。われわれは間歇的血尿を主訴とする49歳の男子で10ヵ月間の観察ののちはじめて腫瘍として摘出したところ,一部に類副腎腫構造を伴つた腎腺腫であることが判明したので症例を追加する。

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I.緒 言

 多発性骨髄腫はKahler1)の詳細な臨床的記載によつて始まり,欧米においては比較的多数の報告がなされている。本邦においても検査方法の進歩とともに多発性骨髄腫症例は急激に増加し,特に病態生理並びにその症状についても詳細な記載がみられるようになつたが,血尿を主訴として発症している報告は見当らなかつた。最近私共は高度の血尿及び右腰部重圧感を来して来院した多発性骨髄腫の1例を経験したので,ここに報告するとともに些か文献的考察を試みた。

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I.緒 言

 Ureterのherniaなるギリシヤ語に由来するUreteroceleはLechler (1835)が初めて剖検で認めて以来,内外共に多数の報告がみられるがこれが女子の尿道外に脱出した症例は今尚比較的稀で本邦文献上10例を算えるにすぎない。著者は排尿毎に脱出し同側の高度の感染性水腎症を伴つた症例を経験し加療する機会を得たのでこれを報告し,又たまたま膀胱鏡で発見しえた小さな尿管瘤症例について附記する。

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I.はじめに

 前立腺癌の浸潤性膀胱癌に対して膀胱亜全剔除および前立腺・精嚢腺全剔除を行い,一応機能的に膀胱再生法に成功したが,癌の再発および全身転移,ことに稀有な皮膚転移をきたした1剖検例を経験したので報告する。

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I.緒 言

 Thompsonによれば陰茎縫線嚢胞は文献的に極めて稀であると述べているが,これは本症が臨床的に深い意義をもたないため,又本症が無症状に経過する事が多いため報告例が少くなつているとも考えられ,最近においては宮林ら及び加藤によつて本症の各3例が報告されている。

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I.緒 言

 精索,睾丸被膜脂肪腫は,腫脹してかなり大となつても患者にあたえる苦痛はごく少いため。初発症状出現後,長期にわたつて放置しその後,腫瘍の器械的圧迫による歩行,排尿,性交等の障害をみるにいたって,はじめて医師の下を訪ずれる場合が多い。

 初発症状出現後30年〜40年以上経過しても,完全治癒が成されているから,問題は少い様に思われるが,本症が将来に於て,変化,とくに悪性変化を来たすか否かは不明であるとされている点を考えれば,可及的早期に腫瘍の剔出を行うのがのぞましい。

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I.はじめに

 戦後尿路結石症が増加し,殊に上部尿路結石症は,下部尿路結石症に比して,最近特に増加の傾向が強い。これ等の上部尿路結石症の中,本邦の諸家の統計では,腎石と尿管石との比は,略同数か,やや尿管石の方が多いとされている。

 日常我々泌尿器科専門医は,劇烈な疼痛を主訴として来院する尿管結石症の患者に接した場合,手術的療法を行なうべきか,或は保存療法にたよるべきか,判断に苦しむ場合が少くない。勿論患側腎の状態は,この問題の大きなきめ手となる事は云うまでもないが,我々としては,出来るだけ非観血的に治癒せしめ得るならば,患者にとつても一大福音である。従来より保存療法可能と思われる比較的小さな結石に対しては,各種のすぐれた製剤があり,相当の成績を挙げている。

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I.はしがき

 最近,泌尿器外科の進歩により,尿路及び性器に対して,種々の複雑な手術が行われる様になつてきたが,われわれ臨床医家として,これらの手術にたださわる際に最も頭を悩ますのは,術中,術後の出血である。例えば身近なものでも,腎切開術,腎部分切除術などしかり,又前立腺被膜下別出術などしかりで,術後の思いがけない甚だしい出血が,再手術の必要を余儀なくする様な事態を招くことさえある。これは,泌尿器外科において,これを余儀なくされる特有な事情がある訳で,というのは尿路に加えられた手術は,手術された部分が絶えず尿と接触する為に溶血を起し,血尿が止まらず,引いて尿路の大出血は膀胱凝血塊による尿の通過障宮を惹起し,尿閉迄も引き起す事態となる訳である。

 又一方,尿路腫瘍,尿路結石,尿路結核などで非観血的治療を行ないつつある経過中や,出血性膀胱炎や潰瘍性膀胱炎などの一連の膀胱疾患でも,甚だしい出血を認める事があり,その止血もすこぶる困難であり,又特に所謂特発性腎出血は,その治療に関して泌尿器科医を最も悩ますものである。

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I.緒 言

 近年外科領域における大きな手術操作が比較的安全且つ容易に行ない得るようになつた事は,手術手技の改善進歩は勿論の事であるが,抗生物質の使用あるいは麻酔手技の発展に加え,手術前後における輸血および輸液の進歩に負う所が大きいと考えられる。更にそれに加えて手術前後における栄養管理に関する研究報告も最近数多く見られるようになつた。従来輸血,リンゲル,ブドー糖,プラズマ等によつて行なわれていた輸液も水分電解質の面からの検討が進められ,更に蛋白質補給の目的でアミノ酸剤の使用が多く行なわれるようになると共に,これらアミノ酸製剤の改善研究が行なわれそれらを使用した臨床報告例も多数発表されている。

