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圓形脱毛症の腦下垂體移植療法
河村 俊光
1
,
佐藤 直子
1
1東京大學醫學部皮膚科教室
pp.597-600
発行日 1951年12月1日
Published Date 1951/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200637
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1929年Ehrhardt. Wiesbaden,Focsaneanu等は實驗的に牛の腦下垂體を猿に移植したところ,子宮粘膜が週期的に腫脹且つ發赤し,又これに依つて月經樣出血を見るに至つた。爾來腦下垂體抽出液の應用と相俟つて,その異種及び同種移植實驗が種女の目的で行われ,その結果にはこの移植の臨床的應用の可能性を示唆するものがあり,遂に1933年に至つてRüder及びWolfは尿崩症の1妊婦に牝牛の腦下垂體を移植,著效を收めることができた。一方1935年Cottiniは或種の皮膚疾患では尿中にプロランA又はBが排泄されるのを見て,皮膚疾患に腦下垂體ホルモンの關與することを想像,又翌1936年James & Snow等は毛髮の成長に前葉ホルモンが特異的に影響を及ぼすことを動物實驗に依つて證明した。爾來腦下垂體前葉ホルモンが種々の皮膚疾患に應用されるようになり,皮膚疾患以外では小兒症,發育不全等にも用いられ,身長及び體重の増加,第二次性徴の發現等に對して好影響があることが認められるに至つた。皮膚科疾患に對する腦下垂體移植の試みとしては1930年から1940年にかけて,その圓形脱毛症,脂漏性脱毛症,鞏皮症,尋常性痤瘡,酒皶等に效果あるを報告した文献が散見するが,特に積極的に一定疾患の療法として廣く行われることなく今日に及んだ。
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