 我々は最近抗プラスミン剤イプシロンを配合した純結晶L型必須アミノ酸製剤であるミキスタミンE液を使用する機会を得たので,ここにその使用経験について報告する。

文献紹介

皮膚癌前駆症の放射線療法,他
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 癌前駆症の全てが放射線療法の適応とはならない。多くは放射線療法を必要とするが,幾つかは簡単な外科的手段で除去される。また放射線に感受性を持たないものもある。従つて,放射線療法の適応は疾患の種類と各症例の状態に応じて決定すべきものである。癌前駆症としては老人性角化腫,皮角,ボーエン病,紅色肥厚症,パジェット病,黒色癌前駆症および白色角化症がある。老人性角化腫は放射線感受性を持つが,電気凝固法を第一とすべきで,癌性変化が認められた場合に放射線療法を行う。皮角は切除が最良の手段であるが,常に組織学的検索を行い,癌性変化を見逃してはならない。ボーエン病は放射線感受性が高い。あまり拡大しないものは摘出も良い。紅色肥厚症も適応となる。乳房パジェット病は乳房切除を施行する。乳房外パジェット症は相当程度放射線療法が期待出来る。黒色癌前駆症は絶対適応となる。疣贅状白色角化症は放射線感受性が低い。線質として,病変の深さ(mm)に一致する組織半価層(mm)を持つ放射線を撰択する。病変の深さは,老人性角化腫で0.6mm,黒色癌前駆症で1mm,ボーエン病で2mm,紅色肥厚症で3mmとなる。これらに用いる放射線として,軟線が最も秀れている。β—線は組織半価層が1mmのため,病変の深さが1mm以内の疾患に適している。推薦する線量は表の如くである。これらの数値は病巣直経が3-4cm以内のものに適している。(Schirren, C. G.: Strahlenthe rapie von Pracancerosen der Haut, Hautarzt, 14; 493, 1963)

泌尿器科図譜・178

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症 例 64 歳会社員  主訴 尿線狭小終末排尿痛  既往歴 26 歳淋疾罹患

 現病歴 約3年前より尿意頻数,終末排尿痛,尿線狭小を認め,某医にて膀胱炎の診断のもとに加療せるも治ゆせず。昭和38年6月16日当科受診す。

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 症 例 黒 ○則○ 6ヵ月 男子生来臍部に小鶏卵大の赤色肉芽腫様の腫瘤(第1図)が突出し,その中央に陥没が認められ、啼泣するとその部から尿らしき液体の流出が認められた。尿道からネラトン5号を容易に挿入可能でメチレンブラウ約10cc注入すると,腫瘍の中央部より青流出が認められる。さらにネラトンを挿入すると,腫瘍中央部に,その先端が認められた。なお血液検査では異常を認めなかつた。

膀胱撮影 膀胱像は西洋梨状を呈し,その頂部から臍部に向う幅広い陰影像を認める(第2図)以上により奇形性膀胱膀尿瘻の診断のもとに昭和38年6月26日膀胱頂部切除術を行なつた。切除標本は第3図の如くである。術後経過良好で10日目にネラトンを抜去した。

海外見聞記・13

術前・術後処置 中村 宏
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 今回は術前・術後処置に関して,我々の病院とやり方の異つていた点について述べてみたいと思う。何といつても前立腺の手術が一番多かつたので,それを中心にその他の手術は特異的なことのみ附記する事にする。先ず代表的な術前のオーダーとして恥骨上前立腺剔除術の時の実際のオーダーは上のようです。

 aのPermissionは手術承諾書にサインすることで,どんなに小さな手術でもこれなしには手術出来ない。bの剃毛は非常に広範囲に行われていた。SSEというのは石鹸水による高圧浣腸で,午前中の手術は前夜に,午後の手術には当日の午前中に行つていた。その他の手術でも同様である。食事は午前中の手術には夜半以後禁食禁水としていたが,午後からの手術では,朝食にコーヒー紅茶,ジェリーのようなものを与え,それ以後禁食禁水となつていた。術中輸血の用意に一応1000cc(1 unitは500cc)の血液がクロスマッチされていたが,実際に術中輸血を受けるのは15%位のものだつた。出血が500cc以内の場合には,血圧・脈搏が安定している限り輸血は行わなかつた。米国の病院はどこでも供血者の不足のため保存血の欠乏に困つていたが,マウント・サイナイは血液銀行が最初に出来た病院なので,血液を集める方法とPRがうまく行われていた。患者の入院と同時に家族の者から血液の提供を受けるようになつていた。Thru & thru irrigationというのは,尿道に留省したバルーン・カテーテルから洗浄液をイルリガートルから点滴式に流入し,cystostomy tube(マレコー氏カテーテル)から排液するという洗浄法のことを指し,術直後から直ぐ使用出来るように術前からオーダーしておく。使用する洗浄液は通常生食水が用いられていたが,蒸留水を使用する医者もいた。高血圧患者には後者が用いられていた。前者は前立腺床からの吸収を考えて蒸留水より生食の方が適当であるとし,後者は蒸留水の方が膀胱内やカテーテル内で凝血塊が出来難く,カテーテルが閉まることがないという利点をあげている。前投薬に使用されるDemerolはオピスタンとほぼ同様の合成麻薬で,硫アトと一緒に術前時間に筋注される。前立腺の手術では脊椎麻酔の禁忌症でない限り,脊椎麻酔が用いられるが,麻酔の如何に拘らず前投薬は同様だつた。1/150grは0.4mgで,65歳以上ではデメロールは50mgに減量していた。

外国文献

基本情報

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臨床皮膚泌尿器科
18巻8号 (1964年8月)
電子版ISSN:2188-6164 印刷版ISSN:2188-6156 医学書院

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